「沼にハマって聞いてみた」で公開した、1年以上の歳月をかけて完成させた「世界初実験」

2022.10.22

 

みなさんこんにちは!市岡元気です⌬

 

今回は今年の夏一番力を入れた実験を紹介します。新しくて"映える"実験開発というのは毎回とても大変で、テレビではそのようなものが求められる一方、実はYouTubeでは映える大規模な実験を披露したところで沢山の方にはみられません。それよりは身近なものを分析したり、小さいけれど意外な反応という現象がYouTubeでは好評です。

僕自身大規模な実験は好きなのですが、あまりYouTubeでは求められず最近は取り組んではきませんでした。

しかし今回NHK Eテレの「沼にハマって聞いてみた」(通称「沼ハマ」)という番組で1時間実験番組をやることになり、沢山の新しい実験をしなくてはいけなくなりました。

月並みですが僕はいつもピンチはチャンスだと思っていまして「1時間実験しなくてはいけない」→「1時間分の実験を新しく開発できるチャンス」ととらえ、今年の夏はその番組に全力で臨みました。沢山実験したのですが、その中でも3つの世界初実験を紹介します。

一つ目の"世界初"液体窒素カラフルロケット

1つ目の実験は「液体窒素ロケット」です。

数年前にコーラに液体窒素を入れて逆さにするとペットボトルが目にも止まらぬ速さで上空へ飛んでいく映像が話題になりました。

この映像を参考に実験をやってみたのですが、この実験の1番のネックは【爆発】でした。

実験の原理を説明すると、水でもコーラでも良いのですが飲み物がペットボトルに入っているとして、その"上"(ペットボトルの飲み口側)に液体窒素を少し入れます。液体窒素は水よりも軽いのでそのままの状態では上に浮かんでいて蒸発して窒素になるのみで何も起きません。

しかし逆さにすると、軽い液体窒素は逆さにした時の"上"(ペットボトルの底側)へ。細かくなり表面積も増えるので一気に気化します。水は重いのでペットボトルの口側へきて噴射し、その勢いで上空へ飛んでいきます。

この時液体窒素が多すぎると水が出るよりも早く液体窒素が気化してしまうので、ペットボトルの口を水が塞ぎ膨張に耐えきれなくなったペットボトルが爆発してしまいます。

ただでさえ液体窒素を入れすぎると爆発してしまう上、ふつうの大きさのペットボトルだとテレビ向けではないので巨大化しなくてはいけなかったので、どうしたものかと頭を悩ませました。

色々調べて、海外でもウォーターサーバーくらいの大きいペットボトルで同様のことをしている実験を見つけました。

やはり爆発を恐れてかヘルメットとフェイスカバー、手袋をして実験しています。このボトルだと8kgくらいは水が入るのでそれを押し出すパワーがないとロケットも上に上がりません。そこそこ液体窒素を入れる必要があります。そして、爆発の確率は上がるでしょう。

ということで、日本中の大きいペットボトルを探して実験をしました。街中では周囲に危険が伴うので「採石場」を借りて行います。

はじめは小さい500mlのペットボトルから。液体窒素を50mlほど入れて実験し、うまくいきました。次に同じペットボトルに液体窒素を100mlほど入れて実験。採石場に銃声のような音が響きました。空中で爆発したのです。やはり多く入れるのは危険でした。

だんだんとペットボトルの大きさを上げていきます。1Lのペットボトルもうまくいきました。次はよく「大●郎」などのお酒が入っている取手付きの4Lのペットボトル・・・形状がいびつなため圧力に耐えられないだろうと予想していましたが・・・やはり大破。10Lのウォーターサーバ、20Lのウォーターサーバーのボトル・・それぞれ順番に試し、どちらもうまくいきました。

ノウハウがわかってきたら次に意識するのは「テレビ映え」。上空へ上がるスピード感なども考慮し大きさは10Lのウォーターサーバーにします。あとはこれを「世界初」の映える実験にブラッシュアップするだけです。
上の動画でもそうですが、普通は透明な水でやっています。ここを変えて、中に絵の具を入れればカラフルロケットの完成!そして3色同時に噴射・・・・実験はとてもうまくいきました!


数日テスト実験にかかるかと思いましたが、ある程度の実験の経験をもとに予想して実験を行ったので大成功でした。しかし、何より一番よかったのは「安全に実験」ができたことだと思いました。

※写真は遠くからの映像の切り抜きのため画質荒くすみません。こちらの映像はまたYouTubeとして撮れたら映像にしますのでお待ちください。

二つ目の"世界初" 400kgでテルミット実験

テルミット反応という実験があります。中学理科の教科書の「酸化・還元」の単元の発展にも出てくる実験で「酸化鉄」と「アルミニウム」を重量比で8:3の割合で混合し火をつけると、3000℃近い熱が出て反応し純鉄が残るという実験です。鉄よりもアルミニウムの方が酸素と仲がいいので酸化鉄から酸素を奪って「還元」し酸化アルミニウムになるという「酸化」実験です。

Dr.STONEでも千空が少年時代に「アルミホイル」と「砂鉄」で同様の実験をしていて、それを再現した過去の動画がありますのでご覧ください。

高校の化学実験でも教室でやることがあるのですが通常は「酸化第二鉄(ベンガラ)」と「アルミ粉」で行います。その酸化鉄を「砂鉄」にするだけでもかなり比率が変わり難しかったです。そして「アルミ粉」を「アルミホイル」でやるのはとてもレベルが高く、かなり根気がないと成功しないと思いました。

さて、ここから本題ですが、「沼ハマ」ではアニメ『転生したらスライムだった件』(通称『転スラ』)に出てくる「イフリート」という召喚獣が使う炎の柱を再現するという"アニメ再現実験"を目指しました。アニメなので規模がかなり大きく描かれていまして、これを再現するにはかなり多めにテルミットをやらなくてはいけないと想定しました。

『転スラ』「イフリート」をご存知ない方のために、参考画像↓(ツイート内容は関係ありません)


ちなみに、上に貼った動画のときにはテルミットの粉を8gでやったのですが、これの5000倍・・・400kgでやらないとこの規模は再現できないと感じました。

テルミット実験は通常多くても10g前後で行います。日本のYouTube、海外のYouTubeを調べたのですがそこまで大規模にやっている方はいませんでした。せいぜい多くても200kg程度。つまり200kgくらいまでは映像があるので、結果が想定できました。それ以上は未知の領域です。実験は大きくすると急に反応が暴走することがあるので、慎重に実験を進めなくてはいけないと思いました。

そのため、まずは100kgから実験を開始。もちろん消防には許可を申請済み。

採石場の眺めはいいのですが・・・気温は30℃以上・・・・



まだ何もしていないのに汗だくです・・・・

上に噴き出す炎の柱が欲しかったので、まずは穴を掘ってそこにテルミットの粉を埋めることにしました。直径1m程度、30cmくらいの深さを掘るのにスコップを持っていったのですが採石場の岩盤が硬く、持っていったスコップが折れました・・・。そこでホームセンターでツルハシを買ってきてなんとか刺さり6人くらいで4時間ほど掘ってようやく穴が開きました。

まずは100kgのテルミット実験。念の為30mほど離れた場所から電熱線を使って点火。 

うまくいきました。この日はペットボトル実験をやった後、1日がかりで穴を掘っていたので夕方になり、ここまでで作業終了。

 

1週間後、その間に発注しておいた金属の粉が到着。まずは前回の4倍の深さを掘らなくてはいけません。気温30℃近い気温の中アルバイトの子にもお手伝いいただき、4時間ほどかけて深さ1m以上・直径1m程度の大穴を作成。あとは粉を入れて着火するのみ・・・

うまくいってくれ。10人以上の人が祈る中着火・・・・

 

予想以上の火柱が上がり大成功でした!!!

今年の夏の思い出は採石場で穴掘り&テルミット実験でした。

1年の歳月をかけて完成させた"世界初実験"「光る泡」

そして最後の実験「1年以上の歳月をかけ成功させた実験」というのが、光る泡実験です。

『沼ハマ』のお話をいただく前から構想・開発は進んでいたのですが、せっかく番組のお話をいただいたということで、そこに合わせて公開できるように本格的に開発していきました!今回は実験の進化の過程・試行錯誤も含めてお話しします。

昔から「象の歯磨き粉実験」という実験はよく行ってきました。元々は海外で流行った実験なのですが洗剤を混ぜた「過酸化水素水」に「ヨウ化カリウム」というものを混ぜ合わせると、象が使う歯磨き粉のように大量の泡が一瞬で出現するという実験です。

「象の歯磨き粉実験」の基本レシピは
A液
・30%過酸化水素水 100ml
・洗剤 10ml
・絵の具や食紅など適量
B液
・ヨウ化カリウム 10g
・お湯 10ml

この2種類を混ぜ合わせると、一瞬で泡が発生します。僕はこの実験で過酸化水素水を日本一使っているのではないかというくらい頻繁にやっていまして、今までに10トンくらいは使用しているかなと思います。去年は1年で2トンくらいは消費しました。

そのくらいよくやっているので、学校の科学部などでこの実験をやりたいと考えている方にポイントと注意点をお伝えしておきましょう。

まずは何が起きているか、ですが過酸化水素(H2O2)にヨウ化カリウムを入れるとヨウ化カリウムが触媒となり過酸化水素をH2OとO2に分解します。その時発生した酸素が洗剤の泡の中に取り込まれ一瞬で泡ができるのです。ヨウ化カリウムは触媒なのでそれ自身は変化しませんが、多い方が当たる面積が増えるので反応は激しくなります。

簡単な実験ですが一番はやはり安全に実験を行わなくてはいけません。薬品の注意点から説明します。使用する30%過酸化水素水は消防法第6類に該当する危険物です。保管量300kgを超える場合は、消防署に許可取りが必要です。その分量以下だとしても危険物ですので、それぞれの地域の火災予防条例に従ってその地域の指定量以上の場合は届出が必要です。「保管」とは10日以上の場合ですが、正直そこまで大量に使用する方はいないと思いますので、問題ないかと思いますが。

過酸化水素(H2O2)は不安定な物質で、そのまま置いておいても自然と分解されて水H2Oと酸素O2になってしまいますので購入後早めに使用した方が成功率は高いです。といっても、1年くらい保管しておいても問題ありませんでしたが。

最も危険なポイントは、過酸化水素水は強力な酸化剤だということです。肌につくと化学火傷を引き起こし、皮膚が壊死し白くなります。少量であればすぐ洗えば問題ありませんが、ピリピリとした痛みがあります。また目に入ると失明の恐れもありますので実験の準備片付けまで絶対に過酸化水素水に触れないように、ゴム手袋、安全ゴーグルをつけましょう。

またこれもうっかりするとやりがちな重大なミスですが、洗剤を入れ忘れてそのままヨウ化カリウムを入れてしまうと泡にならず突沸し、過酸化水素が周囲に飛び散ります。大変危険なので洗剤を入れたかどうかは必ず最後に確認しましょう。もしわからなくなってしまった場合はほんの少量ビーカーに取り実験してからメインの液体で実験しましょう。

実験をうまく成功させるコツですが、化学反応なので、温度を上げたほうが反応は激しくなります。ただ過酸化水素は50℃近くで分解されていってしまうので僕はよく35℃以下で湯煎し直前に温度を保っています。

ここまでが、ベーシックな「象の歯磨き粉実験」の説明でした。そしてそれが「光る象の歯磨き粉」になればめちゃくちゃ面白いだろうと思って、新しい実験の開発を考えました。実はこの実験は2年前に、今はホモサピという名前でYouTuberとして活動している子がやろうとして失敗してしまった実験だったのです。

まず液体を光らせる方法ですが「過シュウ酸エステル化学発光」という現象を用いました。簡単にいうとコンサートで使うサイリウムです。方法はこちらの動画をご覧ください。

こちらはA液とB液を混ぜると光を出すのですが、A液には蛍光剤 B液には酸化剤として過酸化水素が使われています。

象の歯磨き粉にも、光る実験にも「過酸化水素」が使われていることに気づきました。ということは・・・これは相性が良いのではないかと思い、実験しました。

試行錯誤の様子はこちらをご覧いただければわかるかと思います。


結果なんとか光る液体実験に成功しました!

光る液体を保つためにはヨウ化カリウムでは光らなくなってしまうので、そのほかの触媒で試しました。試行錯誤をまとめると、
イースト菌→発泡が弱くうまく膨らまない また開封時はいいのですが、少し経つとイースト菌が死滅し反応しなくなる
過マンガン酸カリウム→とても硬めの泡ができる
二酸化マンガン→発泡は強いが黒い部分が光を隠してしまう。

という結果。とりあえずは成功させることができました。

実験の開発の過程では成功する時もあれば失敗する時も多いですが、試行錯誤と考えを巡らせて「ブラッシュアップ」できるのも、実験開発の面白いところです。

これから沢山実験して、更に確実に面白い実験にしていくように挑戦していきます!

(著:市岡元気)

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市岡 元気

2019年、YouTubeチャンネル「GENKI LABO」を本格始動。現在登録者数30万人超。同年、株式会社GENKI LABO設立と同時にCEOに就任。数々のサイエンスライブ、実験教室を全国各地で開催。

【主な活動場所】 Twitterはこちら  youtubeはこちら ご依頼は[email protected]まで。

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