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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、世界最古の人類による火の証拠を発見したというお話だよ! この火は107万年前から179万年前に燃やされたとみられており、それまでの世界最古の記録を数十万年も遡ることになるよ。なお、火を使ったのは「ホモ・エレクトス (Homo erectus)」という初期人類で、恐らく自然の火災を転用したものになるよ。
実のところ、考古学における火の証拠の調査というのは、痕跡を見つけることも大変だけど、人類が火をともしたという証拠を上げるのもまた大変なのよね。今回は「代替光源 (ALS; Alternate Light Source) システム」という方法を使うことで、従来の方法では証明が難しかった火の痕跡の調査をしたのよ。
火の使用は、人類史における重要な転換期の1つなので、火の使用の証拠を見つけることはとても重要なのよね。また、今回使われた研究手法を他の場所にも使うことで、これまで見逃されてきた火の使用の痕跡を見つけられるようになるかもしれないよ。
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火の使用というのは、人類史における重要な転換期の1つと見なされているのよね。火の使用は、特に肉や植物を焼くという調理の文脈で重要で、摂取カロリーを増やし、噛んだり消化するための消費カロリーを減らすことで、現在の高度な知能にも繋がる脳の発達が促された、と考えられているからね。
また、火は捕食動物や腐肉食動物を遠ざけ、寒い時間帯や季節でも熱源による体温維持にも繋がるので、生存率を高めた推定できるのよね。なので火の使用というのは、石器と並んで、人類の進化の文脈において重要視されているのよ。
人類史における火の使用を考える上で先に予習しておきたいのは、火を使った人類は現生人類 (ホモ・サピエンス) だけではないと考えられていることよ。火の使用という概念が生まれたのは、現生人類よりも前の旧人類の中であるというのが現在主流の説であり、火の使用は人類の進化と共に歩んできたと考えられているのよね。
また、「火を使う」と「火を起こす」ことも区別して考えないといけないよ。火を人工的に起こさなくても、自然発生の火災によっても火は使えるからね。特に人類が誕生したとされるアフリカ大陸は「火の大陸」という異名があるほど自然発生の火災が多いので、火起こしの技術が発達する前に火を使えた可能性があるのよね。
そういった前提を下に、人類が火を使用した確実な記録の中で最古とされているのは、南アフリカ共和国にある「ワンダーワーク洞窟 (Wonderwerk Cave)」になるのよ。ワンダーワーク洞窟は、旧石器時代のアシュール文化が見られる場所で、約200万年に渡って人類が暮らしていた痕跡が見られる考古学上重要な場所の1つなのよ。
このワンダーワーク洞窟で見つかった約100万年前の焼け跡が、今回の研究以前における人類史上最古の火の使用の痕跡とされているのよ。火を使ったのは「ホモ・エレクトス」[注1]であると推定されているけど、この種は現生人類などの祖先とかなり密接であったと考えられているので、人類史における重要な立ち位置にあるのよね。
ワンダーワーク洞窟の火の痕跡は、焼けた骨・土・石と灰が一緒に見つかっていることに加え、洞窟の奥まったところで見つかっているのが重要なのよね。自然に発生した火が届く距離ではないことから、確実なものとしては最古であるとされているのよ。
ただ、ワンダーワーク洞窟はその貴重性から、現在でも発掘調査中ではあるのよね。なので現時点で分かっていることは、将来的に上書きされる可能性が常にあったのよ。今回の研究成果も、まさに上書きされた一例と言えるかもしれないわね。
ナシオナル・デル・スール大学のM. Dolores Marin-Monfort氏を筆頭とする研究チームは、ワンダーワーク洞窟でさらに古い意図的な火の使用の痕跡を見つけたのよ! 先に美味しい部分を話すと、この火の痕跡は107万年前から179万年前のもので、人類の火の使用が最大で約80万年もさかのぼる可能性があるのよ!
では、そういう主張をする根拠はどこから来たんだろうね? 107万年前から179万年前という数値自体は、火の痕跡が見られる地層の年代から推定したもので、ここに議論の余地は少ないよ。地層の中に埋まっていたモノが、地層ができた後に移動した痕跡も見つかっていないことから、年代については正しそうなのよね。

図3: 人類による火の使用とは、メンフクロウが吐き出したペリットに含まれる小動物の骨が、高温に晒された証拠を見つけるという物的証拠を根拠にしているよ。ただ、骨が焼けているかどうかの判定は、見た目では難しいのよね。真っ白に見えて焼けている骨というのもあるのよ。 (画像引用元番号④⑤)
むしろ重要なのは、見つかった火の痕跡に関する物的証拠の方になるよ。火の痕跡とは、正確には「火にあぶられて加熱された痕跡のある骨」という物的証拠を指すよね。ただしこれはホモ・エレクトスが食べていた動物の残骸ではなく、「メンフクロウ (Tyto alba)」が食べていた動物の残骸だと考えられるのよ。
メンフクロウは、他の鳥類と同じように、骨などの消化できない物質を「ペリット」として吐き出すよ。ワンダーワーク洞窟には、かなりの長期間にわたってメンフクロウが生息していた痕跡があり、メンフクロウが吐き出したペリットが大量に溜まっているのよね。そしてこのペリットには、加熱された痕跡があるのよ。
どう頑張っても、メンフクロウはペリットを燃やすことはできないし、する理由もないのよね。一方で人類にとっては、消化できない毛・羽・組織などが含まれているペリットは、燃焼を促進する燃料として使えることから、使うメリットがあるのよ。
メンフクロウが洞窟の中でペリットを吐き出し、それが洞窟の中に溜まっているとなれば、人類はわざわざペリットを外から持ち運ぶ必要もないよね? こういう人類とは無関係の要因で存在する自然物は、人為的な影響を受けないという点で、考古学における強力な証拠として生きてくるのよね。
ただ、「加熱された骨は本当にメンフクロウのペリットなのか?」「というか本当に骨は加熱されているのか?」という疑問に答えるには、人類が食べるにしては小さすぎる小動物 (体重1kg未満の動物) の骨であることを特定する必要があるのよね。今回、その疑問にも答える分析が行われたのよね。
Marin-Monfort氏らは、骨が本当に加熱されており、なおかつ人類が食べるには小さすぎる小動物の骨であることを証明するための分析を行ったのよね。使ったのは「FTIR (フーリエ変換赤外分光法)」と、「ALS (代替光源) システム」という2つの手法になるよ。
このうちのFTIRについては、従来から考古学の現場では出てきているのよね。簡単に言えばこの方法は、調べたいサンプルに赤外線を照射し、吸収・反射された赤外線の波長を調べることで、どんな分子が含まれているのかを分析し、そこから逆算で「炎で焼かれた以外に考えにくい加熱の痕跡」を見つけるのよね。
FTIRが便利なのは、目で見ただけでは焼けているようにも見える骨を区別でき、しかも化石を壊さずに判定できる点になるよ。例えば、見た目は真っ黒で焼け焦げているように見える骨も、実際には骨の表面に黒い物質 (マンガン酸化物) がくっついているだけという場合もあるので、これを見分けることができるのよね。
一方で、FTIRは分子の種類を調べる方法であるがために、他の要因で分子の種類が変化すると、正しく評価ができない恐れが指摘されていたのよね。特に、小動物のような細い骨に対して、堆積物の中の反応でフッ素がくっついてしまうと、焼けている骨を“焼けていない”と誤判定する恐れが指摘されていたのよ[注2]。
このためMarin-Monfort氏らは、FTIRと並行する形でALSによる判定を行ったのよね。こちらも簡単に言うと、とても波長の短い青色の光 (455nm) を照射し、蛍光すれば焼けた骨、蛍光しなければ焼けてない骨だと判定する手法になるのよ。FTIRに代わる方法は化石を壊してしまうのに対し、ALSは壊さずに鑑定できるのよね。
また、この手法を使うと、フッ素化した骨でも弱い蛍光をするので、FTIRでは見逃されてしまう焼けた骨を判定することができるのよね。今回の調査でも、予想通りフッ素化した骨であるがために、FTIRの段階では見逃されてしまった焼けた骨を見つけることに成功したのよね。
このような手法の組み合わせといくつかの観点から、Marin-Monfort氏らは、107万年前から179万年前の地層に眠る数百個のペリットの中から、焼けたことを示す数十個のペリットを見つけることに成功したのよ。これが、人類における最古の火の使用の物的証拠となったわけ。
今回見つかった焼けた骨が、人類によって意図的に、火によって加熱されたという点については、他の観点からも証明されるよ。まず、火の痕跡が見つかったのは洞窟の入り口から30mほど奥まった場所。こんな奥地にまで自然の火災が入り込むのが考えにくいというのが、大きな理由の1つになるのよね。
次に、火の痕跡はペリットとその周辺部という、局所的な部分にだけ見つかった点が重要になるよ。もしも自然の火災が洞窟に入り込んだとしたら、面的に焼けてしまうはずだからね。今回見つかった火の痕跡は点在しているので、これも自然の火災である可能性を否定するよ。
さらに、洞窟内で自然に火が付くとすると、鳥やコウモリの糞 (グアノ) が自然発火する現象が考えられるけど、今回の堆積物からはそのような痕跡も見つからなかったよ。これらを合わせると、ペレットは自然に焼けたのではなく、人類が意図的に火をつけたと考えるのが、最も自然な考えとなるのよね。
なおMarin-Monfort氏らは、今回見つかった火の痕跡は、恐らくは火起こしをしたものではなく、自然の火から拝借したものだと考えているのよね。ただしそれでも、ペレットという燃料を使うなど、できるだけ火を維持する努力をしたのだろうと推測しているのよ。
人類史における火の重要性を考えると、今回の人類史上最古の火の使用の痕跡の発見は、考古学の研究においてとても重要なのよね。また今回使われた研究手法を他の場所で使うことで、その場所における見逃されてきた火の使用の痕跡が見つかるかもしれないと、Marin-Monfort氏らは期待しているのよ。
[注1] ホモ・エレクトス
およそ200万年前から10万年前までいたとされる初期人類の1種。ホモ・エレクトスの一部の集団は、ホモ・ハイデルベルゲンシスの祖先であると考えられています。ホモ・ハイデルベルゲンシスは現生人類、ネアンデルタール人、デニソワ人との共通祖先とのつながりもあることから、人類史において重要な立ち位置にあります。比較的有名なホモ・エレクトスはジャワ原人、北京原人、ホモ・エルガステル (個体名トゥルカナ・ボーイ) など。 本文に戻る
[注2] FTIRによるフッ素化した骨の誤判定
537℃以上に加熱された骨には、分子の末端に水酸基 (-OH) が多く付着するため、FTIRで調べるとその痕跡が見つかります。ところが、地層内での化学反応で水酸基がフッ素に置き換わると、見た目上数が少なくなるため、FTIRでは焼けた骨と判定されないということが起こり得ます。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<参考文献>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)