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マンホールやタンク、ピット内は空間の閉鎖性により内部での作業に危険が伴います。このような閉鎖空間では液体や気体が滞留しやすく、作業者が長時間作業することを想定されていないため、酸素欠乏症や有毒ガス中毒、ガス爆発が比較的起こりやすい作業環境であることが分かっています。実際に、閉鎖空間では酸素欠乏症や硫化水素中毒を中心として、気体が原因による事故が多数発生していることが確認されています。作業員の安全を確保するため、ガス濃度などの環境測定が「労働安全衛生法」によって義務づけられています。
詳しくはこちら:酸素欠乏症の注意すべき時期や業界は?対策方法までを詳しく解説!
閉鎖空間での事故を防ぐためには、作業準備が重要です。作業環境や作業内容について十分な情報収集を行い、作業前のガス濃度測定をはじめとした適切な安全施工計画を立てる必要があります。そこで、適切なガス検知を行うために、ガスが発生する環境や目的に合わせたガス検知器を選定しなければなりません。ガス検知器は機種によって測定できるガスの種類が異なるだけでなく、ガスの採気方法に基づいて使用方法などが異なります。
本記事では、ガス検知器の採気方法の違いに注目し、従来とは異なる閉鎖空間の作業安全管理に最適なガスモニタリング製品をご紹介いたします。
最適なガス検知器を選定するための一つの指標として、ガスの採気方法(「サンプリング方式」という場合もあります)があります。採気方法には、大きく分けて「吸引式」と「拡散式」の2種類があります。これらの違いは、ポンプ吸引により採集したガスを検知するのが「吸引式」であるのに対して、漏洩したガスが検知器のセンサ部に接触することで検知する方式が「拡散式」となります。
一般的に、閉鎖空間で作業を行う場合、作業者は入坑する前に「吸引式」のガス検知器で事前点検を行うことが主流となっています。
採集チューブや採集棒を使うことで離れた場所のガスを検知できる「吸引式」は、広さや深さが様々な閉鎖空間の危険の有無を確認するのに適しており、作業者の安全を確保しながらガス検知を行うことができます。
環境測定や送風機の設置により閉鎖空間内におけるガス濃度の安全性が確保された後は、作業員各自が「拡散式」のガス検知器を携帯することが推奨されています。閉鎖空間などの狭小空間では局所的に有毒ガスの滞留、あるいは、酸欠雰囲気の可能性があります。この場合、個人装着型(携帯型)タイプの「拡散式」ガス検知器により、作業者の周囲におけるガス検知が重要になります。口などの呼吸器に近い位置でガス検知を行えば、より厳密に作業者の安全性を確保することができます。
閉鎖空間における作業前の「吸引式」でのガス検知は、上記のようなメリットもある中で、実は様々な課題を抱えています。
例えば、マンホールやタンク内では深さがあるため、底に滞留物がある可能性のある場所でガス検知を行わなければなりません。このような環境でガスを採集する際は、浸水を防ぐための浮子式ガス採集器を別途用意してガス検知を行います。しかし、底に溜まっている水分、有害な液体やごみなどを誤って吸引してしまうリスクがあり、誤吸引した物質はガス検知器本体まで上がってきてしまいます。つまり、ガスの導入管に異物が混入すると、ガス検知器の様々なパーツの劣化や破損、故障につながる可能性が高まります。吸引式ガス検知器の誤吸引によって、ガス以外の要因での検知精度の低下や高頻度なメンテナンス要求が、閉鎖空間におけるガス検知の課題となっています。
ガス検知警報器の専門メーカーである理研計器においても、吸引式のガス検知器を取り扱ってきました。閉鎖空間における有害ガス検知器といえば、吸引式による「GX-110B」や「GX-2000」という製品が業界の中で1つの代表機種として存在していました。
しかし、上述したように吸引式での検知では、誤吸引による検知精度の低下、また、拡散式では、浸水によるガスセンサの損傷という閉鎖空間におけるガス濃度の測定運用に対して、それぞれの課題がありました。
これらの従来の運用課題に対して「拡散式」による新しいガス濃度測定ソリューションが存在しています。理研計器の有害ガス検知器「GX-2100」は、閉鎖空間における作業前のガス検知に最適な製品としてご提案しています。
本製品は、拡散式ガス検知部を直接閉鎖空間内に垂らし、コードを介して地上の本体部分で測定したガス濃度のデータを表示します。ガス検知部が堆積物に触れてしまってもセンサが劣化しないように、新機構による防水性の向上を実現しました。拡散式のセンサ部分を防水性能にし、先端部分に浮き(バランサー)を搭載することで、ガスセンサ部の水没を防ぐ設計です。吸引式による誤吸引のリスクがなくなることでメンテナンス性が向上するだけでなく、検知精度の低下を軽減し、吸引によるタイムラグも無くなり応答速度の向上を実現しました。外部警報機も一体型の検知部のため、効率よくガス検知作業を実施することができます。
閉鎖空間をはじめ、ガス検知器は産業用保安機器として幅広い業界で活躍しており、日々技術的進歩の道を歩んでいます。近年、建設業界で注目されている「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の取組について簡単にご紹介します。
「i-Construction」は、国土交通省が推進しているICTを全面的に建設業界に導入することで生産性の向上を図る取り組みです。例えば、取り組みの1つとして掲げられているデータ連携のオートメーション化は、現場データの活用による書類削減・管理の高速化、検査の効率化を図ることが可能とされています。
有害ガス検知器GX-2100は、Bluetooth通信を搭載した仕様をラインアップしているため、このようなDX化に貢献する可能性も期待されます。測定したガス濃度のデータを作業現場で使用している通信プラットフォームに連携、保存する等、また、現場でリアルタイムにガス濃度を測定し、その場で安全確認をするだけでなく、遠隔での操作や蓄積されたデータ分析による更なる効率化と作業安全性の向上などが期待できます。
※有害ガス検知器GX-2100は、データロガ機能により測定結果や警報発報の履歴を本体の表示部(ユーザーモード)で確認できます。ただし、お客様のプラットフォームに記録・保存する場合はシステムの構築が別途必要となる場合がございます。