【動画あり】金も溶かす王水で、アクセサリーの金を純金にする!

2022.11.24

 

皆さんこんにちは。市岡元気です。
今回は早速、実験動画作りの背景や、動画では伝えられなかった事について書いていきます。
今回取り上げる動画はこちら


大量の金の指輪を王水に溶かして純金の再生ボタン作成!【錬金術】

 

手がけようと思ったきっかけ

こちらの動画を手掛けようと思った理由は、ズバリSNSでのバズりやすさでした。上の動画は2020年12月に投稿したものですが、当時YouTubeで流行っていたワードのひとつに「王水」がありました。
「王水」は科学好きであれば誰もが聞いたことがあるワードだと思いますが、誰でも聞いたことがある=S N Sでバズりやすい という事です。やはり誰も聞いたことがないワードだと興味を持てずに見逃してしまいますが、聞いたことがある単語だと少しは興味を持ちます。
更に、瑛人さんというアーティストが出した『香水』という音楽のP Vのパロディの『王水』がYouTuberの「はなおでんがん」さんのチャンネルで公開され、話題となっていました。


王水 / 『香水』 替え歌 【パロディMVあり】

その後も予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」(通称ヨビノリ)さんのチャンネルでも


王水が金を溶かす理由

という動画が投稿され、王水に沢山の方の興味が集まっている時でもありました。

金が溶ける化学反応式

HNO3 + 3HCl → NOCl + Cl2 + 2H2O
Au + NOCl + Cl2 + HCl → H[AuCl4] + NO

NOCl:塩化ニトロシル 電気陰性度の大きな窒素、酸素、塩素の原子で構成された無機化合物のため非常に強い酸化力を持つ。

金はただのイオンAu3+であった場合には不安定であるが、それが塩化ニトロシルと作用し、[AuCl4]-(テトラクロリド金(Ⅲ)酸イオン)という錯イオンとなることにより安定化する。生成物はH[AuCl4](テトラクロリド金(Ⅲ)酸)

という原理。何度聞いても理解が難しいですが詳しくはヨビノリさんのチャンネルをみてもらえればと思います。(笑)

実際に「金塊」で試してみた

とはいえ、金をも溶かす「王水」という酸は『聞いたことがあるけど実際に見たことがない』という方がほとんどだと思います。確かに私自身も「王水」については聞いたことがあったけれど、作ったことも見たこともないと思いました。

さらにYouTubeを検索しても「王水」で「金」を溶かす動画はほんの少し「金箔」を溶かすだけにとどまっていました。いつか大量に金を溶かしてみたい。そんな映像を沢山の方に届けたいと思い、順番に実験を展開していきました。

まず初めにあげた動画は


メルカリで大量出品されていた『金塊』を王水、硝酸、塩酸に漬けてみた結果・・・

という検証動画でした。
メルカリにかなり破格の値段で怪しげな金塊が大量に出品されており、それを購入して削ったり分析したり薬品につけて、本物の金かどうか確かめる・・・という企画をやってみたのですが、元素分析装置にかけた結果、案の定これは金ではなく、銅と亜鉛の合金「黄銅」だったという結果でした。
そのため、硝酸で溶けてしまいました。その様子を別の動画にしたのが以下のものです。

メルカリで買った『金塊』切断して硝酸につけたら茶色い煙が・・・

 

「王水」の出番はありませんでした。

続いて撮影したのが以下の動画です。


【凄い!】中国アリババの金インゴットを酸に溶かしたら意外すぎる結果に!

アリババで購入した金のインゴットがあり、これも5枚で1,500円くらいという破格だったので、絶対また黄銅であろうと思い「硝酸」につけたところ、なんと「金」だけが溶け残りました。ほんの少しでもやはり「金」は硝酸に溶けずに、しっかり残るということが分かりました。

このタイミングで「金」が手に入ったのでそれを「王水」につけてもよかったのですが、この少量では他の『金箔を王水に溶かす動画』と変わらないと思い、まだ王水は使いませんでした。

 

ついに「王水」の登場

そしていよいよ「王水」の出番ということで、冒頭でも紹介したこちらの動画を投稿しました。


大量の金の指輪を王水に溶かして純金の再生ボタン作成!

こちらの動画のおおまかな手順を説明します。

・沢山の視聴者の方からいらなくなった金のアクセサリーを買取

1000℃以上の高温にして溶かす

・薬品を使い精錬

・一度王水に溶かし金だけを選択的抽出

・精錬したものをバーナーで溶かしインゴットにする

ここで最後実はただの金の塊(インゴット)にする予定だったのですが、溶かした金をカーボンの型に流し込む直前に「YouTuber100万人登録者が達成できた時にもらえる『金の再生ボタン』を作ったら面白いのでは」と思いつき、その場でいろいろ考え再生ボタンの形に成形して、この動画になりました。それが功を奏したのか90万回以上再生される動画になりました。

この記事は、科学が好きな方が沢山見てくださっていると思いますので、この動画の手順を詳細に公開いたします。

再精錬の過程

  • ①金のアクセサリーに銅を混ぜ電気溶鉱炉に入れて溶かした後、水に入れて急冷しK6ほどの純度の金の粒にした。

  • 金純度が高いと金に包まれた他の金属が硝酸に溶けるのを妨げてしまうためまず純度を落としました。ちなみにKとはカラット(Karat)の略。ダイヤモンドの重さの「carat」とは意味が違います。金がどのくらい含まれているのかを表します。日本では24分率で表すのでK6の場合は25%の純金と金以外の混合物が75%で構成されていることを示しています。K24が純度100%の金。K18は純度75%の金です。

  • ②K6の粒に濃硝酸を注ぎ銅を溶かした。

・化学反応式
 Cu + 4HNO3 → Cu(NO3)2 + 2NO2 + 2H2O

この化学反応は遅いので、加熱をしました。


  • ③残っている金属塩を取り除くために沸騰した蒸留水で洗浄した。金属塩は水に溶けるため、これを3回繰り返し。

  • ④体積比で濃塩酸3と濃硝酸1の割合で溶液を注ぎ王水を作成し溶かした。

  • ⑤一晩放置。

  • ⑥まだ溶け残っている可能性のある塩化銀を溶かすために、王水と等量の水を加えた。

  • ⑦さらに存在する確率のある鉛を溶かすために、少量の硫酸を加えた。

  • ⑧ろ紙で溶液をろ過した。

  • ⑨ピロ亜硫酸カリウムK2S2O5120g200mlの蒸留水に溶かした水溶液を王水と等量くらい加えた。(ピロ亜硫酸ナトリウムでも可能)

ピロ亜硫酸カリウムが金のみを還元することで茶色の沈殿ができた。

☆このとき二酸化硫黄を生じるので、安全には十分留意する。

・化学反応式
 4HAuCl4 + 3K2S2O5 + 9H2O → 4Au + 16HCl + 6KHSO4

その後放置

  • ⑩上澄みの溶液を捨てて沈殿物を回収した。

  • ⑪沸騰した蒸留水で4回洗浄。

  • ⑫沸騰した塩酸で複数回洗浄(上澄みに色がつかなくなるまで)。

  • ⑬沸騰した蒸留水で2回洗浄。


⑪~⑬
の工程は金以外の余計な物質を取り除くために行いました。

(この工程を行わなくても十分綺麗ですが、もっと純粋で綺麗な金を手に入れたい場合はこの工程を行う、とされておりそれに従いました。実際にこの工程の前後では綺麗さに違いがありました。)

  • ⑭ホットプレートで加熱して、水気を飛ばす

  • ⑮回収できた茶色い粉を黒鉛るつぼで加熱。加熱する前に、加熱皿に金がくっついてしまうのを防ぐためにホウ砂をまぶし、加熱した。


⑯その後金を加熱して、大きな一つの塊にした。

と、先ほども書きましたが、最後に溶かして一体化している時に急に思いついてしまったのです。これをただのインゴットより再生ボタンにしたほうが面白いのでは。
そこで急いで炭素板を三角に切断し、再生ボタンの▶︎を作成し、インゴットに刻印しました。

ということでいろいろ作業を繰り返し、54gの純金、当時の価格で言えば約38万円の金を精錬することができました。

その後、その「純金の再生ボタン」を叩いて金の板にした後レーザー刻印を行い、「純金の名刺」に変え、金を買取していただいた東洋ルースさんにお返しし、その様子をこちらの動画で公開しました。

こちらの動画では金属の性質である「延性」「展性」「伝導性」についてお伝えしています。

 

今後の「金」動画の展望

そして今進めている実験は、携帯電話を20台、PCC P Uを300個ほど集め、硝酸に溶かして金を取り出し、「王水」に溶かし純金を精錬できるか、というものです。

最終的にはそれを使い金メッキをして金メダルを作ろう・・・とオリンピック前からやっていたのですがうまく精錬できず、遅れに遅れ来年の頭には投稿できるかもと言った状態です。 

やはり金は沢山の方の興味を引く話題なのでこれからもいろいろとチャレンジしていこうと思います。

面白そうな話題があればメール([email protected])や各種S N Sもやっていますので、気軽にご連絡いただければ幸いです。

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市岡 元気

2019年、YouTubeチャンネル「GENKI LABO」を本格始動。現在登録者数30万人超。同年、株式会社GENKI LABO設立と同時にCEOに就任。数々のサイエンスライブ、実験教室を全国各地で開催。

【主な活動場所】 Twitterはこちら  youtubeはこちら ご依頼は[email protected]まで。

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