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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、「希土類元素 (レアアース)」と親和性の高いタンパク質のお話だよ。希土類元素は“産業のビタミン”と呼ばれるほど存在が重要な元素なんだけど、採掘や製錬で強い環境負荷をかけていることから、環境負荷の少ないリサイクル方法が模索されているんだよね。
有力候補の1つとして、細菌由来のタンパク質で、希土類元素の大部分と結合しやすい「ランモジュリン」を使うことが検討されており、今回の研究は性能面の探索をしていたのよね。ところがその研究中、うっかりミスで逆向きのアミノ酸配列で合成した短鎖タンパク質 (ペプチド) が、本来の配列より高性能なことを偶然見つけたのよ!
今回の発見は典型的なセレンディピティの1つだけど、逆向きの配列をヒントに更なる改良の糸口にもなったことから、これは実用化に一定の弾みをつける研究としても注目されるのよ!
なお、今回紹介する研究論文は、「希土類元素が、生命誕生に関連しているかもしれない化学反応に関わっている可能性」を示した研究論文と同時にAngewandte Chemie国際版に掲載・紹介されているのよね。こちらの解説記事は下記の通り、株式会社soraeのメディア『sorae』に掲載されているので、是非併せて読んでみてね。
希土類元素(レアアース)はクエン酸回路と似た反応を促進する 生命誕生にも関与?
CONTENTS
「希土類元素」とは、お互いに似た性質を持つ17種類の元素の総称で、軽い順にスカンジウム (Sc) 、イットリウム (Y) 、ランタン (La) 、セリウム (Ce) 、プラセオジム (Pr) 、ネオジム (Nd) 、プロメチウム (Pm) 、サマリウム (Sm) 、ユウロピウム (Eu) 、ガドリニウム (Gd) 、テルビウム (Tb) 、ジスプロシウム (Dy) 、ホルミウム (Ho) 、エルビウム (Er) 、ツリウム (Tm) 、イッテルビウム (Yb) 、ルテチウム (Lu) になるよ。
また、スカンジウムとイットリウムを除いた、ランタンからルテチウムまでの15種類の元素は、希土類元素の中でもさらにお互いに性質が似ているので、これらの総称として「ランタノイド」と呼んでいるのよね。厳密には誤用なんだけど、希土類元素の意味でランタノイドと呼ばれることも時々あるよ。

図2: 希土類元素は使用量こそ少ないけど、他に変えることができないものが多いことから“産業のビタミン”とも呼ばれているのよね。その利用は増え続けており、スマートフォンだけで全世界の希土類元素消費量の8%を占めるまでになっているよ! (イラストはいらすとやより使用)
希土類元素は、1つの用途で大量に使うことはあまりないんだけど[注1]、微量ながら欠かすことができない用途に使われるのよね。使用量は少ないけど必須であること、どの方向の用途も産業的に重要なことから、“産業のビタミン”と喩えられることもあるよ。
ネオジム磁石のように元素名そのままが使われているのを始めとして、LEDの発色、強力なレーザー、光学機器向けの透明ガラス、高温超伝導体など、様々な用途があるよ。家電製品もかなりの量を使っていて、スマートフォンだけで全世界の希土類元素消費の8%を占めていると言われているくらいよ。
現代社会を支える上で希土類元素は欠かすことができないんだけど、この採掘には問題を抱えているんだよね。実は、希土類元素は“希”と書いているけど、地殻濃度としては銅や亜鉛と同じくらいであまり“希”じゃない。んだけど2つの理由でその希少性が高まっており、同時に厄介な問題を引き起こしているのよね。
まず、希土類元素は特定の鉱物に濃集していることがあまりないので、岩石の中に薄い濃度で含まれていることがほとんどなのよね。このため希土類元素の採掘では、銅や亜鉛などと比べると大量の鉱石を採掘し、化学的に処理、製錬する必要があるのよね。
さらに、希土類元素は希土類元素同士でかなり似た化学的性質を持っているので、それぞれを分離する作業も大変なのよね。希土類元素はそれぞれが異なる用途を持ち、代替することが不可能な用途も多数あることから、この作業は必須なんだけど、これにより採掘・製錬に加えて追加の負荷をかけることになるよ。
このような背景から、希土類元素の鉱石鉱物を採掘・製錬する現場では、有害なフッ化水素や硫酸などを含んだ廃棄物が大量に出てくるのよね。おまけに、放射性元素であるウランやトリウムも鉱石鉱物の中に含まれているので[注2]、これらも一緒に廃棄物として出てくるのよ。
こういう事情があることから、希土類元素の生産では環境負荷を抑えるために莫大なコストをかけるのか、それとも環境負荷を無視するか、という選択を迫られていて、現状では後者の方に偏っているのよね。世界の希土類元素の9割前後を中華人民共和国が生産しているのは、他国ではコストがかかりすぎる背景もあるからなのよ。
中華人民共和国が希土類元素の生産の大部分を担っている点は、直近でも地政学的リスクとしてニュースになったけど、これは裏を返すと、他国に環境負荷を押し付けているという面もあるということ。決して見過ごしてはならない問題なのよね。
こうした背景があるため、希土類元素を製錬やリサイクルする際に必要な化学反応を改善し、環境負荷を下げる研究が進められているよ。リサイクルについては以前、卵の殻を使うことでリサイクルする研究を取り上げたこともあるのよね。
「卵の殻」を使って貴重な「希土類元素」を簡単に回収できる!?

図4: 2018年に発見されたばかりの「ランモジュリン」というタンパク質は、希土類元素の大部分を占めるランタノイドの親和性が高いので、環境負荷の少ない希土類元素回収方法として注目されているよ。 (画像引用元番号② / いらすとやよりイラストを使用)
これとは別に、細菌が作る「ランモジュリン (LanM; Lanmodulin)」というタンパク質を使うアプローチの研究も盛んなんだよね。2018年に発見されたこのタンパク質は、希土類元素の大部分を占めるランタノイドとの親和性が高くて、他の金属元素と比べて1億倍もランタノイドに結合しやすいという性質があるのよ!
ランモジュリンを作る細菌は何種類か見つかっていて、現在では天然そのままのランモジュリンを使うことはもちろん、少し改造することでより性能を高める研究も行われているのよね。タンパク質は細菌が作ってくれるので、環境負荷はぐんと少ないという利点があるのよ。
今回研究を行った、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのSophie M. Gutenthaler-Tietze氏などの研究チームも、「メチロルブルム・エクストルクエンス (Methylorubrum extorquens)」という、土壌に普通にいる細菌が作るランモジュリンに関する研究を行っていたのよね。
より正確に言うと、この研究ではランモジュリンそのものというより、ランモジュリンの中でランタノイドと結合する部分である短鎖タンパク質 (ペプチド) を研究していたのよね。ランタノイド回収という点ではこの部分が一番大事だし、ペプチドは少ない数のアミノ酸でできているので人工合成もさほど難しくないのよね。
図5: 今回の研究では、ランモジュリンが希土類元素と結合するために必要な短鎖タンパク質を合成しようとしたよ。ところがうっかりミスが原因で、アミノ酸配列を逆にして合成しちゃったんだよね。 (画像引用元番号③)
ところが今回の研究中に、Gutenthaler-Tietze氏らはうっかりミスをしちゃったのよね。ペプチドはタンパク質と同じく、アミノ酸の並ぶ順番が機能を決定するのに重要なんだけど、うっかり本来とは逆の順番でアミノ酸を並べる合成をしちゃったのよね。当然ながらこれは、野生のランモジュリンとは逆の配列になるよ。
ただ、ミスとは言え合成しちゃったもんはしちゃったし、どうせなら実験しちゃおうということで、今回合成した逆配列のペプチド4種類の性能を、本来の配列のペプチドと共に比較してみたんだよね。

図6: 逆順のペプチドの性能を調べてみたら、元の配列より1桁アップしていることが分かったよ!さらに性能がアップする理由が分かったことから、少しの改造でさらに性能がアップするきっかけも見つかったよ! (画像引用元番号①)
その結果驚きなことに、逆配列となっているペプチドは、本来の配列のペプチドと比較して1桁親和性が高いということが分かったのよ。つまり、逆配列のペプチドは本来の配列よりもランタノイドと結合しやすいということが分かったんだよね!並べる順番を逆にすれば性質が変わるのは普通だけど、向上するというのが珍しいのよね!
分析により、この性質の変化はアミノ酸の配列が逆の順序だからこそ起きることが理論的な面からも分かったのよね。さらに、個々のアミノ酸がどのようにランタノイドの結合に関与するのか、その詳細も見えてきたのよ!これは普通の配列と逆の配列との比較という、普通ならやらない比較で初めて分かった部分もあるのよ!
そこでGutenthaler-Tietze氏らは、さらに改良を加えてみたよ。特に性能が高かったものについて、1ヶ所だけアミノ酸を変更すればランタノイドとの親和性がさらに高まるだろうと、改良バージョン (EF4-Rmod) を合成してみたのよ。
するとその結果、ランタノイドとの親和性が150nMという高い値になったのよね。数字だけではピンと来ないと思うけど、これはタンパク質やその関連物質でランタノイドを回収する試みでは、飛びぬけて高い数値となってくるのよ!
今回の研究は、うっかりミスをミスのままとせず、とりあえず分析にかけたことによって思わぬ発見に繋がったのよね。このような偶然を生かして思わぬ発見をすることは「セレンディピティ」と呼ばれているけど、今回の事例はまさにセレンディピティの事例の1つだね!
もちろん、今回の研究は単なる偶然の面白さに留まらず、現状では問題だらけの希土類元素の課題を解決するかもしれない、という点で注目されるんだよね。ランモジュリンを使った希土類元素の回収はまだまだ発展途上だけど、実用化に向けた大きな弾みとなる発見が得られたわけだからね。
ちなみに冒頭でも話した通り、この研究は希土類元素に関するもう1つの研究とセットで発表されているよ。そちらは記事の冒頭にある通り、株式会社soraeのメディア『sorae』にて掲載しているのよ!ぜひそちらも読んでね!
[注1] 希土類元素の大量使用
希土類元素の中でも資源量が比較的豊富なセリウムは、摩擦すると容易に発火する合金や、石油精製・排気ガス処理用の触媒として、製品全体に対する割合が大きい形で使用されます。 本文に戻る
[注2] 希土類元素とウランやトリウムとの関係
ウランやトリウムは、希土類元素を含む鉱物の中に含まれていることが珍しくありませんが、これはお互いに性質が似ているためです。ウランやトリウムはアクチノイドと呼ばれる元素のグループに属しますが、これはランタノイドと同じようなグループであり、お互いに性質が似ています。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<関連研究>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)