カスタムであらゆる環境に対応! 複数ガスのモニタリングに最適なRTGMS-応用編

2025.03.19

前記事のおさらい

 理研計器は1939年創業の、豊富な経験と実績を誇るガス検知警報機器の専門メーカーです。前記事では、理研計器が提案する新システム、「RTGMS(Real-Time Gas Monitoring System)」の全体像と、新システムの強みについてご紹介いたしました。 RTGMSは、独自に開発した防爆型熱量計OHC-800型を中心としたガスモニタリングシステムにより、雑ガスの影響を受けない高い精度で、様々な制約環境下における複数成分のリアルタイム測定を実現させました。この独自の防爆型熱量計によりコスト面でも、従来の一般的な分析機器よりも安価な導入を可能とし、高い耐久性という点で、パーツ交換などメンテナンスのコスト削減も期待できます。


 本記事では、柔軟にカスタム可能なRTGMSのシステム構成に着目し、各現場に最適なリアルタイムガスモニタリングを実現させている高いパフォーマンス性について見ていきます。

現場環境で高度なパフォーマンスを実現可能にする「カスタム方式」

 RTGMSは、理研計器の高い技術力に裏打ちされたセンサの開発、検量線のカスタムや前処理システムのように、「カスタムできるシステム」である点が魅力です。的確なガス濃度の測定をおこなうためには、測定するガスの種類、圧力、温湿度、お客様の設備環境など様々な条件を鑑みたガスサンプリング仕様をご提案する必要があります。そのために、諸条件を綿密に把握し、必要に応じてカスタムを施すことで、ガスクロマトグラフに匹敵する測定精度の高さと、高速応答で連続的に混合ガス中のガス成分を成分ごとに切り分けて測定する技術を確立しました。さらに、カスタム力だけでなく、ガスモニタリングシステムのご提案から導入後のアフターサービスまで、ワンストップサービスをご提供することにより、高品質で簡便なガスモニタリングをご提供しています。このカスタムという特長を活かした、実際のRTGMS導入の流れを見てみましょう。

  1. ヒアリングと調査
     検知するガスの特性や設置環境まで、確かな技術力と豊富な経験のある専門スタッフがお客様のご要望をお聞きいたします。的確なガスモニタリングには検知器の性能だけでなく、モニタリングする環境を最適化することが重要です。理研計器の豊富な実績から得られたノウハウを活かし、ガスのサンプリング条件(想定されるガスの組成、組合せ・変動幅、温度、湿度、ダスト、ミスト、圧力、配管距離等)から機器のアタッチメント、ガスサンプリング後の処理まで、綿密なヒアリングと調査を行います。
  2. 最適なガス測定ソリューションを実現する独自のカスタム技術
     RTGMSでは、お客様のご要望に合わせて複数のガスセンシング技術を組み合わせるこ
    とで、最適なガス測定ソリューション(システム構成)をご提案し、ご提供しております。たとえば、ガスセンシングの基盤となる検量線のカスタムでは、ご指定頂いた混合ガスの混合率を大きく変化させても指示値が正確に追従するような検量線や、お客様にご要求頂いた測定範囲の設定、特に高精度で見たい領域の検討など、様々なご要求にお答えできます。
     また、現場の制約環境(温湿度・ダスト・ミスト・圧力)にあわせてカスタムした、湿度調整・ダスト除去・圧力調整などの前処理システムの設計・製作も行っております。これらは、先述したヒアリング情報をもとに、模擬的に混合率を変化させた混合ガスを何種類も作成するなど、数々の実験を重ねることで様々な現場の需要に合わせたガスモニタリングを実現可能な独自のカスタム技術を要しています。

  3. アフターサービス
     理研計器ではお客様の点検管理をサポートするため、全国35か所にサービス拠点、社員フィールドエンジニア500名以上を配置しております。全国のサービス拠点では、定期点検のプランニング・施工内容のご案内や、緊急時には即応で現地訪問が可能な保守サービス体制をご提供しています。RTGMSの点検作業においては、コア技術である防爆型熱量計OHC-800型のメンテナンスが伴うため、数多くいるフィールドエンジニアの中でも、熱量計の取り扱いに熟知した上級スタッフが機器の点検を行います。また、タブレット端末による保守・点検業務支援システムへの電子入力により、点検記録の管理、環境負荷を意識した作業報告書・点検成績表の電子化に取組むと共に、品質向上へ向けたデータ活用および点検作業の効率化に務めております。

メタネーションプラントへの導入事例

 RTGMSのカスタム方式により現場に最適化されたガスモニタリングを実現させた例として、メタネーションプラントへの納入実績がございます。メタネーションは前記事で取り挙げた通り、燃料である合成メタンを発電所や工場などから回収される二酸化炭素を原料に製造するカーボンリサイクル技術です。メタネーションで生成される合成メタンは、カーボンニュートラルを実現させる次世代エネルギーとして、メタン生成効率やコスト面など様々な課題を抱えていました。これらの課題に対して、RTGMSがどのようにメタネーションプラントの現場で最適なソリューションとして採用されたのかを見てみましょう。

  1. メタネーションで求められる精緻なガスモニタリング
     メタネーションプラントは、生成された合成メタンを最終的に都市ガスとして供給する場合において、その品質に直結する合成メタンの性状を正確にモニタリングする必要があります。そのためには、原料である二酸化炭素(CO₂)と水素(H₂)、生成物であるメタン(CH4)の3つのガスの濃度測定が必要です。メタネーション装置の運転フローによっては、スタートアップ時に装置内の空気を窒素(N₂)に置換する工程があります。この場合、プラントの適切な運転条件の維持のためにはCO₂、H₂、CH4、N₂の4種の混合ガス中でそれぞれのガス成分の切り分けを行う必要があります。

  2. ガスモニタリングにおける従来の課題
     従来のメタネーションにおけるガスモニタリングでは、ガクロマトグラフィー(GC)が用いられてきました。GCは混合試料の定性・定量分析手法のなかで最もポピュラーなもののひとつで、気化させた試料をカラム内でキャリアガスにより分離することで、多成分を同時に測定することができます。分析値の再現性にも優れているため、その精度の高さからメタネーションの実証試験の段階ではガス濃度測定の手法として用いられてきました。
     GCの難点として、計測の即時性が低く、連続的にモニタリングできないことや、防爆性がないため配管内など現場に設置できないという問題点があります。また、試料サンプルを随時配管から採取し、分析室のGCで濃度測定を行うというかたちは作業効率面でも課題となります。

  3. RTGMSによる新しいソリューション

     メタネーション用にカスタムしたRTGMSのシステム構成は、OHC-800+SD-3DRI+PLCの仕様です。高い精度、且つリアルタイムな計測が可能な防爆型熱量計OHC-800型により、適切なプラント運転条件の維持と合成メタンの品質管理を行うことができます。従来の分析計では、窒素(N₂)や水素(H₂)のようなセンシングしにくい2原子分子が存在する雰囲気下においても、複数のガスを正確にモニタリングできることが大きな利点です。OHC-800型とCO2濃度を測定できるSD-3DRI型を組み合わせたコンビネーションシステムのご提案により、メタネーションプラントでモニタリングが必要な4種のガスを同時、且つ連続分析できる仕様を実現しました。

  4. 導入後の評価

    表:ガスクロマトグラフィーとRTGMSにおける簡易比較


     ガスクロマトグラフィーよりも安価で、混合ガス中の各成分のガス濃度をリアルタイムに算出できる点で、お客様からRTGMSを高く評価いただいております。理研計器のワンストップサービスによる納期の早さにも評価をいただき、国内のメタネーションプラントでRTGMSが多く採用されています。

その他のアプリケーション

 高いカスタム性により、RTGMSはインフラ業界、化学業界、製鉄業界など、幅広い分野でのアプリケーションのカスタマイズが可能です。メタネーションに並ぶ次世代エネルギー開発として、アンモニア利活用におけるRTGMSのアプリケーションをご紹介いたします。

  1. 次世代エネルギーとして期待される「アンモニア」
     アンモニアは、肥料や化学製品の基礎材料として世界中で大量生産、大量消費されています。近年注目されているのが、アンモニアのカーボンニュートラル実現に向けた次世代エネルギーとしての利用です。アンモニアは燃焼しても二酸化炭素を排出しない「カーボンフリー」の物質であるだけでなく、既に生産・運搬・貯蔵などの技術が確立しており、安全性への対策やガイドラインが整備されているというメリットがあります。現行の石炭火力発電にアンモニアを混ぜて燃やす(混焼)をはじめ、アンモニアを燃料とするための技術開発が日進月歩で進んでいます。
  2. アンモニア合成・分解でのガスモニタリング

     アンモニア(NH₃)合成・分解の用途としてシステム構成されたRTGMSは、OHC-800+PLCの仕様がベースとなります。アンモニア合成では、N2H2を原料として専用装置で触媒反応させますが、このとき反応後の混合ガスであるN2H2NH33成分を切り分けてモニタリングする必要があります。一方で、アンモニアを分解すると、N2H2が発生し、先述の合成時と同様に、反応後の混合ガスであるN2H2NH33成分をモニタリングする必要があります。センシングが困難な2原子分子(N₂とH₂)が発生しますが、防爆型熱量計OHC-800型により3成分を正確に切り分けて測定を行うことができます。

     このように、適切なプラント運転条件の維持と燃料としての生成物の品質管理・プロセス監視に最適なRTGMSは、燃料用途を意図したアンモニアガスの測定にも有効です。

 

お問合せ

RTGMSの特長であるカスタムを駆使し、高い精度のガスモニタリングを実現させませんか?コストを抑えた上、連続分析、高速応答による計測によって、カーボンニュートラル時代の新たなガス監視、作業環境の安全をお手伝いいたします。

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