カーボンニュートラル時代における新ガス測定技術RTGMSについて-初級編

2025.02.05

カーボンニュートラル(CN)とは

 今日では、地球規模にわたる問題が数多く取り挙げられています。気候変動問題は、その典型的な課題の1つであるとされ、世界の多くの国や地域が、同問題に対する課題を抱えています。
 そのような中、二酸化炭素や、フロンガスなどの温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」という取り組みが進められています。
排出量を抑える取り組みはもちろんですが、今までそのまま排出せざるを得なかった温室効果ガスを、除去または吸収することも取り組みの一つとしてあります。
具体的なカーボンニュートラルの取組の例として、「メタネーション」や「アンモニア燃料の活用」などがあります。
 このように、環境問題の解決に向けて、様々な取り組みが行われており、持続可能なエネルギーの利用について注目されています。
 理研計器では、このような次世代エネルギー開発や燃料のガス化、副生ガスの有効活用・排出管理など、多様な分野で増加するガス測定のニーズに対応できる新しいガス測定ソリューション「RTGMS」をご提案しております。本記事から3編にわたり、RTGMSの開発背景や製品の特長、実際の導入事例など様々な角度からご紹介してまいります。

新しいガス測定ソリューションのRTGMSとは

 RTGMS(Real-Time Gas Monitoring System)は、理研計器株式会社が開発したガスセンサ技術を応用し、複数のセンサを組み合わせて混合ガス中の各成分のガス濃度をリアルタイムに算出するシステムです。理研計器は、1939年の創業以来、ガス検知警報機器の専門メーカーとして長い歴史と高い信頼性を築いてきました。また、ガスセンサの製造や開発においても一貫して行っており、豊富な経験と実績を誇っています。
 今回のRTGMSの開発には、以下の3つの市場要求が背景にありました。
 1つ目は、「複数成分のガスを精度よく測定したい」というものでした。2つ目は、「ほぼリアルタイムでの測定・確認を行いたい」、そして、3つ目は、「様々な環境に対応可能な堅牢な機構を求めたい」というものでした。
 理研計器は、これらのお客様のご要望をかなえるため、独自のガスセンシング技術である光波干渉式センサをはじめ、超音波式センサ、赤外線式センサといった物理センサを主軸にガス測定することによって、雑ガスの影響を受けず、また、ガス検知警報器に求められる防爆・防じん・防滴の堅牢な設計を組み合わせることで、様々な制約環境下における複数成分の測定を可能としました。
 この新しいソリューションを支えるコア技術として構成されるのが、光波干渉式センサと超音波式センサを用いた防爆型熱量計OHC-800です。この理研計器の独自技術により、ガスクロマトグラフに匹敵する精度で連続測定を可能にしています。

RTGMSのコストパフォーマンス性について

 RTGMSは、先述のように、複数のガス成分を連続測定、且つ高精度の測定を可能としています。そのような性能の高いガス測定ソリューションでありながら、コスト性の良さという点も特筆すべき特長となります。
 一般的な分析機器よりも安価な導入を可能としているだけでなく、物理センサを用いることで、高い耐久性を保ち、パーツ交換やメンテナンスの頻度を少なくすることができます。このことから、運用におけるランニングコストの削減も期待できます。性能面やカスタム性能の高さのみならず、低コスト性という特長も、次世代技術の研究・開発向けの環境において、RTGMSの活躍が期待されます。

様々な業界で活躍しているRTGMS

 カーボンニュートラルに関連する業界、とりわけ、ガスや電気をはじめとしたエネルギー業界、プラントを中心とするエンジニアリング関係の業界が、RTGMSの活躍しているフィールドになります。今回は、それぞれの業界でRTGMSがどのように役立っているかをご紹介します。

事例①エネルギー業界(ガス・電気・石油)

 同業界は、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素化の取り組みが強く求められている業界の1つです。
 その脱炭素化技術の一環としてメタネーション装置を開発するには、実証実験としてメタネーション装置の運転を監視し、装置出口のガスを分析する必要があります。しかし、分析計は連続測定ができないために制御面で不安が残ります。加えて、分析計は高額で測定に用いるヘリウムガスも入手困難なため、メタネーション装置のコストメリットを圧縮する原因です。理研計器のRTGMSを用いれば、このような課題を解決できます。
 RTGMSは混合ガスから4種類のガスの濃度を連続測定でき、応答速度が速くて高精度な上に、キャリアガスや消耗品が不要でランニングコストを抑えられるメリットがあるためです。

事例②エンジニアリング業界(化学)

 カーボンニュートラルの実現に向けて、プラントを手掛けるエンジニアリング会社はフレアガスの再回収を推進しています。しかし、プラントのトラブル発生時や定期修繕実施などでは、フレアガスなどにより黒煙が排出されてしまうこともあります。
 そのようなケースにおいてもフレアガスを再回収するには、排出ガスの熱量に見合った蒸気や水を吹き込むなどの調整が必要です。その制御方法を実現するには、常にガスの成分が変動するため、リアルタイムで測定できる機械を用いて混合量を制御する必要があります。しかし、従来の分析計による測定では、タイムラグが発生するため、その制御を実現することが難しく、現場の課題となっていました。
 複雑な組成でもリアルタイムな測定を可能とする防爆型熱量計OHC-800(RTGMSのコア技術)の存在が、対象ガス熱量変化に即応した制御(蒸気や水の混合)を可能とし、効果的な黒煙の排出抑制に貢献します。

 RTGMSは理研計器製品の組み合わせにより、様々なご要望に対応できるカスタムが可能なソリューションです。その一例として、メタネーション向けのシステム構成事例を紹介します 。

 上図はCH4、H2、CO2を広い範囲でモニタリングするためのシステム構成です。RTGMSの基本的機構である防爆型熱量計OHC-800と演算装置PLCの組み合わせというシンプルな構成によりメタネーション反応後の制御を実現できます。

 今回はカーボンニュートラルを支える新たなガス測定ソリューション技術として、理研計器のRTGMSにおける基礎的な情報と、どのような業界で活用されているかを中心にお伝えしました。次回はRTGMSの応用編として、本ソリューションの大きな特長であるカスタム性について詳しい情報をお届けします。

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理研計器は高品質の産業用ガス検知器、ガス警報器及びガス測定器を世界の国々に供給し、世界の産業安全の確保から、人々が安心して働ける環境づくりに貢献してまいります。