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みなさんこんにちは!CEなかむーです。
前回に引き続き日本国内において「旅行×医療」に取り組み、医師として旅行支援に取り組んでおられる「トラベルドクター.inc」伊藤玲哉先生にお話を伺い、旅行医が臨床工学技士に期待すること、旅行医と臨床工学技士が協業することで起こる変化などを後編として記事にしました。
24時間テレビやNHKへのご出演で、移動支援業界では今一番注目されている方へのインタビュー!果たして臨床工学技士は移動支援に必要なのか?
大変お忙しい中貴重な機会をいただけましたのでどうぞ最後までお付き合いください!
前回の記事
「旅行医:トラベルドクター」が考える、患者に寄り添う「医療のかたち」
CONTENTS
伊藤玲哉(いとう・れいや)
医師・トラベルドクター
1989年生まれ。東京都出身
昭和大学医学部 卒業
洛和会音羽病院 初期/後期臨床研修
昭和大学病院 麻酔科専攻医・麻酔科標榜医
日本旅行医学会・日本渡航医学会 認定医
介護士初任者研修・ガイドヘルパー
グロービス経営学大学院
経済産業省/JETRO主催
『始動 Next Innovator 2019』5期生
伊藤さんにこれだけは聞いておきたいと考え、思い切って伺ったお話があります。それは「旅行医が臨床工学技士に期待すること」です。
するとすぐに「実は非常に期待しています」と笑顔で返答してくれました。伊藤さんも実は旅行に携わる医療従事者そのものがまだ少ないと感じていて、医師もですが、技士さんは更に少ないと考えていたそうです。
最近になって看護師や理学療法士が移動支援に取り組んでいる事例が話題になっていますが、医療機器に特化した臨床工学技士で移動支援をするという取り組みは実はあまり事例がないのです。私もあまりニーズがないのかなとも考えていました。
一方で伊藤さんは、病院の外に出る医療資格を持っている人自体があまりいないし、最近フリーランスの医療従事者も聞くようになったものの、やはりまだまだ少なく、そんな中で活躍しているなと思ってくれていたそうです。
伊藤さんは「これから医療機器を装着している患者様と同行する旅行というところで考えると、CEなかむーさんがヒットしていくんじゃないかなと感じています。医療機器の取り扱いや旅行中の管理をどうするのかなど、全く今取り決めが無いと思うんです。病気を抱えた旅行者の方も基本的には自宅や病院で過ごすという大前提のもとで、医療機器を使用する医療環境がもう出来上がってしまっているので、やはり一歩でも外に出た時どうするの?というところはすごく弱いと思っています。」と旅行中の医療機器の不安な点についても教えてくれました。
車いすでの外出
外出や移動するときでも患者様には常に人工呼吸器や酸素チューブなどは必ずついて回ります。特に医療の重症度が上がれば医療的なケアや医療機器も多くなり、医療依存度が上がることは一般の方でも想像ができるのではないかと思います。伊藤さんは「人材と医療機器はセットだ」と考えていました。機器のトラブルが起きたら、命に関わってしまうことが起きるかもしれません。そうなると安全な旅行とは言えず、旅行者だけじゃなく、旅行中の医療機器の安全管理というところにも臨床工学技士は必要だと感じていたようです。旅行中になにかあったらどうするのか、なにかあったときに対応できる人材は必要だと力強くお話してくれました。
病院というところで使われる医療機器は「病院の中で使用されるため、一定の環境下で使われる」という前提の下で開発されていて、それらを装着した状態で旅行や移動となると、とても難しい場面もあるそうです。雨かもしれない、暑さかもしれない、寒さかもしれない、振動かもしれない、気圧かもしれない。あらゆる環境にさらされる。それが今の医療機器で本当にできるのか?できないのであればどういうふうにその対策すれば外出や移動が可能になるのか?ということも伊藤さんは日々考えているそうで、「電源ひとつとっても正直やはりまだまだ安全とは言えないと思います。」と続けます。
医療機器のコンセントの形状には特殊な形状であることも多く、メーカーや使用している機種によってもバッテリーの駆動時間などもまちまちです。機種によってはこの人工呼吸器は外で使用できるけど、このメーカーの人工呼吸器は駆動方式や防塵環境性能の関係で外では使えないといったこともあります。
伊藤さんはその中でどうやって今後「旅行」を形にしていくのかを考えたときに、医師だけではきっと不十分だろうと思われていました。「そういうところにこそ臨床工学技士さんが旅行支援チームの一員として一緒に考えていくことがより安全な旅行につなげていけると思うので、ものすごく期待というか、なくてはならない存在だと感じていますよ」とまだまだ実績の少ない私にとってとてもうれしいお言葉をいただきました。
ただ私自身もまだまだ旅行支援に関して実績もないですし、どういう形で移動支援に介入できるのか?というのは毎日考えているのです。そこでポイントになるのはやはり多職種チームでサポートすると安全度が増すという点です。移動支援に携わる医師や看護師、理学療法士や作業療法士、臨床工学技士などでチームアップして意見を出し合い、さらにはそのチームにご家族や旅行者ご本人も丸々含めて旅行できるような体制が今後できれば、かなり安全性の高い旅行が実現できると考えています。
病院では当たり前にできることが、在宅では当たり前にはできないというところが一つの仮説ではあるのですが、引いてはこの旅行支援というものが災害対策につながっていくと考えています。災害というのも非日常的な経験なので、その準備をしておくというところで旅行に行くこと、旅行計画を立てること、旅行に行く手段を考えること自体がその方の災害対策にもつながっていくのではないかと考えています。この話をすると、伊藤さんも同意しておられました。
伊藤さんも災害が起きたら病院ですら非日常になるから、そういう中でどうやって安全を維持するのかというのは課題だと思っていたそうです。災害時には病院が病院ではなくなるわけです。
そういう中では電源のことだったり、治療環境だったり、クーラーも効かなくなるかもしれないなど、いろんな環境が変わってきます。今でもそういう災害に対して対策できるかというところはあまり詳しくはわからないし、やはりこれだけ医療が発展してから高度化したからこそ、逆に環境が変わってしまった時の「不安定さ」というところは非常に今まで以上に大変なのだろう、と伊藤さんは話します。
例えば麻酔器とか人工呼吸器とかも非常に高度になってきたけど、それを災害時や環境の変化が起きたときに、人の手で動かさなくてはいけないとなった時にできるのか?医療機器にAIを組み込むものも今後出てくると思うが、災害時に人間のように柔軟な対応をAIはできるのか?などまだまだできてない部分はいっぱいあるのだろうと少し不安げに語っていました。
私も最近医療機器が高度化しすぎて、在宅医療に携わる訪問看護師さんでは取り扱えないケースというのも結構増えてきているというのは考えていました。そういったところで逆に高度化しすぎて問題が生じている部分というのは、ある程度アナログな部分を知っている人材じゃないとできないというところも結構あると思っているので、在宅医療の現場でも臨機応変に医療機器に対応できる人材として臨床工学技士が活躍できるような仕事が作れればいいかなというふうに考えていました。
伊藤さんは旅行だけではなく、在宅医療でも災害医療でも臨床工学技士は必要だと語ります。そもそも医療機器についてしっかり理解をしようというのは病院の中では当たり前なことかもしれません。しかし、伊藤さんは「病院の外へ出ると在宅や災害時に医療機器を任せる人がいなくて困ってしまっているということが起きてしまっているのも事実です。旅行でも同じような考え方ができるし、もっと根源に言うと旅行よりもそういう医療機器に対しての理解、正しい知識をつけていくというところがまず前提にあるから、教育という意味でもきっと臨床工学技士さんの存在はもっともっと今後出てくるというのは感じます」と臨床工学技士への期待感も知ることができました。
最後に旅行医であるトラベルドクターとフリーランスCEが協業することでこれからの移動支援の形というのはどのように変化していくか聞いてみました。
すると伊藤さんはやはり医師だけではできないことがいっぱいあるし、臨床工学技士さんだけではできないこともあるし、看護師さんでできることできないこと、リハビリの方ができることできないこと、介護士さんができることできないこと、旅行会社でできることできないこと、航空会社ができることできないことなど本当にたくさんあるということを教えてくれました。
伊藤さんには、それぞれの業種業界によって自分たちの強みを少しずつでも出し合えば、叶えられることはたくさんあるということを世間に伝えていきたい想いがあります。
「一人で全部やることはできない。最初は全部自分でやろうと思って、介護資格を取得したり、いろんなことを全部自分でやろうと思っていたけど、やはりやればやるほど一人でできないことの多さという部分が見えてきて、いろんな職業の方と活動をして行く中で、自分にできないことに強みを持っている人がいると感じた」と話します。逆に自分の医師という立場にも強みがあると感じ、医師である自分にしか出来ないことにもちゃんと気づくようになってきたと力強く語ります。
また、伊藤さんは移動支援をする臨床工学技士に今後も期待していることを付け加えてくれました。「旅行支援をする中で看護師さんや理学療法士さんや作業療法士さん、薬剤師さんも出てきて、そういうところの中にCEなかむーさんという方が現れたのです。最初から想定はしていたけど、なかなかそういう人は現れにくいだろうというのもあって、活動初期のメンバー候補に挙がっていませんでした。今回こうして出会えて一緒に旅行の相談もできたり、考えたりして、実際に旅行が叶ったことで、臨床工学技士がチームの中の大事な地位になる」と非常に期待しているそうです。
伊藤さんは「旅行を叶える」チームの一員に臨床工学技士というのは間違いなく必要だと強く思ったこと、医師と臨床工学技士だけでなく、いろんな職業の人がそれぞれの強みを生かせる旅行医療チーム体制というものができると旅行を叶えられる確率が上がることでより安全性の高い旅行が実現できると考えていました。
最後に伊藤さんはこう続けます。「看護師さんの業界では旅行同行するという取り組みがもっともっと何10年も前からあったと思います。私は医師の働き方としては珍しいと思いますし、CEなかむーさんもフリーランス臨床工学技士として珍しいですよね。そういう意味ではある意味、"運命共同体"というか、新参者らしい職種だと思います。始まってみればそのチームとしては平等で同じ立場なのでしょうが、旅行支援する医師や臨床工学技士は先人がいない。本当にパイオニアとして開拓して行こうというところは同じだと思います。誰かがやってきたことを真似するのではなく、0から作り上げていくということの運命共同体のようなものを感じております」
終始和やかな雰囲気の中インタビューを終えることができました。内心、これはもっともっと勉強して、経験して期待に応えられる存在にならなくてはいけないなと心に強く思うのでした。
いかがでしたか?私は旅行医としては伊藤先生が間違いなく中心的な存在なっていかれると考えています。0からいろいろ作り上げていくところはとても大変なところもあると思います。先駆者のいない僕たち二人は国内でも他に類を見ない医療従事者なのだろうと思っているので、今後も伊藤先生のお力添えができるような形で僕もしっかり勉強し、世間の方や国内の旅行/移動支援を行っている医療従事者の皆様にもいろいろとアドバイスできるように実績と経験を積みたいと思います。今後ともお付き合いいただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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