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みなさんこんにちは!CEなかむーです!前回はメスやクーパーといった鋼製器具の歴史について深堀しました。
今回は鋼製器具の歴史を辿った先にある現代の鋼製器具の種類や特徴を踏まえたうえで、未来の医療機器はどのように変化していくのか臨床工学技士の考える「未来の医療機器」について考えていこうと思います。
CONTENTS
前回の記事では紀元前のエジプトやギリシャの時代から手術道具は用いられ、時代やそれらを生み出す工業技術の発展で少しずつ形や大きさを変化させてきたことがわかりましたね。現代の手術道具はいったいどれくらいの数があるのかと言われるとおそらく数千種類以上あると思います。具体的な数は医師でもわからないかもしれません。手術室には通常各手術に必要な器具セットが用意されており、その数は診療科や手術の種類、複雑さによって異なります。いつでも手術ができるように手術の術式に併せて開腹セット、縫合セット、外科セットなど細かくセット組されており、専用の収納棚に収納されています。一般的な器具セットは数十から数百種類の器具で構成されることが多いです。メスやハサミから、レーザーやロボットを用いた高度な手術機器まで様々なツールが用いられています。特にロボット手術は、医師が遠隔操作で手術を行うことができるため、精度が非常に高く、患者にとっても負担が少ないとされています。ロボット手術についてはこちらの記事をご覧ください。
AI を組み合わせる医療の発展
手術道具だけでなく医療機器の発展もまた医療の進化においては欠かせない要素です。心電図モニターやMRI、CTスキャナーなど診断機器の進化は患者の早期診断と治療に大きく寄与しています。これらの機器は高度な画像解析技術を用いることで、従来の手法では見つけられなかった病変を特定することができます。
さらに、最近TVのコマーシャル等でも見かけるようになったのはAI を用いた診断方法です。AI技術が医療機器に組み込まれるようになり、診断の精度がさらに向上しています。AIは大量のデータを分析し、医師が見逃す可能性のある微細な異常を検出することが可能です。これにより、患者は早期の段階で適切な治療を受けることができ、結果として治療成績が向上しています。特に内視鏡カメラ等でよく利用されており、これまで小さすぎて医師が診断できなかった微細な病変部位すらもAI技術によって瞬時に見分けられるようになってきています。
手術道具と医療機器の進化は今後も続くことは間違いありません。よく耳にするのはナノマシンや3Dプリンターを応用した医療技術です。ナノテクノロジーとはナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の単位で物質を操作・制御する技術のことを言います。この技術は物質の構造や性質を微細なスケールで制御することで、新しい特性や機能を持つ材料やデバイスを作り出すことができます。例えば体内で薬を運搬したり、病変部位を直接治療したりするために用いられるナノロボット、抗がん剤や薬物を目的の細胞や組織に正確に届けるドラッグデリバリーナノテクノロジーなどがあげられます。
また、3Dプリンターはデジタルモデルをもとに物体を層ごとに積み上げて作成する技術のことで、そのプロセスを「積層造形」と呼びます。3Dプリンターは、さまざまな材料(プラスチック、金属、セラミック、生体材料など)を使用して、複雑な形状や構造を持つ物体を製造することができます。3Dプリンティング技術を活用した患者個々の解剖学に適応したツール(義肢、インプラント、手術用モデルの作成)など新たな技術が次々と開発されています。また、AIとロボット技術のさらなる融合により、完全自動化された手術が現実のものとなる日もそう遠くはないでしょう。
3Dプリンターで臓器を作成する未来
例えば、AIを搭載したロボットが患者の状態をリアルタイムでモニタリングしながら手術を行うことで、手術の成功率をさらに高めることが期待されています。また、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)を用いたシミュレーショントレーニングも医師の技術向上に役立っています。これらは二宮和也さん主演の『ブラックペアン2』でも話題になっていたのでご覧になられた方も多いのではないでしょうか?
ここまで現代の医療と未来の医療機器について考えてきました。さて、これらの新技術は実際の医療現場でどのように導入されているのでしょうか?大学病院や先端医療センターなどの先進的な医療機関ではすでにこれらのツールを活用しており、その効果は実証されています。しかし、これらの技術を全ての医療機関に導入するにはまだまだ多くの課題も存在します。
一つはコストの問題です。高度な医療機器は非常に高価であり、その導入には莫大な費用がかかります。医療機器の価格は種類や用途によって大きく異なりますが、一般的に血圧計などが1000円~1万円程度、心電図などの医療用モニターで10万円~50万円くらいで、ロボット手術装置にいたっては1億円~5億円くらいとされています。また、技術の導入には医療従事者のトレーニングも必要です。以前、私が鹿児島県で初めてロボット手術装置を導入する施設で働いていた時にも院内で独自のロボット手術チームが立ち上がり、医師、看護師、臨床工学技士それぞれが自分に必要な技術を習得し、チーム一丸となって取り組んでいたことを思い出します。先進的に導入している施設にも手術見学したり、多くのロボット手術の症例動画や専門書を見たりしながら安全に手術できるように日々勉強に追われていたのを今でも鮮明に思い出します。
このように医療従事者の教育や技術習得にも多くの時間が必要なのは言うまでもありませんが、新たな技術を使用する際の倫理的な問題も考慮しなければなりません。例えば、AIが診断を下す場合、その判断に対する責任は誰が負うのかという課題があります。これらの問題を解決するためには技術的な進歩だけでなく、法整備や倫理的な議論も進めていく必要があります。新しい技術が次々に生み出される反面、それらを扱ううえで倫理的な配慮や安全に使用するためには多くの課題があるということも同時に認識しておく必要があると思います。
最先端医療はコストと倫理的な問題も考える必要がある
手術道具と医療機器の進化は現代医療の中核を成すものであり、その発展は患者にとって非常に重要なことだと思います。これらの技術は診断精度の向上や手術の成功率向上に寄与しており、今後もさらに進化し続けることでしょう。しかし、その導入には多くの課題も存在します。コスト、トレーニング、倫理的問題などを解決しながら技術を最大限に活用することが求められます。未来の医療は、これらの技術がもたらす革新により、さらに進化していくことが期待されます。
みなさんいつもご覧いただきありがとうございます。実は今回の記事でCEなかむーの臨床工学技士ノートはいったん終わりになります。これまで臨床工学技士に関する多くのことを自身の経験も踏まえて記事にしてきました。執筆するということが初めての経験でしたのでうまく書けない部分も多くありました。しかしながら、多くの方に臨床工学技士というお仕事を認知していただいたと同時に、興味を持っていただけたのではないかと思っています。
現代の医療は医師と看護師だけでは成り立ちません。多くの医療従事者がそれぞれの専門性を生かして一人の患者様のために日々サポートしていることを忘れないでください。臨床工学技士は医療機器のスペシャリストとして、日々進化する医療技術の最前線で活躍しています。その役割は、医療機器の管理から患者の安全確保まで多岐にわたり重要なものです。最新の技術と知識を駆使し、患者さんに最高のケアを提供するために尽力しています。これからも臨床工学技士としての誇りを胸に、より良い医療環境を目指して努力を続けていきたいと思います。
医療はチームだ!!!
本記事が、臨床工学技士の重要性とその役割に対する理解を深める一助となれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。
この記事を読んで、「臨床工学技士おでかけサービス」や、中村さんに興味を持った方は、ぜひお問い合わせください!