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みなさんこんにちは!CEなかむーです!
前回は電気メスの原理と主要な機能について深堀してきました!
電気メスとは? 実は「切っていない」? 熱と電気の特性が生み出す驚きの機能
電気メスは電気と熱の特性をうまく利用したとても便利でユニークな医療機器なのですが、使用する上でとても大事な注意点がいくつかあります。今回は電気メスの使用上の問題点と高周波医療機器の事故について深堀していこうと思います!
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電気メスの仕組みについては熱と電気の特性によって作動することは前回の記事で深堀できましたね。実は電気メスの切れ味というのは高熱で高出力であれば広範囲に作用したり鋭くなったりするというわけでもありません。これには「周波数」が関係しています。
周波数(英:frequency)とは、単位時間当たりに繰り返される波動や振動の回数を指します。周波数の単位は「ヘルツ(Hz)」で、1秒間に1回の振動が1Hzに相当します。例えば、音の周波数は空気の振動回数であり、周波数が高いほど高い音、低いほど低い音として聞こえます。また、光の周波数は色の違いとして現れ、紫の光は高い周波、赤の光は低い周波数を持ちます。このように音と光に周波数が関連しているように電気にも周波数によって切れ味や作用範囲が変化するという特徴があります。
電気メスの切れ味や作用範囲を決めるには周波数の振幅によって決まります。これをデューティー比(デューティーサイクル)と言います。
電気メスにおけるデューティー比は、電流の出力と停止の時間割合を示す重要なパラメータであり、デューティー比が高いほど、電流が連続して流れる時間が長くなり、切開性能が向上します。
電気メスはモードによってデューティー比を変更することで、性能を最適化させています。
切開モード: 切開モードでは、連続波形の電流が使用されます。デューティーサイクルが高いと、電流が連続して流れ、組織を迅速に加熱して蒸散させることで、効果的に切開が行われます。
凝固モード: 凝固モードでは、断続波形の電流が使用されます。デューティーサイクルが低いと、電流の出力と停止が繰り返され、組織が蒸散する前にタンパク質が変性して凝固します。
混合モード: 混合モードでは、連続波と断続波を組み合わせた波形が使用されます。デューティーサイクルを調整することで、切開と凝固のバランスを取ることができます。
デューティー比の調整により、電気メスの切開性能や凝固性能を最適化することができるため、手術中の出血を最小限に抑えながら、効果的な切開が可能になります。
対極板とは、電気メスを使用する際に患者の体に貼り付けられる電極のことです。対極板は、身体の表面に張り付けるもので電気メスから発生する高周波電流を患者の体を通じて安全に回収し、本体に戻すために使用されます。
対極板が正しく貼られていないと高周波電流を安全に回収できないため、電流が集中して熱傷を引き起こす可能性があり、重篤な火傷や皮膚トラブルなど皮膚に障害を引き起こすことがあったり、予期しない事故につながる恐れがあったりするため、適切な部位にしっかりと貼り付けることが非常に重要になります。
電気メス構成図(左上:対極板、中央:電気メス先、右:本体)
対極板の役割については以下に示します。
高周波電流の回収:電気メスのメス先から流れる高周波電流は、組織を切開したり凝固したりするために使用されます。この電流は対極板を通じて安全に回収され、本体に戻されます。
熱傷の防止:対極板が適切に貼られていない場合、電流が集中して流れる部分で熱傷が発生する可能性があります。対極板を正しく貼ることで、電流が広い面積に分散され、熱傷のリスクが軽減されます。
医療機器の保護:対極板がないと、高周波電流が他の医療機器に流れ込み、誤作動したり、障害を引き起こしたりする可能性があります。対極板を使用することで、他の機器への影響を防ぐことができます。
対極板は、電気メスを使用する部位とは離れた部位に貼るのが一般的です。例えば、腹部の手術で電気メスを使用する場合、対極板は大腿部や大殿部などに貼付されます。
電気メスと高周波医療機器は、どちらも高周波電流を利用する医療機器ですが、用途や機能に違いがあります。
電気メスは、主に外科手術で使用される医療機器で高周波電流を利用して組織を切開したり、凝固(止血)したりするために使われます。
高周波医療機器は、主に痛みの緩和やリハビリテーションに使用される医療機器です。高周波電流を利用して、筋肉や神経に刺激を与えることで、血行を促進したり、筋肉の収縮等を促したりします。
近年、美容領域でも高周波を用いた美顔器や治療装置が多く販売されていますが、皮膚障害や火傷などといった事故が増えていることはメディアでもよく話題になります。医療機器が小型化して手軽に利用できるようになった反面、その取扱い方法についてはさらなら検討が必要だと思います。
消費者庁では、毎週、重大事故とそれ以外に分けて消費者が巻き込まれた事故を公表しています。美容医療領域における事故としては平成23年5月に愛知県のクリニックで発生した高周波機器による施術で、顔にII度の火傷を引き起こしたことなどがあります。
高周波の中にはラジオ波やRFと呼ばれるものを使用した機器などもあり、電磁波を使って皮膚に熱を起こす施術となります。この熱が過剰に発生したために皮膚に火傷を起こしたと言われています。このように使用方法や管理に注意を払わないと思わぬ事故が発生することがあります。
以下に、高周波医療機器に関連する主な事故例をいくつか紹介します。
熱傷事故:電気メスの誤操作や対極板の不適切な装着により、患者の皮膚に熱傷が発生することがあります。例えば、電気メスのスイッチを誤って押してしまい、患者の皮膚に直接接触して熱傷を負わせるケースがあります。
引火事故:気管切開時に電気メスを使用する際、酸素の使用環境下で火花が生じ、気管チューブに引火する事故が報告されています。高濃度酸素環境下での電気メス使用は特に注意が必要です。
機器の誤接続:電気メスのコードが正しく接続されていない場合、意図しない部位に通電してしまい、患者に損傷を与えることがあります。
このほかにも手術中に麻酔器で使用される酸素や麻酔ガスの吸入のほかアルコール含有消毒薬を使用している場合など、特に消毒薬にアルコールを使用した場合などでは手術のときに体を覆う覆布によって揮発したアルコールが覆布内に滞留し、メス先に生じる火花で手術中に引火したという事例などもあります。
電気メスといった高周波電流を使用した医療機器は大変便利な医療機器なのですが、慣れや見落としで基本に沿った適切な使用ができないと思わぬ事故が発生してしまいます。
手術の時はバタバタすることも多いので、対極板の位置は適切か?コードの接続は正しくできているのか?など基本に沿ってひとつひとつ確認しながらしっかりと業務に従事していきたいものです。
次回も医療機器について深堀していきましょう!
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