医療と工学の専門家“臨床工学技士”とは?「いのちのエンジニア」と呼ばれる理由

2023.02.22

みなさん初めまして!臨床工学技士のなかむーです。

早速ですがみなさんは「臨床工学技士」という職業をご存じですか?

このコラムでは私が大好きなお仕事である臨床工学技士のことをもっと世間の方に知ってほしいという想いで、臨床工学技士の仕事やフリーランスとして活動している私の仕事の一端をご紹介できればと考えています。

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記事を執筆する目的

臨床工学技士というお仕事を知ってもらいたいという想いのもと、臨床工学技士が関わる病院の業務やこの業界では珍しいフリーランスとして活動の取り組みなどもご紹介させていただくことを目的としています。

いのちのエンジニア「臨床工学技士」とは?

臨床工学技士(Clinical Engineering:CE)は医療と工学の専門家として主に病院で働いている医療系国家資格を取得した医療技術専門職です。と書くと難しく聞こえるかもしれませんが、ひとことで言うと「医療機器を介して患者さんの命を預かるエンジニア」です。

その名の通り、医療機器を通して患者様に寄り添い、医療の安全を担うとても重要なお仕事です。「システムエンジニア」という職業のことを「SE」と呼んだりすることはご存知でしょうか。私たちも、病院内ではCEさんとか、ME(Medical-Engineering)さんと呼ばれることが多いです。

今では医療機器を専門的に取り扱う臨床工学技士がいるというのが当たり前なのですが、その歴史は看護師などに比べると浅く、国家資格として制定されてからおよそ30年です。戦後の高度経済成長期に伴って医療の高度化や医療機器の専門化が進んだことで、それを専門に扱う技術者の必要性が高まり、1987年に臨床工学技士法が国会で成立し、翌1988年に施行されました。これが職業としての臨床工学技士の誕生です。

現在では、日本の最先端の医療を支える人材として、国内で約3万人の臨床工学技士が医師の指示のもと、多くの病院や施設で業務に従事しています。

臨床工学技士のお仕事とは?

臨床工学技士のお仕事には以下のものがあります。近年でも日々進歩する医療業界のニーズに応えるため、業務とする職域がどんどん拡がりを見せています。

血液浄化業務

糖尿病や腎臓の病気で腎臓の機能が低下した患者様に対して行われる人工透析[注1]を行う際の人工透析装置の操作や保守管理を行います。免疫疾患の治療の際に施行される血漿交換療法や敗血症の治療の際に行われるエンドトキシン吸着療法などのアフェレーシス療法[注2]もこれに含まれます。

体外循環業務

心臓の手術の際に用いられる人工心肺装置の操作や心臓手術専用の医療機器の操作や保守管理を行います。

人工心肺装置

人工呼吸器療法業務

肺の病気で呼吸機能が低下した患者様や神経筋疾患で呼吸がうまくできない患者様に対して用いられる人工呼吸器の操作や保守管理を行います。

人工呼吸器

医療機器管理業務

病院で使用される輸液ポンプやシリンジポンプ、除細動器やAED[注3]に異常がないか工学的な視点で評価し、安全に使用できるように点検管理します。


手術室関連業務

手術で使用される患者監視モニター、電気メスや内視鏡装置、麻酔器や無影灯など手術に関連する医療機器の操作や保守管理を行います。近年ロボット手術が普及してきていますが、その準備や管理にも携わっています。

無影灯

ロボット手術装置

内視鏡関連業務

胃カメラや大腸カメラなど消化器系の検査で用いられる内視鏡関連検査の補助や保守管理を行います。

ペースメーカー/植込み型除細動器(ICD)関連業務

心臓の電気的な異常等で治療に用いられているペースメーカーやICD(植込み型除細動器:Implantable cardioverter defibrillator)などの、外来での管理や検査の補助を行います。

医療機器の研修や勉強会の実施

病院で使用される医療機器などを医師や看護師といった医療従事者に対して安全に適正に使用してもらえるように勉強会や研修会を行っています。

本当は個々の業務に更に細かい内容があるのですが、ここでは紹介しきれないので具体的な業務内容については今後少しずつご紹介できればと思います。

フリーランス臨床工学技士とは?

私はフリーランス臨床工学技士として鹿児島県を拠点に活動しており、主に臨床工学技士が不在の病院等で業務委託契約を交わし、業務に従事しています。病院には常勤で雇用されていないので、働き方としては異質なほうかもしれません。しかしながら病院に雇用されているだけでは決してできない臨床工学技士の仕事をしています。そのひとつが医療機器デバイスを装着していても移動を諦めてほしくないという想いで始めた「臨床工学技士のおでかけサービス」です。

臨床工学技士のおでかけサービスとは?

人工呼吸器といった医療機器デバイスは患者様が「生きたい」と願う希望を叶えるものとして多くの命を支えています。しかし一方で結婚式などの冠婚葬祭、コンサートや修学旅行といったイベントなど人生の節目にあたる大事な瞬間に行きたい!行こう!と考えるときにこれが障害となって「行けない。」というとても矛盾した状況となっています。「行きたい」をあきらめてほしくない。そんな想いになったとき、フリーランスとしてなにができるだろうかと考えました。いろいろ情報収集したところ、ツアーナースやトラベルドクターなど医療従事者が旅行支援をしているという取り組みを知り、臨床工学技士が旅行やイベントへの移動に同行し、医療機器を装着していても安全に外出できる臨床工学技士同行による移動支援サービスを行うことにしました。

この取り組みは医師や移動支援を専門に扱っている看護師さんたちとチームアップして取り組むことでより安全に移動できる取り組みとして注目されています。

まとめ

フリーランスとして開業し、独りで多くの不安や葛藤を抱えながらここまで取り組んで参りました。その中で全国の医療従事者の方や企業の方々とお話することができ、病院にいるだけでは決して巡り合わなかったご縁が数多くあります。Lab BRAINS様とのご縁もそのつながりの中で得た大変貴重な機会であり、私が大好きな臨床工学技士についてご紹介させていただくことになりました。少しずつでも臨床工学技士というお仕事をみなさんに知っていただき、興味を持っていただければ幸いです。また、最前線で活躍されている臨床工学技士さんのインタビューなども行い、病院の奥まで行かないと会えない臨床工学技士に親しみをもっていただくことも考えております。

また次回の記事を楽しみにお待ちいただければ嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。


私のこと

最後に、この記事を執筆させていただいている「CEなかむー」のことを少しご紹介させていただきます。
【職種】
 フリーランス臨床工学技士
【名前】
 中村 隆志
【好きなもの】
 臨床工学技士のお仕事(天職だと思っています)
 料理(お仕事ないときはご飯作ったり、パン焼いたり、お菓子作っています)
 カラオケ(トイレやお風呂で歌います。一人でもカラオケ行きます)
【苦手なもの】
 自分のペースが崩されること
 魚の骨を取り除きながら食べる焼き魚と煮魚
【将来の目標】
 臨床工学技士人材だけで会社を創ること

編集部より

病院勤務で培った臨床工学技士のスキルを武器に、「外出が難しい方と一緒におでかけをする」というとても意義深い仕事をされているCEなかむー(中村)さん。今後も、おでかけサービスで起こったエピソードや、臨床工学技士の更に深いお仕事事情など、深掘りしていければと思います。

脚注

[注1]人工透析 ↩︎
腎臓の機能が低下した患者様に行われる治療法。専用装置を使用して尿の成分である尿毒素の除去と水分の調整、電解質の補正を行うものです。

[注2]アフェレーシス療法 ↩︎
ギリシア語の「分離」を意味する言葉。血液中から目的の病因成分を分離し「抽出」または「排出」すること。血漿交換(plasma exchange、PE)、二重濾過法(double filtration plasmapheresis、DFPP)、血漿吸着療法(plasma adsorption、PA)、直接血液灌流法(direct hemoperfusion、DHP)、白血球除去療法などがあります。

[注3]AEDと除細動器の違い ↩︎
AEDも除細動器の一種ですが、一般の方が使用しやすいように流れが自動化された、「自動体外式除細動器」のこと。私たち臨床工学技士が使用する除細動器は医師の指示のもとで使用する装置なので、マニュアル操作ができる除細動器のことを指しています。

 

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この記事を読んで、「臨床工学技士おでかけサービス」や、中村さんに興味を持った方は、ぜひお問い合わせください!

【著者紹介】なかむー(中村 隆志・なかむら たかし)

熊本総合医療福祉学院(現:熊本総合医療リハビリテーション学院)出身
臨床工学技士のフリーランスCE-WORKS 代表
慢性期血液浄化療法からロボット手術まで幅広く臨床工学技士業務従事。
18年の臨床工学技士経験をもとに令和3年4月に国内でもあまり事例がない臨床に携わる
フリーランス臨床工学技士として業務に従事。
病院の「外」でも働ける臨床工学技士の仕事創りに取り組んでいます。
将来の夢は臨床工学技士人材だけで会社を創ること!

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