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管理栄養士の栄養太郎です。
皆さんは、「超加工食品」という言葉に、どのような印象をお持ちでしょうか。
近ごろ、「超加工食品はがんのリスクを高める」「食べてはいけない食品リスト」といった見出しを、雑誌やインターネットで見かけることが増えました。実名入りの商品が並ぶ記事を目にして、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、「超加工食品」に関する書籍やネット上の文章が話題に上がりますが、具体的に「何を指すのか」、「研究で何がどこまで分かっているのか」を、適切に理解している消費者が少ないように感じています。今回は、「超加工食品」の摂取が良い・悪いという断定ではなく、「どのような食品で、研究ではどこまでわかっているのか」に着目して整理してみたいと思います。

CONTENTS
超加工食品とは、ブラジルの研究者らが提唱した「NOVA分類」という枠組みの中の、いちばん加工度が高いグループを指します。「NOVA」は、ラテン語の「nova」に由来しており、「新しい」という意味です。
NOVA分類は、既存の食品を加工の目的や程度に応じて4つに分けるもので、加工度が低い順に、未加工/最小限の加工の食品、調味料などの材料、加工食品、そして超加工食品としています。

超加工食品にあたるのは、日常で口にする機会がある食品であり、清涼飲料、菓子パン、スナック菓子、ソーセージやハム、カップ麺、菓子類などです。いくつもの材料を組み合わせて食品工場で大量に生産され、家庭の調理ではあまり使わない食品添加物(乳化剤、香味料、着色料など)などを含むことが特徴とされています。
ここで押さえておきたいのは、NOVA分類が「栄養成分」ではなく「加工のされ方」で食品を分けている点です。つまり、栄養素の量ではなく、製造の仕方を基準にしたグループ分けだということです。
そして、もう一つ知っておきたいのは、このNOVA分類はあくまで研究者らからの提案であり、「超加工食品」という言葉に対して、厚生労働省や農林水産省を含め、世界的にも公的に定まった定義がまだない、という点です。そのため、同じ食品でも分類する人や方法によって扱いが変わることがあり、研究の結果を読むときにも、この点を念頭に置いておく必要があります。
本コラムでは、「超加工食品」という用語について、定義に曖昧さがあることを踏まえつつ、先行研究で用いられてきたNOVA分類を参考にしています。
超加工食品は、現代の日本の食生活に広く浸透しています。 東京大学の研究グループが日本人成人2,742人の8日間の食事記録を分析したところ、1日の総エネルギーのうち、およそ3〜4割(分類方法により約28〜42%)を超加工食品から摂っていました。子ども(3〜17歳、1,318人)を対象とした同様の研究でも、割合はおよそ27〜44%と報告されています。
いずれの研究でも、若い世代や喫煙者ほどその割合が高い傾向がみられました。また、日本では、パンや麺を含む穀類が超加工食品由来エネルギーの最も大きな割合を占めていました。菓子や飲料だけでなく、超加工された主食が主要な供給源となっていた点は、少し意外かもしれません。
国内における超加工食品に関する研究はまだ多くありませんが、これらの調査結果から、私たちは日常的に超加工食品を口にしていることがうかがえます。
「超加工食品は健康に悪影響である」と記述されることが多いですが、本当に多いのでしょうか? 超加工食品に関わる研究は、2000年位まではあまりない(超加工食品という概念自体が確立されていなかった)のですが、食品の加工度に着目したNOVA分類が2009~2010年に提唱されて以降、研究報告は徐々に増加し、特にここ10年ほどで、さらに多くの報告されるようになりました。
<ヨーロッパの研究>
フランスの約10万5千人を追跡した研究では、食事に占める超加工食品の割合が10%高い人ほど、全体のがんの発症リスクがおよそ12%高いという関連が報告されました。 ヨーロッパ9か国の約35万人を対象とした研究でも、超加工食品の摂取が多い人ほど、5年間の体重増加が大きく、過体重・肥満のリスクが15〜16%高い関連がみられました。
<複数の研究をまとめて分析:メタ解析>
世界中で発表されてきた超加工食品に関する多数の研究結果を統合して解析した研究(メタ解析と呼ぶ)も報告されています 18件の追跡研究(合計約115万人)を統合したメタ解析では、超加工食品の摂取が最も多い群は、最も少ない群に比べて全死亡のリスクが約15%高く、摂取量が増えるほどリスクも高まる用量反応関係が認められました。 さらに、45件のメタ解析(延べ約990万人を対象)を統合したアンブレラレビューでは、検討された健康指標の約7割で、超加工食品の摂取量が多いほど健康上好ましくない方向との関連が報告されています。
上記以外にも、糖尿病患者における摂取量と身体状況、死亡率などとの関連を調べた研究においても、超加工食品が強く関連する可能性が示されています。
ここまで発表されている研究を見ると、「超加工食品」とされる食品は、健康に悪影響であるような報告が多いのが現状でしょう。

これまでに発表された研究結果を見ると、少々不安になりますね。 しかしながら、これらの研究の結果の見方には注意が必要であるかもしれません。
これまでに発表されている研究の多くは「観察研究」です。
人々の普段の生活や食事、健康状態を観察し、その違いと健康との関係を調べる。 例えば、食品Aを「毎日食べる人」と「食べない人」の健康状態を比較して、食品Aの健康への影響を調べる、という感じ。 実際の生活に近いデータが得られる一方で、「これが原因でこうなった」と断定することはできない。
観察研究では、超加工食品と病気や健康状態の「関連」は示せますが、「超加工食品が原因で病気になった」という因果関係までは証明できません。
また、NOVA分類はあくまでも「製造法」で食品を分類するため、定義に曖昧さが残ることがあります。さらに、食事内容は本人の申告に基づくことが多く、超加工食品には非常に多様な食品が含まれるため、どの食品や成分が健康リスクに関わっているのかを特定することは難しいと指摘されています。
加えて、超加工食品を多く食べる人では、食物繊維や野菜、果物の摂取量が少なく、塩分・糖分・脂質の摂取量が多い傾向が報告されています。そのため、健康への影響は超加工食品そのものだけでなく、食事全体の栄養バランスの偏りが関係している可能性も考えられます。 実際、日本人を対象とした研究でも、超加工食品の摂取割合が高い人ほど食事の質が低い傾向が確認されています。また、健康への影響の受け方には、年齢や身体活動量、持病の有無などによる個人差があります。
「超加工食品」という言葉が、様々使用されている一方で、
・国際的に統一された公的な分類基準ではなく、研究で広く用いられている「NOVA分類」に基づいた定義に留まっている ・研究結果は増えていますが、多くは観察研究であり、因果関係を明確に示すには至っていない
という現状があることを一般的な消費者も理解しておくことが必要と考えます。
少し小難しい文章になりますが、「超加工食品は体に悪い」という単純な表現を見かけたときは、その根拠がどのような研究に基づくものかを一度立ち止まって考えたいところです。
現時点で言えるのは、関連が報告されているという段階であり、特定の食品を避ければ健康が保たれるということではないと考えています。日々の食事全体の質や量、そして生活習慣を含めて考える視点が、情報に振り回されないための助けになるでしょう。
[補足] 本文には記載しませんでしたが、農林水産委員会 (第221回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 令和8年5月19日) でも超加工食品が取り上げられました。 もしかすると、国レベルでの検討が進んで行くかもしれません。 委員会時の発言URL:会議録情報
参考資料
東京大学:日本人の子どもにおける超加工食品の摂取量と食事の質との関連
国際がん研究機関(IARC):Consumption of ultra-processed foods associated with weight gain and obesity in adults: a multi-national cohort study
参考文献