海くらマンボウ祭2026:ウシマンボウの研究史を振り返る

2026.06.11

海とくらしの史料館(通称「海くら」)では、毎年、期間限定企画展としてゴールデンウィークシーズン前後に「マンボウ祭」が開催される。2018年から始まったこのマンボウ特化型企画展は、深刻なコロナ禍で一時中断を余儀なくされることもあったが、何だかんだで継続され、今年で無事9回目を迎えた。

すっかり海くらの恒例イベントとして定着した感のあるマンボウ祭は、2026年4月25日~5月17日の期間に開催された。私は毎年マンボウ祭で講演を行っているのだが、今年は「命名15年以上経過したウシマンボウ研究の振り返り」というテーマでお話しさせて頂いた。私が海くらを訪問したのは2026年5月9~10日。当時のイベントの様子をお伝えしよう。

快晴に恵まれた海くらと、未来のリニューアル計画

今年、海くらに訪問した日はまさに青天! 少し夏の暑さを感じるくらいの良い天気だった。本サイト「ラボブレインズ」でも、2023年、2024年、2025年(その1、その2)と、毎年マンボウ祭の様子を記事で紹介してきたが、こんなに良い天気だったのは珍しい。去年がヤリマンボウの公開解体調査だったのに、あまり良い天気ではなかったことが思い出された。

館長と合流して海くらへと向かう。両日とも本当に良い天気だった。

【耳より情報】海くらのリニューアル予定
この海くらも建物の老朽化でリニューアル工事をせねばならず、2028年に休館して改装し、2029年にリニューアルオープンする予定だ。現在の古き良き海くらの建物も見納めになる日が迫っている……!
(※現状の予定であり、まだ確定ではありません)

1階:驚きの「触れる」展示コーナー

海くらに入って1階にあるマンボウ企画展の展示コーナー。今年はマンボウの半骨格標本と、去年解体して冷凍されていたヤリマンボウの皮を触れるコーナーが真ん中に配置されていた。

マンボウの展示物を設置している水族館や博物館もあるが、これ程まで近くで見られて、実際に触れるところはなかなかない。これだけでも一見の価値はあるだろう。ここでは展示パネルを通じて、マンボウに関する近年の研究成果を広く知ることができる。毎年微妙に展示物が増えていったり変わっていたりするのだが、気付いた方はいらっしゃるだろうか?

 

2階:江戸時代の資料と「歴史の中のマンボウ」

2階は打って変わって、江戸時代におけるマンボウの資料を見ることができるコーナーだ。

マンボウは巨体で風変わりな形態をしているので、江戸時代の研究者にとってもインパクトの強い魚だったらしく、意外にいろんな書物にマンボウが取り上げられていることが最近分かってきた。

地方による呼び名の違い: 江戸時代は「標準和名」という概念が無かったため、マンボウの呼び名も地方によって異なり、「ウキキ」や「マンザイラク」など様々な名前で記されている。

資料発掘の難しさ: 絵があればマンボウとすぐに分かるのだが、地方名だけで記されていた場合、なかなか資料を探すのは難しい。

しかし、江戸時代の人々も食べたり、薬にしたりとマンボウを色々活用していたようで非常に面白いので、今後も資料を発掘していきたいところだ。ちなみに今年は、長崎県平戸市にある松浦史料博物館収蔵の『甲子夜話』に収録されているマンボウの資料が1点追加されていた。

芸術との融合:「全力!マンボウ書道」と「マンボウ張り子」

全力!マンボウ書道

マンボウに関する芸術的イベントとして、今年は「全力!マンボウ書道」というコーナーが作られていた。ここはマンボウの字や絵を自由に書いて頂くコーナーである。

私は筆を持って字を書くという習慣が全く無いため、かなり久々に書道を行ったのだが、思っていたよりも上手く書けた気がする。書いたものはそのまま持ち帰ってもいいし、展示コーナーに並べて頂いてもよかった。私の書いたものはそのまま展示コーナーに並べて頂いたので、また何年後かに展示されるかもしれない。

マンボウの張り子

もう一つ、今回はマンボウの芸術作品として、張り子作家によるマンボウの張り子が展示されていた。

張り子とは、型に和紙を張り重ねて作る立体作品で、何でも作れるのだが、通常はだるまや招き猫の作品が売られている。中は空洞なので軽く、和紙独特の暖かみを感じられる伝統玩具になるのだが、おそらくマンボウを作ったのは初めてのことだったのではないだろうか? 展示されていたマンボウの張り子はカラフルで、どこか懐かしさを感じられる作品であった。

海くらのマンボウ祭は、マンボウに関する科学的側面だけでなく、芸術的側面も両方展示している点が非常に素晴らしい。

講演:ウシマンボウの研究史を振り返る

今回の私の講演は、ウシマンボウの研究史についての振り返りだった。ウシマンボウという標準和名は2010年に提唱したので、今年で16年が経過したことになる。現在ではウシマンボウの存在を知る人も増えてきたが、水族館では飼育されていないし、漁獲も稀なので、まだまだマイナーな魚類である。日本近海でのウシマンボウの詳しい回遊生態を明らかにするためにも、もっと認知度を上げたいところだ。

【講演でお話しした主なトピック】

●ウシマンボウがDNA解析で発見された経緯

●マンボウとウシマンボウの複数ある形態の違い

●世界中に広く分布しているのは実はウシマンボウの方で、マンボウは分布が北半球に偏っているという事実

●漫画『ゴールデンカムイ』の舞台である北海道のアイヌは、ウシマンボウも食べていた可能性が高いこと

●鳥取県ではまだウシマンボウが未記録であること(澤井,2026)

●鳥取県産ウシマンボウをゲットして、海くらで剥製を展示したいという野望

スクリーンデビュー!? チョボリンの映画出演と名物グルメ

チョボリンが映画『ゴールデンカムイ』に出演!

そうそう、忘れてはならないのが、2026年3月13日に公開された映画『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』に、海くらのマスコットキャラクターであるマンボウの大型剥製「チョボリン」が出演したのだ!

しかし、出演したと言ってもチョボリン本体が出た訳ではなく、チョボリンを3Dスキャンしたデータを元に軽量化した模型が作られ、その模型がさらにCG編集されて映画に出演したという形だ。

「模型があるなら映画制作会社からもらって、チョボリンの横に並べてみてはどうか?」と館長に提案したところ、模型は実物大で作られているため大型トラックで輸送する必要があり、輸送コストが莫大になるため難しいとのことだった。破棄されずにどこかで模型が利用されることを願うしかない。

 

名物「マンボウ入りタコ無したこ焼き」

「マンボウ入りタコ無したこ焼き」は今年も健在で、来館された方々に館長が焼いたものを配布していた。一見するとタコに見えなくもないが、これはマンボウの腸であって、タコは入っていない。マンボウ入りタコ無したこ焼きはそれなりに売れそうな気がするのだが、海くら以外では聞いたことが無い。

 

来年はついに10周年!アイデア募集中

来年はいよいよ海くらマンボウ祭も10周年を迎える。いつもよりもう少し派手にイベントをやりたいところだが……どんなことをするのが学びにもなり、楽しいイベントになるだろうかと悩んでいる。

読者の方で「こういうイベントはどうか?」というアイデアがあれば、是非提案して頂けると嬉しい。

 

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