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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、新種の巨大ウイルス「ウシクウイルス (Ushikuvirus)」の発見についてだよ!名前の通りこれは、茨城県の牛久沼から発見されたもので、直径が250nm (0.25µm=0.00025mm) にも達する、ウイルスとしては本当に大きな部類に入るものになるよ!
このウシクウイルスの発見、新種として興味深いのはもちろんだけど、それ以上にウシクウイルスや、関連する近い仲間の巨大ウイルスは、もしかすると私たち真核生物の進化にも関わりがある可能性があるのよね。なのでウシクウイルスのように、新しいウイルス種を見つけるのは大事になってくるのよ。
今回の解説記事では、ウシクウイルスそのものの特徴の紹介はもちろんなんだけど、関連する背景情報も加えた、巨大ウイルスに関する解説をしていくね。
CONTENTS

図1: ウイルスは典型的にはかなり小さいんだけど、一部のウイルスは光学顕微鏡で見えるほど巨大なものがあるんだよね。2000年代初頭に発見されて以降、この巨大ウイルスはウイルスだけでなく、生物との関わりという点でも研究が進められているよ。
「ウイルス」とは、とても簡単に言えば「核酸 (DNAやRNA) がカプシド (タンパク質の殻) に包まれた構造物」で、宿主となる細胞に感染して自分自身を複製する存在なのよね。一応は遺伝情報を持つ一方、あまりにも構造や機能が単純なので「ウイルスは生命なのか?」「ウイルスと生命の関係性」は現在でも議論が続いているよ。
ウイルスは典型的には小さな存在で、200nm (0.2µm=0.0002mm) もあればかなり大きな方なのよね。これでは肉眼ではもちろんのこと、光学顕微鏡ですら見ることができないのよ。一方で2000年代前半より、モノによっては1µm (0.001mm) を超え、光学顕微鏡で見えるほど巨大なウイルスが次々見つかるようになったのよね[注1] 。
このような巨大ウイルスの多くは、遺伝的な類似性から「核細胞質性ウイルス門 (Nucleocytoviricota)」に属しており、中には天然痘ウイルス (Orthopoxvirus variola) やアフリカ豚熱ウイルス (Asfivirus haemorrhagiae) のような、大型の多細胞生物に感染するようなものもいるよ。
一方、単細胞性のアメーバのような小さな生物に感染する巨大ウイルスも数多くいて、これらはヒトや身近な動物には感染しないことから、一般に知名度は低いよ。研究者自身も、その常識外れな大きさから、単細胞生物の繊毛だとか、ウイルスではなく細菌であると間違えてたくらい、ずっと見逃されていた存在だったのよね。
しかし実際に巨大ウイルスが発見されてみると、これらは単に見た目がだけでなく、遺伝情報もかなり巨大で複雑なことが明らかにされたのよね。中には、ゲノムの長さや遺伝子数だけで比べれば、一部の生物を上回るほど複雑な情報を持つウイルスもいるほどで、ウイルスと生命の境目が段々不明瞭になってきているのよ。
このような状況になってくると、ウイルスと生命の関連性というのも気になってくるよね。ウイルスは感染した宿主の細胞に入り込み、その構造や遺伝情報をいじる以上、生命を進化させた可能性もなくはないということになるからね。十分に複雑なウイルスがいるとなればなおさら気になるのよ。

図3: メドゥーサウイルスやクランデスティノウイルスのような巨大ウイルスは、それぞれに真核生物と近い特徴を持つ者がいるのよね。このことは、巨大ウイルスが真核生物の進化に関わっていることを示唆するけど、それを検証するにはもっと多くの巨大ウイルスを調べる必要があるよ。 (画像引用元番号②③)
今回紹介する研究にも関わっている東京理科大学の武村政春は、2001年に『細胞核ウイルス起源説』を提唱しているのよね。私たちのような真核生物は、細胞に核酸を収納する「細胞核」を持つけど、この細胞核は巨大ウイルスが細胞核を持たない生物 (原核生物) に感染・共生する形でできたのだろうとする説なのよ。
2003年にミミウイルス (Mimivirus bradfordmassiliense) が発見され、そのような巨大ウイルスが実在することが示されたわけだけど、特に注目すべき発見は、2019年に武村氏らによって北海道の定山渓温泉の湯溜まりから発見された「メドゥーサウイルス (Medusavirus)」になるよ。
メドゥーサウイルスは、現在は3種類[注2] が発見され、上位分類として「マモノウイルス科 (Mamonoviridae)」が設定さているけど、これはアカントアメーバの1種 (Acanthamoeba castellanii) に感染し、細胞を石のようにシスト化 (嚢胞化) させることから、見たものを石のように硬直させてしまう怪物に因んで名付けられたのよね[注3] 。
このメドゥーサウイルスは「宿主の細胞核を利用して自分を複製する」「フルセットのヒストン遺伝子を持つ」という変わった性質があるのよね。普通のウイルスは、細胞質でウイルス工場という構造を建造して複製を作る一方、メドゥーサウイルスは細胞核も利用しながら、ウイルス工場を使わない非典型的な複製方法を取るのよね。
そしてヒストンとは、核酸を折りたたんで効率的に収納するために必要なヒストンタンパク質のことで、メドゥーサウイルスは真核生物と同じようにフルセットのヒストン遺伝子を持っているのよね。端的に言えば、メドゥーサウイルスは他のウイルスと比べてかなり真核生物に近い性質を持っていることになるよ。
メドゥーサウイルスがかなり変わった性質を持ち、真核生物に近いとなると、本当に真核生物に関わりがあるのかどうかを調べたくなるよね?この辺を深掘りするには、メドゥーサウイルスそのものの研究も大事だけれども、それに近い性質を持つウイルスを調べ、その違いを比較することも大事になってくるよ。
重要な発見の1つは、2021年にフランス共和国のサン=ピエール=ド=メゾアルグの廃水サンプルから発見された「クランデスティノウイルス (Clandestinovirus)」になるよ。これはアカントアメーバに感染するメドゥーサウイルスとは異なり、ヴェルムアメーバの1種 (Vermamoeba vermiformis) に感染するのよ。
クランデスティノウイルスは細胞核を利用して自分を複製し、フルセットのヒストン遺伝子を持つなど、マモノウイルス科のメドゥーサウイルスとの共通点があるよ。一方で宿主が異なることや、遺伝的な距離の関係から、現状ではマモノウイルス科にかなり近い仲間ではあるものの、マモノウイルス科そのものには入ってないのよね。
そして、クランデスティノウイルスが感染するヴェルムアメーバは、他にも巨大ウイルスとの関連性が指摘されているのよ。なのでこの辺を深掘りすると、ウイルスと真核生物の関係性について、何か面白いことが分かりそうな雰囲気があったのよね。
そして今回武村氏らは、茨城県の牛久沼から新種の巨大ウイルスの発見を報告し、その報告に関する論文が、Bae Jiwan氏を筆頭著者としてJournal of Virology誌に掲載されたよ。この巨大ウイルスは、その発見場所から「ウシクウイルス (Ushikuvirus)」と名付けることが提案されているよ。
ここでちょっと脱線話。新種のウイルスに対して地名が付けられたことに、もしかすると「ん?」と思う人もいると思うのよね。この疑問は、2015年にWHO (世界保健機関) が出した、ウイルスの名前に対する制限のガイドラインが念頭にあると思うのよ。
確かにこのガイドラインは、ウイルスの名前に地名や人名を付けるのを制限があるんだけど、これは「(人獣共通感染症を含む) ヒトの感染症」に対する制限なのよね。感染症にそのような名前が付くと、ネガティブなイメージや差別など、誤った認識に繋がる恐れがあるという懸念からこのガイドラインがあるのよね。
逆に言うと、ヒトに感染する恐れがない場合、このガイドラインは適用されないことになるよ。今回お話する巨大ウイルスの場合、感染するのは単細胞性のアメーバ、しかもその中でもかなり限定された種にしか感染しないことが分かっているので、命名に関して心配することは無い、ということになるのよね。

図5: ウシクウイルスはメドゥーサウイルスやクランデスティノウイルスと比較し、それぞれに似ている点や違う点もあるのよね。これらを比較することによって、巨大ウイルスと真核生物との関わりについて、さらに多くのことが分かる可能性があるよ。 (画像引用元番号①)
さて話を元に戻すと、ウシクウイルスは、牛久沼に生息するヴェルムアメーバの1種に感染する形で見つかっているのよね。ちなみに、クランデスティノウイルスが感染するのと同じ種だね。そして蛇足だけど今回の報告は、日本の水生環境にてヴェルムアメーバから巨大ウイルスが単離された初めての報告にもなるのよね。
ウシクウイルスは、カプシドの直径が250nm (0.25µm) とかなり大きなウイルスで、その正二十面体な見た目はメドゥーサウイルスとよく似ているよ。ただ、カプシドから生えているスパイクタンパク質[注4] の先端にキャップのような構造を持つなど、見た目だけでもメドゥーサウイルスとは違う部分も見つかったのよ。
また、スパイクタンパク質のキャップのような構造の一部や、カプシドの形状は、トーキョーウイルス (Tokyovirus) との比較から、マルセイユウイルス科 (Marseilleviridae) のものと似ていることが分かったよ。これは、ウシクウイルスがメドゥーサウイルスとは似ているけど、それでも違いがあることを示唆しているのよね。
さらに、メドゥーサウイルスは宿主の細胞にウイルス工場を作らないけど、ウシクウイルスは宿主の細胞質にウイルス工場を作るのよね。また、自分を複製する過程で細胞核の膜 (核膜) を破壊する点も、ウシクウイルスはメドゥーサウイルスとは自分を複製する過程が違うことを表しているのよ。
そして核酸を調べてみると、ウシクウイルスはメドゥーサウイルスとはあまり似ておらず、むしろクランデスティノウイルスとかなり似ているのよね。例えば、ゲノムの長さは66万6605塩基対以上と、クランデスティノウイルスとほぼ同じな一方、メドゥーサウイルスの1.7倍も長いよ。
また、ウシクウイルスのゲノム配列は、クランデスティノウイルスと約7割の類似性があるのよね。これらを合わせると、ウシクウイルスはクランデスティノウイルスとかなり近縁なのよね。そしてクランデスティノウイルスはマモノウイルス科に入ってない以上、ウシクウイルスもマモノウイルス科には入らない可能性があるよ。
ただ思い出してほしいのは、クランデスティノウイルスはメドゥーサウイルスと少し遠縁な一方、自分の複製する方法は似ているということ。そしてウシクウイルスの複製方法は、そのどちらとも似てないこと。これらを合わせると、これらの巨大ウイルスは近縁でも、それぞれ辿ってきた進化の経路が違うことが示唆されるのよね。
なによりユニークなのは、ウシクウイルスが感染したヴェルムアメーバは、細胞の大きさが2倍に肥大化したのよね。このような細胞変性効果は、アカントアメーバに感染する巨大ウイルスでは見られないのよね。むしろ、一部のウイルス種では細胞が縮小することを考えると、ウイルスが宿主に及ぼす影響が違うことを示唆しているのよ。
なお、この宿主細胞の肥大化は、細胞内のウシクウイルスの量が増えたせいで起きた現象だとは推定されるんだけど、詳しい理由は調査中だよ。単純に細胞内のウイルス粒子の量が増えることで、細胞という袋が膨張した可能性もある一方で、実際には細胞は膨張しておらず、単なる観察環境の問題である可能性もあるからね[注5] 。

図6: 東京理科大学のプレスリリースに添付されたこの画像は、ウシクウイルスの特徴や、発見が注目される理由が良くまとめられているよ。 (画像引用元: 東京理科大学の日本語プレスリリースより)
どちらにしても、ウシクウイルスはまだ発見されたばかりなので、詳しい特徴はこれからの研究次第になってくるのよ。例えば、ウシクウイルスが持つ遺伝子の数は今回特定されただけでも784あるけど、そのうちの58%は似た配列が見つかってない遺伝子 (オーファン遺伝子) であり、はっきりとした機能が分かってないからね。
また、ウシクウイルスはマモノウイルス科に近いけれども、細胞への感染に重要なスパイクタンパク質のキャップの部分は、見た目的にはマルセイユウイルス科の構造と似ているのよね。もし見た目だけでなく機能も似ているならば、巨大ウイルスの間でどのような進化があったのかを解き明かすヒントになると思うのよ。
今はまだ未発表だけど、武村氏らはウシクウイルスのようなマモノウイルス科と近い関係にある関連ウイルスの候補を複数見つけているみたいなのよ。今後はこうした関連ウイルスを分析することで、ウシクウイルスを含めた様々な巨大ウイルスの進化や関係性についての理解が得られると思うのよね。
ウシクウイルスは名前こそ面白いけれども、その発見はウシクウイルスの周辺を含めて、私たち真核生物の進化の謎を解き明かすかもしれないという点で、今後も注目したい研究になるのよ。
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[注1] 巨大ウイルスの発見
本文で後述する通り、巨大ウイルスとして最初に発見されたミミウイルスは、当初は1992年に発見されました。しかし、あまりにも巨大であることから当初は細菌と誤認されており、実際にウイルスであると認識されたのは2003年になってからでした。 本文に戻る
[注2] メドゥーサウイルスは3種類発見
メドゥーサウイルスは現在「Acanthamoeba castellanii medusavirus (Medusavirus medusae)」と「medusavirus stheno (Medusavirus sthenus)」が正式に記載されています。これ以外に2025年に発見されたばかりの「medusavirus euryale」の発見も主張されていますが、現時点で正式な学名は与えられていません。 本文に戻る
[注3] メドゥーサウイルスによるシスト化
ただしこのシスト化は、感染力を持つウイルス量が少ない感染状況 (ウイルス力価が小さい状況) でのみ起こるのであり、感染力を持つウイルス量が多い感染状況 (ウイルス力価が大きい状況) では通常の細胞死を招くことが後の研究で明らかになっています。 本文に戻る
[注4] スパイクタンパク質
ウイルスのカプシドの周りにあるトゲのようなタンパク質。生物の細胞に感染する上で重要な構造であり、その構造の違いは細胞への感染の様子を変えるため、構造解析が重要となります。 本文に戻る
[注5] 感染細胞の肥大化理由
今回の観察結果は、実際に細胞が肥大化したこと以外に、見た目だけが肥大化した可能性もあります。複製されたウシクウイルスが細胞の外に出ると、スパイクタンパク質の先端部がフラスコの壁面にくっ付きます。これが糊のように作用すれば、ヴェルムアメーバの細胞自体を壁面にくっ付けるため、円盤状に変形します。これを真上から見れば、見た目上は細胞が肥大化して見えます。このような現象が起きていれば、実際には細胞そのものの体積が変化していないことになります。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<関連研究>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)