自分への落雷を利用する樹木「エボエ」の不思議な生態が明らかに!

2025.04.04

エボエの雷耐性 サムネ

(画像引用元番号①)

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は、樹木「エボエ (Dipteryx oleifera)」は、自分への落雷を生存競争に利用しているようだという興味深い内容の研究だよ!普通、樹木への落雷はその樹木を枯死させるけど、エボエは雷の直撃に耐えるだけでなく、その周りの樹木や蔓が電撃で枯死するのを利用して成長するらしいことが分かったんだよね!

 

そもそも、樹木に対する落雷の影響は、その樹木単体の影響については理解されているものの、森林全体のような生態系単位での影響はよく分かっていないんだよね。今回の研究は、落雷が森林環境に与える影響という、割と広い範囲に及ぶ謎を解明しようとした結果得られた成果だよ。

 

今回の研究は、生涯で5回も落雷を受けるとされるエボエの不思議な生態を明らかにするだけでなく、世界中で増加傾向にある落雷が森林環境に与える影響への考察にも役立つかもしれないから、かなり興味深い研究だよ!

 

樹木への落雷による生態系の影響はよく分かっていない

樹木への落雷の影響

樹木は背が高い生物で、移動もできないので、雷の直撃を受けやすいよね。ただ、年間数億本も枯死していると言われている中で、個々の樹木に対する影響は分かっていても、生態系に対する影響は未知な部分が多かったよ。

 

数百万Vの電圧を持つ雷が直撃すれば、大半の生物は大けがを免れず、場合によっては死んでしまうよね。特に、自力では動くことができず、周りよりも背が高くなりがちな樹木 (木本植物) にとってはまさに悩みの種で、落雷が原因の枯死は毎年世界中で数億本にのぼるとも推定されているよ。

 

落雷の影響は特に、熱帯雨林やマングローブ林のような密林で重要になってくるよ。雷は直接落ちた樹木だけでなく、隣接する木々にも飛び出して伝わるから、直撃しなくても被害が容易に発生するんだよね。熱帯雨林の場合、1回の落雷で平均23.6本の樹木が被災し、うち約6本が1年以内に枯死することを考えると、影響は大きいよね。

 

ただ、樹木の直接的な死因でありながら、雷が樹木の生態系に及ぼす影響はよく分かっていないんだよね。樹木が大量の炭素を固定し、様々な生物の住処や食料を提供することを考えると、影響がよく分かっていないというのは、森林の生態系を研究する上での重要なピースが欠けている事になっちゃうのよね。

 

知っての通り、雷は一瞬で消えてしまうこと、発生場所の予測ができないことが、研究を阻んでいるんだよね。おまけに落雷直後は、見た目上の変化は樹木の上部に限られる場合もあるから、広い森林のどの樹木に落雷したのかを見つけることは本質的に困難になるのよね。

 

落雷を生き延びる不思議な樹木「エボエ」

エボエ

今回の研究は、雷が直撃しても枯れなかったことが観察された樹木「エボエ」について、周辺の樹木も含めた落雷への影響を調査したよ。そのために専用のセンサー網を設置したんだよね! (画像引用元番号①②)

 

ケアリー生態系研究所のEvan M. Goraエヴァン・M・ゴラ氏などの研究チームは、樹木と落雷の関係に関する研究を長年行ってきたよ。2022年には、熱帯に生える樹木には落雷に対する強さの違いがあることを示した論文を投稿するなどしているけど、今回の研究は、ある1つの種に焦点を当てて研究を行ったよ。

 

その樹木は、学名を「ディプテリクス・オレイフェラ (Dipteryx oleifera)」、呼び名は「エボエ (eboe)」、「チョイバ (choibá)」、「トンカ・ビーン (tonka bean)」、あるいは「アルメンドロ (almendro)」と様々だよ。この記事ではエボエと呼ぶことにするね。

 

2015年にGora氏らは、パナマ共和国の森林を調査中、落雷を受けながらも耐えたエボエを見つけたよ。エボエ周辺の12本の樹木や、エボエに絡みついていた蔓性の寄生植物は枯れたにも関わらず、落雷を受けたエボエ自身は生き残ったんだよね。これを見つけたことで、Gora氏はエボエの耐久性に関心を持ったんだよね。

 

そこでGora氏らは、調査研究を行うためのプロジェクトを構築したよ。パナマ中央部にあるバロ・コロラド自然保護区の約8000km2をカバーするセンサー網を構築し、落雷の瞬間を見逃さないように工夫したんだよね。落雷を検知したら、まずはドローンを使って落雷した正確な樹木を調査し、次に人間による詳しい調査を行ったんだよね。

 

この手法により、3年間の調査期間中に12万回の落雷を捉えることに成功したんだよね!これは、他の類似プロジェクトの1000倍も多い水準だよ!今回の研究では、エボエ9本を含む様々な種類の樹木93本について詳しい追跡調査を行い、落雷の影響について評価を行ったんだよね。

 

エボエは落雷を生存競争に使っている!

エボエの雷耐性

調査の結果、雷が直撃した他の樹木は2年以内に64%が枯死するのに対し、エボエは9本とも枯死せず、樹冠もほとんどダメージを受けないという、並外れた耐性を持つことが分かったよ! (画像引用元番号③)

 

落雷を受けた93本の樹木の評価結果はかなり興味深かったよ。エボエ以外の種の樹木は、2年以内に64%が枯死し、生き残った樹木も樹冠 (樹のてっぺんで広がる枝葉) に大きなダメージを受けたよ。ところが、エボエは9本ともが全く枯死せず、樹冠に受けたダメージもわずかだったんだよね!

 

もちろんこれは、エボエに落ちた雷が弱かったわけじゃないよ。何しろ落雷の直撃を受けたエボエの周りの樹は、エボエに隣接していない木にまで電撃 (側撃雷) が届いているようで、平均9.2本の樹と、エボエに絡みついた蔓性の寄生植物の78%が枯死したんだよね!

 

よくよく見て見れば、エボエは周りの樹木と比べて平均4mも背が高く、樹冠も広いので、元から落雷を受けやすいっぽいんだよね。Gora氏らは、同じ太さの幹を持つ他の樹木と比較して、エボエが落雷を受ける確率は49%から68%も高くなると推定しているんだよね!

 

こんな調子なので、エボエは平均して56年に1回、生涯のうちに5回も落雷の直撃を受けるとも推定されるよ!実際、今回の観察中に5年間で2回も落雷を受けた個体も見つかったよ!逆に、エボエに隣接する他の樹木は側雷撃を受けやすくなり、エボエに隣接していない場合と比べて48%も枯死する恐れが高いことが推測されたんだよね。

 

雷の生態系への影響の推定にも役立つ研究

エボエへの落雷の恩恵

エボエに雷が直撃すると、その周りの樹木や寄生植物が枯れるんだよね。こうすると周りに競争相手がいなくなるから、エボエにとって利用できる光や空間が増えることになるよ。 (画像引用元番号④)

 

このエボエの雷を受けやすい性質は、どうやらエボエ自身にも恩恵があるみたいだよ。落雷を受けると、エボエはあまりダメージを受けないものの、自身の直接の競争相手である蔓や他の樹木が枯れてしまうよね。周りが枯れてしまえば、光と空間をめぐるライバルがいなくなり、自分が自由に枝葉を伸ばせる、ということになるよ!

 

エボエだけが雷に耐えて成長し続けるという関係上、エボエの雷耐性は、エボエ自身の繁殖能力を14倍にも高めているとGora氏らは考えているんだよね!もうこれは「落雷を自分のために利用している」と言ってもいいくらいの大きな違いになるよね!

 

今のところ、エボエの並外れた雷耐性の理由は明らかになっていないよ。Gora氏らは研究を行って秘密を解き明かそうとしているよ。この理由面の調査により、例えば樹木の構造や細胞の性質などの理由が明らかになれば、雷に強い他の種の樹木を見つけるにも役立つはずだよ。

 

他の樹木に対する落雷の影響は?

エボエは、自分自身への落雷を自分の利益に使っているらしいということが分かったんだよね!他にも落雷に強い樹木が見つかれば、その樹木だけでなく生態系全体への影響が明らかにされるかもしれないよ! (画像引用元番号⑤)

 

いずれにしても今回のGora氏らの研究は、樹木の生存競争の中でちゃんと評価がされていなかった雷の影響を明らかにした点で重要だね。近年進む気候変動は、多くの地域で雷の増加をもたらしているので、雷に強い種がますます生き残り、弱い種が減っていく傾向を加速させる可能性もあるよ。

 

今回の研究は、単に並外れて雷に強い木をあぶり出しただけでなく、世界中の森林でこれまで見過ごされてきた、落雷による森林環境の変貌にも光を当てた、という点で衝撃的とも言える研究だよ!

文献情報

<原著論文>

  • Evan M. Gora, et al.“How some tropical trees benefit from being struck by lightning: evidence for Dipteryx oleifera and other large-statured trees”. New Phytologist, 2025. DOI: 10.1111/nph.70062

       

      <参考文献>

         

        <画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

        1. エボエの1個体: プレスリリースより
        2. 研究中に捉えた落雷の一例: 研究プロジェクト説明より
        3. エボエの本体や樹冠の枯死率を他の種と比べたグラフ: 原著論文Fig2より
        4. 落雷から28日後と690日後の比較写真: プレスリリースより
        5. エボエの周りに空間ができているのを表した写真: プレスリリースより

           

          彩恵 りり(さいえ りり)

          「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
          本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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