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皆さんこんにちは!臨床工学技士のCEなかむーです!
今回は胃カメラや大腸カメラなどで活躍する内視鏡装置について深堀りしていこうと思います。内視鏡装置とはいったいどんな医療機器なのか?実はあの国民的アニメにも最新の内視鏡装置が登場していたことをご存じですか?それではどうぞご覧ください!
CONTENTS
内視鏡装置は、体内の組織や器官を直接観察するための医療機器です。管腔構造(筒状の構造)をした食道や胃、小腸や大腸などを観察する際によく用いられます。これにより、胃がんや大腸がんなどを医師が高画質ビデオカメラを通して直接観察できるようになり、病気の早期発見や治療が可能となりました。
内視鏡の起源については諸説ありますが、一説によるとその考え方自体は紀元前にさかのぼります。具体的には、古代ギリシア・ローマ時代に「人間の身体のなかを何らかの器具を使ってのぞいてみる」という考え方が存在していました。紀元(A.D.)1世紀のポンペイの遺跡からも、内視鏡の原型とみられる医療器具が発掘されているそうです。
以下に内視鏡の歴史について簡単にまとめてみました。(以下、太字は人名)
1805年 ボチニ「Lichtleiter(導光器)」という器具を製作。尿道や直腸、咽頭を観察
1853年 デソルモ 尿道や膀胱を観察する特殊な器具を製作し、この器具に初めて内視鏡(endoscope)という名称をつけた。
1868年 クスマウル 剣を呑みこむ大道芸人で初めて生きている人間の胃のなかを観察。
1878年 ニッチェとライターにより尿道・膀胱鏡が作られる。
1881年 ミクリッチらにより初めて直視の硬性胃鏡が実用化。
1932年 シンドラー 曲がったままでもできる軟性胃鏡の開発。
これらの初期の内視鏡は、医療技術の進歩に大いに貢献し、現在の内視鏡技術の基礎を築きあげ、現在では、内視鏡は医療分野だけでなく、工業分野などでも広く利用されるようになりました。
ボチニ「Lichtleiter(導光器)」|https://www.researchgate.net/より引用
そして現在、内視鏡メーカーの主な世界的なシェアはオリンパス、富士フイルム、ペンタックスの3社で、それぞれが特徴的な製品を提供しています。
元々どの企業も日本で創業し、高品質なデジタルカメラとレンズの製造で広く認識されている企業なので、撮像技術にもとても優れた装置が多くあります。
世界初の胃カメラを実用化して以来、60年以上にわたり内視鏡医療業界を牽引しています。オリンパスの技術力は非常に高く、特殊な光を使った観察技術のNBI(Narrow Band Imaging)は、青と緑の狭い波長の光を当てて、通常光では見づらい血管をくっきりと浮き上がらせて診断を容易にすることが可能です。
内視鏡市場のシェアは主にオリンパスが7割を占めています。
写真分野で培った画像処理技術と、医療分野で蓄積してきた光源制御技術などを活かし、診断のしやすさを徹底的に追求した各種内視鏡システムを提供しています。また、AI技術を用いた内視鏡画像診断支援システムも提供しており、病変のリアルタイム検出・鑑別が可能です。
内視鏡検査の成果を大幅に改善することをミッションとしており、最先端の研究開発と製造を通じて、世界中の医療機関に内視鏡システムとソリューションを提供しています。
特に帯域制限光を生成する独自のOEフィルターとデジタル画像処理技術はビデオプロセッサから供給される光の帯域を制限することにより、血管・粘膜の光学的な特徴をとらえ、デジタル処理によりコントラストを上げることで更なる視認性の向上を可能としています。
これらのメーカーは、胃や大腸の検査や治療に使われる内視鏡の市場で、世界シェアの9割以上を占めています。
内視鏡装置の動作確認風景(イメージ)
腹腔鏡検査と内視鏡検査は、どちらも体内の観察を目的とした医療技術ですが、使用方法や目的には大きな違いがあります。
内視鏡検査は、体の自然な開口部(口や肛門など)から内視鏡を挿入し、消化器系(食道、胃、大腸など)や気道(気管や肺)などの内部を直接観察します。
内視鏡は柔軟性があり、曲がりくねった経路を通ることができるため、管腔状の臓器を観察するのに適しています。この検査は、病変の発見や専用の器具を使用した生検(組織の採取)、スネアやナイフを使用した一部の治療(ポリープの除去など)に用いられます。
一方、腹腔鏡検査(または腹腔鏡手術)は、腹部に小さな切開を行い、その穴から腹腔鏡を挿入して腹腔内の臓器を観察します。
腹腔鏡は硬質で、直線的な視野を提供します。この手術は、診断だけでなく、臓器の治療や手術(例えば、胆嚢の除去や子宮の除去など)にも用いられます。腹腔鏡手術は低侵襲手術に分類され、最近話題になっているロボット支援下手術はこの腹腔鏡を用いて行っています。
カプセル内視鏡とは、小腸や大腸の病気を検出するために使用される小型の内視鏡装置です。この装置は、カメラを搭載した小型カプセルを飲み込むことで、腸の中を連続的に撮影します。撮影後は便と一緒に排泄されます。
カプセル内視鏡のサイズ感と外観
カプセル内視鏡の具体的な検査の流れは以下の通りです。
1.患者様の身体にデータレコーダとセンサーアレイを取り付けます。
2.次にカプセルを水と一緒に飲み込みます。検査は外来で行うことが可能です。
3.カプセル内視鏡は消化管の中を通過していき、1秒間に2枚または6枚の画像を撮影しながらデータレコーダに送信し続けます。
4.カプセルは排便時、体外に排出されます。便とともに流してしまわないように注意が必要です。
5.撮影された画像は、医師によってワークステーション(専用ソフトウェア)を用いて解析され、疾患の場所や状態を調べます。
注意点としては、カプセル内視鏡は腸管狭窄のある患者さんに使用すると滞留(詰まり)を起こす可能性があることです。そのため、消化管開通性評価用カプセル(パテンシーカプセル)を事前に飲んで、腸管にカプセル内視鏡が十分通過できる開通性があるかどうかを確かめます。
カプセル内視鏡検査の最大のメリットは痛みが少ないことです。通常の内視鏡検査では挿入時などに痛みや違和感が生じる心配がありますが、カプセル内視鏡を嚥下するときの物理的な苦痛は少なく実施できることができます。一方デメリットとしては、観察が主な機能であり手術ではないため、検査中に異常がある組織の生検やポリープの摘出はできないことです。
ところで、カプセル内視鏡について記事を執筆しているときに、ふと私が幼いころにテレビで放映されていたドラえもんの中でこんなお話があったのを思い出しました。
藤子・F・不二雄大全集:第4巻ドラえもんにも掲載されている「たとえ胃の中、水の中」というお話では、誤って母親のオパールを飲み込んでしまったしずかちゃんのためにのび太とドラえもんがひみつ道具の「瞬間移動潜水艦」をスモールライトで小さくしてしずかちゃんの体の中に進入し、オパールを回収すると言うお話なのですが、これはまさにカプセル内視鏡ではないかと思います。ドラえもんに登場していたひみつ道具が現実になっている医療業界を見ているとなんだかとても感慨深いものがありますよね!
ここまでお読みいただいた読者の皆様には、内視鏡検査は手術に比べて低侵襲かつ安全性の高い医療であることがお分かりいただけたのではないかと思います。
内視鏡を巧みに操るベテラン医師は「内視鏡の魔術師」と言われるほど素晴らしい技術を持っておられます。皆さんも内視鏡検査を気軽に受けてみてはいかがでしょうか?
次回も臨床工学技士のお仕事について深堀りしていきます!
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