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生物は、生態も生息環境も様々であり、同時に形態も実に様々である。そして、おそらくそれぞれの形に意味があると考えられる。
その意味も、生態学的な効果と工学的な原理では見方が変わる。
例えばヤモリの「天井や壁を歩ける」という機能だと、「行動範囲が広がる」という生態学的な効果と「脚先にある微細突起によるファンデルワールス力」という工学的原理がリンクしている。
そして、工学的な意味はバイオミメティクスに利用できる可能性がとても高い。今回は、そのような生物形態をバイオミメティクスと絡めつつ考えてみたい。
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まずは魚のヒレに着目したい。
魚の種類はとても豊富で、世界に2~3万種いると言われている。形態も様々であるので、比較しやすい部分として尾ヒレの形状についてみてみよう。
尾ヒレは、横から見た時の形や中央の凹み具合によって、大まかには5種類ぐらいに分けることができる。
真ん中が大きく凹み、両端が尖っている。
クロマグロやカツオなど、大型で遊泳速度の大きな魚が多い。なお、クロマグロは、時速80kmで泳ぐことができる。
真ん中が凹む。
マアジやマタイなど、比較的速く泳ぐことのできる魚が多い。
二つの葉が組み合わさったような形状。
スズメダイなど、泳ぎ回る魚が多い。
端が直線。
クサフグなど、普段はゆっくり泳ぐ魚が多い。
中央が外側にふくらむ。
ハゼ類など、底に留まり泳ぎ回らない魚が多い。
他にも魚全体の形とすると、マンボウやエイなどのヒレ形態も特徴的である。このように比較してみると、尾ヒレの形と泳ぐ能力には関係がありそうだと予想できるだろう。
これで君もマンボウ博士!?マンボウの形態をしっかり解説!
ほぼ常に速い速度で泳ぎ続けている魚、泳いではいるが小回りの効く泳ぎ方の魚、底に体を置くようにして生活している魚など、尾ヒレの形状は生態ごとに変わってきそうだ。
魚のヒレ形態は、ロボット関係や移動モジュールのバイオミメティクスとして参考にされている。
ロボットを活用したヤリマンボウ形態異常個体の遊泳実験の裏側
エイが波打つようにヒレを動かす泳ぎ方は効率が良いとされており、金で作られた骨格と伸縮性ポリマー、ラットの心筋細胞を組み合わせたエイ型ロボットも研究開発されている。
より大きなサイズでは、マンタを参考にして開発された「スクリューを用いない海底探索ロボット」が、水中ロボット競技会で優勝したそうだ。
魚全体の形態や泳ぎ方が着目されて開発されたものだと、ハコフグの形態を参考にしたクルマ『バイオニック・カー』(メルセデスベンツ)や、マンボウ型旅客機(JAXA)もある。
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魚については、背びれの形態や体全体の形態(側扁形、紡錘形、ウナギ形、矢形、etc.)についてもある程度のグループ分けをすることができる。
ぜひ水族館等で、比較してみて、それぞれの形態の魚がどのような生態を持っているのかを観察してみてほしい。

次は昆虫について見てみよう。
昆虫も種数が実に多いグループである。途方もない数だが、約95万種が既知種とされている。
食事も、他の生物を食べるもの、樹液をなめるもの、蜜を吸うものなど様々であり、それぞれによって口(口吻、口器)の形が大きく異なる。
その中で今回は「液体を吸う」という昆虫に注目してみた。
主に花の蜜を吸うチョウ類は、くるくると丸めることのできるとても細長い口を持っている。
動物の血液を吸うカは、とても身近な生物だが、チョウのように血液を吸う時に気付かれないように、複数の針状組織で穴をあけている。
また唾液にも、血液凝固防止や麻酔などの効果があり、吸血を助けている。カの口構造は「痛くない注射針」として、有名なバイオミメティクス技術の基になっている。
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動物の皮膚などよりもっと硬い樹皮に突き刺す為に、硬い針状の口器をもっている。
口器は、鋏角・触肢・上唇などから構成される。ハサミのような鋏角で皮膚を切り、なめとるように血液を吸う。
形態ではないが、ダニの中には、頭を皮膚中に突っ込んだ後、セメントのような物質で固めて自分と宿主を引っ付く種が報告されている。
この仕組みは、医療用接着剤としての利用が検討されている。
昆虫が液体を吸う行為ひとつとっても、液体のある場所や吸い方によって、口の形は異なっている。
「液体を移動させる」などの技術課題が生じた時、このように液を吸う仕組みをもつ生物を探してみるとどうだろうか?例えば、チョウの口吻を参考にした柔軟なホース、など。
また「液を吸う」というだけでも種種様々な仕組みがあるので、目当ての技術課題の解決にヒントとなりそうな生物が一つ見つかった時は、「他に似たような行動をするような生物はいないか」「他の生物の同じ部分はどのような形になっているのか」など考えてみると、アイデアが広がって新しいヒントが見つかる可能性がある。
今回は生物の体の同じ部分を比較することで、形態のおもしろさについて考えてみた。
過去の記事(『博物館でのバイオミメティクス体験ガイド:生物を存分に楽しもう!』)で博物館で生物を比較することについて書いたが、生態と形態の関係性に始まり、形態の工学的意味やバイオミメティクスへの応用も考えてみることで、その生物をより深く楽しめるかもしれない。
博物館でのバイオミメティクス体験ガイド:生物を存分に楽しもう!
・篠原現人, 野村周平 編著 (2016) 国立科学博物館叢書⑯ 生物の形や能力を利用する学問 バイオミメティクス, 東海大学出版部.
・葛西臨海水族園クロマグロ飼育チーム (2016) 世の中への扉 びっくり!マグロ大百科, 講談社.
・Sung-Jin Park et al. ,Phototactic guidance of a tissue-engineered soft-robotic ray.Science353,158-162(2016).DOI:10.1126/science.aaf4292
・メルセデスベンツ, bionic-car(動画)
・外骨格マンタ型ロボット:AIT-BMR
・星光(2023)バイオミメティクスを援用した新形態航空機の構造設計に関する取り組み事例. 航空/船舶を支えるバイオミメティクス, 23-2 バイオミメティクス研究会, pp. 3-5.
・環境省|平成20年版環境/循環型社会白書|第6章 自然環境の保全と自然とのふれあいの推進
・ナショナル ジオグラフィック(2018)驚愕!マダニの皮膚への強力接着剤、医療に応用へ