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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、心不全患者に補助人工心臓を使うと、心臓の再生が促されるかもしれない、という驚きの研究だよ!心不全の後に補助人工心臓を使った患者の一部は、健康な人と比べて6倍以上の速度で心筋細胞が分裂していることが分かったんだよね!
そもそも、心臓って全く再生しない臓器じゃないの?って思うところかもだけど、近年の研究により、遅いながらも出生後に心筋細胞は分裂することが分かってきたんだよね。そして今回の研究により、心不全という健康ではない心臓でも、細胞分裂が促される場合があることが分かったんだよね。
まだ基礎研究の段階であり、詳しい条件面についてはっきりと分かってないところも多いけど、今回の研究がいい方向に進めば、移植や再生医療以外に根本的な治療法がなかった心不全に対して、自力での再生という形でもっとアクセスしやすい治療法が開発されるかもしれないよ!
心臓は「全く」から「ほとんど」再生しない臓器に

心臓は再生しない臓器である、というのが長年の認識だったんだけど、最近の研究により、かなりゆっくりとだけど出生後でも心筋細胞は分裂することが分かってきたよ。でも心不全を起こした後の心臓で再生が起こるかについては、これまでに明確な証拠がなかったよ。 (画像引用元番号①②③)
「心臓」は、全身に血液を循環させるとても重要な臓器だよね。休みなく動き続ける筋肉の塊とも言える心臓だけど、心臓を構成し、動力でもある「心筋細胞」には、他の多くの細胞とは異なる特徴があるよ。それは、心筋細胞は生涯を通じてほとんど細胞分裂をしないということだよ。
確かに、一部の魚類や両生類には、心臓が再生するような動物もいるにはいるよ。しかしヒトにおいて、心臓が再生するタイミングは生まれる前の胎児のタイミングであり、生まれた後すぐに心筋細胞は分裂能力を失ってしまう、ということが長年の観察や研究により示されてきたよ。
心筋細胞が分裂しないということは、何らかの理由で心筋細胞がダメージを受け、機能が損なわれてしまうと、二度と回復しないことになるんだよね。この性質から、心臓の機能が低下する「心不全」に対して、進行を遅らせる薬はあっても、根本治療が可能な薬がないため、心不全に起因する心疾患は代表的な死因となっているよ。
心不全の根本的な治療法は、健康な心臓を移植する心臓移植や、培養した心筋細胞シートを貼り付ける再生医療のみであり、どちらも外部からの心筋細胞の移植を必要としていることは、心臓が再生能力を持たない臓器であることと関連しているんだよね。
ただし、「心臓は再生しない」という長年の理解は、最近になって大きく変化しているよ。例えばマウスを通じた実験では、出生後最大7日にわたって心筋細胞の再生能力が維持されていることが判明したんだよね。哺乳類の心臓の再生機能は出生直後に失われると考えられていたことを考えれば大きな進歩だよ!
また2009年には、心筋細胞は生まれた後においても分裂する能力を完全には失っていないことも分かってきたよ。その速度は年間約0.5%と極めて遅いので、心臓の細胞は一生で半分も入れ替わらないけど、それでも「心筋細胞は全く分裂しない」から「心筋細胞はほとんど分裂しない」に理解が変わったのはとても重要だよ。
また、心筋細胞が再生しないのは、分裂を停止する遺伝子の働きによるものであり、それを止めてしまうと、心臓の構造が有害となり得るような遺伝子の影響を受けることがあることも判明しているよ。細胞分裂をしないことが必ずしもデメリットばかりではない、ということも分かりつつあるんだよね。
そして、心不全の患者に対して、低下した心臓の機能を補うために使われる「左室補助人工心臓 (LVAD)」関連の研究でも大きな進歩があったよ。補助人工心臓は、心不全に対応した一時的・恒久的な装置になるけど、2014年の研究により、補助人工心臓を装着した患者の一部で心臓の状態が改善していることが報告されたんだよね!
これは、心不全を起こした心臓は、補助人工心臓による機能の補助があると、その後自力で再生することがある、と示唆しているんだよね。心臓は自力で再生しうるというのは、主要な死因である心疾患に関連し、臓器移植などの根本的な治療にアクセスすることが困難な心不全への対応にインパクトのある報告となるよね!
ただ、長年見逃されるほど非常にゆっくりとしか細胞分裂をしないので、心臓が再生している証拠を見つけるのはかなり難しいよ。炎症や損傷の跡、増殖した他の細胞が実験観察の邪魔をするので、心不全の後に心筋細胞の分裂が起こっているのかどうか、これまで明確な証拠を上げることができなかったんだよね。
「炭素14」の濃度を調べて心筋細胞の分裂速度を測る
ところで、見逃されるほど遅い心筋細胞の分裂を、2009年の研究でどのように調べたのかといえば、細胞に含まれる「炭素14」の濃度の差を測定したんだよね!炭素14は不安定な放射性同位体だけど、今回の研究においては、単に他の炭素原子と比べて約1兆分の1しか存在しない、珍しい炭素原子と見なして大丈夫だよ。[注1]
炭素14は化学的には炭素として振る舞うから、生物は炭素14を含んだ物質を元として細胞などの身体構造を作っていくよ。そして炭素14は、自然界では宇宙線と大気中の窒素との反応で生成され、その生成量は時代による変化は小さいよ。つまり何もなければ、生物に含まれる炭素14の濃度は一定なんだよね。
しかし、1950年頃から始まった冷戦の時代では、各国が行った大気内核実験という人工的な要因で、自然発生量をはるかに上回る大量の炭素14が生成されたんだよね。核実験の出力や頻度によって炭素14の生成量は変化するから、時代ごとに炭素14の存在量は大きく変わることになるよ。
ここで、心筋細胞は出生後にほとんど分裂しなくなることがカギとなってくるよ。細胞が分裂して成長するには、有機物を新たに仕入れて作るってことになるけど、出生後の心筋細胞の細胞分裂は極めて遅いことから、出生後は心筋細胞を構築する有機物の入れ替わりがかなり少ないことになるよね。
つまり心筋細胞は、出生前の細胞分裂が活発だった時に使った有機物に含まれる炭素14の濃度が、出生後もほとんど変化しないことになるよ。出生時の炭素14濃度は当時の大気の測定で分かることから、間接的に出生時の心筋細胞に含まれる炭素14の濃度を知ることができるよ。
そして、心筋細胞は実際には極めてゆっくりながらも細胞分裂をすることから、炭素14濃度は出生時から少しずつ変化していくことになるよ。この濃度変化から心筋細胞の分裂速度が測れるということが、2009年に出生後の心筋細胞の分裂の証明に繋がったんだよね。
補助人工心臓を使った患者は細胞分裂が活発に!
ドレスデン工科大学のWouter Derks氏などの研究チームは、心不全の後に心臓が再生するのか、再生するとすればどれくらいの速さなのか、補助人工心臓を使うことによる違いがあるのかを測る研究を行ったよ。今回の研究では58人の心不全患者の心臓組織を観察したよ。うち28人が補助人工心臓を使っていたんだよね。
心不全後の心臓で心筋細胞の分裂が起こっていることの証明は、細胞の構造変化やDNA合成のスピードなど、他のアプローチも行われているけど、細胞分裂の速度を見るために、上記の2009年の研究と同じく、ごくわずかな炭素14の濃度を測定したよ。
心筋細胞の調査の結果、心不全を起こした患者の心筋細胞では、健康な人の心筋細胞と比べ、DNAの合成が促されていることが分かったよ。これは細胞分裂のための準備と言えるね。ただし、実際の細胞分裂はほとんど起きてないようで、健康な人と比べて細胞分裂の速度が18分の1から50分の1にまで低下していたんだよね。
しかし、これは何の介入もない場合の話。左室補助人工心臓を使っていた患者の一部では全く違う結果が出てたよ。補助人工心臓の介入があると、25%の患者の心筋細胞は、健康な人と比べてなんと6倍以上も速い細胞分裂という、著しい再生能力を示したんだよ!
この観察結果は、一部の患者は補助人工心臓の使用後に心臓の状態が改善したという報告と一致するもので、かつ心筋細胞は出生後に分裂しないというかつての認識を完全に打ち砕くものであると言えるよ。それどころか、これは心不全という病気に対して大きなインパクトを与えるよね。
心臓移植にしても再生医療にしても、心臓は再生しないので外部から心筋細胞を持ってこなければならない、という点で共通しているよね。ところが今回の研究により、心臓は元から再生する能力を持っていることを示しているので、再生能力を促す治療法が見つかるかもしれないという希望が出てきたんだよね!
心臓に“休み”を与えることが再生へのカギ?
もちろん、今回は基礎研究的な部分なので、根本的な治療法の開拓にはまだまだ時間がかかるよ。心筋細胞の分裂を停止する遺伝子があることは分かっているけど、なぜ補助人工心臓を使うと再生が促されるのか、という点についてはまだまだ未知の点が多いからね。
ただ、推定される理由の1つとして、心臓が文字通り休みなく動き続けている臓器であることが関与している可能性があるよ。普通の手足の筋肉でさえ、適切に休まなければ治りが遅くなり筋肉痛が長引く、ってことを考えれば、休む暇なしの心筋細胞が再生できないというのは幾分か納得できるよね。
もちろん、骨格筋と心筋では色々違う部分もあるのでこんな単純な論理ではないと思うけど、心不全は心筋細胞に対する過剰な負荷で起こる事、補助人工心臓が部分的に心臓の代わりとなることで心筋細胞に“休み”を与えることができる事を考えれば、心筋細胞の負担と再生には関わりがあることは可能性として考えられるよ。
Derks氏らは、心筋細胞が分裂する正確な条件面を探ることを次の研究目標としているよ。その対象には、補助人工心臓を装着した患者の内、心筋細胞が再生したのは25%と一部に留まった理由も含まれるよ。一部の患者の心筋細胞が再生することは確認されたけど、なぜ一部なのか、というのは今のところ分からないんだよね。
もしこの25%という数字を、100%に近づけるような条件面が分かるようになれば、心臓移植や再生医療ではなく、自力で心臓を再生することで心不全を治療する、なんて道も開けると思うんだよね!今後の研究にメチャクチャ期待したい話だよ!
[注1] 放射性同位体としての炭素14の扱い
炭素14は半減期5700年の放射性同位体であり、実際には人間の寿命の数十年間で少しずつ減ります。その変化量はわずかですが、研究ではこの減少分を考慮に入れた補正計算を行っています。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<関連研究>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)