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みなさんこんにちは!CEなかむーです!
今回は私のフリーランス事業のサービスのひとつとして取り組んでいる「移動支援」についてご紹介しようと思います。
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私たちが日々生活する中で「移動」することはもはや当たり前だと思います。誰に教わるでもなく「移動する」という活動は人間だけでなく、地球上の生命すべてが等しく持っている本能ではないでしょうか。
「買い物に行く」「仕事に行く」「遊びに行く」「旅行に行く」「友人や大事な人に逢いに行く」
私たちはどこへ行くにも自ら立ちあがって歩ける足と、人類の叡智と科学技術で生み出した自動車や電車、飛行機などの交通手段を用いて、どんなに遠くでも移動することができます。
しかし、突然の病気や障害、事故によるケガなどによってそれらが自由にできなくなり、制限されたとするとどうでしょう。心が鉛のように重くなり、とても悲しい気持ちになり、やりきれない気持ちになるばかりか、生きる希望もなくなってしまうかもしれません。
コロナ禍において国外だけでなく、国内ですら自由に移動ができず制限された時期もあったため、その気持ちはよくお分かりになると思います。
「行きたい」という願望は、健康な方も障害がある方も持病がある方も、誰でも等しく持っている幸せを享受できる方法であるともいえます。「生きる力」を支える想いといっても過言ではないかもしれません。
しかしながら、実際には病気や障害のある方は移動に際してとても多くの「壁」が立ちはだかります。介助者がいないために外出や旅行を諦めないといけないこともありますし、車いすや杖歩行で移動することができるのに、公共交通機関を使って遠出する際にはどのような利用方法とサービスがあるかわからないケースもあります。私たちはこの壁のことを「バリア」と呼んでいます。「バリアフリー」とは対象者である障害者を含む高齢者等が社会生活をするうえで、生活の障害となる物理的な障壁や精神的な障壁を取り除くことを意味しています。
移動支援が必要な方の壁(バリア)として考えられることには以下のようなことが考えられます。
移動支援という取り組みはこれらの壁を取り除き、行きたい(生きたい)を叶える取り組みであると考えています。
このサービスは、平成25年4月に施行された「障害者総合支援法」という法律に基づいたもので、病気や障害があっても地域社会で自立した生活が送れるように支援できる法案を定めたものです。この法律の対象者は病気のある方や障害者だけでなく、一部の難病患者も含まれています。
病気や障害があって移動が困難な方に対して、外出や旅行といった移動時に介助者が同行して支援介入することを言います。介助者がいない場合には、自宅から目的地まで同行し一緒に外出します。
一般的な移動支援の方法として、移動支援に取り組んでいる訪問看護/介護事業所や医療従事者が所属する NPO 法人を利用することが多いです。その場合、同行者は介護士や看護師などが行います。中には理学療法士や作業療法士が移動支援同行をしていて、旅行をすることを目標として、移動で使用する筋肉や関節の動きを、日々のリハビリプランの中に組み込んで支援している事例もあります。
臨床工学技士がこの移動支援にどのように介入するかを考えたとき、医療機器を装着された方(主に人工呼吸器)が移動することに壁があるのではないか? ということに気づきました。ご存知の通り人工呼吸器は、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する「呼吸」という生命活動を機械的に代替する医療機器です。機器の誤作動やトラブルが患者様の命の危機に直結する「生命維持管理装置」です。在宅で人工呼吸器を装着されている患者様は2018年3月末時点でおよそ2万人いるというデータがあります。(TPPV:気管切開下陽圧人工呼吸器、NPPV:非侵襲的陽圧人工呼吸器合わせて)
人工呼吸器のトラブルには以下のようなものがあります。
このように人工呼吸器のトラブルの大半は呼吸回路が占めていて、移動支援においてもこれらのトラブル要因が起こらないよう、支援介入することが必要だと考えます。移動中に車のドアや隙間、車いすなどに呼吸回路を挟み込んだりしないこと、不測の事態に備えて新品の呼吸回路や周辺装備(カニューレや人工鼻など)を持参するなど、様々な対策を講じ、細心の注意を払う必要があります。また、人工呼吸器は電気で作動しているため、移動中にコンセントやバッテリーなどから電源供給が絶たれてしまうと人工呼吸器が停止してしまい、最悪の場合、生命の危機に繋がります。外出中や移動時には「電源を確保する手段があること」が必須条件です。
人工呼吸器は機械である以上必ず壊れますし、その危機を回避して安心して移動するためには、移動中も機器の観察を行い、トラブルを未然に察知できる医療機器に特化した人材=臨床工学技士の介入が必要なのではないかと思います。
あまり知られていないかもしれませんが、臨床工学技士が移動支援介入している事例をひとつ紹介いたします。私自身、病院勤務時代に日常的にやっていたので、それが「移動支援」であるという認識は全くなかったのですが、人工呼吸器を装着した患者様を安全に病院に搬送するため、救急車や福祉タクシーに同乗するというケースです。転院時には外部バッテリーの装着された人工呼吸器に変更し、患者様の呼吸状態と機器の作動状況を逐一観察しながら目的地まで同行していました。目的地に到着してからは、転院先の人工呼吸器へと変更し、申し送り事項等を転院先の医療従事者に伝達していました。
さて、今度は私が実際に支援介入した症例をご紹介いたします。
症例:40代男性 進行性筋ジストロフィーにて20年以上人工呼吸器管理下 国立病院にて療養中
『就業していた職場に仲間達が集まるのでどうしてもいきたい』とのことで、NPO法人の移動支援看護師さんと共に支援介入
移動方法および時間 介護タクシーに看護師2名、臨床工学技士1名で同乗。およそ6時間
コロナ対応の関係で患者様にはアンケートを取ることができませんでしたが、臨床工学技士が同乗することで移動中の機器の安全管理は担保され、同行する看護師さんの不安や負担軽減にも役立つサービスであると考えています。
いかがでしたか?
R5年5月から新型コロナウィルス感染症が感染症法分類2類から5類へ移行することもあり、国内の移動需要も再び活発化してくると思われます。行きたい場所へ、逢いたい人に会いに行ける移動支援の魅力を知っていただければ嬉しいです!
次回はこの移動支援に取り組んでいる国内の医療従事者の方々をご紹介させていただきます(^^)/
参考文献・引用
障害者支援法 イラスト
https://wa9ta.hatenablog.jp/entry/2015/03/15/160418
人工呼吸器トラブル(全日本国立医療労働組合2000年10月調査結果より)
https://www.kango-roo.com/learning/3323/
この記事を読んで、「臨床工学技士おでかけサービス」や、中村さんに興味を持った方は、ぜひお問い合わせください!