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以前の記事でも紹介したように、今年も海とくらしの史料館(通称海くら)でのマンボウ特化型企画展「マンボウ祭2025」が2025年4月26日~5月25日の期間に行われ、無事閉幕した。

私は2025年5月10~11日にかけて講演などのイベントをやることになっていたので、該当日に海くらに足を運んだ。本記事ではまず初日のヤリマンボウの公開解体調査の様子を振り返ろう。
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2025年5月10日は、ヤリマンボウの公開解体調査を行った。事の発端は、前回の記事にも書いたが、館長が2024年10月に隠岐諸島の沖で漁獲されたヤリマンボウを入手したことによる。この日のために約7ヶ月間自宅の冷凍ストッカーで保存されていたヤリマンボウが、ついに公にお披露目されることになった! ヤリマンボウは毎年日本のどこかでは漁獲されているが、あまり日本には回遊して来ないので、実は私も数えるくらいしか日本近海のヤリマンボウは解剖したことがなかった。せっかくヤリマンボウを調べるなら色々じっくり調査したいなと思い、この日は本当に私がただ海くらの中庭でヤリマンボウを調査し、来館した人がそれを見ているだけのイベントになった。
こちらが館長の家から冷凍ヤリマンボウを海くらに運んでいる様子だ。ブルーシートに厳重にくるみ、車の後部に載せて運んでいる。何ともいけない雰囲気が漂う光景だ。マンボウ類は結構水分が多いので、車で運ぶ際は本当に厳重に袋詰めにした方が、体液が垂れなくていい。

こちらが私が持参した調査アイテム。久々のフィールドワークなので、家のあちこちから搔き集めた。物差しやメジャーやノギスは計測用、スクリュー瓶は標本保存用(中に100%エタノールを入れている)。シャーレは脳や平衡砂(耳石みたいなもの)など摘出した小さな臓器を入れたりするのに便利。待ち針は、計測時に計測ポイントを魚体に直接刺すのに使う。ピンセットは何かと臓器を摘まみ出すのに便利。解剖バサミは超使うので調査必須アイテムだ。瓶は今回、ヤリマンボウの肝油を作ろうと思って持って来た。調査シートは私の先輩が作ったものを改良して今でも使っている(もう18年も使っている独自の調査シートだ)。解剖のメイン道具である包丁は海くらに準備して頂いた。

こちらは様々な計量器。マンボウ類は魚体が大きく、また臓器もそれなりに大きいので、臓器の計量をするだけでも様々な計量単位で量れる計量器が必要になる。今回は0.01g単位、1g単位、2g単位、5g単位、0.1kg単位で量れるものを大きさに合わせて使用した。

海くらに到着後、調査で一番最初にすることは、体重計測だ! 解凍が進むと体液や独特なニオイが出てきて量り辛くなる。冷凍状態でササッと計量するのが一番良い。本当は全身丸ごと冷凍が理想的なのだが、今回は館長の冷凍ストッカーに入れる都合で、背鰭と臀鰭、体を2分割した状態で冷凍されていた。人間用の体重計に分割されたヤリマンボウのパーツを手に持って計量。事前に量った私の体重を引くと、ヤリマンボウの重さが算出される。少し過小評価されている可能性は否めないが、このヤリマンボウは28kgだった。私が行っているマンボウ類の調査項目は結構多いので、開館前から早速調査を始める……しかし、体のいくつかのパーツが曲がった状態で凍っていた! このままだと正確な計測ができないので、シャワーの水流で早く解凍するよう促した。館長は前日の夜に冷凍ストッカーから出していたと言っていたが、まだ全然凍った状態だった。

シャワーで積極的に凍っている部分を溶かしているうちに開館。ぞろぞろとお客さんが入って来る。ヤリマンボウに触る機会なんて一生に一度しかない人もいると思ったので、鰭や体など積極的に触ってもらうことにした。シャワーの水流で解凍を進めつつも、計測できるところからやっていこうと思い、鰭の長さや眼の直径などを計測していく。特に解説することが無かったので、見ているお客さんは私が計測している地味な作業をじっと見ているだけだったが、これが実際の生物研究の現場である。中にはテレビ番組でやっているようなハイテンションな感じで調査を行っている人もいるかもしれないが、私は淡々と作業をこなす人なので地味。この映えない地味な作業がテレビで取り上げられることはほとんどない。しかし、こういう地味な作業でデータを着実に取ることはかなり重要なのだ!
お昼を回るとヤリマンボウの解凍も進み、曲がっていた体が平坦になったので、本格的に計測調査を始める。マンボウ類は魚体が大きいので、両手を伸ばしても一人で計測できないことが多い。そこで私が編み出した計測方法は、コンクリートブロックを3つ使って計測する方法だ! コンクリートブロックは適度に重さがあり動きにくい。四角い形状なので計測部位にピンポイントで角を当てて計測できる。メジャーの先端をガムテープでコンクリートブロックに貼れ、高さが同じなのでまっすぐ伸ばして一人で計測できる、という様々な利点がある。この方法なら誰かに手伝ってもらう必要が無く、自分のペースでじっくり調査ができる。流石に漁獲現場にコンクリートブロックを持ち込むことは難しいが、落ち着いた環境で調査ができるなら、コンクリートブロックは非常に役に立つ。

計測が終わると、解剖を開始した。しかし、ここでちょっとしたアクシデント。解剖を進めていると、風が強くなり始め、雨・日除けに張っていたタープが崩れる恐れが出てきたため、取り除くことに。強い風を感じながらも、私はさらに解剖を進め、データを取っていった……しかし、閉館時間を迎え、風がますます強くなり、雨も少し降り始めたので流石に外での作業はタイムリミット! 解剖途中だが、ここで一旦中断して、解剖の続きは翌朝に持ち越すことになった。マンボウ類の調査をじっくりすると、なかなか地味で大変なことがお分かり頂けたのではないだろうか。一日で調査を終えられなかったのはちょっとショックだったが、いろいろ面白いデータも取ることができた。この解剖調査で取ったデータは既に論文として出版しており、末尾の参考文献のリンク先で読むことができるので、興味が湧いた人は是非見てみて欲しい(内臓写真がたくさん載っているので要注意)。
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