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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、レーザーで落雷場所を誘導する「レーザー避雷針」が、屋外の実際の雷で機能することを始めて実証した実験についてだよ!
ベンジャミン・フランクリンが1752年に発明して以来、避雷針はその基本設計に大きな変更が加えられたことはなく、現在でも雷対策の重要な立ち位置だよ。
しかしながら、避雷針の有効範囲に対してインフラ施設は大型化し、段々と改良が求められるようになってきたよ。
今回の実験では、これまで実験室でしか成功していなかった、レーザーで落雷場所を誘導するレーザー避雷針という技術が、初めて野外で成功したことを説明した論文だよ!
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「雷」は、私たちが身近で感じる最も極端な自然現象の1つだよ。数百万ボルトの電圧と数十万アンペアの電流が雷雲と地表の間を流れ、その破壊力はすさまじいよ。
雷は観る者を圧倒させる現象であると同時に、森林火災やインフラの破壊など、様々な災害の源でもあるよ。1年で最大2万4000人が犠牲となり、数千億円の損害が発生するよ。
雷がどこに落下するのかは予測不可能だけど、ある程度誘導する「避雷針」という技術は確立しているよ。これの基本設計はベンジャミン・フランクリンの発明時からそう変わってないよ。
ベンジャミン・フランクリンは、嵐の日に凧揚げを行って、雷が電気的現象であることを世界で初めて証明した人物として有名だね。この実験を行ったのは1752年だよ。
この凧揚げによる実験を行う数年前から、フランクリンは避雷針のアイデアを検討し、凧揚げ実験を行う数ヶ月前に雷を誘導することに成功していたよ。
フランクリンが考案した避雷針は、細かい改良はあっても基本構想は変わらず、270年以上も世界中で使われ続けてきたよ。避雷針はそれだけ有効性があるとも言えるよ。
ただ、避雷針の有効範囲は高さと同じ範囲と言われているよ。例えば10mの高さの避雷針は、10mの範囲をカバーできると言われているよ。
そうなると、空港や発電所のような大規模施設の場合、高さでも本数でも、全ての範囲をカバーできるような避雷針を立てることは難しいから、どうしても穴ができてしまうよ。
そこで、雷を直接誘導し、避雷針へと落雷させることで、避雷針の有効範囲を上げようとする研究も進められてきたよ。とはいえ、それは実用化が困難と言う問題があったよ。
この種のアイデアの古い例は、1965年に考案された、ロケットを使う方法がよく知られているよ。ロケットは地面に繋がったとても長いワイヤーを空中に伸ばす機能があるよ。
雷雲があり、雷が落ちそうな条件でロケットを飛ばせば、最も雷が落ちやすい条件を人工的に生み出せるよ。これにより雷はロケットに落下し、電流はワイヤーを伝って地面へと流れるよ。
雷が落ちるのは雷雲と地面との間の電気的な不安定さによるもので、落雷すれば不安定さは解消されるから、他の施設に落ちる確率をぐっと下げることができるというわけ。
ただ、ロケットは使い捨てだし、当然ながら安くない方法だよ。加えて、ロケットと長いワイヤーが変な所に落ちてくるリスクも考えれば、実用化できなかったのは無理もないね。

強力なレーザーを大気中に放つと、大気中に含まれる窒素分子や酸素分子がイオン化し、周辺と比べて電気が通りやすくなるよ。電気が通りやすい経路を避雷針の近くに生み出し、雷を避雷針まで誘導するのが「レーザー避雷針」の狙いだよ。 (画像引用元: 元論文Fig1)
一方で、1974年にはもっと実用化できそうなアイデアが考案されたよ。それは大気中にレーザーを打つ方法で、雷が避雷針へと落下するよう誘導する技術だよ。
出力が強力なレーザーを大気中に打つと、窒素や酸素などの分子がイオン化するよ。そこは電流の担い手である電子が多くあるので、それだけ電流が流れやすくなるよ。
つまり、レーザーが通った場所がそのまま雷の通り道となるから、避雷針の近くにレーザー装置を置けば、避雷針の範囲外の雷を避雷針へと誘導できるというわけだよ!
レーザー装置なら、ワイヤー付きロケットと違って使い捨てじゃないし、雷雲発生時以外にスイッチを切っておけば、上空を飛ぶ航空機以外に危険が及ぶこともないから、はるかに安全だよ!
これは「レーザー避雷針 (Laser Lightning Rod)」と呼ばれ、従来のフランクリン型避雷針と組み合わせることで、格段に性能を伸ばせるのではないか、と期待されているよ!
ただ、大気中で放ったレーザーはすぐさま吸収されてしまうから、これを行うには相当強力なレーザー装置が必要だよ。また、雲の中では更に有効範囲が短くなってしまうよ。
このため、レーザー避雷針はアイデアこそ1974年に考案されたけど、実際に実験を行えるようになったのは1999年からで、ほとんどが室内の放電装置でのみ実験が行われていたよ。
一応、2004年にニューメキシコ州で、2011年にシンガポールで、それぞれ屋外でのレーザー避雷針実験が行われたこともあるけど、これはほとんど成功しなかったよ。
ジュネーヴ大学などの研究チームは、このレーザー避雷針と言うアイデアが本当に実用化できるのか、初の本格的な実証実験を行ったよ!
スイスにある観光地、標高2502mのセンティス山には、高さ124mの「センティス送信塔」があるよ。これは放送用アンテナだけど、2010年から雷観測装置も設置されているよ。
高い山の上の、更にとんがった先端と言うこともあって、センティス送信塔には年間100回という高頻度な落雷があるから、雷の研究にはうってつけと言うわけ!
今回の研究では、この塔のすぐ脇にレーザー装置を設置し、本来なら落雷しないであろう雷を塔へと誘導できるのかどうか、野外実験を行ったよ。
レーザー装置は塔の先端部を掠めるよう上空に向けて放たれたよ。また、塔の先端部から上空30mまでの距離で、レーザーがフィラメント化[注1]するように設計したよ。
今回の実験で特に工夫したのは、これが持続時間7ピコ秒 (1兆分の7秒) [注2]という極めて短い時間で放たれるパルスレーザーである点だよ。
パルスレーザーにすることで、大気や雲による吸収の影響を最小限とし、有効性を高める、という工夫が有効となるかどうかも、この実験の狙いだよ。
パルスレーザーの発生と、1秒間に1000回放つという制御性のため、レーザー装置は幅1.5m、長さ8m、重さ3トンというかなり巨大な装置となったよ!
実験は、センティス山の雷活動が激しくなる2021年7月21日から9月30日までの間、雷雲が塔の3km以内で発生した時にレーザー装置を稼働させるという条件で行ったよ。
この時、レーザーの有無による実験結果の差を比較し、また影響を最小化するため、付近で航空機が飛ばないようにするという措置も取られたよ。
その結果、実験期間中に16回の塔への落雷が観測され、うち4回がレーザー照射中に落下した、という結果になったよ。
この4回は、どれも「上向き雷」というものに分類されるよ。これは雷雲から地面へという通常の雷とは逆で、地面から雷雲へと稲光が移動して見える現象だよ。
だから、レーザーで実験中の雷は、全て塔から雷雲へと雷が移動した、と言うことになるよ。自然で起こるのは珍しい方だけど、レーザー実験中に起こるのはちゃんと理由があるよ。
簡単に言えば、レーザーが生み出す雷を誘導する環境が、上向き雷を発生しやすい環境を人工的に作っているので、自然では珍しい上向き雷が発生しやすい環境にある、と言うことになるよ。

2021年7月24日の落雷の瞬間を遠方の2ヶ所から撮影した写真。塔先端部 (赤矢印) から放出された雷は、約50m程度はレーザーに沿って移動したことが分かるね。 (画像引用元: 元論文Fig2)
特に、2021年7月24日に落下した雷は、周辺が比較的晴れていたこともあって、遠くのカメラが落雷の瞬間をとらえることに成功したんだよ。
これを見れば一目瞭然。雷は塔から約50mの距離を、レーザーの軌道にほぼ沿うように移動したことがわかったよ!多少のズレは、雷の電気的性質による予想の範囲内だったよ![注3]
視覚的だけでなく、雷から放たれる電波 (超短波) の観測でも、雷はレーザーの軌道に沿って、より狭い範囲を流れていることが明らかにされたよ。
また、雷から放たれるX線は、レーザーがある時の方が無い時と比べてはるかに多く放出される傾向にあり、フィラメント通過時に大半が放出されたことも分かったよ。
更に、塔から放たれた雷は、そのまま途中まで1本で流れているよ。通常の上向き雷は発生点から複数に広がることが珍しくないことからすると、これは注目すべきポイントだよ。

レーザー照射をしている時 (a) と、レーザー照射をしていない時 (b) とで比べた、同じ上向き雷のハイスピードカメラ画像。通常の上向き雷の場合、発生点である塔の先端から複数の経路に分かれるよ。これに対しレーザー照射を行っている時には、しばらくの間は1本のまま進んでいるね。雷の経路がレーザーによって誘導されているという1つの証拠だよ。 (画像引用元: 元論文Fig3)
今回の実験では、避雷針を持つ塔の上空に雷の通り道を作ることによって、数十mの長さで意図的に落雷の方向を操ることに、野外の実際の雷では初めて成功したよ!
先行研究と比べ、今回の実験が成功したのは、レーザーが1秒間に1000回と言うハイペースで繰り返し照射されたことがカギであると研究チームは考えているよ。
まず、雷が発生する直前には、周辺の電界が数分の1秒から数十分の1秒というゆっくりとした時間で変化するという前兆現象が発生するよ。
この空間に1000分の1秒ペースでレーザーが通過して、この変化がキャンセルされることで、レーザーに誘導されない雷自体が発生しにくくなる、という現象が起きたと考えられるよ。
また、レーザーが放たれると窒素や酸素などの分子がイオン化すると説明したけど、これはイオン化によって自由になった電子が存在することを意味するよ。
自由になった電子は、中性なままの酸素分子に吸収されることによって、中性だった酸素分子が電気を帯びる状態となって一時的に安定化するよ。
この状態はレーザーによるイオン化よりは寿命が長く、レーザーが継続的に通過することによって持続的に作られることから、結果的に一定量が持続する状態となるよ。
つまりこれは、レーザーによって生成された雷の流れやすいルートが、寿命の長い電気を帯びた酸素分子によって "記憶" され、安定的に保持されることを意味するよ!
これらの要因が、今回の野外実験では雷の誘導に複数回成功するという結果として現れた、と研究チームは考えているよ。
つまり今回の研究結果を踏まえれば、強力なパルスレーザーを短い時間で繰り返し放射することによって、雷の誘導が可能であるという結果が得られるんだよ!
今回の研究結果は、レーザー避雷針に関して、まだまだ理論的な背景が十分ではない現象も観測していることから、まだまだ洗練される余地があると研究チームは考えているよ。
例えば、レーザーの出力場所の配置変更や、波長の変更、およびフィラメント化する場所を変更することによって、誘導成功率を上げたり、異なる性質の雷を誘導できると考えられるよ。
パルスレーザーは雲の中でも届くことから、将来的には雷雲から直接雷を誘導することすら可能になると考えられているよ!
研究チームは実験を改良し、長期的には10mの避雷針の有効範囲を500mまで拡大することを目指しているよ!そうなれば相当な進歩だよ!
[原著論文]
[参考文献]
[注1]レーザーのフィラメント化 ↩︎
太陽光を虫眼鏡で集中させれば、局所的に温度が上がる。この場合、集中するのは1点である。一方、極めて短い周期で変化するパルスレーザーの場合、集中する場所が多少の長さを持つ直線的な分布を持たせることができる。これがフィラメント化である。
[注2] 持続時間7ピコ秒 ↩︎
正確には持続時間920フェムト秒 (0.92ピコ秒) の出力が可能であるが、実験ではレーザー発振装置の損傷を防ぐため、7ピコ秒へとチャープされた。
[注3] 多少のズレは、雷の電気的性質による予想の範囲内 ↩︎
雷そのものが大電流であるため、周辺に磁界を発生させ、電流の進路を曲げる力が発生する。このため雷はレーザーの通り道に正確に沿うだけでなく、その周辺に巻き付くような軌道をたどることがある。