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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説はセイヨウオオマルハナバチという昆虫も楽しんで遊ぶという行動を取る、という研究結果だよ!
一寸の虫にも五分の魂とは言うけど、私たちとはよっぽどかけ離れた身体の構造を持つ昆虫も、生存においては何の意味も持たない遊びという行動を行うというのは驚きだね!?
今回は、そもそも動物の遊びってどういう行動なの?というところから解説して、昆虫では初の発見となるセイヨウオオマルハナバチの遊びについて解説するね!
CONTENTS
私たちヒトは明確に遊びを行う動物だけど、他の動物も、生存とは何の関係もなく、何の結果や実利をもたらさない行動である "遊び" を行うことが観察されているよ。
とはいえ、遊びは即座に得られる実利がないだけで、認知能力や運動能力を高めるものという意味で、長期的な利益となる戦略的な行動であると考えられているよ。
ただ、研究で明らかにされている、遊びを行う動物のほとんどは大型の哺乳類と鳥類だけで、他の動物が遊びを行うかどうかは明確にはわかっておらず、まだまだ研究が続いているよ。
そもそもとして、何をもって動物は "遊んでいる" と定義するんだろうね。これについては動物の行動に関する長年の研究から、いくつかの基準を満たすものとしているよ。
例えば、動物の行動や知能に関する研究では、何かの行動をすると、それを成功例としてエサなどがもらえる、という行動と報酬の関連付けはよく行われているよ。
これは動物にとって、ある行動と報酬が意味づけされていることを覚えられるかどうかのテストであり、何の意味も持たない遊びとは区別されるよ。
あるいは、動物が限られた空間に閉じ込められている場合、同じ場所を往復したり、手足を特定の場所で動かすなど、一見無意味な行動をとっていることがあるよ。
これらの行動はストレス反応であるとみなされていて、もちろん遊びではないし、自然な動物の行動とはみなされないことから、これらとも区別されるべきだよ。
ロンドン大学クイーン・メアリー校のHiruni Samadi Galpayage Donaなどの研究チームは、セイヨウオオマルハナバチ[注1] (Bombus terrestris) の行動に関する研究を行っていたよ。
過去の研究では、木でできたボールを転がし、決められたゴール地点まで転がすと花の蜜という報酬を貰える、という行動と報酬の関連付けに関する実験を行っていたよ。
この実験自体、昆虫が道具を使えるという点で驚きだね!ところが実験外で、ただ普通にエサが置かれている巣箱の中でのセイヨウオオマルハナバチの行動が研究者の興味を引いたよ。
セイヨウオオマルハナバチは、エサが何の障害や妨害もない状態で置かれており、エサとは全然違う方向にあるにも関わらず、近くにあるボールを転がすという行動を行ったんだよ。
果たして、これはセイヨウオオマルハナバチが "ボール遊びをしている" と言えるのかな?それとも単に実験で行ったことを再現しているだけなのかな?それを確かめるための実験を行ったよ。
最初の実験では、45匹のセイヨウオオマルハナバチの行動を観察したよ。ハチたち巣箱から出てアクリル製のトンネルを抜けた後、ボールとエサが設置された部屋に到達するよ。
トンネルを抜けた直後はボールがあるエリアがあり、奥側にはエサ (1つは砂糖水、1つは粉砕花粉) が設置されているよ。ボールはエサへの進行方向を妨害しないように設置されているよ。
ボールは直径1.5cmの木製で、黄色と紫色に塗装されたもの、および何も塗装されていないものを用意し、トンネルの出口から向かって左側は固定されて動かず、右側は自由に転がせるよ。

セイヨウオオマルハナバチがボールを転がしている様子だよ。色は3色あったけど、特に好みは観察されなかったよ。 (画像引用元: 原著論文Fig2)
実験をすると、多くのハチがボールのあるエリアに侵入し、ボールに接触することが分かったよ。接触した際の身体の位置や時間から、これは偶然触れた以上の明確な行動であることが分かるよ。
そしてこれは、実験を繰り返し、ボールエリアに侵入することとエサを得られることが無関係であることがわかっているはずの状態でも、ボール転がしの行動がみられることもわかったよ!
また、各個体の初回では、ボールが固定されているエリアと自由に転がせるエリアとの間では、どちらを選ぶかや侵入する回数に特に差は見られなかったよ。
ところが2回目以降となると、かなりの確率でボールを自由に転がせるエリアを選択することもわかったよ。これは自分の意思でボールを転がしたいという行動を行っていることを示唆するよ!
ちなみに、ボールは3色の違いがあったものの、今回の実験では色の好みは示されなかったよ。このため次の実験では、色を塗っていない=1色の木製ボールで実験が行われたよ。

段階1では、餌場までの進行ルート上に20分ごとに入れ替わる黄色い部屋と青い部屋を挟んだよ。片方の部屋にはボールがあり、もう片方の部屋にはボールがない状態にしたよ。ボールの有無に関わらず餌場にいけるよ。その2日後、段階2では、色以外に違いのない両方の部屋を選べるようにしたよ。なお、画像は黄色い部屋にボールありの様子だけど、別の個体で逆のパターンも行ったよ。 (画像引用元: 原著論文Fig3&Fig4)
次の実験では、最初の実験とは異なる46匹のセイヨウオオマルハナバチを使い、今度は巣箱とエサの間にボールが配置されたエリアを挟む形で実験を行ったよ。
このボールエリアが実験のミソだよ。この部屋は全体を黄色か青色に塗っていて、その片方にしかボールを入れていないよ。そして部屋は20分ごとに入れ替えられるよ。
例えばボールを入れた部屋が黄色の場合、青色の部屋は何もないよ。半分の個体はそのようなグループに分けられ、もう半分はボールの有無と色の関係が逆だったよ。
このようにしたのは、色とボールの関係性について予想外の因子を避けるためだよ。また黄色と青色なのは、セイヨウオオマルハナバチが明確に区別できる色であることが分かっているからだよ。
そして、ボールがあろうがなかろうが、その部屋の先にはエサが置いてあることから、部屋の色やボールの有無は餌があるかどうかに関係ないと覚えるはずだよ。
2日間このような部屋の色の切り替えとボールの有無について経験させた後、これらのハチたちは次の段階の実験を行うよ。
次の段階の実験では、臭いなどを消すために洗浄・消毒したこれらの部屋を1ヶ所で繋ぎ、どちらも選択可能な分かれ道としたよ。
この分かれ道は黄色い部屋か青い部屋かのどちらかで、色は識別可能だけど、仕切りがあるせいで先は見通せず、部屋の中の様子は観察不可能だよ。
更に、どちらの部屋を選んだにせよ、その部屋にボールはないよ。つまりハチたちは、純粋に色だけで部屋の選択をする必要があるよ。
そして実験の結果、黄色い部屋にボールがあったグループは黄色い部屋を、青い部屋にボールがあったグループは青色の部屋を選択する可能性が高かったことが分かったよ!
前段階の時、部屋の色やボールの有無に関わらず、先に進めば餌を貰えることから、餌があることを期待して進む場合、色は選択肢にはならないはずだよ。
つまりハチたちは、仕切りでは見えない先にあるボールを目指して部屋を選択したのだろうということがこの実験から分かるんだよ!
さて、実験結果はセイヨウオオマルハナバチがボールを転がすことを好んでいるらしいことを示唆しているけど、改めて遊びの基準に当てはまるのかを振り返ってみようね。
2. 食糧など何らかの報酬に結びつけられたものではない、自発的でやりがいのある行動である。
⇒実験はボールが餌場までのルートを妨害するようには配置せず、また、ボールを転がしたら餌がもらえるわけでもないよ。形は明確に違うことから、餌場と勘違いした可能性は低いよ。
そしてボールの好みは、固定されて動かないものより、自由に転がせるものの方が強いこと、過去にボールがあったエリアをわざわざ選んでいることから、報酬とは無関係に自発的にやりがいのある行動としてボール転がしをしていた可能性が高いよ。
3. 食糧探しや交尾などの普段の活動とは異なる行動である。
⇒先述の通り、餌の採集や交尾、あるいは防御反応など、一般的に観察されている行動をボールに試みる様子は観察されなかったよ。
何らかの行動練習と見る場合、ボール転がしは回数を重ねるにつれて効率が良くなるはずだよ。ところが観察中、ボール転がしが "改善" されることはなかったよ。
4. 繰り返される行動だが、型にはまったものではない。
⇒ストレス反応によって観られる繰り返される行動は、型にはまっていることがしばしばあるよ。例えば狭い檻の中に入れられたクマは、檻の中をウロウロ歩いているけど、そのルートは直線・円・8の字などで、足跡が重なるくらい歩数も一緒という特徴があるよ。
これに対しセイヨウオオマルハナバチのボール転がしは、転がすという行動そのものは繰り返されるけど、その回数や距離、ルートなどは全く予測不可能であることから、ストレス反応で起こる行動とは思えないよ。
5. ストレス下にはない、リラックスした状態で行われる行動である。
⇒齧歯類やニホンザルの研究で、軽度のストレス環境は遊びを減少させることが示唆されているよ。
これを防ぐため、セイヨウオオマルハナバチは実験中可能な限りのストレス因子を排したよ。具体的には、餌は常に遠隔で補充されるか、実験外で補充されたよ。実験中ハチたちは全てのエリアに自由にアクセスできるようにし、人間の介入がないようにしたよ。
これらの結果として、ハチたちは飢餓や無気力、あるいは脅威を感じた時に示す "ブーン" という羽音を発しなかったことが確認されたよ。
これらの結果から、セイヨウオオマルハナバチのボール転がしは楽しんで遊んでいる行動である、という可能性がとても高いよ!昆虫で遊びが発見されたのは初めてだよ!
ただ、これが昆虫初の遊びの行動であるのかという点の確定や、なんでボール遊びをするのかという動機については、更なる研究が必要になるよ。

ボール遊びをするのは若い個体ほど傾向が強く、またメスよりもオスの方が遊びをする時間が長かったよ。なぜこのような差が生まれるのかは研究が必要だよ。 (画像引用元: 原著論文Fig8&Fig9)
また面白いことに、年老いた個体よりも若い個体である方が、より多くの個体がボール転がしを行うことが分かったよ!またメスよりもオスの方がその傾向にあることもわかったよ。
本当に遊びをしているのかと合わせて、なぜ年齢差や性差にが出るのかについても研究が必要だよ。ただし、これらについてはある程度の推測が成立するよ。
まず年齢差については、ヒトもそうではあるけど、遊びが確認されている他の動物でも、一般的に若い個体が遊びを多く行う傾向にあるよ。
そしてこれらの動物の実験結果は、最も多く遊びを行う年齢が、感覚情報の処理や記憶形成に関わる小脳の発達が一番著しい時と一致することを示しているよ!
セイヨウオオマルハナバチの脳に小脳はないけど、今回の実験で最も遊びを行った個体は、似た機能を持つキノコ体の発達が著しい年齢の時であることが分かったよ!
これは小脳とキノコ体という著しい違いがありながら、脳の特定の機能の発達と遊びという行動が幅広い生物の間で共有されている行動かもしれないという点で、非常に興味深いよ!
性差については、オスの方がメスよりも遊んでいるのは、平たく言えば "ヒマを持て余している" からだと説明することが可能だよ。
真社会性昆虫であるセイヨウオオマルハナバチは、いわゆる働きバチは全てメスであり、オスは元々小数、かつ餌集めなどの巣の維持に関わる働きを持っていないよ。
オスの仕事は、早めに巣を離れ、別の巣の女王バチと交尾をすることだけど、今回の実験では女王バチはおらず、かといって巣を離れられるわけでもないよ。
と言うことで、本来の役割は果たせず、巣に関わる仕事を持たないオスは、餌集めに働いているメスよりも "ヒマを持て余している" ので、遊んでいる時間が長い可能性があるよ。
セイヨウオオマルハナバチの遊びに関する性差は、真社会性昆虫において役目が異なることによるヒマの度合いなのか、それとも何か別の理由があるのかは、これからの研究が必要だよ。
今回の実験では、私たちとは身体の構造も複雑さも異なる昆虫も、どうやら楽しんで遊んでいるらしいという、とても示唆に富む結果が出されたよ。
これは動物行動学的にユニークなだけでなく、一寸の虫にも五分の魂のごとく、動物全般に関する福祉や倫理について何か変えるきっかけになるのかもしれないよ!
[原著論文]
[参考文献]
[注1] セイヨウオオマルハナバチ ↩︎
ヨーロッパ原産のマルハナバチの1種。働きバチは体長10mmから17mm。ヨーロッパでは温室栽培、特にトマトの受粉に重宝されるハチである。一方で世界中で受粉目的の使われ方で世界中に輸出された結果、日本など在来していない国では、現在では深刻な外来種と見なされている。在来種のマルハナバチの女王を殺して巣を乗っ取る、あるいは交雑して遺伝的に汚染しまうからである。また、花筒の長い花に対しては、側面に穴を開けて蜜を取る行動をする。これはおしべやめしべに触れないために受粉を妨げてしまい、エゾエンゴサクでは繁殖の減少が報告されている。また鑑賞花として栽培されているリンドウが傷つき、商品にならないと言った農作物としての被害も報告されている。
[原著論文]
Hiruni Samadi Galpayage Dona, Cwyn Solvi, Amelia Kowalewska, Kaarle Mäkelä, HaDi MaBouDi & Lars Chittka. "Do bumble bees play?". Animal Behaviour, 2022. DOI: 10.1016/j.anbehav.2022.08.013
[参考文献]
"First-ever study shows bumble bees ‘play’". (Oct 27, 2022) Queen Mary University of London.
Olli J. Loukola, Cwyn Solvi, Louie Coscos & Lars Chittka. "Bumblebees show cognitive flexibility by improving on an observed complex behavior". Science, 2017; 355 (6327) 833-836. DOI: 10.1126/science.aag2360