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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、アクチニウムという放射性元素をランモジュリンというタンパク質で抽出する事ができるという論文について解説するよ!
単語にピンと来ない人も多いかもだけど、最後まで読めばスゴさが分かるはずだよ!
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画像引用元: "Medical radioisotopes". flickr (Oak Ridge National Laboratory) (CC BY 2.0) (リンク)
アクチニウムは原子番号89番、アクチノイドの先頭に位置する元素だよ。
アクチニウム (Actinium / Ac) という元素を聞いたことがある人は、多分少ないよね。原子番号89番のアクチニウムは、ギリシャ語で光線を意味するακτίςが由来なように、全てが放射性同位体で構成された放射性元素だよ。
アクチニウムは、89番のアクチニウムから103番のローレンシウムまでが化学的に類似した元素が連続して並んでいるアクチノイドの先頭にあり、アクチノイドの名前の由来でもあるよ。
ところで、がん治療の分野では、放射性同位体がしばしば登場するよ。がんと言えども細胞には違いないから、遺伝子を放射線で傷つければ増殖が停止する、つまり治療ができるというのが理由だよ。
もちろん、放射線はがん細胞も正常な細胞も区別をしないから、治療薬として使える放射性同位体はいくつかの条件を満たす必要があるよ。
アクチニウムは、このような条件を満たす元素として注目されていて、次世代のがん治療薬として注目されているんだよ!従来ある放射性同位体を使用した治療薬の数百倍も効果があると見込まれていて、ずっと注目の的だったんだよ。
ところが、アクチニウムを使った治療薬はまだ存在しないよ。その理由の1つは、アクチニウムの化学的な性質に関する研究が進んでいない事だよ。
アクチニウムは全ての同位体が放射性で、一番寿命の長い227Ac (アクチニウム227) でも半減期21.8年ととても短いよ。これが医療用に注目されている225Ac (アクチニウム225) となれば更に短く、半減期9.9日となるよ。
製造コストも高くて、アクセスが制限される使用済み核燃料から抽出するか、特別に設計された加速器が必要だし、更に他の元素との化学的な分離も大変だよ。使用する量はごくわずかではあるけど、単純計算で言うなら、227Acは1gで数千億円、225Acは1gで数百兆円にもなっちゃうよ!
値段の高騰はアクチニウムに関する研究の障害となり、研究であまり使われないから製造する側もあまり作らずに値段が高騰する、という悪循環に陥っているよ。
アクチニウムほど重い元素ならば同位体の違いが及ぼす化学的な挙動の差はわずかだから、基礎研究の段階ならばどの同位体でもできればいいんだけど、ところがその環境が整っていないからこそ実用化の壁となっていたわけ。
そこでローレンス・リバモア国立研究所のGauthier J.-P. Deblondeなどの研究チームは、これまで注目されてこなかった放射性同位体の228Ac (アクチニウム228) に注目したよ。
228Acは半減期が6.15時間と更に短いけど、それでも化学的研究においては十分な時間だよ。更に228Acは、232Th (トリウム232) という放射性元素の崩壊で生成されるから、この点も有利だよ。
トリウムはウランの3倍以上の資源量があり、その分だけウランより安価だよ。複数の同位体が混ざり合うウランとは違い、トリウムはほぼ100%が232Thで構成されているから同位体分離の必要性もなくて、放射性物質としてはアクセスの制限も緩いという利点があるんだよ。
ただ、228Acの難点は、その量の少なさが課題となるよ。1gの232Thを10年間放置した後に生じる228Acの量は35fg (3.5×10-14g / 3兆分の1g) で、これは放射化学的研究を行う事は可能ではあるけど、キレート剤 (金属元素と配位結合する有機分子) で抽出可能な限界濃度を下回る割合だよ。
だから、228Acでアクチニウムの研究を行うには、228Acの抽出が課題となる訳。

画像引用元: "6MI5: NMR solution structure of lanmodulin (LanM) complexed with yttrium(III) ions". Protein Domains and Macromolecular Structures (National Center for Biotechnology Information) (リンク)
ランモジュリンの分子構造はこんな感じ。緑色の部分に3価の金属イオンが入るから、ランモジュリン1分子は最大3個の金属元素を取り込めるよ。
そこで研究チームが用意したのはランモジュリン (Lanmodulin / LanM) というタンパク質だよ。ランモジュリンは2018年にMethylobacterium extorquensという細菌から見つかったのタンパク質で、カルモジュリンというカルシウムに結合しやすいタンパク質と似たような構造を持っているよ。
Methylobacterium extorquensは、ランタノイドを含む酵素が生きるのに必須という、とても珍しい生態を持っていて、ランモジュリンを持つのはこの生態が理由と考えられているよ。
ランモジュリンの名前は、57番元素のランタンから71番元素のルテチウムまでの総称であるランタノイドのうち、3価のイオンに1億倍も結合しやすい事から付けられた名前だよ。
ところで、ランタノイドとアクチノイドは名前が似ているけど、これはランタノイドのすぐ下にアクチノイドが並ぶという並びな上に、化学的性質も似ている事から倣って名付けられた名前だからだよ。
だから、ランモジュリンは3価のアクチノイドに結合する可能性も十分にある訳。そしてアクチニウムはAc3+のイオンが安定だから、ランモジュリンと結合する事が大いに期待されるよ!
実験では、まず予行演習として90Y3+ (イットリウム90) を90Sr2+ (ストロンチウム90) から分離可能かどうかを実験したよ。
イットリウムはランタノイドじゃないけど、より包括的な分類である希土類元素に属するから、化学的な性質はとても似ているから、テストに使えるよ。
そして90Yもやはり医学的用途が注目される一方で、崩壊元である90Srからの分離が課題となっている放射性同位体だよ。
試験では、普通の試料から想定される、90Srに対する90Yの濃度が4000分の1の条件の溶液にランモジュリンを混ぜると、手動操作でも5分未満で90Yを選択的に結合したよ。放射線強度で測ると、90Yの純度は50%から99.9%へと高められたよ!
この試験はpHは7の中性条件で、強酸を加えたり、ローディングや溶出などの余計な操作は不要なワンステップというのも魅力だね!
更に、90Sr+90Y溶液で5μCi/mLの放射線強度がある溶液に最大150時間晒しても、ランモジュリンの性能は低下しなかった事が分かったよ。
この事から、ランモジュリンはアクチニウムの抽出に使え、更に放射線に対してタフである事が予想されるね!
ランモジュリンを使ったアクチニウムの抽出法フローチャートだよ。
アクチニウムに対する試験は、228Acを継続的に抽出する事を想定して実験を行ったよ。まず市販の形態としてよくある硝酸トリウムを水に溶かし、水酸化ナトリウムを滴定して中性になるように調整したよ。
すると、白色の水酸化トリウム沈殿物が生じて、溶液部分はラジウムの同位体の224Ra2+と228Ra2+、そして目的の228Ac3+が混ざり合ったものとなるよ。
沈殿物を取り除いて洗浄しつつ、ランモジュリンを加えて5分放置し、遠心分離機と濾過をかけると、99.5% (放射線強度) の純度で228Acが得られたよ!
実はつい最近、228Acの化学的分離法が示されたんだけど、これは4回のイオン交換樹脂分離と9回の蒸発再溶解操作が必要な事を考えれば、これは分離手順の大幅な改善だね!
なお、228Raは半減期5.8年で228Acに崩壊するから、228Raを保管しておいて、必要な時に228Acを抽出する、という事も可能だよ!
ランモジュリンによる90Yと228Acの取り込みの精度はかなり高くて、90Yの場合は2fg (2×10-15g / 500兆分の1g) 、228Acの場合はなんと40ag (4×10-17g / 3京分の1g) でも選択的な取り込みが可能だったんだよ!
アクチニウムの場合は実、験で使われた計測機器の検出限界の2倍の値だから、実際にはもっと低濃度でも取り込み可能な可能性もあるよ!更に、228Ac3-LanM (アクチニウム-ランモジュリン複合体) の結合はかなり安定で、これを足掛かりに医薬品を作れる可能性を秘めているよ。
228Ac3-LanMは、世界で初めて合成された複数のアクチニウム原子を含むタンパク質で、最も安定した3価のアクチノイドタンパク質だよ。
なお、逆に228Ac3-LanMからアクチニウムを取り出すには、塩酸や硝酸でpHを2.8以下にするか、EDTAやDTPAのようなキレート剤を使う事で分離できて、ランモジュリンを再利用する事も可能だよ。
今回の研究は、他にもこんな元素に応用可能と期待されるよ!
今回の研究では、科学的研究がほとんど進んでおらず、潜在的に期待される応用が制限されてきたアクチニウムについて、極めて容易な工程でアクチニウムを取り出して研究を可能にするだけでなく、そのまま応用にも繋がる足がかりを提供した点でスゴい研究だよ!
それだけでなく、この研究成果はアクチニウム以外にも広がる可能性が十分にあるよ。同じように医学的用途が期待されながらも抽出が困難だった44Sc3+ (スカンジウム44) や47Sc3+ (スカンジウム47) 、具体的な用途が既にある241Am3+ (アメリシウム241) や244Cm3+ (キュリウム244) 、あまりにも生成量が少なくて化学的な研究がほとんど進んでいない超重元素のアインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウムなどについて、回収する手順として今回のランモジュリンを使用した手法が応用される可能性があるよ!これからの展開が楽しみだね!
[論文]
[参考文献]