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以前の記事で、大阪・海遊館で泳いでいるマンボウは地元の大阪近海(大阪府に属する海域)で獲れた個体ではなく、基本的に高知県で獲れた個体が展示されている旨を書いた。大阪でマンボウ自体が獲れないわけではないが、極稀にしか獲れないため、欲しい時に狙って獲れないという難題があるのだ。文献上でも大阪近海でマンボウ属が極稀に獲れることは知られていたが、日本近海にウシマンボウが出現することが知られていなかった時代の記録で、獲れた個体の写真も載っていなかったため、マンボウとウシマンボウが混同されて報告されている可能性があった。大阪に出現するマンボウ属がマンボウか、はたまたウシマンボウか……どちらの種なのかを明確にするには、改めて大阪近海産のマンボウ属の情報を得る必要があった。 そんな折、インターネットサーフィンで、大阪府阪南市にある西鳥取漁港内で死んだマンボウが浮かんでいたという情報を見付け、ブログ主にコンタクトを取り、確かにマンボウであることが確認できたので、澤井(2024e)として論文にした。ただこの個体は大阪近海にマンボウが出現することを示唆するものの、実際どこで死んだのかは不明であった。なので、「大阪にマンボウがいる」と明言するためには、大阪近海で確実に〝獲れた〟証拠を掴む必要があった。ここまでが前回のあらすじに当たる内容である。
そして、ここからが今回の本題の内容である。先月、2026年7月に私は「漁業就業支援フェア2026夏(大阪会場)」に足を運んだ。様々な地方の漁師が集まるこのイベントなら、何かマンボウに関する面白い情報が得られるかもしれないと考えたからだ。大阪会場だったので、地元である大阪の漁業者のブースも多数あり、情報の少ない大阪産マンボウの情報が得られるかも……と思っていくつか話を聞いて回った。すると、確かに大阪でマンボウ類は獲れるようだ。しかし、どのブースの方の話も獲れる頻度はかなり低いということを言っていた。大阪近海は内湾になるので、外洋から入って来る個体が少ないというイメージは想像に難くない。しかし、聞き取り調査はしてみるもので、獲れた時の写真を撮っているという漁師さんが現れた! これは物凄く貴重な情報だ! 早速スマホに入っていたその写真を見せて頂いた。漁師さんは2個体も写真を撮っていた。確認するとどちらも外観から明確にマンボウと同定できるものだった! 現場の漁師さんなので、獲れた海域も分かる。写真データから撮影された日付も分かる。もちろん漁法もわかる。記録として報告するには十分な情報が得られた。これは大阪近海でマンボウが獲れたという動かぬ証拠になる! 私は漁師さんから写真や情報をもらい、早速澤井(2026d)として論文を出版した。詳しい内容を話そう。
大阪近海で獲られたマンボウは以下の2個体である。1個体目は2021年7月9日に獲られた。この個体の明確な体サイズは不明だが、目視的に全長1m以上は確実にあるが、2mには達しないと推定された。下顎下部は漁具に覆われて見えないので形状は不明だが、頭部の隆起が無いこと、舵鰭縁辺部が明瞭に波打っていること、胸鰭後ろの体表に隆起したシワがあることの3点からマンボウと同定された。

一方、もう1個体は2022年6月6日に獲られた。この個体も明確な体サイズは不明だが、目視的に全長1m以上は確実にあるが、2mには達しないと推定された。写真のアングル的に舵鰭縁辺部の形状は不明だが、頭部と下顎下部の隆起が無いこと、胸鰭後ろの体表に隆起したシワがあることの3点からマンボウと同定された。

両個体とも関西国際空港よりやや北西沖の海域で、船びき網によって混獲された。関西国際空港の周辺にマンボウが出現するのも少し驚きだが、マンボウは比較的沿岸に寄ることもある。船びき網という漁法は聞き慣れない人もいるかと思うが、大阪ではバッチ網やパッチ網と呼ばれ、2隻の網船が平行に並んでその間にある網を曳き、その場にいる魚群を捕獲する漁法で、メインターゲットはイカナゴやイワシシラスといった小魚である。いかなごのくぎ煮で知られるイカナゴはこの船びき網で漁獲され、大阪府環境農林水産部水産課が作成した「大阪の魚と漁業を10倍楽しむ本(第6版)」にも書かれているように、船びき網は大阪の主要な漁業の一つとなっている。この漁法では、マンボウは漁獲対象外なので、混獲物扱いとなる。大阪ではマンボウは極稀にしか獲れず、伝統的に食べる文化も無く、漁港に持ち帰っても売れないということから、通常は混獲されてもその場で海に戻される。この2個体も混獲後に海に戻された。こういう漁港に持ち帰られない事情もあるため、大阪でのマンボウの出現状況を知るのはなかなか難しい。
今回混獲された2個体のマンボウの出現時期は6~7月だった。前回報告した西鳥取漁港内で浮かんでいた死亡個体は9月。これまで大阪近海に出現するマンボウは春の出現傾向が示唆されていたのだが、今回のデータを合わせて考えると大阪近海におけるマンボウは春~夏に出現するようだ。外洋からランダムに大阪近海に迷い込んでくるのだとしたら、実際はもっと出現時期は広いのかもしれない……が、大阪近海におけるマンボウ情報はまだまだ少ない。さらなる情報収集が必要なのだ!
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