「漁業就業支援フェア2026夏(大阪会場)」でマンボウ情報の聞き取り調査をしてみた!

2026.07.30

 

X(旧Twitter)を何となく眺めていた時、大阪で「漁業就業支援フェア」なるイベントが行われることを知った。ググってみると、「漁業就業支援フェア」は新たな漁業の担い手を確保・育成することを目的として、全国各地の漁協などと連携を取り活動している組織・一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター(以下、センター)が主催するイベントであった。センターは「漁師.jp」というサイトを運営しており、漁師の求人情報や漁業に関する情報を提供している。センターは2002年からこの関連イベントを行っており、東京や大阪を中心に年に数回実施している。就業支援フェアなので、漁師になりたい人の就職活動が主なイベント用途になるのだが……誰でも気軽に参加できると書いてあったので、漁業に関連する研究をしているし、漁業にも興味があるということに加え、もしかしたらマンボウ情報が得られるかもと淡い期待をして、今回初めて参加してみることにした。

漁業就業支援フェア2026夏(大阪会場)に参加

2026年7月11日、漁業就業支援フェア2026夏(大阪会場)に参加するため、私はマイドームおおさかに足を運んだ。マイドームおおさかは中規模のイベントで使われることが多いようで、偶然にも私は最近よく足を運んでいる。フェアの会場は1階のみ。受付でコミュニケーションカードという紙をもらい、来場目的等を書いて受付に渡すと、フェアに参加している会社・団体が一覧になった冊子をもらえる。私は今まで散々漁師の方々に研究協力してもらってきたものの、漁師の具体的な給与や勤務時間などはよく知らなかったので、そういう職業としての漁師の情報を知る良い機会になった。会場は1部屋なのでそれほど大きくはない。ガイダンスを行っているエリア、漁師と直接話せるエリア、会場スタッフに相談できるエリア、資料が机に並べられているエリア、の4つのエリアに会場は大きく分けられていた。漁師と直接話せるエリアは各会社、団体がブースを出しており、今回は57ブースがあった。私はこのうち、5ブースに足を運んで色々情報を教えてもらうことができた。今回の出展ブースは、北海道、富山県、石川県、福井県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、島根県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、大分県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県であった。こう見ると多くの県がブースを出しているように思われるが、1県1ブースのところが多く、大阪会場なので、三重県など近畿圏のブースの数が多かった。会場は以下のような雰囲気で、就職活動の合同説明会をゆるくしたような感じだった(写真はプライバシーに配慮して解像度を下げている)。

漁師になりたい人がそれほど多いわけではないことは想像できるが、高校生や大学生くらいの人、女性の方も少しいて、ぼちぼち賑わっていた。

 

漁業の基礎知識と雇用形態

私はまずガイダンスを聞いてみようとそちらのエリアに行った。話を聞いて初めて知ったのだが、漁師の雇用形態は「独立型」と「雇用型」の2タイプに分けられるという。「独立型」は個人事業主として一人で操業する。収入は水揚げ金額から経費(餌・道具・船の維持費など)を引いたものとなる。「雇用型」は会社や個人事業主に雇われ、複数人で漁業を行う形になり、収入は基本給+歩合給(水揚げによって変動する)のところが多い。水産物を水揚げしまくって高収入を狙う野心家の「独立型」か、基本給という安定を軸に水産物と関わる「雇用型」か、どちらが自分の希望に合っているだろうか?という二択。

また、日本の漁業は「沿岸漁業(日帰りできる)」、「沖合漁業(数日から一ヶ月程度船上生活)」、「遠洋漁業(一ヶ月から1年以上船上生活)」の3つタイプに大きく分けられる。漁法や休日なども漁業によって結構多様で、自分に合った漁業スタイルを探すのはなかなか大変そうだ。そういう時に現場の漁師の話を直接聞けるこのフェアは貴重な機会と言えるだろう。

ブースは基本的に会社や個人事業主が出展していたが、中には漁協(漁業協同組合)が出展しているところもあった。漁協は漁師である会社や個人事業主が漁獲してきた水産物を仲買人に売ったり、海岸のゴミ清掃を行ったりして漁師のサポートをする仕事だ。漁協は様々な漁法を行っている漁師が集まるところなので、その地域の水産事情にも詳しい。

富山県ブースでの聞き取り:夏に獲れるマンボウの謎

私はぐるぐると会場を見て回って、明らかにブースの人が暇そうな雰囲気を出している時を見計らって、話を聞きに行った。今回私が話を聞けたのは富山、大阪、高知のブースである。まず、富山の大型定置網のブースに話を聞きにいってみた。富山県はマンボウが漁獲される海域であるが、鴨川シーワールド(2010)の全国分布図にもあるように、冬に漁獲されるイメージが強かった。実際のところ、どの季節にマンボウが獲れるのか?と聞いたところ、秋に一番よく漁獲され、夏も稀に獲れるとの話だった。やはり現場の人に聞いてみないと分からないものだ。夏にも富山県でマンボウは漁獲されることがあるのだ! 富山で夏にマンボウがあまり獲れない理由として、漁師の方は水温が高いからじゃないか?という推察を行っていた。家に帰ってから気象庁の日別海面水温を調べてみると、確かに7月~9月の富山県沿岸部は同じ緯度の太平洋側の沿岸部より水温が高く、マンボウが好む水温ではないなと私も思った。富山で夏に獲れるマンボウ類はもしかしたらマンボウより高水温を好むヤリマンボウかもしれない……? 日本海側のマンボウ類も太平洋側と同様に水温変化に応じて南北移動している可能性があるなと私は感じた。

大阪府ブースでの聞き取り:大阪湾の記録

続いて、地元である大阪のブースをいくつか回った。瀬戸内海に位置する大阪湾は内湾であるため、外洋からマンボウが入り込むことは少ない。それ故、大阪産マンボウの記録は非常に少なく、情報もまだまだ不足している。しかし、現場の人の話を聞いてみると意外に違った答えが返って来るかもしれない……。そう思って聞いてみると……やはり大阪でのマンボウの漁獲はかなり稀だということが分かった。聞いてみた人によって答えが違ったのだが、10年に1回の漁獲頻度と答えた方もいれば、1年に1回の漁獲頻度と答えた方もいた。どうも関空周辺で獲れることがあるらしい。これを考えると、以前の記事で書いた西鳥取漁港で浮かんでいたマンボウの死骸が、大阪湾内で死亡した個体の可能性が高くなる。今回なかなか面白い情報も入手できたので、これに関してはまた改めて記事を書こうと思う。こうご期待!

 

高知県ブースでの聞き取り:室戸の食文化と識別

最後に、高知(室戸)のブースにお邪魔した。室戸はマンボウをよく食べる地域である。食べる地域なだけあって、マンボウに関する情報も豊富だった。この地域ではマンボウの肝臓をフライパンで炒め、味噌入れて和えてから筋肉を加えた味噌炒めが伝統的な料理だという。他にもマンボウの筋肉の天ぷらもよく料理されるという。以前の記事で「土佐清水ワールド」という居酒屋でマンボウの天ぷらが食べられると書いたが、納得だ。地元でよく食べられていた料理だったのだ。しかし、古い文献にはマンボウの天ぷらの料理法は書かれていない。昭和後期か平成に入ってから定着したマンボウ料理なのかもしれない。漁師の方によると、昔は小さな個体が群れでたくさん獲れたが、近年は大きめの個体が少数入るようになったという。大き過ぎる個体はあまり美味しくないとの話だったが、この話を私は岩手でも聞いた事がある。マンボウも年を取ると旨味が減るのだろうか? そういう事情もあり、大き過ぎる個体は漁獲しても海に戻すことがあるという。意外なことに室戸の漁師はウシマンボウの存在も知っていた。体が凸凹の個体がウシマンボウという認識で、概ね間違っていなかったが……私が中型サイズのウシマンボウの写真を見せても判別はできていなかった。話を聞くに、表皮の手触りでマンボウ類を識別しているようで、ツルツルしているものがウシマンボウだという。これも概ね間違ってはいないが、どうもヤリマンボウと混同しているような雰囲気を私は感じた。ちゃんとした体サイズごとのマンボウ類の識別方法を教えたら、すぐに覚えてくれそうだと感じたので、何か機会を作りたいところである。

 

フェア参加のまとめ

このように、今回初参加であったが、フェアで現場の漁師から直接興味深いマンボウの情報を聞くことができた。残念ながら私は就職希望者ではなかったが、色々教えて下さった皆様に感謝だ。なかなか全国各地の漁師が集まる一般的なイベントはないので、各地のマンボウ情報を仕入れるのに有効なイベントだと感じた! 今回あまりブースを回れなかったので、また機会があればフェアに足を運びたいと思う。退場の際に、アンケートに答えると、「漁法図鑑」という小冊子をもらうことができた。この小冊子には日本で行われている主要な漁法について、どういう仕事をするのか?という簡単な解説がイラスト付きで書かれていた。マンボウが漁獲された背景を知る参考にできそうな有用な小冊子で私は嬉しい。フェアに興味が湧いた方はまず、「漁師.jp」のサイトにアクセスしてみよう!

 

 

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【参考文献】

鴨川シーワールド.2010.マンボウ類の飼育に関する調査.動物園水族館雑誌,51: 62–73.