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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、花とハチの複雑な関係を明らかにした研究だよ。どういうことかというと、色などの形質的に、普段はあまり人気ではない花も、そこに“先客”がいるならば、不利を克服して寄ってくるようになるのを実験で実証したのよね。
これは例えば、ライバルとなる花に先駆けて開花するような工夫をすれば、競争に不利な花でもハチなどの動物を引き寄せるチャンスがあるということで、プレスリリースではこれを「先んずれば花色を制す」[注1]と喩えているのよね。
この研究は、植物と花粉媒介者の関係性は、単に花が人気か不人気かのような単純な二者択一ではなく、もっと複雑な関係性によって決まっていることを示唆する研究なのよね。
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図1: 動物が花を選ぶ時、色などの形質に好みがあることから、花はそうした形質を獲得するように適応したと一般的に考えられるのよね。ところが、先客がいる花については、たとえあまり好まれない形質であったとしても選ばれる傾向にあることが従来から指摘されていたよ。店構えでは入るのを躊躇しても、近くに行列があれば、隠れた名店かもしれないと思わせる心理効果と似ているよね。
植物の様々な繁殖方法のうち、動物に花粉を運んでもらうようなものは「虫媒花」や「鳥媒花」と呼ばれているよ。昆虫や鳥は、花の香りや色・形に引き寄せられ、次々と花々をめぐるんだけど、その過程で身体にくっ付いた花粉が、別の花へと移動し受粉することで、次の子孫となる種子を形成する過程が始まるというわけ。
植物から見れば、花粉を運んでくれる動物を引き寄せたいので、色んな工夫をすることになるよ。花の色や形、香りと言った形質が、受粉とは無関係な人間にとっても目立つのは、昆虫や鳥を引き寄せるための適応なのよね。ってなると一般論としては、繁殖が有利な植物とは、動物を引き寄せるのに有利な形質を持つものだと思えるよね?
とはいえ、魅力的な花は競争相手も多いので、魅力度が下がる花でも動物を引き寄せるチャンスはあるよ。ってなると、こうした次の候補はどのようにして選ばれるのかと言えば、トップランカーの次に魅力的な形質を持つ花じゃないかと考えるのが自然だよね? これは基本的には、研究者も同じ回答をするよ。
その理由は、花粉を運ぶ動物は、野外を動き回るために死亡率が高いと言われていることと関連しているよ。仮に、魅力度が下がる花でも、花粉や蜜などのご褒美があると動物側が学習したとしても、それを覚えている個体が死んでしまうので、学習した個体に頼る戦略は長続きしない公算が大きいのよね。
学習した個体の出現が不安定で、何も知らない個体の方が常にいるとなると、次点でも良いので魅力度が高いように形質を変化させると考えるのは、まぁ普通だと思うのよ。ただ、花粉を運ぶ全ての動物が、単純に魅力度だけで花を選んでいるわけじゃないという説も、従来から指摘されていたのよね。
よく考えれば、野外環境で小さな動物が花を食料とするのは案外大変。闇雲に探し回っても花が全然ないかもしれないし、捕食者がいるかもしれない。しかし、もし同種の別の個体のような先客がいれば話は別。先客がいるということは、そこに花がたくさんあるかもしれないし、捕食者のような危険が少ないかもしれないからね。
いくつかのミツバチやコウモリでは、このように先客がいる花に寄ってくる習性があることが指摘されてきたのよ。しかもこの習性は、魅力度が低いとか、近くによく知られた人気の花があるというような、不利な条件を上書きするほどらしいことが示唆されているのよね。
先客がいると魅力的ではない花にも寄る。これはなんか、日常生活でも経験あるような感じだよね。店構えとしては何か入るのを躊躇するけど、外に人が並んでいたりすると、もしかするとバズっている[注2]隠れた名店なのかなと思えてくるアレに似てるよね。これは「バンドワゴン効果」[注3]と名付けられているのよ。
花粉を運ぶ動物のバンドワゴン効果はある程度検証はされているんだけど、じゃあ植物にとってこのバンドワゴン効果を使うメリットはあるのか? この点はまだ十分には理解されていなかったのよね。
京都大学の川口利奈氏などの研究チームは、花を選ぶにあたってバンドワゴン効果があることが主張されているマルハナバチの仲間「クロマルハナバチ (Bombus ignitus)」を使って実験を行ってみたんだよね。今回の実験では、花から得られる餌の量が減ったので、他の花を選択するという状況を再現したものになるよ。
まずは、白色の人工花から成るパッチにショ糖液を置き、パッチと巣との間を往復させるように訓練したよ。その後、パッチに置かれるショ糖濃度を30%から10%に下げることで価値を失わせ、他の色の人工花のパッチに向かうように促したのよね。
色の好みが分かれるように、試すパッチは「紫色 vs 黄色」、「オレンジ色 vs 青色」という組み合わせとしたよ。もしクロマルハナバチが色のみで花を選ぶ場合、紫色と黄色なら紫色、オレンジ色と青色ならオレンジ色を選ぶはずだよ。実際、それ以外になんの条件も加えない場合、90%くらいの割合でこのような選択をしたのよね。

図3: (A & a) 先客が配置されてないか、先客がいても好みの色側だった場合、ハチは約9割の割合で、普段好みの色の方を選んだよ。 (B & b) ところが先客がいると、普段は好まない色を選ぶ割合がほぼ五分五分、少しだけ先客がいる側に引っ張られる回答だったことが分かったよ! (画像引用元番号②)
では、これに条件を付けるとどうなるのか? パッチに“先客”としてクロマルハナバチの死骸5匹を配置すると、クロマルハナバチは先客がいるパッチを選ぶようになったのよね。その割合は色的に好みなものと同程度か、時には色よりも先客がいる方を選ぶという逆転現象が観測されたのよ!
元々色的に好みなパッチに先客がいた場合、特段変化がなかったことからも、クロマルハナバチはその花に先客がいるかどうかを、色の好みと同じくらいの価値基準で重要視していることが伺えるのよね!
今回の実験は、直接的にはクロマルハナバチのバンドワゴン効果を証明している研究だけど、一方で植物側の戦略も窺い知れるのよね。魅力的な形質を持っていない花だとしても、先客さえ確保できれば、その弱点を補って繁殖できる可能性があるということだからね。
例えば、形質的により魅力的な花に先んじて開花するような種は、たとえ色が好みでなくても昆虫を引き寄せる可能性があり、そのようにして先客を確保すれば、他の個体も継続的に寄ってくる可能性があるわけだからね。
この研究は、植物と動物の相互作用はとても複雑なことを示唆する一例と言えるね。単純に色や香りで動物を引き寄せるかどうかという評価は物事の一面を捉えているに過ぎず、動物の社会的行動のような、より複雑な背景を元に花を選択している可能性があるわけだからね。
もちろん、今回の実験は、実際の自然界と比べればかなり単純化しているもの。実際の自然界ではもっと複雑な状況が起きている可能性もあるわけだからね。この種の研究を続けることによって、さらに込み入った事情が分かるようになるかもしれないよ。
セイヨウオオマルハナバチは遊びをする!昆虫では初発見!
[注1] 先んずれば花色を制す
大元となる慣用句は「先んずれば人を制す」。今回の研究で先んずるとは開花時期のことです。 本文に戻る
[注2] バズっている
SNSなどで話題となっていることを指す「バズる」という造語は、英語の「buzz」に由来します。ざわついて騒がしくするという意味で、元をたどるとハチの羽音に由来します。 本文に戻る
[注3] バンドワゴン効果
バンドワゴンとは行列先頭に居る楽隊車の意味。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)