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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、地球で最も多い生物のグループと言われる「SAR11」の生態についてだよ。“星の数ほど”の数万倍もいる細菌だけど、どうやら環境の変化にとても弱いらしいことが明らかにされたのよね。これは、あまり環境が変化しない外洋環境にカスタマイズされすぎた生態と関連しているようなのよね。
目に見えない細菌なので、SAR11がピンチだと言われてもあまりピンとこないかもしれない。けれどもSAR11は海の微生物の最大40%を占めているとも言われているほどたくさんいるので、地球環境に与える影響も大きいのよね。SAR11への悪影響は、巡り巡って私たちにも悪影響を与える恐れがあるのよね。
今回の研究結果は、SAR11のよく分かっていない生態に切り込むと共に、多数派であり一見成功しているように見える生物でも、環境の変化次第では一気に危うくなってしまう恐れがあることを示唆しているのよね。環境問題への取り組みは、目に見えない多数派を保護することにも繋がるのよ。
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地球で最も数が多い生物はどれくらいいるんだろうね?その候補の1つは、「SAR11」という系統に属する真正細菌になるよ。浅いところの海水にいる微生物の、最大40%を占めているとも言われており、全世界での細胞の総数は2穣4000秭個 (2.4×1028個 / 24000000000000000000000000000個) にもなると推定されているのよね!
例えば、全世界の昆虫の数が1000京匹 (1019匹) だと言われていることと比較すれば、とにかくすごい数なことが分かるよね。それどころか、観測可能な宇宙の中にある恒星の数が最大でも1秭個 (1024個) だと言われているのだから、SAR11は“星の数ほど”どころか、それより数万倍も多いことになるのよ!
ただ、このSAR11について、まだ多くのことが分かっていないのよね。このよく分かってない具合は“SAR11”といういかにも仮っぽい名前からも分かるね。一応、SAR11は「ペラギバクテリア目 (Candidatus Pelagibacterales)」[注1]という学名が提案されているけど、これは正式には記載されてないのよね。
そして、SAR11の生態はよく分かっていないんだけど、その理由の1つは、細胞分裂速度の遅さ。数分で分裂する細菌がたくさんいる中で、SAR11は1日に1回しか分裂しないなど、増殖速度がケタ違いに遅いのよね。増やして実験するというのが細菌研究の基本だから、この時点で既にネックとなっているのよね。
この細胞分裂速度の遅さは、SAR11の仲間の主な生息場所が、陸地から遠く離れた外洋だからというのが関係しているみたいなのよ。外洋は“海の砂漠”とたとえられるほど、とても栄養素が乏しい場所。細胞分裂速度の遅さは、外洋の貧栄養環境に適応し、少ないエネルギー資源を節約した結果だと考えられているのよね。

図3: SAR11は、自力で生きられる中では最も短いゲノムを持つ生物なのよね。これは外洋環境へ適応した結果であると見られているんだけど、あまりにもカスタマイズし過ぎた結果、環境の変化に弱いことが示唆されるのよね。 (画像引用元番号①)
そしてこの適応は、生命の設計図である遺伝子を刻んでいるゲノム配列にも及んでおり、それがさらに謎を多くしている感じよ。例えば、SAR11の代表種である「ペラギバクター・コムムニス (Candidatus Pelagibacter communis)」[注2]のゲノムの長さは、2005年に130万8759塩基対だと解析されているのよね。
この長さは、大腸菌の約3割と非常に短いのよ。しかもSAR11は、この短さで単独で生存できる「自由生活生物」であり、自由生活生物においては最短クラスのゲノムを持つ生物となるのよ。これよりゲノムが短い生物は、他の生物に寄生するか共生するかしかしないと生きていくことができず、その点でもSAR11は変わっているのよね。
遺伝子は特定のゲノム配列で表現されることから、ゲノムが短い生き物というのは、遺伝子が特殊化していたり、遺伝子そのものが欠けていることも珍しくないのよ。SAR11が仮の名前になっているのは、遺伝子を通じた生態の正確な理解がされていないことが背景の1つとしてあるのよね。
このような短くて特殊なゲノムを持つSAR11は、3つの意味で注目されているのよ。1つ目は単純に、地球上で最も豊富な生物の1つであること。地球の多数派の生態を理解することは、地球上で起こる様々な物質循環や、地球環境の正確な理解にも繋がるという意味で、とても重要なのよね。
2つ目は、生物というのはどこまで単純化できるのかと言う問題。人工的にゲノム配列をいじって、必要最低限な遺伝子のみを持つ人工生命の作成の試みはあるけど、SAR11は天然でそれをやってのけている、ある意味で答えに最も近い存在。なのでこちらの意味でも生態や遺伝子機能の正確な理解が求められるのよ。
そして3つ目は、先ほどの2つの理由の足し算みたいな感じ。SAR11は、ゲノムの長さも遺伝子の種類も、栄養素に乏しい外洋の環境に最適化されている可能性があり、その分だけ「環境の変化に対応できないんじゃないか?」という懸念があるのよね。
SAR11から見れば、外洋は栄養素が乏しいという不利はあるけど、環境の変化は少ないという利点もあるのよね。ってなると、環境の変化に対応するための制御遺伝子を持っていてもムダになってしまうので、その部分を切り捨ててゲノムの長さを短くするのは、DNA複製に係る労力が減るので、一定の合理性があるのよ。
しかしゲノムを短くすれば、持てる遺伝子の数や機能も制限されてしまうのよね。SAR11は細胞周期制御遺伝子を切り捨てた結果、対応可能な環境が少なくなってしまっているのよね。ということは、SAR11はちょっとでも環境が変化してしまうと、そのちょっとした変化の中で生きることができないという事態がありうるのよね。
すでに過去の研究で示されていることとして、SAR11は、大部分の細菌が求めているのとは異なる栄養素の割合や量でないとうまく生きていけないことが分かっているのよ。特に、栄養素が豊富で植物プランクトンが大繁殖しているような状況になると、SAR11は途中で増殖が遅くなったり、死んでしまうことが観察されているのよね。
これらのことから、大部分の細菌は栄養素が豊富なほど増殖する速度が速くなるのに対し、SAR11はそれほど単純に増殖速度が加速せず、むしろ減速する場合もあると考えられているのよね。ただ、どうしてそのようなことが起こるのかまでは、はっきりと分かっていなかったよ。
南カリフォルニア大学のChuankai Cheng氏などの研究チームは、SAR11が栄養状態の良い時になぜうまく増殖できないのかを調べる研究を行ったよ。まず第一段階として、SAR11が持つゲノム配列を調べ、そこから遺伝子の領域を推定し、他の多くの細菌と何が違うのか、その違いを比較してみたよ。

図4: SAR11のゲノムを調べてみると、細胞周期を制御する遺伝子がほとんどないことが分かったんだよね!環境が変化してもそれに対応できず死滅してしまうことが、遺伝子によっても裏付けられたことになるよ。
その結果、SAR11は細胞分裂やDNA複製を調整する細胞周期制御遺伝子がいくつも欠けていることが分かったんだよね!調節する遺伝子なしで正常な増殖がなぜできるのかってなってくるけど、実験の結果、栄養素が乏しい外洋環境に細胞周期が調節されており、悪影響が現れにくくなっているみたいなのよね。
前章で書いた通り、SAR11が生息する外洋は、単に貧栄養環境なだけでなく、変化に乏しいという特徴があるのよ。細胞周期制御遺伝子は環境の変化に対応するためにあるとも言えるから、変化に乏しい環境ならば削っても問題ない遺伝子。なのでゲノムの長さの節約のため、これらを切り詰めたと考えられるのよね。
しかしこの切り詰め戦略の結果、たまに起こる環境変化に弱くなったと考えられるよ。植物プランクトンが大繫殖ような、突発的な栄養素の供給イベントがその例であり、環境が変化した結果、細胞周期がおかしくなり、最終的には死んでしまうなどの惨事が起こっていると考えられるのよ。

図6: ところが、栄養素が豊富であるなど、普段と違う環境に晒されると、SAR11の細胞周期がおかしくなってしまうのよね。その結果、細胞分裂の段階が進む前にDNAが過剰に複製され、最終的には細胞死してしまうのよ。
では、正確には何が原因でマズい状況が生まれているんだろうということで、外洋の微生物に利用される様々な物質を、量を調整しながら加えて培養してみると、炭素分に対して窒素分が過剰であると、細胞の働きがおかしくなってしまい、うまく増殖できないことがわかったのよ。
増殖ができない細胞を調べてみると、細胞分裂の段階が進まなくなっている一方、DNAの複製は止まらない状態になっていることが分かったんだよね。つまり、細胞内の染色体の数が、正常な状態よりも多くなってしまう異数性の異常が現れたことになるのよ。
細胞内の染色体の数が異常になると、細胞活動も異常になってしまうので、やがてそのような個体は死んでしまうのよね。窒素分の過剰とは栄養素の過剰、つまりは植物プランクトンが大繁殖するような状況と一致するので、自然界で植物プランクトンが繁殖する環境でSAR11が死んでしまう状況と一致しているのよ。
普通の細菌ならば、栄養素が過剰であっても細胞周期制御遺伝子が働くことでこのような異常が起こらないようにするのよね。ところが、SAR11は細胞周期制御遺伝子の大部分が欠けていることから、栄養素の過剰という環境に適応できず、異常な細胞を作り出して死んでしまうことが起こるようなのよね。

図7: 環境問題を考える時、ついつい目が行きがちなのは目に見える大きさの生き物。もちろんこれらの保護も大事だけど、目に見えない多数派は地球環境に与える影響も大きいので、こちらの保護もやらないといけないのよね。その意味では、目立たない生き物にも関心を向けていく必要があるのよ。 (画像引用元番号①)
SAR11は海洋の微生物の40%を占めるほど多いため、一見すると地球の覇者のように見えるかもしれないね。ところが実際は、ゲノムを極限まで切り詰め、外洋の貧栄養環境に完全にカスタマイズされていることから、環境の変化に対応できない、とても弱い生物だということが今回明らかにされたのよね。
昨今進む気候変動は、陸上だけでなく海洋の環境も変えているのよね。となると、環境の変化に弱いSAR11は、この先の環境変化についていけず、大幅に数を減らす恐れもあることになるよ。まだ確定的ではないけど、これはかなり心配なことに繋がるのよね。
SAR11は数が多いので、生体活動を行うことで大量の元素が出入りすることになるよね。その中には、元を辿れば大気中の二酸化炭素や窒素化合物に由来する物質もあるはず。SAR11の数が大きく変わるような事態が起これば、それは地上にいる私たちも含めた、地球環境全体への影響に繋がる可能性は否定できないのよね。
SAR11の研究は始まったばかりだし、外洋にどれくらいいるのかもはっきりと確定しているわけじゃないのよね。また、SAR11の仲間は淡水にもいるし、細胞周期制御遺伝子が少ないので環境の変化に弱いという特徴も共有しているのよね。このため、影響は今まで話した内容よりずっと大きい恐れすらもあると言えるのよ。
環境の変化によって生物の生存が脅かされる状況で、世間の注目を浴びるのは、ついつい目に見える大きさの生物に留まりがち。でも実際には、目に見えない細菌の方が、数も量も多数派であり、目に見える生物より重大な影響を及ぼす恐れがあるかもしれないのよね。その点も含めて、私たちは環境問題を考えないといけないと思うのよ。
[注1] Candidatus
新種である可能性があるが、正式な学名が記載できる段階になっていない原核生物 (真正細菌+古細菌) に対して与えられる暫定的な地位。これを提案されている学名の前に付けることで、あくまで暫定的であることを示しています。なお、属名や種小名のように本来は斜体で表現されるものも、Candidatusがあるうちは立体表記となります。 本文に戻る
[注2] ペラギバクター・コムムニス
2002年当時に最初に提案された学名は「ペラギバクター・ウビクエ (Candidatus Pelagibacter ubique)」であるため、こちらで書かれることもよくあります。なお、学名が提案段階である場合は、本来は斜体で書かれる属名や種小名も立体表記となります。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)