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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、猛毒として有名な「シアン化水素」の結晶が“生命の素の素”となった可能性を探った研究だよ!猛毒に対してそんなイメージはとても持てないけど、宇宙に豊富に存在する物質であるシアン化水素が、“生命の素”であるアミノ酸などの有機物の素になった可能性は真剣に議論されているのよね。
ただ、このような可能性を探る時、シアン化水素が凍るほどの低温状態を想定するから、どのようにしてそのような反応 (プレバイオティック反応) が起きたのかがイマイチ謎だったんだよね。猛毒すぎて取り扱いが難しいのも、研究の障害となっていたからね。
そこで今回は、コンピューターシミュレーション上でシアン化水素の結晶を“合成”し、その表面の様子を調べたのよ。その結果、有機物を作る多段階反応の第一ステップである「イソシアン化水素」の生成が促されることが分かったのよ!シアン化水素は本当に“生命の素の素”になった可能性が出てきたのよね!
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図1: シアン化水素は知名度の高い代表的な猛毒だけど、宇宙化学の目線で見てみると、宇宙に豊富に存在する分子の1つなのよね。それだけでなく、炭素や窒素を含んでいるという点でも重要な分子よ。 (画像引用元番号②)
「シアン化水素 (HCN)」は、別名「青酸」の知名度があるかな?とても有名な猛毒として知られている物質よ。ミステリー作品では頻出する毒物「青酸カリ (シアン化カリウム)」は、胃酸と反応することでシアン化水素を発生させるけど、火災でも発生することがあり、中毒症状を起こす危険な気体としてよく知られているよね。
ところで、シアン化水素は水素・炭素・窒素が1原子ずつくっついた分子だけど、この3元素は宇宙に豊富に存在するので、シアン化水素は宇宙において豊富に存在する物質となるよ。星間物質、原始星、彗星、さまざまな惑星や衛星など、実にいろんな場所でシアン化水素が見つかっているよ。
そして、シアン化水素には炭素と窒素を含んでいるって事実に着目すると、面白い可能性が見えてくるのよね。アミノ酸や核酸塩基のような窒素を含む有機物は、生命を作る上で欠かせない“生命の素”。つまりこのような物質は、シアン化水素のような単純な無機物からできたんじゃないかと考えることができるんだよね。
生命がいない場所で、生命の素となる物質ができる反応のことを「プレバイオティック反応」と呼ぶんだけど、シアン化水素は炭素と窒素を含んでおり、宇宙にも豊富に存在することから、シアン化水素は“生命の素”を作る“生命の素の素”になった可能性が十分に考えられるんだよね。

図2: 生命を介さずに“生命の素”となる分子が合成される反応を「プレバイオティック反応」と呼ぶけど、シアン化水素はプレバイオティック反応の一番の根っこに位置する、いわば“生命の素の素”になった可能性があるのよ。 (画像引用元番号①)
生命を脅かす猛毒が“生命の素の素”かもしれないというのは面白いけど、じゃあどのようにシアン化水素から有機物ができたんだろう?もちろんそれには何段階かの反応が必要だけど、最初の重要なステップは、シアン化水素から「イソシアン化水素 (HNC)」という分子が生成する反応 (異性化反応) だと考えられているのよね。
単に窒素と炭素の並び順が入れ替わっただけに見えるけど、イソシアン化水素はシアン化水素と比べて不安定で、その分だけ他の分子と反応しやすいという大きな違いがあるのよ。シアン化水素からどうにかしてイソシアン化水素ができれば、最終的に有機物を作るような化学反応がスタートするかもしれず、重要視されているのよね。
ただ、不安定な分子を作るにはエネルギーが必要。それが結構困った事態を引き起こすんだよね。シアン化水素が有機物を作るプレバイオティック反応に関わっているとしたら、シアン化水素がそれなりの濃度で存在する状況……つまりは固体で存在できるほど寒い宇宙空間や天体表面の環境を想定する必要があるのよね。
化学反応というのは原則として温度が下がるほど進みにくくなるし、分子を変化させるためのエネルギー源にも乏しくなるのよね。シアン化水素がイソシアン化水素に変化するにはそれなりのエネルギーが必要であり、これまでは宇宙線などの関与が想定されていたけど、他のルートでの反応はないのかな?となってくるわけよ。
例えば土星の衛星「タイタン」にはシアン化水素の雲があるんだけど、その中に高濃度のイソシアン化水素が含まれていることが分かっているんだよね。イソシアン化水素の生成ルートは複数検討されているんだけど、観測されたイソシアン化水素の生成量を説明するにはイマイチ足りないという状況となっているのよ。

図3: 結晶は、その面ごとに異なる性質を持つのよね。金太郎飴はその切り方によって絵が変わるのと似ているかな?これを考慮すると、結晶の表面では普段は起こらない反応が起きている可能性があるのよ。 (画像引用元番号③④)
チャルマース工科大学のMarco Cappelletti氏、Hilda Sandström氏、Martin Rahm氏の研究チームは、シアン化水素からイソシアン化水素が生成される反応に、シアン化水素の固体、より厳密に言えばシアン化水素の結晶が関与しているんじゃないかと考え、検証する研究を行ったよ。
普段はあまり意識することじゃないけど、実は結晶の表面というのは、構成する面 (結晶面) によって微妙に性質が変化しているのよね。これは、「原子が一定の規則で3次元空間上に並んでいるが結晶である」という定義とも関係してくる話なのよ。
たとえば、金太郎飴のようなものを思い浮かべると分かりやすいかな?金太郎飴を垂直に切った場合と、斜めで切った場合とでは、同じ絵であってもちょっと雰囲気が変わっちゃうよね?これと同じように、結晶の面がどの角度を向いているかによって、その面で剥き出しになっている原子の割合や密度が変わってきちゃうのよね。
剥き出しになっている原子の割合や密度は、その面の特性を決定するので、面によっては変わった特性が現れるのよね。シアン化水素の場合、その電気的な性質 (分子の極性) によって、結晶面に強い電気の力 (電界) が発生し、化学反応を進める“触媒”として機能する可能性があるのよ!
ただ、シアン化水素が猛毒なせいで、このような観点で解析を行った研究は、3氏が知る限りは存在しなかったんだって。そこで、コンピューター上で長さ450nm (0.45µm=0.00045mm) の針のような結晶を“合成”し、その性質を調べたんだよね。ちなみにこのシミュレーション上の結晶は、実物とよく似た形状なのはチェック済みだよ。
その結果、一部の結晶面でシアン化水素からイソシアン化水素が生成する反応が生じただけでなく、イソシアン化水素が揮発したり溶媒に溶けたりして分離すると、さらに新しいイソシアン化水素が継続的に生成されるということが分かったんだよね!これは、結晶の表面特性を考慮しなければエネルギー的に起こらない反応なのよね。
この反応は、タイタンの表面温度に近い約-90℃ (約180K) では数日程度かかるけど、ゆっくりとはいえ起こるということが重要なのよね。また、シアン化水素結晶が融ける温度に近い-14℃ (259K) ではミリ秒単位で進行するなど、少し温度が高い環境では秒単位・分単位のイソシアン化水素生成を考えることができるのよ。
これまで、タイタンや彗星の大気に含まれるイソシアン化水素は、予想より豊富に存在するという謎があったんだけど、今回の研究結果はその理由を説明付ける可能性があるのよ。
前章冒頭で説明した通り、イソシアン化水素は反応性が高い分子なので、すぐに周辺の別の分子と反応するはずよ。この反応は、生命の素となる有機物を作るまでに繋がる、その最初の反応となり得る可能性があるのよ。猛毒の結晶が“生命の素の素”になったのかもしれないと考えると、ちょっと面白いよね。
ただ、今回の研究で示唆された、シアン化水素の結晶がプレバイオティック反応の根っこにあるのかは、まだ確定した事実とは言えないよ。猛毒の物質だから未開拓だった部分に切り込んだ研究であることはすごいけど、あくまで理想的な環境の下、計算の上で示された結果でしかないからね。
特に、シアン化水素よりもずっと、宇宙に豊富に存在する水の存在は気になる所だよ。過去の研究で、シアン化水素と水が互いに固体の状態で接触している場合、やはりシアン化水素からイソシアン化水素を生成する反応を促進するらしいことが示されているからね。
この辺を確かめるには、シアン化水素の結晶を氷などと混ぜながら粉砕し、その表面で実際にイソシアン化水素が発生しているのか、実物で確かめる必要がありそうね。中々できる実験じゃないけど、研究チームは別の研究者がこれを行うことを期待しているのよ。
<原著論文>
<参考文献>
<関連研究>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)