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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、新しい炭素の同素体である「シクロ[48]炭素」の合成成功についてだよ。新しい同素体と書いた通り、シクロ炭素は炭素原子でできた環であり、他の元素は化学結合していないものなんだよね。一応安定化のために周りに分子はあるけど、取り外してもある程度安定しているよ。
もっとすごいことに、このシクロ[48]炭素は室温の溶液の中で合成され、しかも安定だったんだよね!シクロ炭素のように分子の形態を持つ炭素の同素体で、かつ室温の溶液中で合成に成功したのは、フラーレンに次いで2例目という、かなり珍しい報告となったよ。
シクロ炭素は炭素の面白い性質を持っていそうと考えられていたけど、絶対零度近くでしか安定しないという不安定性から中々研究が進まなかったよ。今回のように室温でも安定な他のシクロ炭素が見つかれば、炭素の面白い性質が明らかにされ、有機化学の発展に繋がるかもしれないよ!
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鉛筆の芯に使われるほど柔らかい「黒鉛 (グラファイト)」と、最も硬い物質として知られている「ダイヤモンド」は、どちらも中身を見れば炭素原子1種類だけでできているんだよね。しかし明らかに性質が異なるのは、同じ炭素原子でできていると言っても、原子同士の結びつき (化学結合) が全く異なるからなんだよね。
この、同じ1種類の元素でできていながら、性質が異なる同士の物質を「同素体」と呼んでいるよ。そして炭素の化学結合はかなり豊かであり、非常に多種多様な同素体が合成されているよ。例えば「フラーレン」や「カーボンナノチューブ」は、黒鉛とダイヤモンドに次いで有名な同素体かもしれないね。
それ以外の炭素同素体には、例えば黒鉛を1層だけ取り出した「グラフェン」、炭素原子が一直線に数珠繋ぎとなった「カルビン」、ダイヤモンドより硬いとも予想されている「ロンズデイル石」など、様々な同素体が合成されている、あるいは合成されたと主張されているんだよね。
そんな中でも特にユニークなのが「シクロ炭素 (Cyclocarbon)」と呼ばれるグループだよ。シクロ (環) という冠詞が付く通り、これは炭素原子の数珠繋ぎをわっかにしたものであり、有限に閉じたカルビンとも言えるね。炭素数の区別のために、n個の炭素でできた環、組成Cnのシクロ炭素は「シクロ[n]炭素」と書くよ。
数多くある炭素の同素体のほとんどは、無数 (理想的には無限個) の炭素で構成された物質であり、少ない原子数で収まる分子状の同素体は結構珍しいんだよね。その意味では、シクロ炭素はフラーレンの次くらいに研究されている分子状の炭素同素体であり、しばしば環状の分子の性質を調べるために合成が試みられるんだよね。
しかし、シクロ炭素は前々から注目されていた割に、その研究は中々進まなかったよ。同じ分子状の炭素同素体であるフラーレンが1985年に発見・合成されたのとは異なり、初めて発見・合成されたシクロ炭素である「シクロ[18]炭素」が報告されたのは、なんと2019年になってからなんだよね!それから何種類か合成されているよ[注1]。
これほどまでに遅いのは、シクロ炭素がかなり不安定だからなんだよね。炭素の数によって安定性が異なるという違いはあっても、どれもが多かれ少なかれ不安定であり、極低温・低密度な気体か、もしくは絶対零度近い極低温の固体表面で原子を操作するような、余計な反応を防ぐための極端な状況じゃないと作れなかったんだよね。
このような状況では、シクロ炭素の性質を部分的にしか知ることができないんだよね。しかも合成できる量もとても少ないので、性質を調べること自体もかなり難しくなるよ。それでも実験と理論の両面から段々と分かってきたこともあり、シクロ炭素は炭素数が多くなるほど安定性が増すらしいことが分かってきたんだよね。
オックスフォード大学のYueze Gao氏らの研究チームは、10年以上に渡ってシクロ炭素の合成に取り組んでいたよ。しかもただ合成するだけではなく、シクロ炭素を室温の溶液中で安定させるという、これまでにないアプローチなんだよね!極めて不安定なシクロ炭素でそんなことができるなんて、当初は誰も考えていなかったよ。
しかし10年以上の研究の蓄積によって、不可能と思われていた合成が可能になる道が少しずつ開拓されてきたよ。カギとなるのは分子の不安定性を克服する方法で、分子が他の分子と反応するのを防ぐために、別の分子で覆いをしてしまおう、というアプローチなんだよね。
しかし同素体と呼ぶには、炭素原子は他の元素とくっ付いてちゃいけないから、覆いにも工夫が必要にあるよ。具体的には、紐に通したビーズや鎖の環のように、お互いにはくっ付いていないけど、かといって分離させることもできないような立体的な障害を持つ分子が必要になるよ。
このような、他の分子とは直接化学結合をしていないのに、取り外すことのできない構造を持つ分子を「カテナン」と呼ぶよ。つまり最終的に目指す形は、シクロ炭素に別の環状分子を通し、複数の環が結合したカテナン分子を合成することになるよ。

2024年の研究では、不安定な分子である炭素の長い直線を、別の分子の環で安定化させる合成実験を行ったよ。この応用としてほとんどシクロ炭素な分子も合成できたけど、まだ付属物があるために真の意味でのシクロ炭素とは言えなかったよ。 (画像引用元番号⑥⑦)
Gao氏らはまず準備段階として、2024年に、炭素だけでできた長い直線 (ポリイン) に、環状の分子を通した構造を持つ分子を作成したよ。炭素の直線は、環状の分子が外れないようにする分子を両端につけてるよ。まるで、紐からビーズが外れないように結び目を付けるようにね。このような構造は「ロタキサン」と呼ばれるよ。
この2024年の実験では、最終的に炭素原子だけが68個直線状に並んだロタキサンを合成することに成功したんだよね。これも十分すごいんだけど、両端を結ぶことで大きな環もできたんだよね!ただしこの環は、合成過程で必要だったコバルトなどを含んでおり、純粋なシクロ炭素とは言えなかったんだよね。

2024年の研究成果を改良することで、室温の溶液中でシクロ[48]炭素を合成することに成功したよ!これは新しい炭素同素体を合成しただけでなく、室温の溶液中で分子状の炭素同素体を合成できた2番目の事例となるよ。 (画像引用元番号①)
Gao氏らはこのアプローチを少し改良し、ロタキサン構造の分子を環状にするだけでなく、コバルトなどの余計な部分を取り除く反応も行うことで、本当に炭素だけでできた環状分子である「シクロ[48]炭素」を合成することに成功したよ!これまでの最大はシクロ[26]炭素なので、最大記録も大幅に更新したんだよね!
今回合成されたシクロ[48]炭素は、化学結合していない別の環を3つもくっつけているよ。シクロ[48]炭素自身も環なので、これは定義上4つの環が結合した[4]カテナンでもあるんだよね。
驚くべきは、シクロ[48]炭素の安定性なんだよね。これまで合成されたシクロ炭素は極低温でも短時間しか存在できなかったのに対し、シクロ[48]炭素は20℃の室温環境でも、半分が壊れるのに92時間かかるんだよね[注2]。加えてかなりの濃度の溶液の状態で合成できたので、その構造や性質がかなり詳しく調べることができるよ![注3]
しかも、安定化させるためのカテナンを取り払ってさえも、シクロ[48]炭素は比較的安定だったんだよね!半分壊れる時間が1時間[注4]と大幅に短縮されてしまうものの、シクロ炭素全体の不安定性を考えれば、室温でも数時間存在できるのはとんでもない安定性なんだよね![注5]
シクロ[48]炭素が室温で合成できたことにより、シクロ炭素のグループは、フラーレンのグループに次いで2番目となる「室温で合成することのできる分子状の炭素同素体」に位置づけられるんだよね。これは研究を容易にするという意味で、非常に重要な成果だよ!
Gao氏らは、この安定性の理由は、シクロ[48]炭素が大きな環状分子であるからだと考えているよ。実は、シクロ[48]炭素は理論的にはシクロ炭素の中でも不安定な炭素数であると考えられる一方、不安定化する理由 (ヒュッケル則による反芳香族性[注6]) がほとんど現れていないようなんだよね。
シクロ炭素の安定性に関する2020年の理論研究では、炭素数が50個を超えると不安定性がほとんど消えてしまうと予想されていることを考えれば、シクロ[48]炭素が安定していることの説明になるんだよね。これはシクロ炭素に関連する理論の検証にもなるよ!
今回のシクロ[48]炭素の合成の成功は、室温で合成可能な分子状の炭素同素体の枠を広げたという意味で重要なんだよね。今後は様々なシクロ炭素の合成実験にも弾みがつくし、炭素そのものの性質の理解にも繋がるという意味で、有機化合物の塊である私たちにも決して無関係とは言えない成果となるよ!
何しろ、炭素を含む環は様々な大きさ・形で存在し、分子のユニークな性質の直接的な理由になっている物も珍しくないからね!シクロ炭素は炭素を含む環の極端な例とも言えるので、シクロ炭素を詳細に検討できるということは、有機化学全体の知識を深めることにもつながるはずだよ!
[注1] これまでに合成されたシクロ炭素
今回報告された48個以外では、炭素の数が6個、10個、12個、13個、14個、16個、18個、20個、26個の合成の主張があります。 本文に戻る
[注2] カテナン付きのシクロ[48]炭素の半減期
最大300µM濃度の20℃の溶液での半減期が92時間。 本文に戻る
[注3] カテナン付きのシクロ[48]炭素の分析
この分子の性質や実在性は、質量分析法、核磁気共鳴分光法、ラマン分光法、紫外可視分光法で分析されました。高濃度の溶液でも安定化していたことが、この多様なアプローチでの分析に繋がりました。 本文に戻る
[注4] “裸”のシクロ[48]炭素の半減期
0.9µM濃度の20℃の溶液での半減期が1時間。 本文に戻る
[注5] “裸”のシクロ[48]炭素の分析
寿命が短いため、決定的な証拠となる核磁気共鳴分光法での分析はできませんでした。しかし、紫外可視分光法でのデータがカテナン付きのシクロ[48]炭素と一致したことが合成の主張に繋がっています。 本文に戻る
[注6] ヒュッケル則による反芳香族性
炭素を含む有機化合物で環状の構造を持つ部分は、「π電子」と呼ばれる特定の軌道の電子の数によって、安定するかどうかが決まります。π電子の数が4n+2個を満たす分子は芳香族性を持ち安定化するという性質があり、これを最初に考案したエーリヒ・ヒュッケルに因みヒュッケル則と呼びます。それ以外の場合には不安定化し、特に4n個の場合には反芳香族性を持ち不安定化する性質があります。2020年の理論研究によれば、シクロ炭素の場合でもヒュッケル則は現れますが、炭素原子の数が50個を越えるとほとんど現れなくなり、このようなヒュッケル則に基づく安定性が適用されない状態に変化するためであると予想されます。 本文に戻る
<原著論文>
<関連研究>
<参考文献>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)