⽣成AIはどのように教育や学習に活⽤されるのか? 最新の研究提⾔を紹介

2024.08.22

⽣成AIの教育分野への活⽤における研究は、教育の現場において、どのように最新のAI技術が利⽤できるのかを模索している段階です。

2022年に⼤規模⾔語モデル(⼤量のデータを使ってトレーニングされた⾃然⾔語処理モデル)が発展し、これまでにないレベルで複雑なタスクを、学習者にプログラミングの知識がなくても会話形式で実⾏できる性能にまで向上しています。

このAI性能を教育や学習に活⽤できないかと、⽣成AIと教育‧学習に関わる研究が今加速しています。今回の記事では、⽣成AIと教育活⽤における研究提⾔についてご紹介します。


⽣成AIの教育活⽤における研究提⾔

なぜ⽣成AIと教育活⽤における研究の最前線を記事にするのか?それは、教育の未来においてAIが果たす役割が重要になると考えられるからです。

研究ではAIの未来を考える上で重要な論点が論⽂という形で提⽰されていますが、研究に携わっていない⼈たちが論⽂に触れる機会は多くありません。

私は教育系NPOをファーストキャリアに選んだ後、今では研究の道を進んでいます。だからこそ研究の知⾒を実践者の知⾒と結びつけることは⼤切だと考えています。

2024年6⽉に教育とITに関する著名な国際論⽂誌「Computer and Education」に 掲載された「⽣成AIで⾼等教育を変⾰するための研究提⾔)(原題:Future research recommendations for transforming higher education with generative AI」では、教育におけるAIの変⾰領域について述べらています。

教育としての⽣成AIの活⽤における研究では、AIが教育において果たす役割を、「学習」「教える」「評価」「管理」という4つの役割として考えています。

これら4つの役割については、Chiuらが2023年に⾏ったAIと教育に関する⽂献レビューや過去の研究をもとにした概念的なフレームワークに基づいて整理されています。今回の記事ではその4つの役割についてご紹介します。

 

今回はAIの教育における4つの役割「学習(learning)」、「教育 (teaching)」、「評価(assessment)」、「管理(administration)」において、どのようなことができるか、その4つの役割についてご紹介します。

学習(learning)

1つ⽬の役割は、学習におけるAIです。AIを使ったデジタル環境で、⽣徒それぞれに合った課題を提供、会話を通じてリアルアイムにフィードバックを受けることができるなど、個別化されたサポートが可能と述べられています。
学習におけるAIでは 以下4つの領域が明らかにされました。

個々の能⼒に基づく課題の割り当て

AIベースの学習システムは、学⽣の能⼒に応じた学習タスクを個別提供します。

現状の課題は学習リソースの不⾜。学習者は受動的になりがちで、効果的に学習するためにはシステムの効率性を上げることが重要と⾔われています。

⼈間と機械の会話

AIは、学⽣と継続的な対話を通じて学習者のコミュニケーション能⼒向上を⽀援します。

例えば、AIチャットボットは授業を⽋席した学⽣からの質問に24時間体制で答えるようなチューター的な役割を担うことができます。

タイムリーなフィードバックの提供

AIは学⽣の作業や学習過程を分析し、タイムリーなフィードバックを提供します。

例えば、AIノートアプリは、幼稚園児の⼿書き⽂字(形、書き順、⽅向など)を認識‧分析、より良い字が書けるためのフィードバックを提供しています。

デジタル環境における適応性とインタラクション性の向上

AI技術により、学⽣の学習データを収集し、デジタル環境での対話を可能になりました。

例えば、「StuDiAsE」と呼ばれる⼈⼯知能に基づく学習者診断‧⽀援‧評価システムは、学習者が教育ツールを使⽤することにより、学習者の教育プロファイルを⽣成し、個別最適なフィードバックを行い、学習者のスキル向上に繋げています。

Chiu (2024)によると、⽣成AIは、学習における役割を変え、より向上させる能力を持っていると述べています。
学⽣に向けて新しい学習コンテンツを作成したり、よりスムーズに進むような対話のサポートしたり、学⽣の質問や問題に対して答えを提供することが期待されています。

しかし、期待される⼀⽅で、よりよい学習利⽤に向けて新しいスキル(プロンプトスキル、デジタルリテラシー、倫理知識など)も必要になるでしょう。

教育 (teaching)

2つ⽬の役割はAIを⽤いた教育指導です。この分野では以下の3つの役割が明らかにされました。

適応的な教育戦略の提供

AIシステムは、テキストや⾳声、画像、動画、センサー情報など、複数の異なるデータ(マルチモーダルセンサーデータ)を活⽤、学⽣の感情の状態をAIが判断し、適切な教育内容や指導⽅法、学⽣とのコミュニケーション⼿段などを提案してくれます。

教師の教育能⼒の向上

AI技術により、学習資料やタスクのアップロード、割り当て、配布が迅速になり、クラスの管理運営が⼤幅に効率化します。

効率化の可能性がある反面、教師全員がAI技術を完全に信頼しているわけではないという現状がボトルネックになる可能性もあります。

教師の専⾨的発展の⽀援

AI技術は教室内データをリアルタイムで分析し、教師にフィードバックを⾏います。

AIによる評価の良い点は中⽴であることです。⼈の感情に偏らないため、教師の感情を入れることなく評価でき、さらには評価結果を深く考えるサポートとして期待されています。

 

評価(assessment)

3つ⽬の役割は評価におけるAIです。この分野では以下2つの役割が明らかにされました。

⾃動採点の提供

AI採点システムは、教師よりも速く、正確かつ信頼できるフィードバックを提供します。しかし、多くの⾃動採点システムは、⾔語学習など特定の分野や領域での適⽤にとどまっており、まだまだ発展途中です。

学⽣のパフォーマンス予測

AI技術は、オンライン教育において学⽣の学習活動(ディスカッションボードなど)を分析し、学⽣の成果やパフォーマンスを予測することができます。

しかし、学⽣のパフォーマンス⾃体を予測するAIデータは、従来の教育研究で利⽤されているデータとは異なるため、現段階では現場運用というレベルの活用は難しいかもしれません。

 

管理(administration)

4つ⽬の役割は管理におけるAIであり、3つの役割が明らかにされました。

管理プラットフォームのパフォーマンス向上

顔認証やポータル管理などにAIを活⽤し、セキュリティや効率性を向上させます。

教育コースのスケジュール管理、⼈事データ管理などにAIを活⽤することで、管理者の業務効率の向上に寄与します。

便利で個別化されたサービスの提供

AIを活⽤したアクティビティの推奨システムによって、スタッフの効率とサービスの質の向上につながります。

エビデンスに基づく教育意思決定の⽀援

AIはビックデータ活⽤によって、管理者に学⽣の退学の予測や、成績の原因の特定、コース選択の予測など、データに基づくエビデンスを提供してくれます。

⽣成AIの活⽤は⾼等教育において、多くの側⾯で重要な役割を果たす可能性を持っています。AIの進化に伴い、教育現場においてAI活用の挑戦と機会が⽣まれているとChiu (2024)は述べています。

 

さいごに

今回はAIの教育活⽤における⽅向性の理解ができるような研究をご紹介しました。

現在⾏われている議論は、政策⽴案や評価のプロセスが中⼼となっており、そもそも教育の未来はどうあるべきか、という問いに対する研究はまだまだ不⾜しています。

AIが教育‧学習にもたらす可能性は⼗分にあるものの、筆者の⾒解では、実際に教育現場に全国レベルで仕組みとして実装されるには、早くても数年、10年単位で時間がかかるのではないかと考えています。

 

とはいえ技術の変化は著しく速く、仕組み化されるのを待っている間に次の技術⾰新が起こりえます。トップダウンではなく、ボトムアップで個⼈単位や⼩さな組織から、取り⼊れられる範囲で取り組む。実践での成果を報告することで、現場での成功体験がより⼤きなレベルでの仕組み化の検討に繋がる。その先に研究へと還元、と知識の循環が起きるのではないかと考えています。

 

また、「AIリテラシー」に関する研究も進んでいますが、単純にAIを理解し使いこなせるようになるという話だけではなく、AIをどのように批判的に捉え、時には 「使わない」という判断をするのか、という点も含めたリテラシーの概念化が重要になってくるでしょう。

 

次回は⽣成AIを活⽤した探究授業での活⽤フレームワークとプロンプトをご紹介したいと思います。

 

参考⽂献

<今回の記事で中⼼に参照した論⽂>
Chiu, T. K. (2024). Future research recommendations for transforming higher education with generative AI. Computers and Education: Artificial Intelligence, 6, 100197.

<以下、引⽤元⽂献>
Bonneton-Botte, N., Fleury, S., Girard, N., Le Magadou, M., Cherbonnier, A., Renault, M.,
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【著者紹介】大滝 文一(おおたき ぶんいち)

「共に在り、共に学び、共につくる」を哲学とする合同会社&anteを共同創業。並行して国立大学の博士後期課程に所属し、学習科学領域でAI時代の対話、フィードバックを通した豊かな学びについて研究中。
表現教育を提供する教育NPOで5年半、全国の小学校から大学、地域を廻る。学びの研究知と実践知を繋げたいと留学を決め、スウェーデンの大学院で修士課程(教育科学)を修了。 認定キャリアコンサルタント。
研究や研究・留学生活についてnoteでも発信中。(株)A-Co-Laboパートナー研究者としても活動中。

【主な活動場所】
合同会社&ante 
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