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みなさんこんにちは!CEなかむーです!
近年病院だけでなく在宅医療においても在宅酸素療法が普及し、医療ガスが身近になったように感じています。
治療のために医療ガスを使用する場面が増えていますが、実は意外と知られていないことも多いのではないでしょうか?医療ガスとはいったいなんなのか?今回は身近なようで意外と知らない医療ガスについて深堀していこうと思います!
それではどうぞご覧ください!
CONTENTS
皆さんは医療ガスという言葉を聞いたことはあるでしょうか?
病院やクリニックで使用される医療ガスには様々な用途・種類があり、よく耳にする医療ガスといえば「酸素」が思い浮かぶ方が多いかもしれません。医療現場で用いられるガスには様々なものがあり、ガスの特性によって使い分けられており、ガスが充填してあるボンベの種類もたくさんあります。
また、「ボンベ」という語源には諸説ありますが、ドイツ語の「ボンベ(ドイツ語:Bombe)」には「爆弾」の意味があるそうです。使い方ひとつで大きな事故につながる恐れもあるため、使用に関連して適切に取り扱いできるように高圧ガス保安法という法律の下で管理されています。
高圧ガス保安法の中でとりわけ医療で用いるガスを規定しているのが「医療ガス保安法」です。医療ガス保安法は、医療機関において使用される医療ガスの安全管理に関する法律です。以下に医療ガス保安法について記します。
医療ガスの適切な取り扱いと安全管理を図り、患者の安全を確保することを目的としています。
病院や診療所などの医療機関において使用される医療ガスが対象です。酸素、亜酸化窒素、空気(圧縮空気)、吸引、二酸化炭素、手術機器駆動用窒素などが含まれます。
医療ガスの製造、製造販売、販売には、医薬品医療機器法(薬機法)と高圧ガス保安法に関連しており、医療ガス設備の保守点検業務、新設及び増設工事、施工監理業務、職員研修などを義務付けています。
また、病院等において、医療ガスの安全管理を図るために医療ガス安全管理委員会を設置することが求められています。委員会は、医療ガス設備の保守点検業務や工事の施工監理業務を行い、この委員会に臨床工学技士が加入していることも多いです。
次に病院で使用される主な医療ガスの種類とその特徴を見ていきましょう。医療ガスの文字色はボンベの色を示しています。
酸素 (O₂)(ボンベ:黒)(ガス配管:緑)
医療用酸素は、人体に十分な酸素が行き渡らない場合に使用されるガスです。
酸素は無色で無味、空気よりやや重い気体であり、燃焼を助ける性質(支燃性)を持っています。主な効能として、酸素欠乏による諸症状の改善や呼吸困難、手術後の呼吸不全の予防などがあります。
医療用酸素は製造工場で空気を分離して製造され、液体酸素として保管されます。
病院内で使用される酸素ボンベは、約500リットルの酸素が入っており、検査や手術後の病室への短時間の移動に際して使用されます。人工呼吸器や高気圧酸素療法といった医療機器を使用した治療等においても日常的によく使用されています。
亜酸化窒素 (N₂O)(ボンベ:水色)(ガス配管:水色)
亜酸化窒素は無色で香気と甘味があり、常温で反磁性の気体です。
麻酔効果があるため、医療用途では全身麻酔に使用されています。
また、工業用途では燃料の発火促進にも利用されます。食材をムース状に加工する調理法(エスプーマ)にも使用されます。
麻酔や疼痛管理に使用されることが多く、笑気ガスとしても知られています。全身麻酔手術の時に使用される麻酔器で使用することが多いです。
窒素 (N₂)(ボンベ:ねずみ色)
医療用窒素(またはN₂ガス)は、医療用酸素と人工的にブレンドして病院内に清潔な空気を供給する目的のほか不活性ガスとして使用されます。
無色で無臭の気体であり、空気よりやや重いです。不燃性であり、ボンベにはガスの状態で充填されています。日本薬局方酸素と混合して合成空気として使用されることもあります。
外科手術に使用される医療機器の駆動用や冷凍手術・冷凍保存(例:イボの除去や細胞の鮮度保持)に利用されます。
二酸化炭素 (CO₂)(ボンベ:緑)
医療用二酸化炭素(CO₂)は、医療現場で広く使用されており、腹腔鏡手術の時に腹腔内へ二酸化炭素を送気して視野を確保するために使用される気腹装置で利用されています。
その他には心臓外科手術の際、血管縫合時に二酸化炭素を血管内に流し、血管拡張を促進したり、CT検査の時には大腸検査のために肛門に注入し、大腸を拡張させたりして鮮明な画像を撮影します。
二酸化炭素は血液に溶けやすく、肺から排泄されるため、血管の塞栓リスクが少ない利点があります。
また、従来の造影剤が使用できない患者にも造影のために二酸化炭素を利用する造影方法などもあります。
空気(Air)(ボンベ:灰色)(ガス配管:黄色)
医療用空気は無色で無臭の気体であり、空気よりやや重いです。
不燃性であり、ボンベにはガスの状態で充填されています。
病院内での用途として人工呼吸器や高流量鼻カニューラ酸素療法(ハイフローセラピー:HFNC)、外科手術機器の駆動用ガス時の駆動源としても知られています。
医療ガスには様々な種類がある事はお分かりいただけたかと思いますが、実はこの医療ガスのボンベには医療ガス保安法で定められた色分けが存在していて、医療ガスの取り違えや事故が起こらないように区別することで適切な場所で適切な使用
しかし、医療用を定めている医療ガ
しかしながらこの医療ガスを規定している高圧ガス保安法、産業分野でのボンベを規定しているJIS規格。この2つの法令によって医療現場ではとても困った事例も発生しています。それは酸素と二酸化炭素のボンベの色問題です。
高圧ガス保安法では「酸素は黒、二酸化炭素は緑」というのが規格として定められています。ところが、医療業界での「緑」は酸素を連想するイメージが強くあります。これは病院の壁から出ている医療ガスの配管(医療ガスアウトレット)の色が「緑」とJIS規格で定められていたり、鼻から吸入する酸素チューブも同様に緑だったりすることに由来しているのかもしれません。
院内の壁のガス配管(医療ガス配管設備)は産業用のJIS規格によってその色が決められている一方、ガスボンベを規定している高圧ガス保安法での「緑」は二酸化炭素ボンベと規定しているため、酸素の医療ガス配管と炭酸ガスのボンベの色は同じ緑色であることから、「緑色は酸素」という思い込みが生じてしまいがちです。
実際、過去の医療事故等を確認すると手術後に手術室から病室へ戻る際に、酸素ボンベによる酸素吸入を行うつもりが、液化炭酸ガス(二酸化炭素)ボンベを誤接続し、患者に吸入させてしまったケースや緑色のボンベ(二酸化炭素)を酸素ボンベと間違えて人工呼吸器に接続してしまったケースもあるようです。
このように医療業界において使用される医療ガスには様々な種類・特性があり、それらを安全に取り扱うためにはどのような法令の下で管理されているか知ることも必要になります。
また、これらを管理するために臨床工学技士が工学的な視点で医療従事者の教育や設備管理に積極的に介入することが今後の医療においては必要かもしれません。
いかがでしたか?
酸素ボンベや医療ガス配管などは病院でもよく見る光景なので気になった方はよく観察してみると新しい発見もあるかもしれません。実は接続する配管側にも更なる安全対策がいくつも講じられていたりするのですが、それはまた次回深堀していきたいと思います!
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