~「石頭」ができるまで~ パキケファロサウルスの成長について解説します!

2023.12.01

【サブアダルト】のパキケファロサウルスの復元画

 

こんにちは!恐竜好きな方へのサポートなどを行っているタレント「恐竜のお兄さん」加藤ひろしと申します。

今回のテーマは“パキケファロサウルスの成長”です。



恐竜好きな方が「石頭」と聞いたとき、ほとんどの方はパキケファロサウルス Pachycephalosaurusのことを思い浮かべることでしょう。

この「石頭」で有名なパキケファロサウルスは、これまで発見されたなかで「最大の石頭恐竜(堅頭竜類)」であり、さらには白亜紀末期(約6800万年前~約6600万年前)のカナダとアメリカに生息した「最後の堅頭竜類」の一つでもありました。()(※以降、〇に数字形式でリンクしているものは関連論文)


そして、この恐竜の特徴的な石頭(ドーム)やその周りにある突起の形は成長とともに変化していったのです。

 

パキケファロサウルスの成長段階ごとの頭骨レプリカ(筆者撮影)

 

 

それでは、そんなパキケファロサウルスの成長に伴う変化は一体どのように研究されているのでしょうか?

今回はパキケファロサウルスの下記のテーマで紹介します!

・パキケファロサウルスの成長に関する話題を見聞きした時の「注意点」
・“それぞれの成長段階”

 

パキケファロサウルスの成長に関する話題を見聞きした時の注意点

パキケファロサウルス Pachycephalosaurus という属名が命名されたのは1943年でしたが、「パキケファロサウルスはどのように成長していくのか」を主なテーマにした最初の研究論文が出版されたのは2009年のことでした()。

 

そして、これまでに研究の対象となったパキケファロサウルスの化石の数とパキケファロサウルスたち堅頭竜類の化石の完全度に目を向けると、彼らの成長については以前紹介したトリケラトプス(角竜類)よりもまだ分かっていない情報が多いことが分かります。

最大級の角竜類! トリケラトプスはどう成長する?

 

まず2009年のパキケファロサウルスの成長に伴う頭骨の変化についての研究論文で研究対象になった頭骨化石の数は19体分で、トリケラトプスの同様の研究で対象になった頭骨化石の数が28体分以上であることを踏まえると、比較的少ない数になります。()


またパキケファロサウルスを含む堅頭竜類全体の化石を見ると、頭骨、特にドーム周りのみが保存されている場合が多いのです。()

 

この2つの注意点【研究対象になった化石の少なさ】と【発見されている部位の偏り】を踏まえ、これから紹介するパキケファロサウルスの成長についての情報は研究の対象になった個体の頭骨から得られたものになります。

 

そして2009年に出版された「パキケファロサウルスの成長に伴う頭骨の変化」についての研究論文では成長ステージを3段階に分けていますので、今回の記事ではその3段階を若い順に紹介していきます。

 

それぞれの成長段階

ホグワーツの竜王

まずは【亜成体(若者)】についての解説です。

この成長段階には、かつて“ドラコレックス・ホグワーツィア Dracorex hogwartsia (意味: ハリー・ポッターシリーズに登場する「ホグワーツ魔法魔術学校」の竜王)”として2006年に命名・分類されていた個体も含まれます。

 

そして“ドラコレックス・ホグワーツィア”の命名の際に種の基準となった標本(ホロタイプ標本)には下顎以外のほぼ完全な頭骨・4つの首の骨(頸椎)が残されていました。()

【亜成体】のパキケファロサウルス(“ドラコレックス・ホグワーツィア”のホロタイプ標本)の頭骨レプリカ(筆者撮影。実物の下顎は失われている点に注意!)

 

この成長段階では特徴的なドームはまだなく、後頭部にあるトゲ状の突起(“ドラコレックス”のホロタイプ標本のものは最長で約75ミリメートル)がよく目立っています。()

まさにドラゴンのような見た目をしていますね!

 

さらに、最長で26.5ミリメートルのトゲ状の突起などが保存された、元“ドラコレックス”よりも小さな2頭分の断片的な頭骨が2016年に記載されており、この2頭分の断片的な頭骨はこれまでに研究されたパキケファロサウルスの頭骨のなかで一番小さなものであると考えられています。()

 

トゲトゲ頭

【亜成体】から少し成長して、大人になる手前の段階を【サブアダルト】といい、この成長段階にはかつて“スティギモロク・スピニファー Stygimoloch spinifer (意味: トゲを持つ地獄の川の神)”として1983年に命名・分類されていた個体も含まれます。

この“スティギモロク・スピニファー”のホロタイプ標本には、最長のもので推定130ミリメートルにもなるトゲ状の突起も含む、後頭部の一部が残されていました。()

下の写真は元“スティギモロク”を含む、複数の個体の要素を合体させている点がポイントです。つまり、元"スティギモロク"にあたる「成長段階の個体」は現在まで、完全度が高い化石が見つかっていないんですね。

【サブアダルト】のパキケファロサウルスの頭骨レプリカ(筆者撮影‥の為、手振れしてしまってすみません‥!)

 

この成長段階でドームが形成され始め、トゲ状の突起は【亜成体】のときよりもさらに目立ちます。()

 

また東京の国立科学博物館に実物化石が所蔵・展示されている『サンディ』は元“スティギモロク”よりもわずかに成長した【サブアダルト】であると考えられており()、現時点で全身の化石が最も多く残されたパキケファロサウルスでもあります。

【サブアダルト】のパキケファロサウルス『サンディ』の実物の頭骨(筆者撮影)

【サブアダルト】のパキケファロサウルス『サンディ』の実物が組み込まれた全身骨格(筆者撮影。白いパーツで未発見の部位を示す)

 

分厚い頭

【成体】、つまり大人のパキケファロサウルスになるといよいよ、恐竜好きな方が「パキケファロサウルス」と聞いたときにイメージする姿になります。

この成長段階でドームが完成し、その周りにある突起の形は丸くてゴツゴツしたこぶ状に変化します。()

 

【成体】のパキケファロサウルスの頭骨レプリカ(筆者撮影。実物は口先が欠けていることに注意!)

 

この写真の【成体】はパキケファロサウルス Pachycephalosaurusという属名の由来にもなった個体で、頭骨の長さは最長で推定64.2センチメートル、そして「分厚い頭を持つトカゲ」という意味の属名に相応しく、ドームの分厚さは22.2センチメートルにもなります。()

 

まとめ

以前紹介したトリケラトプスのように、パキケファロサウルスも成長に伴って頭の形がかなり派手に変化します。
“スティギモロク”については、パキケファロサウルスとは違う種であると考察する研究論文もあります。()

 

そのため今後の研究によっては種の分類がまた変わるかもしれません。しかしそれでも、彼らが「成長とともに頭骨の形を大きく変える恐竜」の一つであったことは確かなようです。

参考文献(本文登場順) 

Horner, J.R., Goodwin, M.B., and David C. Evans, D.C., 2022. A new pachycephalosaurid from the Hell Creek Formation, Garfield County, Montana, U.S.A., Journal of Vertebrate Paleontology, 42(4) 本文に戻る

Brown, B., and Schlaikjer, E.M., 1943. A study of the Troödont dinosaurs with the description of a new genus and four new species. Bulletin of the American Museum of Natural History, 82: 115-150. 本文に戻る

Horner, J.R., and Goodwin, M.B., 2009. Extreme Cranial Ontogeny in the Upper Cretaceous Dinosaur Pachycephalosaurus. PLoS ONE, 4(10): e7626. 本文に戻る

Horner, J.R., and Goodwin, M.B., 2006. Major cranial changes during Triceratops ontogeny. Proceedings of the Royal Society of London: Biology, 273(1602): 2757-2761. 本文に戻る

Mallon, J.C., and Evans, D.C., 2014. Taphonomy and habitat preference of North American pachycephalosaurids (Dinosauria, Ornithischia). Lethaia, 47(4): 567-578. 本文に戻る

Bakker, R.T., Sullivan, R.M., Porter, V., Larson, P., and Saulsbury, S.J., 2006. Dracorex hogwartsia, n. gen., n. sp., a spiked, flat-headed pachycephalosaurid dinosaur from the Upper Cretaceous Hell Creek Formation of South Dakota. Lucas, S.G., and Sullivan, R.M., eds. New Mexico Museum of Natural History and Science Bulletin, 35: 331-345. 本文に戻る

Goodwin, M.B., and Evans, D.C., 2016. The early expression of squamosal horns and parietal ornamentation confirmed by new end-stage juvenile Pachycephalosaurus fossils from the Upper Cretaceous Hell Creek Formation, Montana. Journal of Vertebrate Paleontology, 36(2) 本文に戻る

Galton, P.M., and Sues, H-D., 1983. New data on pachycephalosaurid dinosaurs (Reptilia: Ornithischia) from North America. Canadian Journal of Earth Sciences, 20(3): 462-472. 本文に戻る

Fowler, D.W., 2017. Revised geochronology, correlation, and dinosaur stratigraphic ranges of the Santonian-Maastrichtian (Late Cretaceous) formations of the Western Interior of North America. PLoS ONE, 12(11): e0188426. 本文に戻る

 

【著者紹介】恐竜のお兄さん 加藤ひろし

恐竜についての難しい研究論文について、わかりやすく解説しています。
そのほかにも、動物園・博物館・恐竜イベント等をさらに楽しむ為に注目すべきポイントについて紹介します。幅広い知識を子供から大人まで、ご要望に応じた層に分かりやすく対応いたします!
出身地:東京都
誕生日:1993年10月28日
身長:167cm
資格:学芸員資格(博物館資料の収集・整理・保管・展示・調査など)
   大型特殊自動車免許(ブルドーザー・ショベルカー・クレーン・除雪車など)
   車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削)運転技能講習修了

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