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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、「メガロドン」の大きさに関する新たな推定結果に関するお話だよ。360万年前に絶滅した巨大なサメとして知名度の高いメガロドンだけど、化石が不完全なせいで、大きさがどのくらいかという基本的な点がよくわかっていないんだよね。
今回は、単に現生種のサメを参考に体型を予測するだけでなく、その妥当性を流体力学も含めて検証したよ。その結果、最大の個体では体長24.3mという、かつての推定を大幅に超えた巨大なサイズであることが予測されたんだよね!また、従来よりも細身な体型も推定されたよ。
この推定結果は、メガロドンの生態の考察に直接影響するだけでなく、他の絶滅した生物の体型を復元する際にも参考になるヒントを提供するかもしれないよ!
CONTENTS
「メガロドン」 (Otodus megalodon) は、絶滅した巨大なサメとしてよく知られているよね。様々な図鑑に掲載され、様々な映像作品にも登場することから、恐竜以外の絶滅した動物の中でも知名度はかなり高い部類にあると思うんだよ。
しかし、たった360万年前までと[注1]、地球全体の歴史からすればごく最近まで生息していたにも関わらず、メガロドンには基本的な部分に大きな謎があるよ。それは「メガロドンの大きさはいったいどれくらいなのか?」という点だね。この謎は、メガロドンがサメだからという点と大きく関連しているよ。
サメは、全身の骨格が軟骨でできている軟骨魚類であり、分解しやすいので化石に残りにくいんだよね。サメの仲間であるメガロドンも例外ではなく、大部分の化石は歯しか残されていないんだよね。ごく一部の化石で、脊椎の一部が見つかっている以外に、体長を正確に推定するための手がかりが残されていないんだよね。
ということで、メガロドンの身体の大きさは、多数見つかっている大きな歯と、ごく一部の脊椎化石を手掛かりに推定するしかないんだけど、現生種を見てもらえば分かる通り、サメの体つきは様々。どのサメを参考にするかによって、メガロドンの推定体長は10.5mから20.3mまで、いくらでも変わってしまうのが厄介なんだよね。
従来の研究では、メガロドンの体長の推定に使われる現生のサメは、ほとんどが「ホホジロザメ (Carcharodon carcharias)」か、ホホジロザメを含むネズミザメ科 (Lamnidae) のサメだったんだよね。実際、メガロドンはホホジロザメ属 (Carcharodon) に含まれるという推定もあったくらい、似ているものと考えられていたんだよね。
しかし近年の研究では、少なくともメガロドンはホホジロザメとは異なる属にいるだろうと考えられており、ネズミザメ科 (Lamnidae) に含まれるかどうかすらも怪しいのよね。現在ではメガロドンは、前期白亜紀にネズミザメ科から分岐したムカシホホジロザメ科 (Otodontidae) に属するという意見の方が大勢だよ。
デポール大学の島田賢舟氏らの研究チームは、謎多きメガロドンのサイズに関する新たな推定を行ったよ。基本的には、ベルギーのアントワープで1926年に発見された、141個の椎体からなる脊椎化石「IRSNB P 9893 (旧称IRSNB 3121)」を元に体長の推定を行ったよ。貴重な脊椎化石なので、この標本は過去の研究でも使われているよ。
今回の研究でより力を入れたのは、島田氏らも過去の研究で指摘している、メガロドンの体格に関する推定なんだよね。これまでメガロドンの体長推定にはホホジロザメやその仲間が使われていることは先ほど述べたとおりだけど、では本当にメガロドンはホホジロザメと似たような体型なのか?という点について検討したんだよね。
ホホジロザメは、サメの中では結構丸みを帯びたずんぐり体型で、これは高速遊泳するのに効率的な体格になるよ。もしこの体型を持つなら、メガロドンの遊泳速度は4.8km/hから5.1km/h程度と推定されるため、メガロドンはかなり高速で回遊するハンターであると認識されるようになったんだよね。
しかし島田氏らは、過去の研究を振り返って検討してみると、ホジロザメとかネズミザメ科みたいな、近いとされる分類群からメガロドンの体長を推定すること自体に無理があるのではないか、と考えているんだよね。むしろ、他のサメの分類群も見た上で体型を検討すべきと考えたよ。
それに、身体のサイズが変われば、受ける水の抵抗も変化するので、メガロドンにとってホホジロザメと同じような体型が必ずしも優れているとは限らないよ。そこで島田氏らは、脊椎化石から導き出される体型について、水の抵抗をどのくらい受けるのかについても検討を行ったよ。
特に参考になったのがクジラなんだよね。確かに、クジラは哺乳類だし硬骨の骨格を持つ、全然別の生物だけど、メガロドンに匹敵する大きさで海を泳ぐ現生種という点では、最も参考となる資料なんだよね。島田氏らは、11属20種からなる41頭のクジラの体型を参考に、メガロドンの妥当な体格を検討したよ。
メガロドンとは近縁ではなさそうなサメや、全く違う分類だけど同じような生態を持つクジラを参考に考えると、メガロドンの体型はニシレモンザメのような細身の体型が最もエネルギー効率が良いことが分かったよ! (画像引用元番号④)
その結果、メガロドンはホホジロザメのようなずんぐり体型よりも、メジロザメ科 (Carcharhinidae) の「ニシレモンザメ (Negaprion brevirostris)」のような細身の体型である方が、水の抵抗を受けながら泳ぐ際のエネルギー効率が最大化され、メリットが大きいことが分かったんだよね!
確かに、ホホジロザメ体型ならば高速で遊泳できるものの、あまりにも水の抵抗が大きくなり、エネルギー効率が悪すぎるんだよね。ニシレモンザメ体型ならば、遊泳速度は2.1km/hから3.5km/hと少し落ちるものの、エネルギー効率はかなり良くなるんだよね。
この遊泳速度は、獲物に追い付くには遅すぎるかもしれない。ということでメガロドンは、獲物に接近する時だけは短時間スピードアップし、それ以外の時にはエネルギー効率の良い速度で回遊していた、と考えるのが妥当になってくるよ。
メガロドンの捕食スタイルは、先述した高速で回遊して獲物を捕らえるという説の他、ずっとゆっくり泳いで積極的に獲物を追い回すことはしないという真逆の説もあったよ。しかし今回の島田氏らの推定は、両者の中間がメガロドンの捕食スタイルであることを示唆しているんだよね。
もし島田氏らの推定が正しい場合、メガロドンの体長と体重は、分析された化石IRSNB P 9893の持ち主の場合16.4m/約30t、最大と推定される個体はなんと24.3m/約94tにもなると考えられるんだよね!これは最大で29.9m/約199tのシロナガスクジラ (Balaenoptera musculus) にも匹敵する、最大級の海洋生物ということになるよ!
また、現生種/絶滅種を含めて史上最大の動物とみられるシロナガスクジラを超えることはさすがにムリだけど、魚類の枠組みの中では史上最大の動物となるかもしれないよ。これは、メガロドンの時と同じく、化石からの体長推定が難しいから確定的には言えないけど、可能性は十分にありうるね![注2]
今回の研究から、メガロドンは生まれたばかりですら体長約4mと、大人のホホジロザメとほぼ同じ大きさだったと推定されるんだよね。生まれたばかりでこれほど巨大ならば、すぐに自力で泳ぎ始め、獲物となる海棲哺乳類を積極的に捕食していた可能性すらあるよ。
今回の、メガロドンはもっと細身の体型をしていただろうという研究は、長年の懸案であるメガロドンの大きさ論争に決着をつけるかもしれないね。あるいはまだ更なる異論が出てくるかもしれないけど、いずれにしてもメガロドン研究における大きな節目の1つになることは間違いないと思うよ。
加えてこの研究結果は、メガロドンのような巨大な生物が効率的に泳ぐにはどうしたらいいのか、あるいはどのような条件を備えた生物なら巨大に進化できるのか、といった具合に、生物の巨大化に関する他の研究にも影響を与えるかもしれないよ!
[注1] メガロドンの絶滅時期
メガロドンが絶滅した時期は、最新のものでは2019年の研究で評価された360万年前であるとするのが一般的です。歯の化石を根拠に、260万年前まで生息していたとする説もありますが、現在ではあまり支持を受けていません。 本文に戻る
[注2] 史上最大の魚類
史上最大の魚類は、後期ジュラ紀に生息した「リードシクティス・プロブレマティカス (Leedsichthys problematicus)」がしばしば名前が挙がります。しかし、化石が不完全にしか残されていないことから、その体長には議論があります。1988年には最大値として27.6mという数字が掲げられ、その後出版された一般向けの書物では、30mや36mという数字が挙げられていることもあります。しかしその後の研究では、この数値はかなり過大評価されているという主張があり、現在では2013年の研究で提示された16.5mが妥当な最大値であると見られています。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<関連研究>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)
体長24.3mのメガロドンの体輪郭図: プレスリリースより (Image Credit: Kenshu Shimada (DePaul University) )