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皆さんこんにちは。福岡工業大学の赤木紀之です。
私が大学生の頃は、ようやく1人1台の携帯電話が普及し始めた時代でした。しかし、それはまだスマートフォンではなく、いわゆるガラパゴスケータイと呼ばれるものでした。解像度の低いカメラでの写真撮影や、ショートメッセージの交換がなんとかできる程度でした。
また、パソコンのインターネット接続速度は極めて遅く、ページの読み込みにはかなりの時間がかかりました。しかし、現在では生まれた瞬間からインターネットを使える時代になり、この世代は「Z世代(Generation Z)」と呼ばれています。彼らはデジタルネイティブであると言えます。
今ではほとんどの人がスマホをも持ち、いつでも手軽にインターネットにアクセスできるようになりました。特にSocial Media やSocial Networking Service(SNS)の出現により、コミュニケーションのあり方が大きく変わりました(厳密にはSocial MediaとSNSは異なる概念のようですが、この記事ではSNSという言葉を使います)。
Instagram、LINE、X(旧Twitter)、TikTok、YouTube、note、Facebook、LinkedIn、Threadsなど、さまざまなSNSが存在します。私自身もmixiの時代からSNSを利用していました。
私は大学生の皆さんにはSNSを活用することを強くお勧めしています。その理由はなにか?この記事では、すでにネットリテラシーを十分に理解されていることを前提に進めてまいりたいと思います。
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繰り返しになりますが、大学生こそ積極的にSNSで情報発信すべきだと私は考えています。学生さんたちのInstagramを見ていると、インスタ映えする風景や料理をとても上手にシェアしています。
私もこんなに魅力的に発信できるようになればいいな、と日々感心しながら見ています。ただ、この記事で紹介する「SNSの活用方法」は、皆さんが実践している使い方とは少し方向性が違います。
SNSを活用する-この「活用する」というのがポイントです。私が考える「活用」とは、「実名で世間に向けて情報発信する」という意味合いです。私が特に重要だと考えるのは、SNSを通じて自分の考えや感情を言語化もしくは可視化して発信し、自身の存在を世間に示すことです。この点について詳しく説明していきたいと思います。
皆さん作文は得意ですか?「作文なんて、中学校の読書感想文以来ほとんどやっていないので、得意とは言えない」と思う人が結構いるのではないでしょうか。でも我々は普段の生活の中でも、かなりの頻度で作文する場面に遭遇します。
一番身近な場面が、LINEやメールでのやり取りだと思います。こういった文章でのやり取りは、思わぬ誤解や互いの認識のズレを生み出すことがあります。読み手の立場に立って、こちらの意図を分かりやすく端的に伝えることは、思った以上に高度なスキルを要します。
大学生にとって最初の難関はレポート作成でしょうか。レポートの記載内容が日本語として成立しておらず、明らかにおかしなレポートはやり直しを命じられることもあるでしょう。期末試験の論述問題などは、特に丁寧な説明が必要です。社会人になれば報告書や事業企画書など、より高度で重要な文章を作文することもあるでしょう。
自分が得た知見や経験、考えているアイディアや発想を上手に言語化し、説得力のある日本語を作文するには、日々の言語化の訓練が不可欠です。
実はSNSを利用した情報発信こそ、思考の言語化の素晴らしい訓練になると私は考えています。
例えばX(旧Twitter)での情報発信。Xは原則的には全角文字で140字しか入力できません。自分の伝えたいことをたった140字でどうやってまとめるか?やってみると分かりますが、これが凄く難しい。余計な言葉を除き、最善の単語を選び、言い回しを使い分ける。改めてXで発信されている方々の文章を読むと「この短文で、ここまで情報を入れられるのか」と感心させられることがしばしばあります。
日ごろから140字で文章を考える訓練をしておくと、色々なところで役に立ちます。まず、文字数を減らすために、別の言い回しを探すことで語彙力が増えます。これにより、報告書やメールを作成する際にも、短く分かりやすい文章が自然と書けるようになります。
当然これは、普段から意識してXの文章を作文しなくては訓練になりません。全ての投稿を訓練に充てる必要はありませんが、何回かに1回は洗練された短い文章を発信する癖を付けると良いでしょう。
もう少し長い文章を書く訓練をしたければ、note、Facebook、LinkedInなどがお勧めです。何か一つ自分でテーマを決めて、推敲に推敲を重ね文章を完成させてみてください。まずは1回書いて、1週間後に読み直してみてください。色々おかしな点が見えてくると思います。
自分で自分の文章を添削するのも、とても効果的な訓練だと思います。長い文章を書くことについては、この記事の後半で詳しく紹介したいと思います。まずはその前段階として、何を題材に言語化の訓練をするのがよいか一緒に考えてみましょう。
私自身、思考を言語化する重要性と、世間に向けた情報発信の価値について、2020年4月に改めて認識しました。この年、我が国で初めてCOVID-19のパンデミックに対する緊急事態宣言が発令されました。不要不急の外出の自粛が要請され、在宅ワークが奨励されました。
外出が制限され自宅での時間が増えたことから、私はSNSを通じて情報発信を開始しました。(私は、LinkedInを中心に活動を始めました。)
SNSで情報発信する内容は自分なりの軸を決め、社会の中での「自分らしさ」を構築できるような発信を心がけました。これまで私は研究者および大学教員として、研究と教育に従事してきました。この経験を通じて、研究分野や人材育成における問題や改善点を言葉にしました。
また、研究者や教員にとっては当たり前のことでも、一般の人々にはあまり知られていない事実にも触れました。つまり、プライベートな領域ではなく、社会的な活動を基盤に日常的に考えていることを言語化しました。
学生の皆さんには、まずは情報発信の中心テーマを見つけ、それに関する考えや行動を言語化してみることをお勧めします。自分の興味がある分野で、いくつかのテーマを候補として挙げ、それに対する自分の見解をまとめてみましょう。「サステナブルな世界とは何か」「AIを効果的に活用するための方法」「多様性を尊重した社会を築くためのアプローチ」など、自身が興味を持つ分野に対する自分の考えの言語化がよいでしょう。毎日のニュースやSNSを注意深く観察し、自分のテーマを見つけ、それを表現するのに役立てましょう。
さて、テーマを言語化したら、いよいよ世間に向けて発信です。次は情報発信の意義について考えてみましょう。
情報発信する際には、実名を明かすことが肝要だと私は考えています。なぜなら、実名での発信は誰が読んでいるか分からない状況で、適度な緊張感をもって意見を述べることができるからです。
そして、発信の頻度が増えるにつれ、さまざまな人からのコメントや共感、批判など多様なフィードバックを受ける機会が増えてきます。ここに大きな意義があります。自分の考えに対する建設的な意見やコメントを通じて、新たな洞察を得ることができるからです。
さらに、普段から自分の意見を実名で積極的に発信することによって、SNSの世界で自分の存在をアピールする機会が広がります。これにより、徐々に新しいコネクションを築くチャンスが生まれ、日常生活では接触することのない人々と繋がることができます。
自分の考えを言語化し、フォロワーや他のユーザーとの対話を通じて、「社会の中での自分像」が徐々に明確になっていくことでしょう。この感覚を学生の皆さんにもぜひ味わってほしいと思っています。
大学生は就職活動の過程で履歴書や自己PRを作成します。そういった書類に記載しきれない自身の情熱や熱意をSNS上に実名で記録しておくことで、採用担当者がそれを発見してくれるかもしれません。
現代は個人が活躍する時代です。自分が何を考え、何を実現させたいのか、そしてその実現に向けてどのように行動しているのか、このような情報をSNSで積極的に共有することで、自分の存在を世の中にアピールできるのです。
実名でのSNS利用に対する抵抗感は多くの人が抱いていると思います。私も最初はそうでした。中学校や高校では実名の使用が制限されていたり、実名の場合にはプライバシー設定を強化する教育が行われていることがあります。確かに、自身の発信が誤解されて炎上するリスクは存在します。
そのような背景のもと、私が大学生におすすめするのはLinkedInです。LinkedInはビジネス特化型のSNSで、ユーザー層は主に社会人が中心です。
実際に利用してみると、非常に質の高いコミュニケーションがやり取りされていることに気づきます。大学生にとって、社会人と交流する機会そのものが貴重な経験となります。海外ではLinkedInが積極的に人材採用や就職活動に活用されているそうです。ぜひ、LinkedInを試してみることをお勧めします。
思考の可視化とは、文字通り自身の頭の中にある抽象的なアイディアや概念を、ポスター、スライド、イラストなど視覚的な要素を通じて表現する技術です。この方法を用いることで、複雑な概念やアイディアをより正確かつ魅力的に伝える可能性が広がります。
実際、視覚的な情報は、通常の文章よりも効果的に伝わると言われています。そして、この効果は静止画だけでなく、動画になると更に顕著になります。
近年、就職活動や学生向け研究助成金の申請などで、1分動画を作成し提出を求められることがあります。審査員からすると、志望理由書や申請書を読むより、1分動画で評価した方が効率的だと言えます。
自己PRや研究計画書の作成だけでも大変なのに、それを1分の動画にまとめることは、多くの人にとってさらなるハードルと映ります。一方で、動画だからこそ自分のスキルを発揮し、極めて完成度の高い動画を作成する人もいるでしょう。このような高度なスキルを習得するのは大変ですが、これも実は日常的なSNSでの情報発信が、素晴らしい訓練になると考えています。
視覚情報を活用するSNSとして、写真や動画を主体とするInstagram、YouTube、TikTokなどが挙げられます。これらのプラットフォームは単に写真や動画を共有するだけでなく、文字を使ったグラフィックコンテンツを通じて情報を伝えることも可能です。
無料で利用できるツール、例えばCanvaを活用すれば、自分の伝えたい情報を訴求力のある一枚のイメージに仕立て上げることができます。私もCanvaとInstagramなどで「見える化」した情報発信を訓練しています。ぜひフォローしてフィードバックをいただけるととても嬉しいです。
SNSでの情報発信は、最終的にはセルフ・ブランディングの一環だと私は考えています。セルフ・ブランディングとは、自分自身を商品やブランドのように捉えることです。つまり、自身の特徴や得意分野、独自性、強みを明確にすることです。
大学生にとっては、学業、趣味、スキル、価値観など、自己表現の要素が豊富にあります。SNSを通じて自己アピールし、自分自身をブランディングすることは、将来のキャリア形成において重要な役割を果たすでしょう。
さぁ、情報発信だ!