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みなさんこんにちは! サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、世界で初めて1個の原子の化学的状態を測定することに成功したという報告についてだよ!
原子1個を見ることはできるようになって久しいけど、化学的状態を調べるにはこれまで最高感度のものでも約1万個の原子が必要だったことを考えると、これは飛躍的進歩だよ!
原子1個が分子全体の性質を左右することも珍しくないことから、化学の先端的研究から具体的応用まで、様々な分野に波及する可能性を秘めている研究だよ!

(画像引用元: Science Alert / Ohio University)
CONTENTS
私たち自身を含め、身の回りにある物質は「原子」が化学的に結合してできた化学物質である、というのは、20世紀前半くらいまでに理解されていった概念だよ。
ただ、原子の化学的性質に対する理解が向上するにつれて、原子の性質を正確に理解するには科学技術が追い付いていない、という問題が浮上してきたよ。
例えば、私たちが生きる上で欠かせない酵素などの生体分子は、有機分子の中に含まれるたった1つの金属原子が働きを左右している、ということはよくあることだよ。
金属原子1つが欠けただけで、酵素はその機能を失ったり、分子構造が異常になったりするなど、非常に大きな影響を与える、というケースは続々と見つかっているよ。
もし、分子内における原子1個の働きを正確に知るには、原子1個の化学的性質を分析する必要があるけれども、あまりにもミクロすぎるので、今までは不可能な話だったよ。

電子顕微鏡を使うことで、原子1個1個を画像化することはできていたよ。ただ、その1個1個の確実な識別、特に細かい化学的性質については、これまで測定することは不可能だったよ。 (画像引用元: Science Alert)
一応、今の技術を使えば "原子1個を見て画像にする" ことは可能なんだよね。ただしそれは原子の外側を囲っている電子を観ているのであり、化学的性質で重要な電子の正確な挙動を知ることはできないよ。
これに対し、原子の化学的性質を調べるには、分析したい物質にX線を照射し、返ってくるX線の波長やエネルギーから性質を逆算する手法[注1]が使われているよ。
これを利用すると、物体を破壊せずに分析ができるだけでなく、極めてわずかな量の元素でも捉えることができる、という特徴があるので、現代ではよく使われてるよ。
ただし、最先端の方法をもってしても、これまで可能だった最小の量は約1ag (1アトグラム・100京分の1g) 、原子の数にして約1万個が限度だったよ。
なぜなら、原子1個から放出されるX線は極めて弱いからだよ。弱いX線を捉えるには感度不足だったり、周りのノイズと区別が不可能だったりで、意味のあるシグナルとして受信するのには強度が不足していたからだよ。
このため、分子の中にあるわずかな原子の性質を知るには、多数の分子を大量に分析してわずかな違いを探ったり、データを元にしたコンピューターシミュレーションに頼らざるを得ないというのがあったんだよね。
アルゴンヌ国立研究所のTolulope M. Ajayi氏らの研究チームは、同研究所の先進光子源セクター4に設置された「XTIPビームライン」を使用し、この難題に取り組んでみたよ!
XTIPには「X線走査型トンネル顕微鏡 (SX-STM)」という最新の分析装置が設置されているよ。簡単に言えば、非常に絞ったX線、それこそ原子1個分を狙ってX線を照射し、返ってくるX線の正確な信号を捉えることができるよ!
X線による化学分析と、走査型トンネル顕微鏡[注2]による電子の状態を同時に測れるという極めて珍しい装置であり、最近できたばかりということで、その性能が注目されていたよ!
今回はSX-STMという技術の実験とデモンストレーションを兼ねて、鉄とテルビウム[注3]を含んだ分子対象に、それぞれ1原子でも化学的な性質を分析可能なのか、実験を行ってみたよ。
まず最初に行ったのは鉄で、1個の鉄原子と6個のルテニウム原子を含む有機錯体化合物を作成して、1個だけある鉄原子の状態を確実に識別できるのかを調べたよ。

今回の研究では、鉄原子1個にX線を照射し、返ってくるX線を捉えたよ!またそれを分析し、鉄原子の化学的な状態を識別する事もできたよ! (画像引用元: Science Alert / Ohio University)

別の分子では、テルビウム原子の位置にピッタリ重なった時にのみ、テルビウム原子の存在と性質がはっきりと分かったことが確認されたよ! (画像引用元: American Physical Society)
その結果、SX-STMは確実に鉄原子を識別し、しかも鉄原子の位置を正確に捉えたよ!SX-STMは、鉄原子と装置先端の針が正確に一直線上に並んだ時のみ、鉄原子の存在を認識したよ。
これとは別に、テルビウム原子を含む有機錯体化合物を合成して同様の実験を行ったところ、やはりSX-STMはテルビウム原子の正確な位置に反応したよ!
そして今回はそれだけでなく、鉄とテルビウムの正確な化学的状態を1原子から識別することにも成功したよ!大きく違うのは、鉄原子とテルビウム原子それぞれが、周りを囲む原子とどう相互作用していたかだよ。
鉄原子は、周りの原子と相互作用をしており、単独でいる時と大きく状態が変わっていることが観察されたよ。これに対し、テルビウム原子はほとんど相互作用せず、孤立していることが確認されたよ。
過去の研究により、テルビウム原子の周りにある電子は相互作用がしにくく、鉄と比べれば大きな差が出ることは予測されていたよ。しかし今回は、それをたった1原子の観察で証明した点が大きいよ!
今回の研究は、たった1つの原子から発せられるX線を捉え、そこから1原子の化学的状態を正確に知ることができるのを証明した、世界初の成果だよ!
さて、1つの原子の化学的な状態を知ることがそんなに重要なのかと思うかもだけど、基礎的な分析での成果ゆえに、影響する範囲はとても広いよ!
例えば、私たちが日々使っている電子デバイスの部品は小型化しており、既に原子100個分の幅もない精度で組み立てられるものも珍しくない世界になっているよ。
将来的に、原子1個で部品の主要部が構成されることはあり得る可能性であり、このような部品を設計するには、原子1個がどのような性質を持つのかを正確に知る必要があるよ。
今回の研究は、例えば適切な部品の設計、すなわち原子をどのように配置すると最適な性能となるのかを探るため、その基礎的な化学情報を提供する手段になりうるよ!
同じようなことは、冒頭で挙げた酵素などの生体分子にも言えるよ。生体分子の働きはまだまだ未知のことが多くあり、直観に反するような性質が見つかることも珍しくないよ。
個々の原子の化学的状態を知ることは、生体分子が正確にはどのように働くのかを知る手掛かりとなり、将来的には医学や生物学の分野に利用される基礎的な情報となりうるよ。
これらの応用は、SX-STMが加速器を含む巨大施設を必要とする現状、すぐさま世界中で使えるというわけにはいかないものの、設備を整える価値があるものとなるよ。
これらの研究は非常に基礎的なデータなので、華やかさはなくとも、着実に科学全般に影響する礎となるデータを提供することから、これからの発展可能性は無限大であると言えるよ!
[原著論文]
[参考文献]
[注1] X線による化学分析 ↩︎
手法によって細かい仕組みは異なる。簡単に言えば、X線を照射した後、原子から返ってくるX線には、原子の種類や化学的状態によって決まったシグナルを持っているので、それを見ることで分析を行う。
[注2] 走査型トンネル顕微鏡 ↩︎
分析したい対象と、分析装置の先端にある針との間で、トンネル効果によって流れる電子の流れを利用し、原子の位置や状態を可視化する電子顕微鏡。
[注3]テルビウム ↩︎
原子番号65番の希土類元素。蛍光を利用した緑色の照明や光源、燃料電池の結晶の安定化剤、磁気で体積が変化する特殊合金、細菌の芽胞の検出剤など、用途こそニッチだが、先端産業で欠かせない元素の1つである。