ブラックホールは暗黒エネルギーの源?初の観測的証拠が提示される!

2023.02.24

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、ブラックホールは暗黒エネルギーでできており、かつ源である可能性が、観測的証拠によって示された、というものだよ!暗黒エネルギーとは何かについても記事内で説明するね。

 

謎や悩みどころの多い2つの課題であるブラックホールと暗黒エネルギーは、数年前から両者を結び付けられるという可能性が理論的に提示されていたよ。

 

今回は宇宙にある多数のブラックホールを観測することで、その理論とよく一致する結果が導き出された、と言う結果が報告されたよ!

 

今までの理解を大きく変える新しい説や理論に観測的証拠が見つかるのは珍しいことなので、要注目だよ!

(画像引用元: University of Michigan)

一般相対性理論が破綻するブラックホールの「特異点」

この宇宙には謎がいくつもあるけれど、今回はその中の2つ、「ブラックホール」と「暗黒エネルギー」にまつわるものだよ。まずはそれぞれを順番に説明するね!

 

恒星サイズの天体が、重力に抵抗できず無限に潰れてしまった天体をブラックホールと呼び、その中心にある1点を「特異点」と呼ぶよ。特異点では色んな値が無限大になってしまい、一般相対性理論が破綻してしまうので、できれば存在してほしくない厄介な点だよ。

 

まずブラックホールは、この宇宙で最も極端な性質を持つ天体だよ。これは、他の天体がどのようにして天体としての形を保っているのか、というのに関連しているよ。

 

全ての物体は自分自身の重力で潰れようとしているけど、これに抵抗する力があることで、潰れることを防いでいるよ。惑星サイズの天体は、原子同士の反発が潰れるのを防いでいるよ。

 

恒星サイズの天体になると、原子同士の反発だけでは潰れるのを防ぐことができないよ。しかし恒星は、中心部で核融合反応を起こし、そのエネルギーが重力に逆らう力となっているよ。

 

でも、核融合の元となる燃料は有限なので、いつかは燃え尽きてしまうよ。その先の運命は、恒星が元々持っていた質量によって変わってくるよ。

 

太陽程度の軽い恒星の場合、電子の縮退圧と呼ばれる、原子が限界まで潰され、電子が押し込まれる力によって重力に対抗するよ。この状態になった天体を白色矮星と言うよ。

 

太陽の8倍より重い恒星の場合、電子の縮退圧でも抵抗できなくなるよ。すると今度は、原子の外側にある電子が原子核に押し込まれ、全ての原子核がくっついたような状態となるよ。

 

この状態は、ほとんど全てが中性子でできていることから中性子星と呼ばれるよ。中性子の縮退圧と呼ばれる力によって、強大な重力に対抗するよ。

 

では、電子の縮退圧でも中性子の縮退圧でも抵抗できなかった場合にどうなるか?太陽の20倍から30倍を下限として、それ以上の重さを持つ恒星はこのような状態になると考えられているよ。

 

今のところ、これ以上の物質の状態と言うのは考えられておらず、重力に抵抗できる力はないと考えられているよ。すると、物質は重力によって無限に潰れてしまう重力崩壊に陥るよ!

 

この、無限に潰れてしまった状態の天体がブラックホールと呼ばれるものだよ。なのでブラックホールは他の天体と違い、明確な表面と言えるものは存在しないよ。

 

ブラックホールの大きさと呼ばれるのは、この境目を超えると光ですら抜け出せない、という面の内側で定義されるよ。この面は「事象の地平面」と呼ばれるよ。

 

ただ、本当の意味でのブラックホールの本体は、事象の地平面の内側にある、無限に潰れた1点と言うことになるよ。これは「特異点」と呼ばれるよ。

 

この特異点という存在は、理論の産物ではあるものの、一方で理論そのものを破綻させてしまうという厄介な存在で、長年宇宙物理学者の悩みの種とされてきたよ。

 

特異点では重力が無限大で、もう少し言えば時空の曲率[注1]が無限大と表現されるよ。特異点で一般相対性理論を適用しようとしても、無限大が相手なので計算できない[注2]

 

また、何らかの出来事の前後関係を説明できる因果律という概念は、特異点では適用できないよ。つまり特異点で起こったことは、何が過去で何が未来なのかもわからなくなってしまうよ!

 

現在の理論では特異点の存在は回避できず、かといって特異点があると理論が破綻する場所が宇宙にできてしまう、というジレンマが、宇宙物理学における長年の課題となっていたよ。

 

宇宙の7割を占める謎「暗黒エネルギー」

宇宙は加速膨張していることが発見され、重力に逆らう斥力の存在が示唆されたよ。これの正体は今でも不明で、かつかなり変な性質を持っているよ。正体が皆目わからないので、仮に「暗黒エネルギー」と呼ばれているよ。

 

一方で、宇宙が何でできているのか、という極めて基本的な点も、未だに多くの部分が分かっていないよ。これは宇宙の膨張という基本的な概念に関わっているよ。

 

1920年代に宇宙の膨張が発見されてから長年、宇宙の膨張は減速しているか、もしくは縮小に転じているのかのどちらかであると考えられてきたよ。

 

というのは、宇宙誕生時の一瞬を除いて、膨張の原動力[注3]となるものは存在せず、むしろ重力が宇宙全体の膨張を減速させている、という考えが大勢だったからだよ。

 

ところが1990年代になり、宇宙は途中から膨張速度が加速していることが発見され、大きな議論となったよ。重力で減速どころの話じゃないってことだからね!

 

宇宙の加速膨張の発見は、宇宙で支配的な重力という引力 (互いに引き合う) よりもはるかに強い斥力 (互いに反発する力) が宇宙に存在することを示していたからだよ。

 

現在でも、この斥力の正体は不明で、これを暗黒エネルギー[注4]と呼ぶよ。暗黒エネルギーは宇宙の全物質およびエネルギーの約7割を占めるという、宇宙の多数派だよ!

 

正体には迫れていないものの、少なくとも暗黒エネルギーは、宇宙の膨張で空間が増えても薄まらない性質を持っていることが明らかになっているよ。

 

なので暗黒エネルギーの正体は空間そのものが持つ性質であり、空間が増えても薄まらないというより、空間が増えるに従って暗黒エネルギーも増える、という予測があるんだよ。

ブラックホールは暗黒エネルギーの塊!?

ブラックホールが暗黒エネルギーでできているとすると、特異点を回避できるだけでなく、宇宙の膨張と共にブラックホールも成長する可能性が示されたよ!

 

そんな背景がある中で、ブラックホールは暗黒エネルギーの塊ではないか、という、一見するとかなり奇抜な予測が2000年代からでてくるようになったよ。

 

正体不明なものでブラックホールの正体を推定するのはなんとも不思議だけど、暗黒エネルギーの性質を踏まえると、ブラックホールの厄介な性質を回避することができるよ。

 

おさらいすると、ブラックホールで特異点が生まれてしまうのは、重力で潰れるのを回避する力が宇宙に存在しないから、という問題があるからだよ。

 

でも、もしブラックホールが暗黒エネルギーでできていれば、分かりやすく言うと重力にも逆らいうる斥力が存在することになり、特異点が生まれずに済む[注5]、という利点があるんだよ!

 

ただ、特異点を持つブラックホールの姿は、一般相対性理論できちんと説明できるものだよ。特異点そのものの記述がうまく行かないだけで、他の部分は大体全てを説明できているよ。

 

ブラックホールが暗黒エネルギーという正体不明なものでできているという主張をするからには、それに匹敵するくらいのきちんとした背景が必要になるよ。

 

理論面に関しては、提唱から約20年で結構深掘りされて、結構強固なものになってきたけれども、それでももっと支持を受けるには、更なる証拠が必要な状態となったよ。

 

ブラックホールは予想以上に成長している!?

ブラックホールは物質を吸い込むことでも成長するけど、これには限度があるはずだよ。観測により、この限度を大幅に超えたブラックホールの成長を観測したよ! (画像引用元: 原著論文2 Figure6)

 

ハワイ大学などの国際研究チームは、ブラックホールが暗黒エネルギーでできているという仮説に、初めてとなる観測的証拠を見つけたんだよ!

 

銀河の中心にあるブラックホールの質量は、持っている恒星やその他の物質の総量からある程度推定が可能であることが分かっているよ。

 

研究チームが注目したのは巨大楕円銀河と呼ばれるタイプだよ。このタイプの銀河は、過去の観測や理論計算で、最もブラックホールの質量が推定しやすいよ。

 

特に、ブラックホールの成長は、銀河が形成されてからある程度の期間で周りの物質が枯渇し、停止すると考えられているから、質量が推定しやすいんだよ。

 

研究では、過去の様々なプロジェクトが観測したデータから巨大楕円銀河を抜き出し、約20億年前、約70億年前、約90億年前の3つのグループに分けたよ。

 

そして、理論的に予測されるブラックホールの質量と、実際の観測から推定されるブラックホールの質量を比較して、これにズレがないかどうかを調べたよ。

 

ブラックホールが銀河中心部の物質を吸い込んで成長するスピードと限界は分かっているので、もし何事も無ければ、理論と観測的証拠に大きなズレはないはずだよ。

 

しかしながら今回の結果は、予想外に大きなズレがあると判明したよ!約90億年前の銀河と比較し、約70億年前の銀河とでは7倍、約20億年前の銀河とでは20倍も成長していたんだよ!

 

これは、銀河中心部からの物質の供給が予想より多い程度では説明がつかない違いで、何か未知のものがブラックホールを成長させている、と考えることができるよ!

 

ブラックホールは暗黒エネルギーの源!?

ブラックホールの成長と宇宙の膨張の関係性を示す値kを調べてみたところ、関係性がないことを意味するk=0の可能性はほとんどなく、関連性があることを意味するk<0である可能性が高いと分かったよ! (画像引用元: 原著論文1 Figure1)

 

この未知の成長の源こそが暗黒エネルギーであると考えた研究チームは、別のアプローチである、宇宙の膨張とブラックホールの関係にも注目したよ。

 

ブラックホールが暗黒エネルギーでできている場合、宇宙の膨張と共に、ブラックホール自体も膨張すると考えることができるよ。

 

ブラックホールの膨張、つまり体積の増加がある場合、ブラックホールの体積は質量と密接に結びついていることから、ブラックホールの質量も増加することになるよ。

 

ブラックホールの予想外の成長と言う観測的証拠は、ブラックホールが宇宙と共に膨張していることを示しているのかもしれないよ。

 

ただしこの場合、宇宙の膨張につられて、ブラックホールがどの程度 "伸びやすいか" という性質を定量的に評価する必要があるよ。

 

研究チームは、今回示された観測結果とこれまでの理論的な探索の成果を合わせ、ブラックホールの "伸びやすさ" を評価したよ。

 

従来のブラックホールにまつわる理論の場合、宇宙の膨張とブラックホールの膨張には何の関係もないから、この "伸びやすさ" の数値はゼロに等しいはずだよ。

 

一方で宇宙の膨張とブラックホールの膨張に関係性がある場合には、ゼロより大きい "伸びやすさ" の数値が現れるはずだよ。

 

検証の結果、ブラックホールの "伸びやすさ" を示すkという値[注6]は約3.11と出た一方、kがゼロである可能性はほとんどないという結果となったよ。

 

また、この "伸びやすさ" によるブラックホールの成長率は、宇宙の膨張が減速から加速に転じた時代と良く一致することも計算によって判明したよ。

 

つまり分かりやすく言えば、宇宙の膨張と共に成長することで、ブラックホールは自らも暗黒エネルギーの源となっている可能性があると今回判明したんだよ!

 

ブラックホールと暗黒エネルギーの謎はまだまだ多い

もちろん、今回の観測結果だけで、ブラックホールは暗黒エネルギーでできていて、しかもその源である、と確定させることはできないよ。

 

ブラックホールの成長などの観測的証拠は、これまでの理論ではうまく説明できないことは確かだけど、そもそも今回の推定が妥当なのかどうかから議論を始めないといけないよ。

 

また、仮にブラックホールの成長が事実だとしても、例えば銀河中心部への物質供給がこれまでの推定よりずっと多いとか、他の解決策もあり得ることも確かだよ。

 

一方で、今回の研究でユニークなのは、暗黒エネルギーの源がブラックホールであるという、宇宙に余計なものを追加していないという点がとても興味深いよ。

 

これまでの理論だと、暗黒エネルギーの源として新たな天体や物理現象や時空の性質を追加しないといけなくて、この新たな追加物が余計な問題を引き起こすよ。

 

新たな追加物はなぜこの宇宙にあり、なぜ観測できないのか、という単純な問題から、既存の理論とうまく適合しないので理論自体を大幅に改変しないといけないなど、この問題は結構厄介だよ。

 

今回の研究では、この理論は余計な追加がない点でシンプルであり、これまでの宇宙の理解から大幅なズレがないという点では、とてもスッキリしていると言えるよ。

 

今回の結論は観測的証拠から与えられたものだから、更なる観測はこの主張を後押しする発見か、あるいは軌道修正や撤回が必要な発見をするかもしれないよ。これからも要注目だよ!

 

文献情報

[原著論文]

  1. Duncan Farrah, et.al. "Observational Evidence for Cosmological Coupling of Black Holes and its Implications for an Astrophysical Source of Dark Energy". The Astrophysical Journal Letters, 2023; 944 (2) L31. DOI: 10.3847/2041-8213/acb704
  2. Duncan Farrah, et.al. "A Preferential Growth Channel for Supermassive Black Holes in Elliptical Galaxies at z ≲ 2". The Astrophysical Journal, 2023; 943 (2) 133. DOI: 10.3847/1538-4357/acac2e

 

[参考文献]

注釈

[注1] 時空の曲率 ↩︎
一般相対性理論では、重力は何らかの力と言う表現ではなく、時空がどの程度曲がっているかによって表される。このため重力は時空の曲率で表される、と表現される。重力が強いほど時空の曲率も強いということになり、重力が無限大の特異点では時空の曲率も無限大となる。

[注2] 特異点での一般相対性理論の適用 ↩︎
一般相対性理論は、現在の物理学における基本的な理論であり、原則は地球でも太陽でも中性子星でも、宇宙のあらゆる場所で計算と予測が可能である。これを一般相対性理論を適用可能と言う。しかし特異点では、様々な値が無限大を取るため、計算ができなくなる。このため特異点では一般相対性理論での物理現象の計算や予測が不可能となってしまう。このため、特異点は一般相対性理論が破綻すると表現される。

[注3] 誕生直後の膨張の原動力 ↩︎
宇宙は誕生直後、インフレーションと呼ばれる極めて急激な膨張を起こしたと推定されている。インフレーションはなぜ始まりなぜ終わったのかについては現在でも研究が進んでいる。1つの可能性として、真空にもエネルギーの高い状態と低い状態があり、インフレーションはエネルギーの高い真空から低い真空へと "相転移" した際の差分のエネルギーによって発生した、という推定がある。

[注4]  暗黒エネルギー ↩︎
"暗黒" と言う言葉に深い意味はない。これは今の観測技術では間接的にしかその存在を知ることができず、直接の正体を観る方法が見つかっていないことを指し、観測と言う行為に対して "暗い (dark) " ことを意味する言葉である。

[注5] 暗黒エネルギーで特異点を回避する ↩︎
この説明は分かりやすいものの、本来は異なる。ブラックホールが暗黒エネルギーでできているという仮定をするのは、数学的にはド・ジッター計量と呼ばれる取り扱いとなる。これは簡単に言えば、空間が膨張している宇宙と同じように、自らが膨張するような斥力を持つ空間である。よってブラックホールは重力崩壊によって無限に潰れて特異点を生じるのではなく、空間自体の斥力によって有限の値で重力崩壊が停止することになる。また、このモデルでは同時に事象の地平面も回避されるが、今回は割愛する。

[注6] "伸びやすさ" を示すkという値 ↩︎
研究チームはこれを「宇宙結合強度 (cosmological coupling strength)」と呼んでいる。宇宙の膨張とブラックホールの膨張がどの程度 "結合" しているのかを示す値だからである。

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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