恐竜好きのための”動物園の楽しみ方”!恐竜と、今の動物を比べてみよう!

2022.08.25

初めまして。恐竜を研究する学問【古生物学】の普及活動や恐竜好きな方へのサポートを行っている「恐竜のお兄さん」加藤ひろしと申します。



 今回は【恐竜好きのための”動物園の楽しみ方”!恐竜と、今の動物を比べてみよう!】と題して、恐竜の事を面白いと思う方や恐竜が好きな方に向けて、動物園を更に楽しめる楽しみ方をご紹介します!


歯を見ると、何を食べたか考える事が出来る!

【恐竜】というグループの中でも特に人気が高いのは獣脚類(じゅうきゃくるい・Theropoda)で、そのメンバーにはティラノサウルス、ギガノトサウルス、スピノサウルス、カルノタウルス、ヴェロキラプトル、オルニトミムス、そして今生きているカラスやニワトリ等の鳥類も含まれます。

恐竜好きな方なら「もう知っているよ!」と言う方も多いかもしれませんが、鳥類は獣脚類恐竜の一グループです。

そんな獣脚類の恐竜が何を食べていたかと言うと、大きく分けて「肉食・雑食・植物食」に分かれます。獣脚類の多くは肉食だったと考えられていますが、雑食や植物食だったと考えられている獣脚類のグループには、足の速いオルニトミムスのグループ、卵泥棒という意味の学名を持つオヴィラプトルのグループ、この夏に公開された映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』にも登場したテリジノサウルスのグループがいます。
Theropoda Diversity
獣脚類の恐竜たち(File:Theropoda Diversity.png - Wikimedia Commons)

そしてこの獣脚類だけではなく、背骨がある脊椎動物の歯や嘴を見ると、その動物の食生活を考える事が出来ます。例えば、私たち人間の歯は奥歯の形が食べ物をすり潰す事が出来る形になっているので肉や野菜・果物も食べる事が出来ますし、料理もする事で更に多くの食べ物を食べ易くする事も出来ます。
では、「他の脊椎動物は?」と言うと、それぞれの食べ物を食べるのに向いた歯や嘴を持(も)っています。この事を踏まえて、まずは肉食恐竜の歯を見てみましょう!

肉食恐竜の歯とオオトカゲの歯

肉食の獣脚類、いわゆる肉食恐竜には人気の恐竜が沢山います。ティラノサウルス、ギガノトサウルス、スピノサウルス、デイノニクス、ヴェロキラプトル、ケラトサウルス、カルノタウルス等々。恐竜好きな方にとっては、名前を見ただけでピンとくる恐竜ばかりですよね!
ここでは「肉食恐竜の歯の基本形」をご紹介します。肉食恐竜の歯の基本形と言える歯は「剣状の歯(Ziphodont)」といい、剣の様に薄く尖り、両方の淵に鋸歯(Serration)と呼ばれるギザギザが生えています。

また、肉食恐竜の中でもティラノサウルス科(ティラノサウルス、タルボサウルス、キアンゾウサウルス、ゴルゴサウルス等)の恐竜は、成長すると歯のタイプがこの剣状の歯からバナナの様に太くて頑丈な「分厚い歯(Pachydont)」に変化します。

剣状の歯を持つ大型肉食恐竜アクロカントサウルスの頭骨

(Acrocanthosaurus-skull - Acrocanthosaurus - Wikipedia)

そして、今生きている動物でこの剣状の歯を持つのはコモドオオトカゲやミズオオトカゲ等のオオトカゲ科の爬虫類ですので、動物園でオオトカゲの餌やりや頭骨を見た時や、動物番組でオオトカゲが肉を食べるのを見た時に「肉食恐竜もこんな風に歯を使って肉を切っていたのかな?」と考えるのもオススメしますよ。

スイギュウの死肉を食べるコモドオオトカゲ

(Komodo dragon - Wikipedia)


魚食恐竜とワニの歯

肉食恐竜の中でも、肉だけではなくて魚を食べていた魚食の恐竜と考えられるのが、大人気のスピノサウルスなどがいる、スピノサウルス科の恐竜です。スピノサウルス科の歯は「円錐状の歯(Conidont)」と言い、ごく小さな鋸歯がある、若しくは鋸歯が無くなっている歯なので、物を切り裂くよりは突き刺すのに適していると考えられています。


Suchomimus skullcast aus

円錐状の歯を持つスピノサウルス科の魚食恐竜・スコミムスの頭骨レプリカ
(File:Suchomimus skullcast aus.jpg - Wikimedia Commons)

この円錐状の歯を持っていて今生きている動物はワニですので、ワニがどの様に物を食べているのか、どの様に物を細かくして飲み込んでいるのかにも注目してみて下さい。


Crocodilia montage

イリエワニ、アメリカアリゲーター、インドガビアル
(File:Crocodilia montage.jpg - Wikimedia Commons)


哺乳類と恐竜の歯の違い

これまでは肉食爬虫類のオオトカゲやワニと肉食恐竜の歯の比較を行いましたが、現代の動物園で見ることのできる肉食動物はまだまだ沢山います。ここではオオカミ、ライオン等の肉食哺乳類と肉食恐竜の歯を比べてみましょう。

動物の歯の生え方は大きく2つ、同じ様な形の歯が並ぶ同歯性(Homodonty)と生える位置によって形の違う歯が並ぶ異歯性(Heterodonty)に分かれます。オオトカゲ等の爬虫類には同歯性が多くいて、私たちヒトを含む哺乳類には門歯(切歯)・犬歯・小臼歯・大臼歯に分かれる異歯性が多くいます。

さてここで「恐竜は爬虫類なので同歯性?」と思ってしまうかもしれませんが、実は恐竜には同歯性と異歯性の両方がいたことが分かっています。例えば植物食恐竜のヘテロドントサウルス。属名の意味は正に「異なる歯を持つトカゲ」という意味です。

肉食動物に話を戻しましょう。哺乳類の中でも、オオカミ達イヌ科やライオン達ネコ科等が含まれる食肉目(Carnivora)の殆どの動物が持つ歯は、門歯(切歯)・犬歯・小臼歯・大臼歯に分かれるだけではなく、奥歯となる臼歯が肉を切り裂く事に適した「裂肉歯(Carnassial Teeth)」になっており、ハサミの様に顎が動く事で効率的に肉を切る事が出来る歯をしています。

オオカミの頭骨(筆者撮影)

一方、肉食恐竜にも異歯性の恐竜が確認されています。

たとえばティラノサウルス科の恐竜は口先の歯で肉を押さえたり引っぱったりして、奥の方の歯では肉や骨を切り裂いたり噛み砕いたりしていたと考えられています。流石に肉食哺乳類と肉食恐竜をそのまま比較する事は出来ませんが、歯の生え方が似ていることで予想できることもありますね。

ティラノサウルスの頭骨レプリカ(筆者撮影)

食肉目にはイヌやネコも含まれるので、動物園以外の場所でも「どの様に歯を使って物を食べているか」を観察しやすい、という強みがあるとも言えます。

食肉目の哺乳類

(Carnivora_Diversity.jpg (2595×3264) (wikimedia.org))


歯を無くした獣脚類と鳥類の嘴

最後は今生きている鳥類と獣脚類恐竜を比べてみましょう!

今生きている鳥類には歯がありませんが、獣脚類の中にも進化の過程で歯を全部無くしてしまったグループが確認されています。雑食や植物食の獣脚類として先述した、オルニトミムスのグループ(オルニトミモサウルス類: Ornithomimosauria)とオヴィラプトルのグループ(オヴィラプトロサウルス類: Oviraptorosauria)です。

この2つのグループの嘴の形を見ると、積極的に肉を食べていた恐竜ではないと考えられています。

オルニトミモサウルス類

(Ornithomimosauria - Wikipedia)

オヴィラプトロサウルス類

(Oviraptorosauria - Wikipedia)

そしてダチョウ等の鳥類は、胃石という飲み込んだ小石等を溜め込んでおく砂嚢(焼き鳥でも食べられる砂肝)が動く事によって、ついばんだ食べ物を細かくしています。

この胃石は獣脚類からも確認されており、オルニトミモサウルス類ではシェンゾウサウルス、シノルニトミムスとデイノケイルス、そしてオヴィラプトロサウルス類ではカウディプテリクスの化石の発見により、彼らも胃石を持っていたと考えられています。

デイノケイルスの胃石(筆者撮影)

ですので、今の鳥類の物の食べ方を見れば「歯以外を使った食べ物を細かくする方法」を知る事も出来ちゃいます。

水を飲むダチョウ(筆者撮影)

まとめ

動物の歯や嘴を見ればその動物の食生活や食べ物を考える事が出来、肉食動物の歯を見ればその動物がどの様に狩りをしたかを考える事も出来ます!

これは恐竜だけではなくて動物園の動物達にも当てはめる事が出来るので、動物達が餌を食べている時は「どんな物をどんな口や歯を使って食べるのかな?」「狩りをしている時はどんな風に歯を使っているのかな?」と観察してみてくださいね!