ドイツ発、醬油の味の成分を解明!塩味を強化する物質も!

2022.07.06

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

今回のお話は、醤油の味の成分に関する詳細な研究だよ。

とてもなじみ深い食品の醤油、その複雑な味の正体を科学的に分析した研究だよ。

その結果、単に物質を突き止めたのみならず、新しい醤油や発酵食品の開発に繋がるかもしれない、面白い成果が得られたよ!

醬油の味、どんな物質が由来?

醤油: 身近で複雑な発酵食品

醤油と言えば、身近でなじみ深い食品の1つだよね。諸説あるけど、東南アジアや東アジアで広まっている醤油やそれに似た調味料は、紀元前10世紀に中国で誕生したと言われているよ。

醤油は発酵食品の1つでもあり、現在の物は大豆を主原料としているよ。その味は塩味とうま味を基本とし、様々な味が混ざり合った複雑なものだね。

では、醤油の味はどのような成分の組み合わせでできているんだろう?というのが、今回の論文の主題だよ。

発酵は複雑

醤油はショウユコウジカビ (Aspergillus sojae) などが大豆などの原料を発酵させて生成するものだけど、これが研究の障害となるんだ。

発酵の過程で生成されるのは、大豆のタンパク質などを分解して作られる複雑な有機分子であり、有機分子のちょっとした構造の違いが風味に大きな影響を与えるんだ。

また、使う原料の違いや麹菌の違い、発酵での環境条件などで多種多様な物質が生成される事から、メーカーや製品によっても物質が違う事があり得るよ。

醤油の味の正体に迫る!

醤油から発見された15種類の新しいペプチド

(分子式の画像引用元: 原著論文 Figure S7 より)

今回の論文は、そんな複雑な食品である醤油についての研究だよ。日本の研究?いいえ、ドイツはミュンヘン工科大学の研究だよ!

研究の前提として、まずは既に知られている成分を混ぜて人工的な醤油を作り、どの程度味が近いのかを官能試験によりテストしたよ。

結果、本物の醤油と比較すると、塩味や苦味が足りない事が分かったよ。このため、未知の成分、恐らくはペプチド[注1]が不足していると仮定し、成分の調査を行ったよ。

分析では9メーカーの醤油を始めとし、魚醤、テンジャン、キムチなど、他の発酵食品も調べることで、複雑で多種多様なペプチドの種類を特定する手掛かりとしたんだよ。

その結果、合わせて55種類ものペプチドを発見したんだよ。このうち、過去の分析では見つかっていなかった新しい15種類のペプチドを発見したよ!

これらの化合物を適切な量で組み合わせた人工的な醤油は、本物の醤油と区別がつかないくらいの味の再現に成功したよ。

塩味を修飾するペプチドを発見

(元データ: 原著論文 Table S5 より、濃度はµmol/Lをmg/Lに換算)

更に、この15種類のペプチドのうちの14種類は、塩味・うま味・コク味の味覚修飾物質[注2]である事が分かったんだよ。

これら味覚物質のリストが揃った事で、次はどういう発酵菌がこれらの物質を生み出すのか、という点に研究がシフトできるよ。

塩味の味覚修飾物質は重要な発見!

新しい醤油開発に繋がる?

(分子式の画像引用元: 原著論文 Figure S7 より)

今回の研究結果は、発酵菌の種類や環境を選択する事で、望ましい物質を増やし、風味を調整する手掛かりになるはずだよ。

例えば、今回の研究で見つかった塩味の味覚修飾物質は興味深いよ。これまで醤油の研究では、食塩そのもの、および他の無機質に由来するものでしか発見されていなかったからだよ。

よく知られているように、食塩の摂りすぎは心臓病や高血圧などの原因となるよね。このために食塩を減らしつつ塩味を感じる物質の探索が続いているよ。

ただ、食塩は塩化ナトリウムという単純な物質だから、人工甘味料ならぬ人工塩味料[注3]はこれまで開発された事がないよ。

今回発見された塩味の味覚修飾物質により、塩分を減らしつつも塩味は同じように感じる、減塩タイプの醤油の開発に繋がるかもしれないよ!

また、他にもうま味やコク味の味覚修飾物質が発見されているから、これらを生かした新しい醤油、あるいは発酵食品が開発されるかもしれないよ!

脚注

[注1] ペプチド 

アミノ酸がいくつか繋がった物質のことだよ。更に多く繋がるとタンパク質となるから、ペプチドはアミノ酸とタンパク質の中間と言えるよ。発酵食品に含まれるものは、発酵菌の活動でタンパク質が分解して生じるよ。

[注2] 味覚修飾物質

ある味を強化する物質。強化する味は、物質それ自体の味と同じこともあれば違うこともあるよ。

[注3] 人工塩味料

現在市販されている減塩食のいくつかは、塩化カリウムを混ぜて塩化ナトリウムの量を減らしているものがあるね。ただし、塩化カリウムの量が多いと苦味やえぐみを感じるよ。また1940年代の短期間だけ塩化リチウムが代替物質として販売された事があるけど、すぐにリチウムイオンの毒性が問題となり、現在では食品への使用が禁止されているよ。

文献情報

[原著論文]

  • Manon Jünger, et.al. "Sensoproteomic Discovery of Taste-Modulating Peptides and Taste Re-engineering of Soy Sauce". Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2022; 70 (21) 6503-6518. DOI: 10.1021/acs.jafc.2c01688

[参考文献]

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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