教えて!マンボウ博士!! マンボウの研究者に質問をぶつけまくる会

2022.07.21 By 横本 監修 牛マンボウ博士

過去、Lab BRAINSにも登場いただいた事のあるマンボウ博士こと澤井先生。

今日はそんなマンボウ博士に、マンボウに関するさまざまな質問をぶつけてみようと思います。

この日のためにマンボウの事を調べたし、食べてきました。

素人質問をぶつける準備は万全です。

(確認)最弱伝説は全部ウソ

今日はよろしくお願いします!

海とくらしの史料館特任マンボウ研究員の澤井です、よろしくお願いします。

早速質問…というよりまずは確認です。『マンボウ最弱伝説』はウソですよね?

マンボウ最弱伝説…おもにインターネットで噂されていたマンボウに関するウワサ

・寄生虫を殺すためにジャンプして着水した衝撃で死亡
・潜ったら水が冷たすぎて死亡
・まっすぐしか泳げないため岩にぶつかって死亡
・近くに居た仲間が死んだショックで死亡

などなど…

ウソですね

この最弱伝説って有名ですが、どうしてこんなに広まったんでしょう?

これについてはマンボウの最弱伝説(死因)がインターネット上で流行っていた2014年に徹底的に文献を調べまくって「マンボウの都市伝説―噂の根源と真偽」(その後数回バージョンアップ)という同人誌にまとめました。ネット販売しているので詳細はお買い求め頂ければ嬉しいですが、興味深いことに、SNSの発達とマンボウの都市伝説は密接な関係があります。

 

参考:
「マンボウの都市伝説―噂の根源と真偽

 

SNSとマンボウ都市伝説の関係性…?

かいつまんでお話ししますと…

2010年:
「着水した衝撃で死亡することがある」という根拠不明の情報がwikipediaに書かれる

2012年:
今は無きNAVERまとめで「岩にぶつかって死亡」「潜ったら冷たすぎて死亡」などのマンボウの生態に絡めた死因(個人の妄想)の情報がまとめられる

2013年:
Twitterユーザーが「近くに居た仲間が死んだショックで死亡」などをネタとしてツイートしたものがバズる。同年2ちゃんねるで話題になり、その後テレビなどでも取り上げられるようになった

…という感じです。マンボウが最弱ならマンボウに食べられる餌は超最弱か?って個人的には思いますね。

個人が情報を拡散しやすくなるにつれ、根拠はないけど一見おもしろそうな情報が追加されていってるんですね。これが本当だったら絶滅してそうですもんね…。

周知も兼ねた、ウソだよっていう確認でした。

 

マンボウの赤ちゃんについて教えて!

では気を取り直して最初の質問です。まずはマンボウの赤ちゃんについて

Molalavdj.jpg
G. David Johnson – An image featured on the website of the Australian Museum, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

金平糖みたいな形の赤ちゃんですが、このトゲトゲって何の意味があるんですか?敵から身を守るため?

一般的にはそうですね。明らかに大きな捕食生物に対しては丸呑みにされるので無力ですが、同程度の大きさの捕食生物に対しては食べられにくくなる効果があるのではと推測されています。ほかには、トゲによって浮力を増す役割もあると考えられています。

このトゲで浮力が…。

マンボウ類の赤ちゃんにこの目立ったトゲトゲがある意味は、はっきりした事はわかっていないんですが、近い系統関係にあるハリセンボン類の赤ちゃんにもトゲトゲはあるので、何かしらの意味はあるのだと考えられます。

 

ちなみに少し前のネットの記事で、マンボウは繁殖事例が無いというのを読みました。これは今でもそうなんでしょうか?

今のところ、繁殖事例はないですね。

成魚のマンボウとはかなり形が異なりますが、どうやってこの赤ちゃんがマンボウだってわかるんですか?

昔は明らかに形が違うので別種とされていました。しかし、研究者が研究を続けていく中で、赤ちゃんと成魚の「中間的な形態」が発見され、さらにいろんなサイズの情報が集まっていくと、あのトゲトゲな状態からマンボウ型にだんだん変化しくことがわかったんです。マンボウの稚魚はプランクトンネットを使った調査などで採れることがありますが、稚魚は体が弱いのでネットをあげる過程でほぼ死んでしまうため、飼育された事例もありません。しかし、マンボウ科のクサビフグだけは卵から稚魚あたりまで飼育された事例があります。

まだまだ赤ちゃんのマンボウはわかってないことが多いんですね。

産卵や繁殖に関することは、まだまだ謎が多いです。

ヤリマンボウと分類方法についても教えて!

wikipediaのヤリマンボウのページを見ていると、ヤリマンボウの寿命について書かれていました。

本種の寿命は長く、オスで85年、メスで105年ほどとされている[11]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%A6

何を根拠に寿命がわかるんですか?

Wikipediaで引用されている論文に答えは書かれていますが、脊椎骨です。脊椎骨に刻まれる輪紋(りんもん)が1年に1本できることがわかり、その数=年数と解釈できるからです。普通の魚は鱗や耳石を使って年齢査定するのですが、輪紋を読むのは結構難しいです。

マンボウも同じ方法で寿命がわからないんですか?

マンボウについてもヤリマンボウと同じ方法でできると思いますが、やる人がいません(笑)脊椎骨によるマンボウの年齢査定は私もやったことがあるのですが、素人には難しくてできませんでした。マンボウの脊椎骨はかなり水分が豊富で透明がかっているので、輪紋は確かに見えるのですが、どれを数えればいいのかわかりませんでした。これは他の魚の年齢査定で修行を積まないとなかなか難しいと思います。

 

ヤリマンボウだけ属が異なりますが、見た目はそこまで違うように見えません。何がそこまで異なる点なのでしょうか?

クサビフグも属は異なりますが、「マンボウ型の大きな魚」という意味ですね。舵ビレ(おしりのヒレ)がヤリマンボウは突出しますが、マンボウ属全種にその舵ビレ突出部はありません。それがパッと見て識別できる大きな特徴です。あと、マンボウ属は、舵ビレ全体の縁辺部にだいたい等間隔で「骨板」という骨の塊ができますが、ヤリマンボウは突出した先端部分にしかできないです。そこも大きく違いますね。

加えて、マンボウ属は割と背が高く、なんとなく楕円形に近いフォルムになってます。一方、ヤリマンボウはニワトリの卵のような卵型です。形も微妙に違います。下あごが出っ張るのもヤリマンボウの特徴ですね。模様に関しても特徴的で、ヤリマンボウはまだら模様になりがちです。ちなみに下の写真はまだら模様になっているウシマンボウ。

マンボウは模様が変化するんですよね。

そうですね、マンボウ類は色や模様を微妙に変えることができます。感覚的になりますが、ヤリマンボウはマンボウ属とは微妙に模様のパターンが違います。ヤリマンボウの方が、舵ビレのあたりが虫食い模様になっていることが多いです。で、あと脊椎骨の数…これもマンボウ科の他の種と1~2本異なります。

なるほど。そういった1つ1つの特徴の違いをトータルしていくと、ヤリマンボウだけちょっと違うよね、と。

そうですね。細かすぎて伝わらないですが、微妙な違いも積み重ねれば属レベルの違いになります。昔はヤリマンボウもやはり形が似ているので、マンボウ属に含まれていた時期がありました。まあ、今は形態形質だけじゃなく、手間はかかりますが遺伝解析によっても種を識別できるので。

分類方法に関する質問なんですが、同じ科の中で「どの属に入れようか?」というような分類方法っていうのは、どの科も共通の統一された分類方法があるわけじゃなくて、科ごとにバラバラのやり方なんですか?

科ごとというか分類群によってバラバラです。その分類群に詳しい研究者が、それぞれの種の似ている者同士をグルーピングしていきます。そうすると、ある程度大きなグループでまとまりますよね。種レベルの複数種をまとめたものが属というグループ単位になり、属をいくつかまとめたものが科というより大きなグループ単位になります。要は整理整頓ですが、この感覚が分かるのは、少し専門的になるのかもしれません。

 

ヤリマンボウと違うんですが、クサビフグっていますよね。なんで彼だけそんな名前でマンボウ科にいるんですか?

最初にクサビフグという名前が付けられてしまったので、今こんな事になっています。実はクサビフグの命名者が何度か「クサビマンボウ」に訂正しようとしたのですが、他の研究者に受け入れられず、最初の命名のまま訂正されずに現在に至ります。まあ、マンボウ類が大きなカテゴリーではフグの仲間とわかりやすいので、そういう意味ではクサビフグでもいいかなと個人的には思います。

ちょっとかなしい…。

マンボウの味について教えて!

ここからは澤井先生の著書「マンボウは上を向いてねむるのか?」を読んで感じた疑問を投げていきます!

 

よろしくお願いします。

タイプ標本を食べたくなっちゃって怒られたエピソードの部分からですが…私もあのエピソードを読んで気になってしまって、先日食べてきました。

美味しいですよね!?

美味しかったです(笑)マンボウってのんびり泳いでるイメージだったので、身もすごいぶよぶよ…やわらかいのかと思っていましたが、食べてみたら案外コリコリして歯ごたえありました。

まあ、マンボウもフグの仲間ですからね。外洋を泳ぐので、案外筋肉がついてるんですよ。淡白で美味しいです。

お店の大将が、澤井先生をご存じでしたよ。「Twitterやってるやろ!」って言ってました。

(笑)

マンボウ食べたことないなあ…。

東京でも上野とか居酒屋で食べられるところがあるみたいですよ。

上野だったら帰り道にいける気がします。

調べてまたお伝えします(笑)

あんまりマンボウが食べられるお店って無いですよね。

やっぱり水っぽいので、腐りやすい・傷みやすいというのがあります。

 

 

本では、タイプ標本のカクレマンボウを食べることは叶いませんでした。その後カクレマンボウを食べる機会はありましたか?

カクレマンボウはまだ食べることができていません。南半球では入手できますが、日本では今のところ見つかった記録がなくて、カクレマンボウを食べるにはやはり南半球にもう一度行くしかなさそうです……。

ウシマンボウは食べたんですか?

ウシマンボウは食べました。これからの夏の時期は岩手や宮城にいけば食べられます。

種によって味って結構違うんですか?

感じ方は人それぞれなんですが、大きくなればなるほど大味になるとは言われてます。私が一番美味しいなって思ったのはクサビフグです。

一番マンボウから遠い感じの(笑)名前の通りフグに近い感じの味なんですか?

「魚!」って感じの味で美味しかったです。

マンボウ美味しいって話の説得力が…(笑)

マンボウって「魚!」って感じの味じゃないでしょ?

たしかに、鶏肉に近い感じだったかもしれないです。

そう、茹でたら鶏肉みたいになりますから。マンボウのから揚げとか、鶏のから揚げみたいで美味しいですよ。

言われてみれば、先日食べたフライも「ササミのフライ」って感じでした。

(鶏肉食べてたらいいってコト…?)

 

「クサビフグ」を抜きにして「~~マンボウ」ではどれが一番美味しかったですか?

ヤリマンボウですね。ちょっと甘みがあるような気がして。台湾では、マンボウ科のいろんな種が獲れて、ウシマンボウが一番価値が高いらしいです。

ちゃんと区別してるんですね。

そう、ちゃんと区別して値段も分けています。台湾の東側にある花蓮というところが特産地です。また行きたいな~。

 

マンボウの特徴について教えて!

味について色々教えていただいたので、次はマンボウの特徴について。これまでにも「模様が変わる」というお話が出ていましたが、マンボウは体の模様を変化させることができるんですね。この変化って、どういう理由で発生するんでしょうか?

厳密にはよくわかっていないんです。ストレスで変わることがある、というのは言われています。びっくりした時にパッとまだら模様になるという報告もあります。

わかってないんですね。

パッと変わる時も、じわじわ変わる事もあって、本当によくわからないんです。水族館で24時間観察をしていた時も、ずっと見ていたのにいつの間にか色が変わっていたことがありました。スタンド攻撃を受けたみたいな感覚に陥りました(笑)

時を止められていたか、経過を飛ばして結果だけが残ってますねこれは…。

 

マンボウが目を閉じる理由について

マンボウが目を閉じる理由について。本では「刺激からの保護のため目を閉じると思われるものの、ビニールシートに目をこすりつける姿も見られて痛々しかった」と書かれていましたが、目を閉じる理由というものはあるんでしょうか?

マンボウは目を閉じるというか、目を引っ込めるというイメージになりますが、閉じる理由としては、目に何かあたってからの反射で目を閉じることがあります。人間も、目にゴミが入ってきたら瞬間的にイテって目を閉じたりしますよね。それと似ている感じだと思います。

なるほど。ビニールシートにこすっていたのは…痒かったんですかね?

痒いのは違いますね。私の推測ですが、マンボウ的には透明なビニールシートをあまり認識していなくて、その先もあると思って泳いで行った結果、透明なものが目に当たって、瞬間的に眼を閉じたのではと思いますね。漫画でよくある歩いていたら急に結界に弾かれる的な感じです。

 

身を守る方法について

マンボウには大きな鱗も、ハリセンボンのようなトゲも、フグのような毒も無いですが、身を守る役目は何が果たしているのでしょうか?

青魚のような大きな鱗はないけど、鱗自体はあります。身を守る役目ですが、マンボウの場合は「大きくなること」が天敵対策のひとつと考えられています。マンボウは身体が大きくて、とても皮が分厚いです。食べ物にたとえるとスイカですね。身体を大きく皮を分厚くすることで、自分より大きな魚以外からは襲われにくくしていると考えられます。皮を厚くすることで、カブトムシみたいな外骨格としての機能があるのではないかと考えられています。ウシマンボウはマンボウ科の最大種なので、大型個体では皮もかなり厚いです。

のんびりしてると思ったけど、ちゃんと生存戦略立ててるんですね…。

 

魚の調査をする時の基本について

マンボウとは直接関係ないんですが、本の中で「魚の特徴は左側を調査するのが基本」と書いてありました。これは何か理由があるんでしょうか?図鑑の魚が左向きなのはこのためですか?

私もこれに関しては何でだろうと思って調べたことがあります。結論からいうとはっきりした理由はよくわからなかったのですが、日本独自の習慣のようです。海外では結構バラバラで、図鑑の魚も右向きだったり左向きだったりします。

意外です。特に理由があるわけじゃないんですね…。

昔の研究者が左向きにしていたのがいつの間にか常識になったのでしょう。調べたところ、魚を左向きにする説はいくつかあって、日本は右利きの人が多いので、左側から描き進めていくほうが描きやすく、左側に頭を置いたとか。日本料理の魚の盛り付け方に沿ったとかがありました。

これからのマンボウ研究について

最後に、これからのマンボウ研究で進めていきたいテーマはありますか?

マンボウはまだまだわからないことが多いので、基礎的な部分を強化したいです。どこでどんなマンボウ類が獲れるのかみたいな部分でもわかっていないことが多いし、裏付けるデータも少なかったりします。全国各地の出現状況を地道に記録していくことがまず第一段階で、次にどの大きさのマンボウ類がどの季節に出現するのかというより大きな調査に発展していけますね。このあたりがわかってくるとより詳細な回遊予測ができるようになっていくと思います。

人手がいりそうですね。

一人であちこち行くのは難しいので、SNSを活用しています。いろんな人のTwitterを見て、興味深い情報を持っていたら声を掛けてデータ収集に協力してもらっています。広域データ収集はいわゆる科学が好きな市民科学者の方も巻き込んでやるのがポイントで、協力者が増えれば増えるほど、日本全体のマンボウ類の基礎生態が解き明かされていきますね。

マンボウに関する情報は澤井先生のTwitterまで連絡ですね。

 

澤井先生にはぜひ引き続きLab BRAINSでも記事を執筆いただきたいのですが、次のテーマは何にしましょうか?

個人的にはマンボウのおしっこについて語りたいです。

あ~~~論文読みました!30秒以上おしっこをしたっていう…

それです。通常、海水魚はオシッコの時間が短いとされているんですが、マンボウは哺乳類よりオシッコの時間が長いという結果が得られました。マンボウのオシッコなんて普通に生きているだけでは考える人はほぼ皆無だと思うんですよね。

では、次回はマンボウのオシッコについてぜひ。

本日はありがとうございました!

ありがとうございました!

 

 

…というわけで、次回はマンボウのオシッコについて語り尽くしてもらおうと思います。

お楽しみに!

 

今日のまとめ

  • マンボウ最弱伝説はウソ
  • 赤ちゃんのトゲトゲは他の捕食生物から食べられにくくするためと考えられている
  • ヤリマンボウの寿命は脊椎骨の輪紋で調べた結果に基づく
  • クサビフグは名前が一般化してしまったのでクサビマンボウに名前を直せない
  • マンボウ博士の一番美味しかった種はクサビフグ。
  • 模様が変わる理由はよくわかっていない
  • 体を大きくする(皮を厚くする)ことがマンボウの防御機能と考えられている
  • 魚の左側を調査するのは日本独自の習慣