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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、5億年前の糞化石に見つかった銀の粒子についてだよ!
なんだかこれだけ書くと語弊があるけれど、実はこの銀は生物活動に関係していて、生物の重金属耐性を考える上で重要な発見だと考えられるんだよ!これがどういう意味なのか、順を追って解説するね!

CONTENTS
カナダ北西部にあるマッケンジー山脈は、2つの意味で注目を集めているよ。1つは、銅、鉛、亜鉛、銀、タングステンなど、様々な鉱物資源が堆積している事。もう1つは、数億年前の古生代に生息した生物の化石が見つかる事だよ。
この地域にあるセルウィン盆地には、カンブリア紀ドラミアン (5億450万年前から5億50万年前) の、「レイヴンズスロート川ラーガシュテッテ (Ravens Throat River Lagerstätte)」と呼ばれる厚さ2メートルの地層があるんだよ。
レイヴンズスロート川ラーガシュテッテは、バージェス頁岩のように層にそって薄く割る事ができる石灰質泥岩で、古生物学者の間では有名な地層だよ。
レイヴンズスロート川ラーガシュテッテは、現在では北アメリカ大陸の北の方、とても寒い山岳地帯にあるけど、堆積した当時は赤道付近の温かい海の底だったよ。そしてとても貴重な事に、柔らかくて化石に残りにくい糞などの化石が見つかっているんだよ!
糞の化石の主は、当時生息していたある程度目に見える大きさの生物によるものと考えられるよ。また、生物の痕跡を示す有機炭素が高濃度で見つかっているほか、海に生息していたシアノバクテリアや藻類の化石、海底に生息していた微生物マット、動物組織の断片なども見つかっているよ。
ペンシルバニア大学のジュリアン・キミッヒ (Julien Kimmig) と、サスカチュワン大学のブライアン・R・プラット (Brian R. Pratt) の研究チームは、レイヴンズスロート川ラーガシュテッテの糞化石について、電子顕微鏡による観察と、元素の種類や化学形態を観察していたよ。
この糞の主は、恐らく海底に生息し、巣穴を掘るワームのような生物だったと考えられるよ。そしてこの糞化石の分析で、とても面白い事に気づいたんだよ。
現代でも糞を分解して栄養源とする微生物がいるように、糞化石にも微生物が活動した痕跡が残る事があるよ。糞を分解する微生物は、その代謝の中で別の物質を生成する事もあって、逆に言えば、微生物そのものの化石が残らなくても、生成物から微生物がいた証拠が得られる事もあるんだよ。
今回の化石の分析でも、炭素、黄鉄鉱 (二硫化鉄) 、ケイ酸アルミニウムなどが見つかったよ。これは他の地域の化石でもよく見られるものだよ。

走査電子顕微鏡が撮影した、5億年前の糞化石に含まれる銀の粒子 (矢印の先にある2つの白い部分) だよ。スケールバーは100μm (0.1mm) で、今回見つかったものの中では比較的大きな粒だよ。
画像引用元: Francisco Tutella. (Dec 17, 2021). "Fossil worm dung shows traces of microscopic ‘miners’ in elemental silver". The Pennsylvania State University. (Credit: Julien Kimmig. All Rights Reserved.) (画像リンク)
ところが、レイヴンズスロート川ラーガシュテッテの糞化石は特別なものだったよ。これらの物質に加えて、単体の銀の粒が見つかったんだよ!大きさは平均的には10µm (0.01mm) 、最大で300µm (0.3mm) と、とても微細なものではあるけれど、その存在自体が予想外だったよ!
みんなも知っての通り、銀は貴金属。地殻に含まれる銀の平均濃度はたったの0.000007% (70ppb) しかないよ!
ところが、この糞化石には、糞と関連する形で銀の微細な粒が濃集していて、その量は最大で0.000047% (470ppb) だったよ。数字が小さすぎてややこしいけど、地殻平均濃度の7倍も多く含まれているんだよ!
冒頭にも書いた通り、この場所は元々銀の鉱山があるくらいには、平均よりは銀の多い地域だよ。だから糞化石に銀が多く含まれていても、ただちに生物の関与があったとは言い切れない部分もあるよ。
ただ今回の場合、銀の濃集は地質活動で偶然そうなったのではなく、生物活動の関与がありそうと分かったよ。と言っても、5億年前には銀の糞をする生物がいたわけじゃないよ。
まず、銀の粒は主に糞化石に伴う形で濃集していて、分布にばらつきがあったよ。
次に、地質活動に伴うならば共に濃度が上昇しているはずの、鉛や亜鉛があまり見つからなかったという点が大きかったよ。
通常、鉱物資源として採掘される銀は、地下のマグマで熱せられた水に溶けて地表近くへと運ばれ、水が通った跡に銀が残った、と言う形を取る事が多いよ。
銀山温泉のように、銀山の近くに温泉があるのはこれが理由の1つだよ。この時には、鉛や亜鉛と言った、水への溶け方など、物理的性質が似た金属元素も共に堆積するよ。
一方で、生物活動による銀の濃集の場合には、銀の化学的性質が関与するよ。銀は1価の陽イオンAg+として海水に溶けている一方で、鉛や亜鉛は2価の陽イオンPb2+やZn2+として海水に溶けているよ。
イオンとしての価数が違えば、化学的性質も異なるから、生物は銀イオンを選択する一方で、鉛イオンや亜鉛イオンを無視するから、こういう違いが生まれる、と考えられるんだよ!
このような、特定の金属元素が生物の代謝活動によって濃集される、という地質学的証拠は、過去には鉄の例は知られていたよ。
そして今回、化石記録において生物活動によって銀が濃集する例が初めて見つかった、というのが今回の論文の凄いところだよ!
産出状況から、恐らく銀の由来は海水に溶けた銀イオンで、特に海の表層部に生息する微生物によって代謝された、と考えられるよ。
銀イオンは重金属の1つで、生物にとっては猛毒だよ。一部の生物は銀イオンを無害化して濃集する性質があるけれど、どうしてそのような耐性を持ったかについては、まだ多くの謎が残されているよ。
今回、5億年前の地層で生物による銀の濃集が見つかった事は、かなり古い時代から、生物に重金属耐性が備わっていた事を伺わせる証拠なんだよ!この点で、今回の発見はとても興味深いだよ!
[原著論文]
●Julien Kimmig & Brian R. Pratt. "Evidence for microbially mediated silver enrichment in a middle Cambrian Burgess Shale-type deposit, Mackenzie Mountains, northwestern Canada". Canadian Journal of Earth Sciences, 2021. DOI: 10.1139/cjes-2021-0035
[参考文献]
●Francisco Tutella. (Dec 17, 2021). "Fossil worm dung shows traces of microscopic ‘miners’ in elemental silver". The Pennsylvania State University.
●John Emsley. "Nature's Building Blocks ― An A-Z Guide to the Elements (Second Edition)". Oxford University Press, Oct 01, 2011 Published. ISBN: 978-0-19-960563-7