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初めまして!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
普段はTwitterで、こんな感じの軽いノリと言葉で、最新の科学研究や成果などのニュースを解説してて、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしているよ。
さて、今回は「彩恵りりのニュース解説!」という事で、Lab BRAINSにて連載を持たせていただいちゃったので、その第1回目を投稿しちゃうよ!
今回の解説は、5440万年前に生息していた霊長類の化石に残る虫歯跡から、虫歯になっちゃった原因である "甘い" 食生活に迫る研究だよ!
「甘いものを食べると虫歯になる」と言うイメージには理由があるよ。
みんなは虫歯 (医学用語では齲歯) を防ぐためにちゃんと歯磨きをしているかな?虫歯は現代人の多くにみられる病気の1つだね。
虫歯というのは、酸が歯の成分であるリン酸カルシウムを溶かしてしまう”脱灰”という現象を引き起こし、歯が崩れてしまうことをいうよ。
酸を出すもので最も一般的なのは、口の中に生息する細菌が出すものだね。虫歯菌って言葉、聞いたことあるんじゃないかな?
細菌の出す酸以外でも普段から酸性の食品などによる脱灰が起きているんだけど、アルカリ性の唾液による酸の中和と、リン酸カルシウムが定着する再石灰化が起こる事でこれを防いでいるんだよ。
このバランスが崩れてしまって再石灰化よりも脱灰が進行している状態の事を虫歯と言うよ。
これは特に、細菌がエネルギー源としやすい糖類の摂取と関連付けられていて、歯磨きで細菌のエネルギー源を取り除かないと虫歯が進行してしまうよ。甘い食べ物と虫歯が結びついているイメージはここから来ているんだよ。
さて、虫歯は身近な病気だけど、人間に特有の病気ではないよ。ヒト以外の多くの霊長類に虫歯は観察されているし、それ以外の生物にも虫歯は存在するよ。
そしてこれは、絶滅してしまった古代の生物でも同じで、化石として残った歯に虫歯のようなくぼみが観察される事はあるよ。
ただ、これまで見つかってきた虫歯化石は、生物種の範囲こそ広いけど、数があまりに少ないから、どの程度の頻度で起きてきたのかとか、いつの時代から虫歯が存在したのか、と言う研究はほぼできていなかったよ。
M. latidensの右上顎化石 (標本No. USGS 17748) のμCT画像だよ。スケールバーは1mmで、Buは頬側、Liは舌側を意味しているよ。
(A) 第1大臼歯と第2大臼歯に齲歯病変 (虫歯) が診られるよ (画像中の "Carious Lesions") 。
(B) 図AのBu-Li間で第2大臼歯の断面を取った画像だよ。齲歯病変の下側の白っぽい領域が、硬化した象牙質と推定される部分だよ (画像中の "Plugged (Sclerotic) Dentine?") 。μCTではエナメル質と象牙質の区別はつかない事に注意!
(画像引用元: Keegan R. Selig & Mary T. Silcox. Sci. Rep., 2021; 11, 15920., Figure 1. CC BY 4.0)
今回、トロント大学スカボロ校のKeegan R. SeligとMary T. SilcoxがScientific Reportsに投稿した論文では、古代の虫歯の研究としては異例の、大量の標本による虫歯の頻度や変化に関する研究が書かれているよ!
研究対象となったのはMicrosyops latidensという哺乳類だよ。
M. latidensは5440万年前に生息していた絶滅した哺乳類で、骨格はほぼ残っていないけど、歯の化石は大量に産出していて、体重は約670gと推定されているよ。
そしてM. latidensは、現代に子孫を残さなかったけど、一般的に霊長類と呼ばれる霊長目 (Primates) に近縁か、もしくは祖先とされている分類であるプレシアダピス目 (Plesiadapiformes) に属しているよ。
この辺の細かい分類に関しては、色んな説や議論があってややこしいんだけど、今回のお話では霊長類のお仲間、と考えてくれればOKだよ。
M. latidensの化石は、アメリカ合衆国ワイオミング州にあるビックホーン盆地の、5440万年前の地層から産出したもので、1970年代に初めて見つかってから、かなりの数の歯の化石が収集されているよ。
今回の研究では、実に1030個体分という膨大な数の化石を調べて、虫歯の有無やその頻度を分析したんだよ。これは、哺乳類の虫歯の研究としては最古で、また最大規模の研究だよ!また、一部の化石にはμCTスキャンをかけて、詳しい内部構造を分析したよ。
ところで虫歯をどう調べるのかと言えば、人間だったら歯の変色やその部分が柔らかくなっている事で調べられるけど、化石は長い年月地面に埋まっていた事から、最初から変色しているし、柔らかい部分は無くなっちゃうから、以下の基準で調べたよ。
M. latidensの虫歯の割合は、主に甘い果実を食べるタマリン属やオマキザル属と同じくらい高いとわかったよ!
その結果、M. latidensの中で虫歯があったのは、1030個体中77個体である事がわかったよ!つまり、虫歯になっている有病率は7.48%という事で、これは現生の霊長類で言えばチンパンジー属 (Pan) の8.00%やタマリン属 (Saguinus) の9.30%に匹敵する値だよ。
統計上の値から、M. latidensより虫歯になっている割合が高いとされた霊長類は、タマリン属とオマキザル属 (Cebus) のみであると推定されたよ。
タマリン属やオマキザル属と、今回研究されたM. latidensの共通点は、木の上で生活する習慣である事、そして甘い果実を多く消費する事だよ!甘い果実は糖分が多いから、それだけ虫歯になりやすいと推定されるよ。
また、過去の研究で、M. latidensは歯の形状が時代ごとに変化している事が分かっているよ。
これは、昆虫や葉っぱのような硬い食べ物と、果実のような柔らかい食べ物のどちらを多く食べているかによる違いと推定されているよ。硬い食べ物は、より口の中ですり潰す必要があるから、歯のデコボコが少なくなって平らになる傾向があるよ。
M. latidensの場合、地層の位置から生きた時代を推定すると、生息時期が中ほどの時代の個体は、初めごろと終わりごろの時代の個体と比べて柔らかいもの、つまり果実を多く食べていた傾向にある事が推定されていたよ。
そして今回の研究でも、虫歯の頻度が高いのは中ほどの時代で、糖分の多い果実を食べていた事を裏付けているよ。ただ、虫歯の頻度が増えるのは、歯の形状が変化するより早い事も分かったよ。
これは、歯の形状が世代交代よる時間のかかる変化 (簡単に言えば進化) なのに対して、虫歯が増える要因は食べ物の変化だから、そこまで時間がかからないからと考えられるんだよ!
M. latidensの生きていた時代は気候変動が起こっていたと推定されていて、これがM. latidensを果実食にした可能性があるよ。食性の変化は動物の生態や絶滅の原因を推定する重要な指標だから、虫歯によってそれを推定する事はとても重要だよ!
今回の研究では、古生物の虫歯を調べる事によって、M. latidensという動物の食性を深く知る事ができたよ。この手法を使う事によって、他の古生物の虫歯を特定したり、そこから食性や、もっと言えば生態や繁栄、絶滅の原因など、もっと深く研究する事ができる、というとても重要な事を示しているよ!
Keegan R. Selig & Mary T. Silcox. "The largest and earliest known sample of dental caries in an extinct mammal (Mammalia, Euarchonta, Microsyops latidens) and its ecological implications". Scientific Reports, 2021; 11, 15920. DOI: 10.1038/s41598-021-95330-x
Don Campbell. (Sep 13, 2021) "Oldest known mammal cavities discovered in 55-million-year-old fossils suggests a sweet tooth for fruit". University of Toronto.