画像定量解析とハイプレックス空間プロファイリング

2021.08.05

臨床研究の現場では病理組織の解析が重要な知見をもたらします。しかしながら、従来の画像解析は研究者の主観に依存し、客観的な定量が困難でした。また、近年の発現プロファイリング技術の進歩によりハイプレックス解析が可能になりましたが、病理組織での位置を含めた解析(空間解析)は困難でした。
本記事ではこれらの欠点を克服した新しい解析技術である”画像定量解析”と”ハイプレックス空間プロファイリング”を紹介します。

発現プロファイリングと空間画像解析

従来の発現プロファイリングは高いプレックス性と定量性を持っていますが、発現位置を限定した空間解析はできません。一方、従来の画像解析は空間解析はできますが、プレックス性と定量性に限界があります。これらの解析手法はいわゆるトレードオフの関係にあり、従来はそれぞれの利点を両立させた解析を行うことは困難でした。

今回ご紹介する、以下2つの解析技術はそのような課題を解決する可能性を持っております。

“イメージサイトメトリー”:客観性と定量性に優れた画像解析技術。

“ハイプレックス空間プロファイリング”:ハイプレックスプロファイリングと空間解析を融合した解析技術。

イメージサイトメトリーによる画像定量解析

イメージサイトメトリーはTissueGnostics社が開発した画像定量解析技術です。デジタル化画像データ(バーチャルスライド)を取込み解析します。画像中の個々の細胞をイベントとしたフローサイトメトリーのようなスキャッタグラムを作製し、陽性/陰性のカットオフを設定することで客観的な定量解析が可能です。また、スキャッタグラム上でのゲーティングによって特定の細胞集団に限定した解析も可能です。

ハイプレックス空間プロファイリング

ハイプレックス空間プロファイリングはNanoString社が開発しました。スライドにマウントした組織切片に、蛍光標識形態マーカーとUV切断性オリゴインデックスを付加したターゲット認識プローブ(抗体またはターゲット相補オリゴ)を反応させ、形態マーカーの顕微鏡画像を基に解析領域(ROI)を指定します。ROIごとにUVを照射して遊離したインデックスオリゴを回収して、これを定量して各ROIのプロファイリングを行います。

TissueFAXSシステムとGeoMxシステムのご紹介

TissueGnostics社のTisuueFAXSシステムはバーチャルスライドスキャナーと画像定量解析ソフトウエアから構成されます。高速、高画質スキャナーとイメージサイトメトリーによる定量解析により、誰でも簡単に客観的定量解析が行えます。ソフトウエア単体での導入も可能ですので、お持ちのスキャナーで作製したデジタル画像の解析も可能です。

NanoString社のGeoMxシステムはハイプレックス空間プロファイリングを実現したシステムで、研究者が指定したROIから自動でターゲットに対応するオリゴインデックスを回収します。NanoString社のデジタル定量プロファイリングシステムnCounterまたはイルミナ社のNGSによってオリゴインデックスを定量します。タンパク質、RNA両方の解析が可能で、腫瘍免疫、神経科学など目的別のパネル、全タンパク質コード遺伝子を網羅したWhole Transcriptome Atlasパネルなどが用意されており、カスタムメードによってターゲットを追加することもできます。FFPEサンプルの解析にも対応しており、すでにお持ちの研究資源も有効に活用できます。

最新の画像(空間)解析技術を紹介しました。従来不可能であった解析が可能になったことに加えて、これらの技術は装置の自動化、ソフトウエアのカスタマイズなどにより簡便性が飛躍的に向上して、誰でもできる身近な手段になりました。
ご興味を持っていただけましたら是非お気軽にお問合せください。