世界初?「ヤリマンボウ軟骨の味噌漬け」を作ってみた

2025.05.26

意外とある海洋生物の軟骨料理

軟骨を使った料理と言えば、多くの人は鶏の軟骨を使った料理を思い浮かべるのではないだろうか? 鶏のひざ軟骨もヤゲン軟骨もカラッと揚げて出てきたものは、コリコリした食感で非常に美味である。酒の肴に合う一品だ。

海洋生物の軟骨も伝統的に食されており、例えば、クジラ類の頭部にある軟骨は「蕪骨(かぶらぼね)」と呼ばれ、細く切って乾燥させて保存し、食べる時にお湯で戻して醋醤(酢醤油? これが何の調味料を指すのかよくわからなかった)に和えて食べるという。現在、蕪骨は入手が難しいらしいが、佐賀県の呼子では、細く刻んだ蕪骨を長時間水にさらして脂を抜いた後、酒粕に漬け込んだ松浦漬という珍味が提供されている。

魚の軟骨を使った料理はいくつかある。加熱処理して細切りにしたサメ類の軟骨に梅肉と調味料を加えたものは「梅水晶」と呼ばれる。最近はサメ類の軟骨の入手が少ないようで、代わりにヤゲン軟骨が使われている場合もあるという。サケ類の鼻先にある軟骨の部分は「氷頭(ひず)」と呼ばれ、これを薄く切り、塩を振って数時間置いた後、酢で洗って数時間漬けた後、水で洗って、大根おろしと酢、砂糖、塩を入れて和える。実際は軟骨の上に在る皮も一緒に食べる。東方地方の郷土料理で、氷頭なますはお正月などで食べる。

マンボウの軟骨は「透骨(すきほね)」と呼ばれ、梅酢に浸しておくと赤色に染まり、酒の肴にいいと言われている。また、マンボウの軟骨を短冊のように薄くスライスして、天日干しで乾燥させたものは「鮫氷(さめすが)」と呼ばれ、お湯で戻して細かく切って三杯酢やウニと混ぜて食べる料理がある。鮫氷と言われるくらいなので、サメの軟骨でも同様の料理がやられていたのではないかと思う。

鶏やクジラの軟骨は白濁して見えるが、魚類の軟骨は透明感が強い。魚類の軟骨の料理に水晶や氷の名が付くのは、その透明感に由来するものと思われる。軟骨はどの生物もコリコリしていて酒の肴に合う。私もいくつか食べたことがあるが、軟骨そのものに味があるというよりは、食感を楽しむものである。ここまで紹介してきた軟骨料理以外で漁師から教えてもらった美味しい軟骨の食べ方がある。それが味噌漬けだ。マンボウの軟骨の味噌漬け! これは知る人ぞ知る酒の肴だったのだが……2025年2月9日に放送された『ザ!鉄腕!DASH!!』でマンボウの軟骨の味噌漬けがDASHメシ遺産として紹介されてしまった! うっ、ナイショにしていた珍味が……。

 

世界初?!ヤリマンボウの味噌漬けを作る!

さて、この流れだと普通はマンボウの軟骨の味噌漬けを作ってみたという感じになるところだが……今回、ヤリマンボウの軟骨を入手する機会があったので、世界初かもしれないヤリマンボウの軟骨で味噌漬けを作って食べてみた。ヤリマンボウの背鰭や臀鰭の根元を切り出したものがこちら。

まだ皮があるので、軟骨は見えない。このヤリマンボウの皮を包丁で切っていくと、透明感のある軟骨が出てくる。周りにある筋などをキレイに取り除いた軟骨がこちら。

個体の体サイズが大きくなればなるほど、軟骨も大きな部位が取れる。大きな塊では半透明であるが、薄く切っていくとガラスのような透明感があるのがわかる。

ヤリマンボウの軟骨もマンボウの軟骨と同様で、包丁でサクサク切れる。個人的に、マンボウ類の軟骨は特に種の違いは無いように感じた。この時、あまり薄く切りすぎると、コリコリした食感が楽しめないので、適度な厚みで切っていく。本当は軽く茹でた方がいいのかもしれないが、マンボウ類の肉は刺身でも食べられるので、軟骨もそのままで食べても問題ないだろうと思い(鮮度が高かったので)、ラップを張った器の中に味噌を適当に入れ、その上にヤリマンボウの軟骨を入れた。味噌は自分の好みでいいと思うが、私は濃い目の味が良かったので、今回は赤味噌を使ってみた。

ヤリマンボウの軟骨ができる限り露出しないように、しっかりと軟骨の上にも味噌を被せていく。味噌の中にしっかり漬けることで、その味がヤリマンボウの軟骨に染み込むのだ。味噌の中に軟骨を入れ終えたら、ラップでしっかり包んで、冷蔵庫の中で一日寝かせよう。

すると……透明だった軟骨が味噌と似たような色に様変わり!これでヤリマンボウの軟骨の味噌漬けは完成だ! めちゃくちゃ簡単。ヤリマンボウの軟骨を薄く切って味噌に漬けて一日寝かすだけ! 漬けた味噌はそのまま食べてもいいし、洗い流してもいい。味噌の味がヤリマンボウの軟骨に移り、コリコリした食感で非常に美味い! ヤリマンボウの軟骨の味噌漬けとマンボウの軟骨の味噌漬けとの味の違いは……特になかったが、大成功だった。これは居酒屋で珍味として一品出せると私は思っている。もしマンボウ類を丸ごと手に入れる機会があったのなら、軟骨の部分を捨てるのはもったいない! マンボウ類の軟骨は水分が結構多いので、塩分など濃いものに漬けておくと浸透圧の関係でその味が移る。マンボウの軟骨を梅酢に浸した料理も味噌漬けと同じ原理だろう。自分の好きなタレに漬けてみるのもいいかもしれない。

 

ヤリマンボウ

  軟骨出して

   味噌漬ける

    透明琥珀

     色味変わる

 

 

【参考文献】

荒俣宏.1989.世界大博物図鑑 第2巻[魚類].平凡社,東京.

中嶋昭正.1994.軟骨の食品としての利用.福岡女子短大紀要,47: 1-16.