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2025年2月9日の夜、X(旧Twitter)のフォロワーの方から「『ザ!鉄腕!DASH!!』で今マンボウの話が出ていますよ」とリプライが来た。私は全くテレビを見ないので、こういう情報を頂けるのは非常に有り難い。しかし、私はテレビを持っていないので、リアルタイムで番組を視聴することはできなかったが、Xに投稿されるポストを見て、どんな話がされているのかを確認していた。放送終了後、TVerで見逃し配信を見られることを知り(2025年2月16日19時まで)、早速視聴。今回は番組の備忘録も兼ね、紹介されていた長崎県生月島に関連するマンボウ情報をご紹介しようと思う。
『ザ!鉄腕!DASH!!』は1998年4月から約27年間も放送が続いている日本テレビの老舗のバラエティ番組だ。改名前の『鉄腕!DASH!!』時代から含めると、約30年の歴史を持つ。私も子供の頃に時々見ていた。Xを見ていると、時々『ザ!鉄腕!DASH!!』の感想ポストが流れて来るので、現在も続いていることは認識していたが、今回、マンボウの情報が出ているとのことで久々に視聴した。2025年2月9日に放送された内容は、「DASHメシ遺産」というシリーズで、長崎県の生月島の郷土料理を紹介する回であった。「DASHメシ遺産」シリーズのコンセプトは、農林水産省が「うちの郷土料理」としてリスト化しインターネット上で公開している全国1365品の郷土料理に載っていないローカルフードを探すというものである。調べてみると農林水産省がリスト化している郷土料理の中には、「まんぼう酢味噌あえ(三重県)」があった。昔は現在より交通の便が悪かったため、地元で入手できる食材をより美味しく食べるため・長期保存するために独特な料理が各地域で発案されてきた。しかし、交通手段の発達で様々な食材が簡単に入手できるようになったことに伴い、すっかり伝統料理を作らなくなったという事例は多く、今後も増えていくものと思われる。食の豊かさを減らさないためにも、失われゆく郷土料理を記録することは重要だ。
今回の話の舞台である長崎県平戸市に属する生月島は九州本土から橋を渡っていく事ができる有人島である。番組でも紹介されていたように、平戸観光協会のホームページにはかくれキリシタンや捕鯨の島として有名と書かれている。なので、郷土料理は鯨がメインになるのは必然的であるが……番組では郷土料理を訊ねられた地元民が「マンボウも食べる」と口に出した。郷土料理と言われてマンボウがすぐに出てくるあたり、馴染みの深い食材であることが窺える。番組で地元民が話していた生月島におけるマンボウ情報を以下に箇条書きした。
・お正月の時期にマンボウを食べる。
・今は無くなったが、以前はマンボウが獲れたら島内放送があった。地元住民が皆欲しがるので番号札をもらい、購入する形式になっていた。
・マンボウの皮と身(筋肉)を食べる。冷凍保存する。
・マンボウのことを「マンブ」と呼ぶ。
・マンボウの皮(皮下ゼラチン層)は湯掻いて、白濁した色が透明になった後、冷蔵庫で冷やし、固まったら醤油に漬けて食べる。
・マンボウの軟骨は梅酢漬けや味噌漬けにする。軟骨を1日漬けるだけだが、しっかり漬けたものの味がする。
私はまだ生月島に行ったことは無いのだが、生月島近海でマンボウ類が漁獲されることは先行研究でも知られている。平戸市保健センター(2013)には、平戸市郷土料理の一つとして、マンボウの肉や腸や皮下ゼラチン層の料理が載っていた。平戸市の郷土料理として認識されているところをみると、やはり古くから生月島ではマンボウが食べられているようだ。マンボウの肉や腸は他の地域でも食べられ、通販で流通していることもあるが……皮(皮下ゼラチン層)を食べるのは珍しいと思う。皮下ゼラチン層は私がサンプリング調査に行っていた岩手県でも食されていたが、マンボウを丸ごと入手する漁師が食べるくらいで、一般的に市場には出回っておらず、岩手県のスーパーでも見たことが無い。生月島ではスーパーで売っていたりするのだろうか? 番組では詳しい部位についての説明が無かったが、マンボウのザラザラした灰色の表皮の下に厚い白濁した層がある。この白い層を茹でると透明になり、透明になったら醤油などに漬けて食べる。茹でた皮下ゼラチン層を冷やしてから食べることはやったことがないので、いつかやってみようと思う。ちなみに台湾ではこの皮下ゼラチン層を茹でてぷるぷるになった透明状態のものをしゃぶしゃぶにして食べたりする。

番組で登場したマンボウの軟骨も一般的に市場に出回っていないローカルフードで、岩手でも漁師によって食べられている。軟骨は湯掻いたマンボウの皮下ゼラチン層と似ているが、軟骨の方は白濁しておらず元から透明感がある。私は軟骨を茹でた後、細く切ってから味噌漬けにする方法を教わったのだが、番組では食べるために包丁で細く切っていたので、生月島では捌いたマンボウの軟骨を塊のまま味噌や梅酢に漬けるようだ。多分、先に細かく切った方が味噌や梅酢の浸み込みが早いと思われる。軟骨はコリコリして非常に美味しく、食べる機会があればお勧めしたい一品だ。サメ軟骨の梅肉和え(梅水晶)と同じような食感である。

文献で知っていた情報が現地取材の番組で確認されたのは非常に面白かった。特に生月島はマンボウの軟骨を食べる地域であったことは私にとって非常に大きなキーワードになった。今後また詳しい話をお伝えしたいと思う。
以前の記事でマンボウを「マンボ」と呼ぶ地域について紹介したが、番組では地元民が「マンブ」と連呼していた。生月島でマンボウを「マンブ」と呼ぶことは、平戸市保健センター(2013)にも載っている。私が把握しているところでは、他にマンボウを「マンブ」と呼ぶ地域は、同じく長崎県の壱岐島で、阿部(1976)にその情報が載っていた。どうも「マンブ」と呼ぶ地域は長崎県に限られている?のかもしれない。おそらくマンボウの名前が訛ったのではないかと思うのだが……「マンブ」にどういう意味があるのか由来を知りたいところである。
番組ではお正月の時期にマンボウを食べると地元民が言っていた。これに関して、私は以前「正月にマンボウを食べる」というXユーザーのポストを見掛けたことがあり、もしやと思って番組放送終了後に訊ねてみたところ、ドンピシャで生月島が地元の方の投稿であった! 提供して頂いた写真がこちらである。この写真は2023年12月31日に撮影されたもので、厳密に言うと正月前になるのだが、やはり生月島では冬の時期にマンボウを食べるようである。


番組の撮影場面も雪が降っている時期だったので、おそらく12~1月が撮影時期でちょうどマンボウシーズンが来ていた時期だったと思われる(地元民はマンボウが獲れる時期ではないと言っていたが)。実際、インスタグラムでは舘浦漁協の定置網漁師が「最近デカいマンボウがちょくちょく入る」と2025年1月24日に動画を投稿していた(※漁獲日は不明)。しかし、この舘浦漁協の定置網漁師が投稿した動画をよく見るとヤリマンボウ。このことから、おそらく生月島ではマンボウとヤリマンボウが混同されて食されているものと推測された。
『ザ!鉄腕!DASH!!』は2023年8月20日放送の「気仙沼大島で未知なる漁師メシを大調査!」の回でも同じ「DASHメシ遺産」シリーズで、宮城県の気仙沼大島の郷土料理として「マンボウの刺身」、「マンボウの肝炒り」を取り上げている。今後もマンボウ料理が登場する可能性があるため、またその時が来たら私に教えて頂けると嬉しい。
生月島
マンボウ地方名
マンブ也
皮下ゼラチン層
伝統料理