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以前、「Eschmeyer's Catalog of Fishes」について紹介した記事で、世界中に現存している魚類の種数(化石は除く)は、2024年6月27日時点で36867種であると紹介した。生物の種数=有効な学名の数なので、学名を網羅しているサイトなら、現存する世界中の種数をかなり詳細に示すことができるはずである。
世界中に存在する生物の種数に対する見解は、研究者によってかなり異なり、その推定数の範囲は300万種から1億種まで様々な説が提唱されている。例えば、馬場(2022)では推定870万種、このうち学名が付けられた種数は約150万種と書かれている。この推定870万種のデータの元となった情報源は、Mora et al. (2011)である。奇しくもこの論文の著者の名前はマンボウの学名(Mola mola)に似ている……。
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Mora et al. (2011)を見ると、材料と方法にCatalogue of Lifeからのデータを精査して分析に使ったと書かれていた。Mora et al. (2011)はTable 2に詳しい種数のデータを載せており、学名が付けられた地球上の種数は、動物界953434種+クロミスタ界13033種+菌界43271種+植物界215644種+原生動物界8118種+古細菌ドメイン502種+細菌ドメイン10358種=合計1244360種であった。一方、推定された地球上の種数(予測値±標準誤差)は、動物界7770000(±958000)種+クロミスタ界27500(±30500)種+菌界611000(±297000)種+植物界298000(±8200)種+原生動物界36400(6690)種+古細菌ドメイン455(±160)種+細菌ドメイン9680(±3470)種=合計8753035(±1304020)種であった(ざっくりした推定なので細かい数値は正確ではないことに注意)。クロミスタ界はあまり馴染みがない用語のように思うが、私が学生の頃に習った上位分類の五界説はもう古い知見となっている……Mora et al. (2011)よりさらに10年以上経過した現在の上位分類はもっと研究が進展しているようだが、ややこしい話になるので本記事では取り上げない。
とにかく、Mora et al. (2011)では、地球上で確実に確認された生物の種数は少なくとも1244360種、地球全体に存在すると想定される推定上の生物種数は少なくとも8753035(±1304020)種とかなり具体的な数値を出したのである! 一方で、Mora et al. (2011)はこの870万種以上という推定値は不確実な要素も高いため、将来の研究で改善されることを期待していると言及している。
地球上にどれだけの生物が存在するのかを推定することも興味深い話であるが、これまでに何種の生物が地球上で発見されたのか?という話の方が私は興味をそそられる。何故なら、生物の発見数は我々人類と地球上の生物がどれだけ関わって来たのかという歴史を知ることに等しいからだ。新種は現在も記載され続けており、Mora et al. (2011)の論文発表から10年以上経過した現代はもっと種数が増えているはずである。少なくとも、2011年時点ではウシマンボウとカクレマンボウは明確に記載されていなかったので、私の研究チームは2種増やすことに貢献している。
ところで、Mora et al. (2011)がデータに使用したCatalogue of Lifeとは一体何なのだろうか?
Mora et al. (2011)がデータを入手した大元はサイトからのようで、引用文献のURLにアクセスしてみると、Catalogue of Life: 2010 Annual Checklistというサイトに繋がった。Catalogue of Lifeは和訳すると「生命のカタログ」といったところで、このサイト名からも地球上の生物をリストしようとしている意気込みが感じられる。
Catalogue of Lifeは「Species 2000」と「ITIS(Integrated Taxonomic Information System)」という2つの組織が、地球上すべての既知の生物種の包括的なカタログを作成するという共通の目的を持って運営していたようだが、Catalogue of Lifeのサイトを改めてググってみると、2022年に非営利団体としてCatalogue of Life法人がオランダに設立されたとのことだ。世界中の分類学者が協力し、各分類群に詳しいサイトからデータを収集して、地球規模の総括的な種数(学名)をカウントしている。
サイト内をあちこち見ていると、興味深いデータが記されたページを発見した。「DATA」タブにある「DOWNLOAD」のページを参照すると、2000年以降、年ごとに集計されたほぼ毎年の生物種数の履歴を見ることができる。データにはBase ReleaseとExtended Releaseの2種類があり、Base Releaseは正確性を重視したデータで、Extended ReleaseはBase Releaseに重複する情報を加えた速報値的なデータのようだ(例えば、分類学的再検討が必要な種でシノニムが3つあった場合、3種としてカウントされる等)。本記事を書いている時点での最新版は、Base Releaseは2026年5月11日にリリースされた2247590種、Extended Releaseは2026年5月15日にリリースされた2484225種であった(※おそらく絶滅種も含まれている)。正確性が高いBase Releaseの方で考えると、2026年5月時点で、地球上で約224万種の生物が確認されていたことになる。

毎年どのように生物の種数が増えていったのか? データを引用すると、以下のようになる。一つ注意点としては、この種数の中には絶滅種(多分多くは恐竜などの化石種)も含まれていることである。現存生物の種数だけではないことに注意が必要だ。
2000年――地球上の生物207636種
2002年――地球上の生物242269種
2003年――地球上の生物270743種
2004年――地球上の生物323680種
2005年――地球上の生物511637種
2006年――地球上の生物883234種
2007年――地球上の生物1008998種
2008年――地球上の生物1105589種
2009年――地球上の生物1160711種
2010年――地球上の生物1257735種
2011年――地球上の生物1347226種
2012年――地球上の生物1404038種
2013年――地球上の生物1352112種
2014年――地球上の生物1578063種
2015年――地球上の生物1608236種
2016年――地球上の生物1640969種
2017年――地球上の生物1713852種
2018年――地球上の生物1803488種
2019年――地球上の生物1900983種
2021年――地球上の生物2008947種
2022年――地球上の生物2065448種
2023年――地球上の生物2109214種
2024年――地球上の生物2172471種
2025年――地球上の生物2221237種
2012年から2013年にかけて種数が減っているのは、参照したデータの変更などがあったのかもしれない……が、それ以外は毎年増え続けているのがお分かり頂けることだろう。化石も含め、地球上の生物の種は現在進行形で世界の誰かが発見し続けているのだ! 世界にどのくらいの生物の種数がいるのか調べたくなったら、Catalogue of Lifeのサイトを調べたらいいことを、是非覚えておこう!
地球上
生物の数
どのくらい?
Catalogue of Life
200万以上
【参考文献】
馬場友希.2022.新種発見って何だ?.pp. 6-18.In: 馬場友希・福田宏 (編)新種発見! 見つけて、調べて、名付ける方法.山と溪谷社.東京.