土佐文旦の果肉の粒の数を推定してみた

2025.01.28

冬のコタツで浮かんだふとした疑問・・・

 冬と言えば、コタツでミカンを食べるのが至高であり定番である。柑橘類も色々種類があっていろんな味を試したくなる今日この頃……皆さんは柑橘類を食べていて、一つの小袋の中に一体何粒の果肉の粒が入っているのだろう?と思ったことはないだろうか? 私はある。しかし、一般的に食べるミカンの粒々は一つ一つが小さくて、何となく数えるのは大変そう……そう思って結局、毎回気にはなるものの、実際に数えることはしたことがなかった。しかし、今回、柑橘類の中でも大型の文旦を入手する機会に恵まれた! 文旦は手のひらくらいの大きなサイズなので果肉の粒々も大きくて数えやすそうだ! そう思った私は、早速文旦の粒々を数えることに挑戦してみた!

 

そもそも「文旦」とは?

私は魚類のことなら一般的なことは分かるのだが、植物に関しては全く知識が無い。そこで、文旦とは一体どんな果物なのかをまず調べてみた。北島(2005)や日本果樹種苗協会ら(2016)によると、文旦はミカン科カンキツ属に属する植物で、論文上でも「ブンタン」と表記するようだ。別名でザボンとも言う。文旦とザボンは同じ植物だったのか!

文旦にも品種がいくつかあり、一般的に市場に出回っているものは高知県産の土佐文旦である。私が今回調べた品種もこの土佐文旦だ。土佐文旦は鹿児島県では法元文旦と呼ばれる。土佐文旦が市場に出回る時期は12月~3月の冬の間だ。土佐文旦は果汁が少なく、サックリした歯ごたえがあり、種子が多い。400g前後が一般的なサイズで、果肉は淡い黄色、やや硬めの食感で粒々感が楽しめ、さわやかで上品な甘さがある。

柑橘類の小袋は専門的には「じょうのう」と言い、「部屋」という単位を使うようだ。じょうのうの中の粒々の果肉は「砂じょう」と言う。つまり、私が知りたいのは、砂じょう数ということになる。おそらく土佐文旦の砂じょう数を調べた文献はあるものと思われるが、私がインターネットで文献検索をした限りでは見付けられなかった。

さて、それでは実際に購入した土佐文旦の砂じょう数を調べてみよう。私が購入した土佐文旦は464gと一般的な重さだった。

果皮は結構厚いので、取り除く。じょうのうの重さは結構減ると思われる。

果皮を全部剥き、じょうのうの周りにある白い綿ぽいものもできる限り取る。そして、じょうのう全体の重さを計ってみた。すると……種子や皮の部分も含んでいるがじょうのう総量は265g。果皮だけで199gもあったのだ!

じょうのう数を数えてみると、16部屋だった。厚いじょうのうもあれば、薄いじょうのうもある。じょうのうのサイズはバラバラだった。

 各じょうのうの重さを計量してみると(1g単位)、16g、13g、17g、22g、19g、18g、11g、23g、16g、25g、17g、13g、9g、15g、10g、21gで、平均16.6gであった。このうち、一番小さい9gのじょうのう内にある砂じょう数を実際に数えてみる。

 じょうのうの種子と皮を取り、一応重さを計ってみると……1gあった。つまり、このじょうのう内の純粋な砂じょう数は8gということになる。

 

地道に数を数えていく

 それでは、早速、一粒一粒慎重に砂じょうをバラしていく。砂じょうも涙型からまん丸の球状までいろんな大きさや形のものがあった。砂じょうは思っていたより強いようで、慎重に触れば、全然潰すことはなかった。本当は並べながらバラしたかったが、まずは各砂じょうの水分が失われる前にバラすことを優先した。

続いて、バラした砂じょうを並べて計数していく。地味な作業だが、思ったより時間が掛かる……計数すると、砂じょう数は234個だった。想像していたよりたくさん粒々があった。

 さて、根性があれば、残り15個のじょうのう内の砂じょう数も同じように調査できるのだが、バラしてから並べるのに1時間ほどかかってしまった。なかなか時間がかかるので、ここで私の心は折れてしまった。なので、ここからはザックリとした推定で、この土佐文旦の砂じょう数を推定してみようと思う。

 1例しかちゃんと数えていないが、この砂じょう数を指標とすることにした。じょうのう内の種子や皮はじょうのう大きさによって変わることが想定されるが、とりあえず1gはあるものとして、各じょうのうから1gを引くことにする。この各じょうのうから1gを引いた総量が、この土佐文旦の砂じょう総量(249g)と仮定しよう(実際はもっと減ると思われるので過大評価している)。今回実際に計数した砂じょうは8g中に234個だったので、1g中に29.25個あったことになる。これを砂じょう総量(249g)で掛けてあげると……この土佐文旦全体では約7283個の砂じょうがあったと推定された(実際はもっと減ると思われる)。ひゃー、こんなに数えてなんかいられない! しかしながら、ちょっと調べてみただけでも何だかスッキリした。

 実は今回行ったこの砂じょう数を推定する方法は、以前紹介した魚類の卵巣内の抱卵数(孕卵数)を推定する方法と同じなのである。植物も魚類も同じ発想で、卵的なものの大まかな推定は可能である。魚類の抱卵数を推定するよりは、柑橘類の砂じょう数を推定する方がまだ楽な気がする……? 今回は土佐文旦で試してみたが、他の柑橘類で試して比較してみても面白いと思う。夏休みの自由研究などにも使えるテーマだと思うので、やる気のある方は是非調べてみて欲しい。

 

土佐文旦

  じょうのう一部屋

   計量し

    砂じょう推定

     7000前後

 

 

【参考文献】

北島宣.2005.カンキツの歴史と未来への品種改良―日本における遺伝資源の多様性―.京大農場報告,(14): 46-58.

日本果樹種苗協会・農研食品産業技術総合研究機構・国際農林水産業研究センター.2016.図説 果物の大図鑑.マイナビ出版,東京,256pp.