子育て中の学会参加!緊急時のトラブル対応について|研究所で働く漫画家兼テクニシャンが送る4コマ『ラボりだな日々』第13話

2025.01.23

バイオ系研究所で働くテクニシャン(技術員)でありながら漫画家として活躍するAyaneアヤネさんによる「ラボりだな日々」(※ラボりだ…ラボから離脱すること。ラボから帰ることの意を持つ造語)。

第12回のテーマは「子育て中の学会参加」です。

こんにちは!
ラボりだな日々、第13回のテーマは「子育て中の学会参加」です。

研究者にとって学会は日々の研究成果を発表し、分野の最前線に触れる重要なイベントです。しかし、「学会に参加する」ということはいわゆる出張と同じです。遠距離移動や宿泊を伴う場合が多く、子育て中の研究者にとってはとても大変です。今回の漫画では子育て中のほっさんが、長いブランクを経てようやく学会発表の準備を整えたと思いきや、次々と予期せぬトラブルに見舞われる様子が描かれています。

現実の世界でもこのようなトラブルは日常茶飯事。子育てと研究の狭間で奮闘する研究者たちの姿を少し覗いてみましょう。(わかりやすく研究者と表記していますが、技術職員や学生さんも学会には参加していますので研究関係者のお話として読んでいただけると幸いです)

トラブルは突然に

小さな子どもがいる家庭では、予定通りに物事が進むことのほうが稀です。学会前は発表準備に追われます。それ以上に学会中に子供を誰にみてもらうのか、何かのサービスを利用するのか、一緒に同行させるのかなど様々な決断と予定調整が必要でかなり苦労します。

子どもが学会直前に熱を出したり、保育園から「お迎えに来てください」という電話がかかってきたりすることは珍しくありません。学会出発前日までは元気なのに、当日に突然体調を崩すこともよくあります…。ほっさんはその経験から「子ども関連の対策は万全!」と調整していたものの、まさかの台風という大規模な自然の力に翻弄されてしまいました。

学会に向けて準備を重ねてきたのに、最後の最後で思いもよらないハプニングが起こる。この「計画の崩壊」にどう対応するかも子育て中の研究者が試練の1つです。

みんなどう対応してる?

では、子育て中の研究者たちはこうしたトラブルにどう対応しているのでしょうか?知り合いのお話や自分の経験からいくつかの対応をご紹介します。

  1. パートナーや家族の協力
    学会中は、パートナーや親族に子どものお世話をお願いすることが多いです。しかし、これが常にうまくいくわけではありません。パートナーも仕事を抱えている場合や、近くに頼れる家族がいない場合もあります。パートナーも研究者で学会が被ってしまった場合、どちらが行くのか…など、公平にいかない場合もあります…。
  2. ベビーシッターや託児の利用
    選択肢として、ベビーシッターサービスもあります。大きな学会では、学会の方で託児サービスを展開していることも。都会では利用しやすいですが、地方では選択肢が少なく費用面の負担もあります。短い時間とはいえ慣れない場所にいることになるので、子供によってはそもそも利用自体が難しいという場合もあります。
  3. 学会に子どもを同伴
    学会自体に子どもを連れていくことも1つの方法です。以前と比べて、子連れで参加している方も増えたように感じます。しかし、単独で参加する場合よりも行動は制限されるため、こちらも人によっては悩ましいところです。
  4. オンライン参加の活用
    コロナ禍以降、オンラインで学会に参加できる機会が増えました。感染症対策のためではありましたが、これが子育て中の研究者にとって大きな助けになっています。

どんな支援が必要?

では、子育て中の研究者がもっと学会に参加しやすくなるためにどのような支援が求められるのでしょうか?

  1. 柔軟なスケジュール設定
    子育て中は保育園や学校がお休みの土日に学会へ参加することは平日以上に困難です。以前は、学会が土日に開催されることが多かったのですが、最近は平日開催の学会が多くなっています。一般的な業務時間内に参加できるようなスケジュールであれば、より参加しやすくなると思います。
  2. オンライン学会の継続
    パンデミックをきっかけにオンラインで参加できる学会が増えました。一方で「対面が良い」という意見もあり、徐々に減ってきています。オンライン・オフラインのハイブリッド形式は学会運営側に大きな負担がかかるので難しいところもあります。オンラインも継続し、子育て中の研究者も参加しやすくすることは大切なことだと思います。学会という場で最前線の研究成果に触れる機会はどんな形でも本当に貴重なのです。

研究者と子育て

子育て中の研究者が学会に参加しにくい現状には、まだ多くの課題が残っています。しかし、それを支える環境が整えば、彼ら・彼女らがもたらす研究成果はさらに素晴らしいものになるはずです。研究者の家族だけでなく、業界側が協力して、研究者がその力を存分に発揮できる流れを作ることが求められています。

ほっさんのように育児と学会発表の狭間で奮闘する研究者たち。その姿は、子育てと仕事を両立する多くの人々にとって共感を呼ぶものでしょう。研究にフルコミットできる状況は素晴らしいです。しかし、長い研究人生においてそのような状況でいられない期間が少なからず誰にでもあると思います。その苦しい時期について、一方的に否定するのではなく、どう切り抜けていくのか、どうサポートしていけるかを共に考えることが当たり前の社会になっていくと良いですね。

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【著者紹介】Ayane

サイエンスコミックライター(漫画家、イラストレーター)
日本にある某生命科学研究所でテクニシャンとして勤務しながら、Science X Manga X Kawaiiをテーマに漫画を描くサイエンスコミックライターとして活動させていただいております!