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年が明けてから早いものでもう、2か月が経とうとしている。…………え、早すぎない⁉ この間、正月迎えたばっかりじゃない? 「2月は逃げる」などと言うが、あまりにも早すぎる気がする。
とはいえ、今年の2月はただの2月ではない。4年に一度だけ、2月29日が追加される特別な2月、すなわちうるう年だ。2月の逃げ足も1日分だけ遅くなるという訳だ。
ところでうるう年とはなんだろう? うるう年は、普段使っている暦に日や月を追加することで、暦のずれを調整する年の事だ。しかしながら、「本当にうるう年って必要?」「そもそも暦はどう決められたの?」など、暦の事について改めて聞かれるとピンとこない。そこで今回は、暦がどのように決められているのかについて解説していく。
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一口に暦といっても、ユリウス暦やマヤ暦、グレゴリオ暦など、その種類は時代や場所に応じて様々だ。しかしながら、暦はその時を生きる人々が使いやすい形で作られてきた。必然的に、作成に当たってのアイディアの出所は限られることになる。
最も多い暦のアイディアは、「お月様」と「季節」である。
真っ暗な新月が、少しずつ弧を太くしながら満ちていき、およそ15日ほどで満月になる。満月は次第に細くなっていき、15日ほど経つと新月になる。
この新月から新月までの流れは、空を見上げるだけで誰にでも簡単に把握することができる。何より手の届かない空のかなたにあるため、誰かの都合で変化してしまうことがない。周期的な流れを把握するにはもってこいだ。
このように月を観察することで作成される暦を、太陰暦という[注1][注2]。
しかしながら、太陰暦には重大な欠点がある。月の変化と季節の変化に相関性がないため、気候の変化が読めないのだ。
気候の変化の乏しい地域ならともかく、極寒の冬から灼熱の夏へと気候の変化の激しい地域に住む私たちにとっては季節のわかる情報の有無は死活問題だ。
季節は太陽の軌道によってめぐってくるため、太陽の軌道を観察することでも暦は作成された。この暦を太陽暦という。今日、世界で広く使われているグレゴリオ暦も太陽暦の一つだ。
太陰暦は短い周期で巡ってくるため、カレンダーとしてはとても優秀だ。太陰暦で15日といえば満月という事が即座にわかる。しかしながら、季節の暦としては太陽暦に軍配が上がる。
そこで、太陰暦と太陽暦を組み合わせた、太陰太陽暦が考案された。一般に旧暦と呼ばれる暦だ。

暦は大きく太陰暦、太陽暦、そして太陰太陽暦に分類可能だという事が分かった。しかしながら、一つ疑問が残る。新月から新月という分かりやすい指標のある太陰暦はともかく、なぜ太陽暦は1年前と1年後が同じ状態だと言えるのだろう?
続いて、太陽暦で1年を決める方法について解説していく。
クルクル回るコマと、ガチャガチャのカプセルを使ってこんなことをしてみたい。
まずは、カプセルに小さな印を1つ付ける。続いてコマを回して、カプセルの中に入れる。
もちろん現実では到底不可能な芸当だが、今回はうまくいったことにして想像してほしい。
この時、コマの視界でカプセルの印を見るとどうなっているだろう?
恐らくは、コマ自身の回転方向とは逆に回っているように見えるはずだ。
それでは、コマの軸が垂直に立ったままカプセルを縦に一回転させると、印はコマからどう見えるだろう?
この時も印は、コマの回転方向とは逆に回って見える事だろう。しかしながら高さは、高くなったり低くなったりしている。縦に回したことによって印自身の高さが変化するためだ。
この奇妙なコマ遊びが、1年を決めるのにどう関連するのだろう?

皆さんご存知のように、地球は自転と公転をしている天体だ。けれども地球に住む私たちからは、空の様子は巨大な球体に付けられた点のように見える。この巨大な球体を天球という。
ちょうど、コマとカプセルの関係だ。先の実験では、コマの回転は地球の自転、カプセルの回転は天球の動きに相当する事になる。
それではカプセルにつけた印は何に該当するのだろうか? 空に現れる特徴的な印といえば、そう太陽だ。このように、天球上に太陽の動きをつなげて引ける線を、黄道という[注3]。
天球上にはもう一つ線が引ける。すなわち、地球の回転面を示す赤道の線だ。
黄道と赤道は2点で交わるが、そのうち上に低い方から高い方へ行く点を春分点という。
太陽が春分点を通って再び春分点に戻るまでの周期を1太陽年といい、太陽暦の1年に相当する[注4]。

春分点を通過する周期を記録することで、太陽暦で1年を表現することができた。それでは、そもそも1年という長さは不変なのだろうか? 不変でないならどのように調整しているのだろうか?
続いて、1年の長さの補正について解説していく。
1年の長さが変化する最も大きな要因としては、1太陽年が整数の値ではない事だ。
1太陽年は365.2422日であるため、4太陽年程度が経過した時に、カレンダーで1日程度の誤差が出てしまう。この誤差を修正するためカレンダーに1日追加する年が、ご存知うるう年だ。
しかしながら、1年が変化する要因は太陽年だけではない。地球の自転速度に原因がある場合もある。
突然だが、生卵とゆで卵を指ではじいて回してみてほしい。どちらが長く回っただろう?
同じような力で回したなら、ゆで卵の方が長く回った筈だ。生卵は、ゆで卵に比べて中身が固定されておらず、黄身や気泡がフラフラと移動するために、エネルギーのロスが大きいからだ。
固定されていない物は回りにくい。これは地球という巨大な回転体においても同様だ。
地球は時速約1,600 km以上という超高速で回転する、回転体だ。しかしながら、表面は大気層や海洋、内部にはドロドロに溶けたマグマという流体に満ちている。
流体で満ちた回転体は、エネルギーのロスが大きく回転速度が落ちてしまう。
そう、地球の自転速度、すなわち1日の長さは決して不変ではないのだ。
そうはいっても、自転速度の変化が一定であればそれに合わせて暦を修正すれば問題はない。しかしながら、予測不可能なことを起こすのが我らが母なる星・地球である。
地震や津波、海流の変化や風など地球の流体に影響を与える事象の多くは予測不可能なものだ。
そのため1972年以降、地球の自転速度と暦にずれが生じた際には「うるう秒」が挿入されていた。……が、2023年12月、国際電気通信連合の決議により2035年頃に廃止することが決定した[注5][注6]。

ここまで、暦がどのように決められているのかについて解説してきたが、いかがだっただろうか? 暦は、過去の出来事を想像するだけでなく、未来を予測するためにも必須のものだ。より便利で納得できる暦を作るには何から着想を得れば良いか、考えてみるのも楽しいかもしれない。
最後に、記事の趣旨からは少し外れるが太陽と月に関する研究について2つ紹介して、記事を締めさせていただく。
太陽は私たちに恵みをもたらす存在だ。一方で、太陽の活動により私たちの社会活動に支障をきたす場合もある。特に、太陽フレアという多量の磁気エネルギーの放出は、身の回りのあらゆる物が電子機器で管理された現代では、大きな障害となってしまう。そのため、太陽フレア発生の事前予測は、社会生活を円滑に進めていくためには、とても重要だ。
太陽フレアの発生を完全に予測する方法は、現在のところまだ確立されていない。太陽フレアの発生機構には未解明な部分が多いためだ。それでは、どのように予測すれば良いのだろう? 人工知能を用いて、太陽フレアの発生を予測しようという研究がある。太陽を観測する衛星から蓄積した膨大な観測データを使って、人の手による予測よりも高い精度で予測可能になったという事だ。
地球に住む私たちにとって、最も近い天体といえば言わずと知れたお月様だろう。特別な知識や道具がなくとも、空を見上げるだけで見ることの出来る唯一の天体だ。昼の象徴である太陽ですら、眩しすぎて肉眼ではその姿を見ることはできない。そんな身近な天体でありながら、実は月の詳細については、まだ明らかになっていない事も多い。
月にクレーターが多くある事はよく知られている。それでは、縦孔がある事はご存知だっただろうか? 水平方向に空洞が広がっていると考えられているそれらの縦孔を調査する計画が進められている。岩戸隠れした天照大御神を誘い出した女神・天鈿女命になぞらえて、UZUME計画と名づけられたその計画によって、月面活動の拠点候補を発見できるのではないかと期待されている。

池谷 広大ら. 『月の縦孔内部の光環境の推定』. JAXA-RR-22-004, p. 1-15, 発行日 2022-12-23.
[注1] ちなみに太陰とは月の異名だ。太陽をお日様や天道、日輪などと言い換えるのと同じことだと思えばいい。どうでもいいが「月 異名」で検索すると、和風月名が出てくるが、あれは異名なのだろうか? (本文へ戻る)
[注2] 月は短い周期で変化するため、太陰暦は最も古い暦だと考えられている。正確に「〇月✕日」という事が分からなくとも、「三日月の日の昼に集合」のように使っていたようだ。月を見上げる習慣がないので気が付きにくいだけで、古い時代に生まれていたら葉月も使えるようになっていたのだろうか? (本文へ戻る)
[注3] 同じ要領で月の道を引くこともできる。こちらは「白道」といい、中国の天文学や暦では白道の方を重視していたらしい。暦に文化と歴史あり。 (本文へ戻る)
[注4] 1太陽年で地球が公転する角度は360 °よりほんの少しだけ小さい。この時、360 °の公転角度を太陽年に対して恒星年という。一方、地球が24時間で自転する角度は360 °よりほんの少しだけ大きい。このほんの少しだけ大きい角度の周期を太陽日といい、360 °の周期の事を恒星日という。 (本文へ戻る)
[注5] 廃止決定の大きな要因は「予測不可能な事態への対応が煩雑すぎる」という物のようだ。現代の時計の多くはデジタルで管理されているため、いつ来るか分からないうるう秒が来るたびに対応する機器すべてに人材を宛がわなければいけないことを考えれば、廃止の決定も理解できる気がする。 (本文へ戻る)
[注6] ただ、廃止決定されたのは「1秒のうるう秒の追加」である。人間がどうあがこうが、自転速度の変化を止めるのは不可能なので、当然代替案が必要になる。1秒刻みで挿入するのではなく「うるう分」「うるう時」などのより長いスパンで調整する方法が提案されている。 (本文へ戻る)