ツムギアリは仲間内の情報で "賭け" をすると判明! ロボットにも応用できるコスト決定論

2023.07.21

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、ツムギアリから学ぶ集団行動のコスト決定論だよ!

 

いや、何言ってるのそれ?って感じだとは思うけど、これは私たちが日常的に取り組んでいる問題にも関連していて、将来的には多数のロボットを使う場合にも応用できるかもしれない話だよ!

 

ツムギアリのコスト論 概要

利益を優先するかコストを優先するか?

美味しいと評判のレストランの話を聞きつけ、あまり土地勘のない場所に行く、というのはあり得るよね。そこで、あなたは道に迷ってしまったとするよ。しかもランチ時は過ぎていてお腹は空いている!

 

もう少し時間をかけて探せば、目的のレストランは見つかるかもしれないよ。でも、見つかる保証もないので、とりあえず近場の、事前に評判見ていないレストランで済ませることもできるね。さて、あなたはどうする?

 

こういう、手近にある利益を優先するのか、それともよりコストをかけてより大きな利益を得るための賭けをするのか、というのは、ヒトに限らず様々な動物の生存戦略に見られるものだよ。

 

こういう場合、果たしてコストをかけてまで、存在するかも分からない利益を目指すかどうか、というのはまさに賭けの問題であり、収益がマイナスというのは致命的だから、とても問題だよ。

 

特に、動物の群れや集団には、しばしばリーダーや情報をまとめる役が存在せず、誰もそのような利益が存在するかどうかを知らない、ということもあるからね。となると、コストをかけすぎるわけにはいかないよ。

 

ということで、ある程度コストを投資したとしても、ムダだと判断した場合には撤退する必要があるということになるけど、ではどのように継続と撤退を決めるのか、という線引きは、多くの動物で判明していないよ。

 

コストをかけて新天地を見つける「ツムギアリ」

ツムギアリの生態

ツムギアリは木の上で暮らしていて、葉っぱを丸めて巣を作ることで知られているよ。そして最も有名な行動として、鎖を作って空中移動をするよ。今回の研究では鎖形成に関するコスト決定論が関連してくるよ。

 

マッコーリー大学のDaniele Carlesso氏などの研究チームは、「ツムギアリ (Oecophylla smaragdina)」というアリを例に、集団生活を行う生物がどのようにコストを勘定しているのかを調べてみたよ。

 

ツムギアリは中国やインド、東南アジア、オーストラリア北部などに棲息するアリで、木の上で葉っぱを丸めて巣を作るよ。その強力なあごは、自分よりずっと大きい葉っぱを確実につかんで引っ張り上げるよ!

 

木の上で生活するという生態の関係上、歩き回るルートは全て繋がっているとは限らず、枝から枝へ空中を移動する必要がある場合もあるよ。この時、ツムギアリは面白い生態を見せるよ。

 

ツムギアリは他のツムギアリと身体を絡ませることで、がっちりと頑丈な鎖を作るよ。空中で断絶された2つの場所を繋げるようになると、他の個体が行き来できるようになるよ。

 

ただし、このような頑丈な鎖を形成するには、ツムギアリの個体がたくさん必要であり、鎖役になった個体は一歩も動けないことから、単純にコロニーの個体数が減ってしまうことになるよ。

 

すると、貴重な労働力が減ってしまうことから、これはコロニー全体を維持する上ではとても問題になるわけだね。鎖が長くなるほど、このような労働力不足は深刻化することになるよ。

 

しかもツムギアリのような集団行動の生物の場合、誰も情報を持っていないことはしばしばあるよ。あくまで近くの個体が鎖を作っているようなので自分も参加する、みたいに、誰も指示や指揮をしてないことになるよ。

 

ということは、鎖を作った先に、エサのような大きな利益があるかどうかは誰も知らない、ということになるので、鎖を作ったことがコロニーにとってマイナスになってしまう、という状況もあり得るわけだよ。

 

ってことは、ツムギアリはどこかの段階で鎖を作るのをやめなきゃいけない、ってことになるけど、ではどのようにその線引きを判断しているのか?というのは気になる質問だよね。

 

ツムギアリのコスト決定論は距離にあり! (だますこともできる)

ツムギアリの鎖形成コスト決定論

実験とモデル計算の結果、ツムギアリは90mm以上であると鎖を形成しないことが判明したよ。一方で地面を徐々に下げることでコスト計算を騙すことができるみたいで、最大で125mmまで伸びることも判明したよ! (画像引用元 (ツムギアリの鎖) : The Conversation (Autor: Daniele Carlesso) )

 

Carlesso氏らは、ツムギアリが上下方向の空間に作る鎖を例に、どのような条件で鎖を作るのをやめるのか、というのを調べてみたよ。まず最初は、棒と地面の間を様々にして、実験を行ったよ。

 

まず、棒と地面の間の高さを25mm、35mm、50mmに設定し、棒の上のツムギアリが地面に向かって縦向きの鎖を作るのか?というのを調べてみると、どの高さでも鎖を作ることが判明したよ。

 

この時の鎖の建築の動きを観察すると、この長い鎖の先端約1cmのところで、鎖を作るために新たな個体が参加する、もしくは鎖を作るのをやめて離脱するという動きがあることが分かったよ。

 

これは、ある個体に対して別の個体が身体を絡ませて鎖を作る、という動くの関係上、一度身体を固定した個体は、繋がっている個体が離脱するまで動けなくなるから、と考えることができるよ。

 

その動きを観察した上で数学的なモデルを構築してみると、ツムギアリは長さ89mmを超えると鎖を作るのをやめる、と予測されたよ。これ以上は投資コストが見合わない、と判断するわけだね。

 

実際、棒と地面の間隔を110mmに設定してみると、ツムギアリは鎖を作るのをやめてしまったよ。これにより、ツムギアリは90mm以上の長い鎖を作らない、ということが予測されるよ。

 

では、この投資システムに欠陥はあるのかな?つまり、鎖と地面までの距離を常に一定に保つという、通常は想定しえない動きをした場合には、ツムギアリはどのような反応を示すのかな。

 

追加の実験では、地面との距離を少しずつ変えることで、ツムギアリの鎖が伸びても地面に届かないようにする設定をしたよ。すると、制限された90mmを超え、125mmの鎖を作ることに成功したよ!

 

このことから、ツムギアリは現在の鎖の先端部から地面までの距離を視覚でとらえ、その距離に対してどれくらいの長さで鎖を作れるのかによって、鎖を作るのを判断している、ということになるよ。

 

このツムギアリの行動は、指示を行う特定のリーダーが存在しない生物の集団において、どのようにしてコストを投じるべきかどうかを判断しているのかを解明した珍しい研究であると言えるよ!

 

集団で働くロボットにも応用が!?

ツムギアリの研究の応用

ツムギアリの生態を応用すれば、例えば近くにいるロボット同士での限られた情報のやり取りだけで行動を決定できるようなシステムが構築できるかもしれないよ!

 

今回のツムギアリの行動は、非常に単純な情報と、それを仲間内で共有するという単純なシステムで成り立っている集団行動として、応用が期待される中々に面白い研究だよ。

 

例えば、小さなロボットを多数使って集団行動をとらせる、というシステムを構築する場合、大量のロボットを1つの指示系統で操るには、強固な通信システムと膨大な情報のやり取りや処理が必要になる場合があるよ。

 

しかしツムギアリのシステムに倣い、近くにいるロボット同士で単純な情報をやり取りさえすれば、中央システムでの管理なしにこのような複雑な集団行動を起こすことも可能かもしれないよ!

 

今回の研究は、単にアリのような集団を形成する生物の生態を解明するのみならず、ロボット工学において応用されたシステムを構築するのにも役に立つかもしれないよ!

この記事が面白いと思ったら

ぜひ、バックナンバーもお読みください!
彩恵りりのニュース解説!一覧

 

文献情報

<原著論文>

  • Daniele Carlesso, et.al. "A simple mechanism for collective decision-making in the absence of payoff information". Proceedings of the National Academy of Sciences, 2023; 120 (29) e2216217120. DOI: 10.1073/pnas.2216217120

 

<参考文献>

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

このライターの記事一覧

彩恵りりの科学ニュース解説!の他の記事