研究者が多数参加した小学生向けの新しい魚図鑑が出たよ!

2023.06.30

 2023615日、Gakkenから新しい魚図鑑が発売された。その名も『学研の図鑑LIVE 魚 新版』だ! 表紙を見ると、「学研の図鑑LIVE 新版 魚」に見えてしまうが、『学研の図鑑LIVE 魚 新版』が正式表記である。
 Gakkenはローマ字読みだったか???と思って調べてみたら、2022年10月に社名を変更したようだ。なので、学研ではなく、Gakkenが正式表記になる。本書は2015年に販売された『学研の図鑑LIVE 魚』のリニューアル版になる。リニューアルにあたって、私もマンボウ科を含むフグ目の一部の魚類の解説を担当した。無事出版されたことに、改めて関係者に感謝したい。

日本の魚類を中心として、34名の研究者が1600種の魚類を紹介

 本書は、小学生1年生~6年生を主な対象としており、既に魚類研究者になってしまった私からすると、少し物足りなさを感じるところもあるが、浅く広く様々な魚類の形態や特徴を知ることができるので、大人の方も楽しめる本だと思っている。魚類は20234月時点で地球上に36400種以上、日本近海では4740種が確認されている。本書はこのうち、日本の魚類を中心として、約1600種の魚類が収録されている。一般的に日本でよく見る魚類は大体載っているものと思われる。

今回、リニューアル版にあたっての最大の特徴は、34名の研究者が分担執筆していることである。魚類学者と言えど、36400種以上もいる魚類をすべて把握しているわけではなく、研究対象の魚類は詳しいが、それ以外の魚類はあまり詳しくないという事態が起こり得る。研究は日々進展し、昔は当たり前だった情報が、実は間違っていたということもあったりする。今回、多くの魚類学者が参加したことにより、最新の研究成果も反映された魚類図鑑になっており、他の魚類図鑑と見比べるのも楽しいだろう。

様々な魚類の写真が目を楽しませてくれる

 パラパラとページをめくると、様々な魚類の写真が目を楽しませてくれる。多様な色、様々な形、身近な魚類から見たこともないような魚類まで。本書は多くの研究者が複数回確認したので、情報の正確性も今まで以上に高いと思われる。

 一見すると同種にしか見えない近縁種がある程度まとまって写真で見られるのが魚図鑑の良いところで、この本の性質上見分け方は簡単にしか書かれていないところもあるが、気になった魚は是非インターネットなどでもっと深く調べてみて欲しい。こういう形の魚がこういう名前なのかということを知れるだけでも、本書は大きな役割を果たしているだろう。実物の写真は解説に書かれていること以上に、様々な情報が含まれている。

わかりやすい写真、イラストで様々な情報を解説

 魚のことを深く知るには、なんと言ってもその形態を学ぶことが基本中の基本だ。魚図鑑は大体巻頭にそういった一般的な魚類の形態に関する情報がまとまって載っている。絵としてそういう情報が載っている図鑑は多いが、やはり絵と写真ではイメージが異なる場合があるので、実物を観察する時、写真で説明されていた方がどこのことを指しているのか分かりやすかったりする。

利用読者に配慮する工夫

 本書は水族館に持って行くには少し大きな本になってしまうが、できる限り軽くなるような独自の紙が使われ、また本の角で指を怪我しないように、ページの隅を丸くカットするなど、利用読者に配慮する工夫がなされている点も魅力だろう。価格も2640円(税込み)とカラー写真満載にしては、むしろ安いような気がする。本書はコラムも充実しており、ところどころにそのページに掲載されている魚種に関連した豆知識を得ることができる。ページの隅っこに小さな文字で重要な情報が載っていることもあるので、是非、隅から隅までじっくりページを眺めて欲しい。巻末は直接的な魚の説明ではないが、人と魚が関わり合う上での危険性、飼育の仕方、釣り方、漁業と食、観察方法や研究方法、水族館の紹介などが書かれている。全部で296ページのそれなりに厚い本だ!

さらにDVDまで付属!

 また、本書にはオリジナルのDVDも付いており、親しみやすいウサギのキャラクターと一緒に魚の世界を知ることができるストーリーになっている。DVDで紹介されている魚は、ごく一部の魚類であるが、興味深い生態の一端や水族館の裏側を知ることができるので、いい勉強になるだろう。DVDは私は全く関与していなかったのだが、ウシマンボウの紹介があり、「2022年に記録が更新され、千葉県鴨川沖で漁獲された2300 kgのウシマンボウが、世界2位の最重量硬骨魚になった」という最新の情報が収録されていて個人的には嬉しかった。魚の動画はYoutubeで見れると言ったら確かにそうだが、正確な情報を分かりやすく解説している点で、近年、学習図鑑のDVDは価値が高まっている。夏になるこれからは川や海に行くことも多くなるだろう。その前に是非、本屋に足を運んで本書を手に取って欲しい。

 

~今日の一首~

 新しい
  約1600種の
   魚図鑑
    研究者多数
     魅力解説

参考文献

本村浩之.2023.日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名.Online ver. 20(2023年4月15日更新).

本村浩之(監修).2023. 学研の図鑑LIVE 魚 新版.Gakken,東京,296pp.

 

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

このライターの記事一覧